小学校6年生の時のことです。休み時間、男子二人の取っ組み合いの喧嘩で騒然としていました。チャイムが鳴って、教室を離れていた担任の先生が帰って来て、その場面を目撃! さて、どうなったでしょう?
 「お前ら、元気ええなあ。喧嘩したいか。よし。じゃあ、ここで堂々とやれ!」と、二人を教壇に上げ、自分はさっさと授業を始めたのです。

 さっきまでの勢いはどこへやら。一人がだるそうに腕を上げてはちょっと相手の肩をどつき、一呼吸おいて、もう一人が相手の腹をしぶしぶ払い、今度は一人が頭をコツンとやり、そして片方も同じくコツンと…。ゆ~らゆ~ら体を揺すりながら、いかにもかったる~い喧嘩(?)が、教壇の端で続きます。国語だったか算数だったか忘れましたが、その二人を尻目に普通に授業は進行し、みんな真面目にお勉強。
 10分ほど経ったでしょうか、先生が「よし、止め!」と言うので、あらお仕舞い?と思ったら、「水入りじゃ。二人とも廊下に出て水を飲んで来い。仕切り直しじゃ。喧嘩にも休みが要るんじゃ」。そして、二人は言われた通りに水を飲んで来て、また教壇に上げられ、「ほい、続けろ」。男子二人はまことに素直に、また喧嘩(?)を再開したのでした。
 その喧嘩(?)がどんなふうに終息したのか覚えていないのですが、ふと思い出しては笑えるエピソードです。昔の子どもって純朴でしたね。
 
 私の小学校1年生から4年生までの担任の先生はみな、母親に似てどこか神経質でピリピリしたところがある女性の先生で、嫌いではなかったのですが、その頃の私にとっては辛かったのだろうと思います。5年生の時は、肝っ玉母さんっぽいおばさん先生で、ああこんな女の人もいるんだ、とホッとしました。
 そして、6年生の時がこの中年の男性の先生で、豪放磊落で楽しくて大好きでした。引っ込み思案で緊張しいの私でも、たくさん話し掛けることができた先生でした。
 小学生にとって、担任の先生の存在感は大きいですね。私は小学校高学年になって、やっとちょっと晴れやかな気分を味わえるようになった気がします。

 この時に初めて「水入り」という言葉を知りました。
 子どもの喧嘩をむやみに止めるのではなく、こんなふうにOKを出すのは素敵です。だいたい「みんな仲良く」なんていうのは、きれいごとです。でも、喧嘩にもルールや節度がある。それを教えるのもなかなかのセンスでした。
 子どもが羽目を外したり、突拍子もないことを言ったりしたりするのも、面白がりながら受け止めてやりたいものです。子どもの伸びやかさを引き出すには、大人のおおらかなかかわりが不可欠ですね。

                            心理面接室TAO 藤坂圭子
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