カウンセリングの勉強を始めたのは、かれこれ30年ほど前になります。その頃から何より大切にしているのは、カウンセリングの応答の技術でも心理学の知識でもなく、瞬間瞬間の自分の気持ちに気付くことです。相手の気持ちよりもまず、自分の気持ちです。

 その頃、「日本カウンセリング協会岡山支部」という民間のカウンセリングの研究会に入っていて、ほぼ毎月のベーシック・エンカウンター・グループに参加していました。ベーシック・エンカウンター・グループのことは、HPのセミナーのページにも書いています。特にテーマもなく、自由に深い語り合いをするのです。
 人の話を聴いていると、どうしても自分はどうかなあと振り返るし、自分のことにしろ、人のことにしろ、何か納得できない感じがあるとザワザワします。しーずかに座っているのだけど(私はよくゴロンと寝っ転がっていました)、心の中はとても忙しくて、いったい自分は今どうなってるんだ⁉ と、落ち着きません。でも、他の方たちにかかわっていただいているうちに、あー、そうか、自分はこんな気分だったんだ!と腑に落ちます。それを表現できると、さらにスッキリです。
 
 自分の気持ちが分からなくて、人の心と付き合えるわけがありません。だから、「日本カウンセリング協会岡山支部」では、エンカウンターを一番大事にしていました。カウンセリング演習やその他のワークも、心の襞に丁寧に寄り添うことを目指していて、今でも私のカウンセリングのベースになっています。感謝しています。 

 こんなことを数えきれないくらい繰り返しているので、日常でも自分に向き合うのが習慣になっていて、自分の心のクセもつかめてきました。そして、まあこんな自分だから仕方ないか、と諦める。自分に対して距離がないというのは、とても楽です。
  
 カウンセリングに来られる方は、自分の気持ちを表現するのが苦手な方が多いです。自分の意見を言えなくて、知らず知らずのうちに周りに合わせ、身動きが取れなくなって苦しんでいます。
 でもそれ以前に、そもそも自分の気持ちに気付けていないことも、よく見受けられます。

 嬉しくても、悲しくても、腹が立っても、それを分かち合える人がいないと、人は感情を封印してしまいます。まして、小さいころから、「人前ではしゃぐものではありません」とか、「これくらい大したことないでしょ」とか、「もう大きいんだから淋しくなんかないはず」とか、「腹を立てるのはみっともない」とか、「人を憎んではいけません」などと叱られ続けていると、どんな気持ちも許されないような気がしてしまいます。
 自分の気持ちも分からず、自分という存在の実感もないまま、人と付き合うのはとてもしんどいです。うまく歯車が噛み合わず、妙な感じばかりが残るでしょう。

 でも、後からでもいいから、自分の気持ちを取り戻しましょう。あの時こうすればよかった。ああ言い返せばよかった。ちゃんと伝えればよかった。やっぱりなんか許せない。あれは本当の自分じゃない。私はあれが欲しかったのに…。悔しいし恥ずかしいかもしれないけれど、しっかり味わって、今度こんなことがあったらこうしよう、と意地を持ちましょう。
 そうすると、だんだん瞬間瞬間の自分の気持ちに気付けるようになります。そして、楽しい時は笑みがこぼれ、こわごわとでも意見が言え、腹が立った時はちょっとぶつけたりできるようになります。自分の存在感が周囲にも伝わって、人の中にいても楽になります。
 決して簡単なことではないのですが、自分の気持ちや人生を大切にしてほしいと思います。

                          心理面接室TAO 藤坂圭子
                          HP:http://tao-okayama.com