精神分析の創始者、S.フロイト(1856-1939)は、「無意識」の発見者として知られています。「夢分析」や「自由連想」も有名です。
 フロイトは、心の構造を次のように明らかにしました。心には、イド(エス)・超自我(スーパーエゴ)・自我(エゴ)の3つの働きがあって、この3つの絡み合いがパーソナリティに影響すると言うのです。

・イド(エス)
 ラテン語でid(イド)、ドイツ語でes(エス)、英語はit。つまり、「それとしか言いようのないもの」。食べたい、寝たい、遊びたい、怠けたい、セックスしたい…。ひたすら快楽を求める本能的な心的エネルギーのことです。フロイトは特に性欲を強調しました。(それが後に弟子のユングとの決裂を招きました)
・超自我(スーパーエゴ)
 人間は生まれたときは「イド」の塊ですから、しつけられなければなりません。離乳、トイレットトレーニング、服の着脱から、礼儀、言葉遣い、場面場面に応じた振る舞い方などなどまで。社会に適応するために、親や周囲の大人から教えられた道徳律です。
・自我(エゴ)
 イドに突き動かされるままでは動物と同じ。かと言って、超自我(スーパーエゴ)に従って自分を律してばかりだと息が詰まる。この2つを調整して、現実に即した程よい行動に導くのが、「自我」(エゴ)です。「自己コントロール力」と言ったらいいでしょうか。自分の意志や判断で自分を運んでいく力です。だから、よく精神医学で言う「自我が強い」というのはいい評価で、俗に言う「エゴが強い」「我が強い」「我がまま」とは全く違います。3つのうちで一番大事な力です。

 さて、カウンセリングにいらっしゃる方の多くは、強すぎる「スーパーエゴ」に苦しんでいます。いつも、「~しなければならない」「~してはいけない」にとらわれています。それは自分の良識や信念だと思い込んでいますが、実は自分の意識を超えて、植え付けられている「スーパーエゴ」なのです。(だから「超」(スーパー)」が付きます)
 きっと、かなり厳しくしつけられたか、何かにつけて非難ばかりされてきたのでしょう。

 日本は世間体重視で同調圧力の国ですから、「スーパーエゴ」が強い人が多いです。日本人に特に多いのは、
・人に合わせるべき。人には気を遣うべき。
・出しゃばってはいけない。
・何事も我慢。一度始めたことは簡単に止めてはいけない。
・目上の人に逆らってはいけない。
・女は女らしく、従順でいなければならない。
・子どもが親の面倒を見るのは当然。
・自分の都合は二の次。長時間の労働や奉仕は美徳。
・人に迷惑を掛けてはいけない。(日本以外でこのようにしつけられる国はあまりないそうです。「『人に迷惑をかけるな』と言ってはいけない」坪田信貴:SB新書)   …etc.

 クライエントさんがこのような思いにとらわれているとき、「それは誰の声ですか?」と聞くと、最初は「私の声です」と言われます。でも話を深めていくと、これは母親の声だとか、小学校〇年生の時の担任の声だとか、世間の声だと分かっていきます。気が付かないうちに「洗脳」されていて、「自分」がなくなっているのです。

 自分がどんな風土で、どんな倫理観を信じ込まされて育ったのか。どんな「スーパーエゴ」が自分の中に働いているのか。今一度振り返ってみるといいと思います。
 もちろん、社会で生きていくためにはマナーも思いやりも必要です。でもそれは、自動思考的な「スーパーエゴ」ではなくて、きちんと「自我」の力で、自分にとって納得できる信条として培いたいものです。
 「自我」を鍛えることが必要です。自分の感覚を優先し、自分のアタマで考え、自分がラクなように動く。自分がラクになると、人のこともラクにできます。

*個人的に、「超自我」より「スーパーエゴ」の語感に馴染んでいるので、「スーパーエゴ」の方を多用しました。意味的には同じことです。

                          心理面接室TAO 藤坂圭子
                         HP:http://tao-okayama.com