カウンセリングや傾聴や教育相談の勉強をなさった方にはおなじみの、「ロジャーズの3条件」ーいわゆる「受容・共感・自己一致」について、今回は少し。
 カウンセリングの創始者カール・ロジャーズの、1957年の論文「パーソナリティ変化の必要にして十分な条件」(全部で6条件)の中の、セラピスト側の態度としての3条件を抜粋したものです。
 その三つは、①純粋性(genuineness,congruence)、②無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)、③共感的理解(empathic understanding)です。だから、本来は「自己一致・受容・共感」の順です。
 知識やスキルではなく、態度や人格としての条件です。カウンセリングだけでなく、子育てや夫婦関係や日常の人間関係を結ぶ上でも大切だと思います。

 ①「純粋性」は難しいので割愛し、②「無条件の肯定的配慮」から。
 「無条件」なので、テストでいい点を取ったから、お手伝いをしてくれたから、人に親切にしたから「いい子ね」、とは違うのです。できなかったり、ふてくされていたり、たとえ悪事を働いたとしても、無条件に大切な存在として受容することです。不器用でもその人にはその人なりの事情があるし、それが個性かもしれません。
 教員時代に参加した特別支援教育の研修の、ある講師の方の言葉が忘れられません。「発達障害のある子どもは、思いも掛けないことを言ったりしたりする。でも、『はー⁉』ではなく、『へ~‼』ですよ」。
 ほめて育てるというのも一つの方法ですが、ある一定の条件の下でしか認められないのはかわいそうです。人間、みんなデコボコなのですから。お互いに面白がれたら、世の中はもっとおおらかでしょうに。

 ③「共感的理解」は、相手の気持ちをあたかも自分のことのように感じること。自分の経験や主観から離れて、相手の内側から相手を理解するといった感じでしょうか。自分とは全然違うけれど、こんな気質・能力で生まれ、こんな生い立ちで、こんな事態に直面したら、きっとこんな気持ちなんだろうなあ…。「想像力」を働かせます。

 でも、無条件に受け入れられたとか、理解してもらえたという実感がないと、自分のことで精いっぱいでしょう。
 自分の価値観と人の価値観は違う。性格も能力も経験も全部。当たり前のことですが、頭では分かっていても腹に落ちません。無意識のうちに、人も自分と同じように感じているはずだ、人は自分の思い通りになるはずだと期待してしまいがちです。
 そんなときは、まず自分自身のことを大切にして、癒してやらなくては。

 それから、ロジャーズは知識の重要性は言いませんでしたが、やはり情報を得て自分とは違う世界を知るのも必要かと思います。自分一人の世界はごく小さいものですから。
 それぞれの社会風土のクセや、障害者・LGBT・少数民族・移民・難民などのマイノリティの方々の個性や実情について。被差別者、被害者だけでなく、差別者、犯罪者の苦しみについても。

 「無条件の肯定的配慮」「共感的理解」は、人を育てるだけではなくて、人と人のつながりを確かなものにしていきます。それがないと、人生のある時点までは順調に過ごせても、突然しっぺ返しを食らうように苦労することもあるようです。
 「情けは人の為ならず」です。

                           心理面接室TAO 藤坂圭子
                           HP:http://tao-okayama.com