近年、心理・教育・ビジネス等、様々なジャンルで、「レジリエンス」を高めることの重要性が説かれています。「レジリエンス(resilience)」は、「回復力」「弾力性」などと訳されます。「耐久力」という訳もありますが、ちょっと違って、竹のようなしなやかさ、と言ったらいいでしょうか。圧力を加えられた竹は、うんとしなりながらも折れずに跳ね返ります。どんな困難なことにぶち当たっても、持ちこたえて乗り越える力です。
 反対の概念は、「脆弱性(vulnerability)」です。

 アメリカ心理学会(APA)では「レジリエンスを高める10の方法」を提唱しています。以下、かいつまんでご紹介します。
人とのつながりを作ること。家族・友人・コミュニティなどからの支援を受け入れ、また支援する。
危機を、乗り越えられない問題とは考えないこと。出来事自体は変えられなくても、捉え方は変えられる。
変化は人生の一部だと受け入れること。思い通りにならないこともある。無常観、諦観を持って人生に臨む。
現実的な目標を持つこと。少しずつでも定期的に取り組むように。
自ら決断して行動すること。逆境においても、できるだけ逃げずに動く。
自己発見のための機会を探すこと。喪失や困難な体験においても、自分自身を知ることで、精神性が高まり、感謝の念が生まれる。
自己肯定感を養うこと。自分の直観を信じて、自信を持とう。
広い視野を持つこと。困難な局面においても、俯瞰的・長期的な視点を大切に。
希望に満ちた見通しを保つこと。楽観的なイメージを視覚的に描いてみる。
自分自身を大切にすること。自分自身の感情を大切に。リラックスできる活動・運動習慣なども。
 
 確かに、このような前向きな姿勢でいないと、複雑で変化が激しい現代社会を生き抜くのは難しい。
 アメリカでは、就職試験などでしばしば、失敗体験を話すよう求められるとか。失敗を生かす「レジリエンス」の力を問われているのです。

 日本人は忍耐強い国民だと思われていましたが、そうでもなくなってきたようです。レジリエンスの力が弱く、「打たれ弱い」です。
 中学生の25人に一人が不登校、新卒就職者の3年以内の離職率は3割超。意味ある選択としてならいいのですが、そうでもなく、ちょっとのことですぐ折れてしまい、社会に戻れなくなっている方が増えています。「自分」というものを確立できないまま、ずぶずぶの人生に陥ってしまいそうです。 
 
 かつて日本人にとって、「耐えるのが美徳」でした。嫌な勉強、いじめ、長時間労働、理不尽な叱責などにも、「耐えて」いれば何とかなる。社会とはそういうものだ。
 それで、戦後の復興、高度経済成長を成し遂げてきた面もあります。が、「忍耐力」の押しつけが、かえって日本人の精神力をくじいてしまったのではないでしょうか。世代が変わって、多くの若い人にとっても、「自分」よりも大切なのは、人の目であり、世間様のようです。

 上の「10の方法」は、全て「自分」が主体です。
 価値観の転換が必要です。もっと「我が・まま」でいい。人の思惑や空気に合わせる必要はない。人と違った感じ方も生き方も、面白くてそれでいい。欠点や失敗も、一生懸命生きているからこそ辛いのです。
 私はレジリエンスの源は究極のところ、自分のありのままを受け入れて赦せるかどうか、だと思っています。赦せば力が抜けて、次への動きが生まれます。

 人間って大変、とつくづく思います。でも、自分を大切に、ゆっくり「10の方法」を実践しながら、丁寧に日々を紡いでいきましょう。そうすれば、きっと何があっても大丈夫です。
 そして、そんな地道な生き方を互いに尊重し応援し合える、温かな空気感の世の中にしていかねばと、切に思います。 

                               心理面接室TAO 藤坂圭子
                            HP:http://tao-okayama.com