「喜怒哀楽」ー人間はどんな感情だって持ち得るのですが、とりわけ「怒」は厄介です。「怒り」は、ものすごいエネルギーを有しているので。
 外に発散すればトラブルを起こしやすいし、内に秘めれば、そのエネルギーが自分の中で渦を巻くわけで、心身にとってこの上なく不健康です。何らかの形で「怒り」のエネルギーを解放しないと、頭痛を引き起こしたり、攻撃の矢が自分に向けられて、胃痛や鬱につながったりします。
  
 カウンセリングに来られる方は、「怒り」を出すどころか自覚することすら苦手な方が多いです。小さいころから、威圧的、支配的な環境に置かれると、ちょっと反抗しても何倍もの勢いで抑え込まれるので、そのうち怒ること自体を諦めてしまうのです。そして、怒られる自分の方が悪いんだと思い込むようになります。
 だから、カウンセリングの中で、理不尽に叱られ続けたことに腹が立ってきたとか、人にあんな風に言われてムカついたとか、ちょっとでも「怒り」が出てきたら、心が進んできたなあと思えます。
 しかし、ここからがまたしんどい。自分の怒りのエネルギーに中(あ)てられてしまいます。どう発散したらよいものやら。自分を責めて落ち込んでいた方がまだ楽なくらいです。

 そんな時、単純に無難なモノに当たること、-クッションやサンドバッグなどをお勧めします。解決にはならなくても、とにかくエネルギーは発散した方がいいのです。

 ずっと前のことですが、私はある同僚にとても腹が立っていて、自分のことも思い通りにならなくて、気持ちが荒れて仕方なかった時がありました。お風呂でリラックスしようと思ったのですが、イライラが全く収まらず、思わず湯船のお湯をバーンと叩いたのです。そしたら天井まで上がったお湯が、洗い立ての髪にバサーッと落ちてきて、何だか快感! 勢いに任せて何度も何度も、お湯をバーン、バーン、バーン‼ 湯船のお湯は半分ほどになり、そこらじゅう大きな雫まみれになりました。あまりものみっともなさに自分でも笑えてきて、それで不思議とスッキリしたのです。
 その時に実感しました。怒りとはエネルギーなんだと。こんなにも体の中にくすぶっていたんだと。

 これは5年ほど前のことですが、ベルリンを旅行中、ホテルの不始末で非常に不快な思いをさせられました。窓が故障していて真夜中に移動する羽目になったり、カードキーが利かなくて何度もフロントを往復した挙句、結局マスターキーで開けてもらうなど、とんでもない時間と体力のロスでした。その間のホテルの対応も不親切で、チェックアウトの際も何の詫びもありません。添乗員さんに不満をぶちまけると、「訴えてはみますが、ドイツ人はその場で言わないと聞き入れないので…」。確かに、その時その場で抗議ができないのが、日本人の悪いクセ。
 結局そのまま帰国したのですが、腹の虫がおさまりません。馴染みの旅行会社なので事を荒立てたくはないのですが、「面倒くさい人になってやる!」と意を決し、抗議を続たのです。そしたら何と、「異例のことですが、詫び金を送るとの回答です」。やったー! ドイツ人に勝ったー!

 この交渉中、火のイメージの夢を見たり、飛行機の中でカッカしながら御嶽山の噴火を目撃するというコンステレーションもあり、怒りのエネルギーをどうプラスに使うかを考え続けました。恥ずかしいとか怖いとか言っていると、進むものも進まない。怒りのエネルギーで勝ち取れるもの、変えていけることもあるはずだと。
 この後、TAOの開室にあたり、いろいろ難しいことはありましたが、あの経験が効いて、交渉事に腰が引けなくて済みました。
 私は怒りを表明することが苦手で、ポロっと嫌みを言ってしまうようなイやなヤツでした。でも最近は、いろんな場面で言いたいことがわりとスッと言えるようになりました。腹を立てることも少なくなりました。とっても楽です。 

 怒りの扱いが苦手な方々、自分のエネルギーを無駄にしないようにしましょう。不当に踏みにじられることから逃れ、自分や社会をいい方向に変えていく原動力としましょう。
 
 ただ、何でもないことですぐキレて、のべつ幕なしに当たり散らしてしまう人もいますが、それは「自己愛憤怒」と言って、正当な怒りとはまた別の厄介なものです。そのとばっちりはブーメランのように自分に返ってきて、安定した人間関係を築けずに苦労します。これについては、またいつか書きます。
 
                            心理面接室TAO 藤坂圭子
                            HP:http://tao-okayama.com