◆千葉・房総の素掘りトンネル 茂原市押日素掘トンネル群 (2)
◆千葉・房総の素掘りトンネル 茂原市押日素掘トンネル群 (3)
◆茂原市押日素掘りトンネル群 地図
◆参考資料:写真で見るもばら風土記シリーズ: 17 トンネルのはなし もばら風土記編集委員会 1997年発行
※ 茂原市立図書館に所蔵あり
否、押日(おしび)である。
穴マニアの聖地、茂原市押日周辺の手作り感あふれる素掘りトンネル達を巡ってきた。
全て徒歩でも1日で13個の素掘りトンネルを回れる、超絶素掘り隧道パラダイスである。
(探索日:2015年4月末)
※これらの隧道は閑静な集落内の狭隘な道路上にあります。
また、水没ダート、泥が厚く堆積し荒れた舗装道、藪などバイクや車に不向きな箇所があります。
にも拘わらず近隣の方々の生活道路として使われていますので、徒歩や自転車での探訪を強くお推めします。
まず西から、押日素掘りトンネル超高密度地帯を回った。
茂原発8時台、ロングウッドステーション行のバスに乗り、バス停「原田団地」で下車。
戸田谷隧道からスタート。
すると、集落の小山に早速お約束の穴がw
長柄町、長南町辺りでは、農地横の小山に農具用の物置が掘られているのを見かけるが、
この穴もそういった類のものなのだろうか。
◆戸田谷隧道(建設:1923年(推定)、延長:37.5m、幅員:2.9m、有効高:3.2m)
早速、戸田谷隧道が口を開けているのにご対面。
大字は押日ではなく国府関。
自転車で通り抜けたご婦人が「こんにちはー」と挨拶。
ウホウホとうっかりカメラを構えてしまったが、極力近隣の方に迷惑をかけないようにしなければと戒める。
一番の見所は、アプローチの長閑で美しい田園風景。
緩やかなカーブの道が隧道に吸い込まれていく。
細長い釣鐘状の断面が特徴。
参考資料によると、当初トンネルを抜けるには坂道を登らなければならなかったが、
農閑期の冬場に男手で、何年もかけて床を下げていったらこの形状になったとのこと。
左手は切通しになっているが、右手は平地が広がっている。
ここで、キジが雄たけびを上げながら道路を横切って行った。
上部に少し観音掘りの名残があるだろうか?
ゴシック建築の尖塔アーチのような断面。
素堀りなのにグレーチングでカバーされた排水溝が完備。
轍のダブルラインもしっかりしており、現在もよく使われている生活道であることが伺える。
近くには乳牛がいたりして。
意外に千葉は酪農が盛んだったりする。
田圃と丘陵が広がる一方、忽然と新興住宅地が現れるのが茂原の特徴。
カメラを持ったままうろうろしてると、近隣住民に迷わず警察に通報されるかもしれない。
◆細田隧道(建設:1900年(推定)、延長:51.7m、幅員:2.7m、有効高:2.1m)
押日素掘りトンネル群のうち、最も気に入っているものをあげるとすれば、この細田隧道。
道は八幡神社の境内の下に突っ込んでいく。
土被り少なっ!
参考資料(1997年発行)によると、「近く切通しにする計画がある」とあるが、確かに開削は楽そうだ。
しかし、バブルの真っ最中にあった計画は頓挫したのだろう。
八幡神社側の坑口に、石造の達磨っぽい物体(道祖神)が祀られている。
素朴で可愛らしい佇まい。
道祖神を横に歩を進める。
坑内は曲がって暗いが、照明完備なのでヘッデンは不要。
坑内の奥へ進むと、断面の縦長のかまぼこ型から、横長の矩形断面に変化。
反対側の坑口が見えてきた。
照明に照らされ、S字カーブを描く坑壁のフォルムが強調される。
素掘り隧道にありがちな、ガリッとやっちゃった痕跡も。
これはこれは優美で美しい曲線。
照明に照らされた断面が弧を描き重なり合う。
切通しも風化により柔らかな曲線を描く。
彫塑的な美しさ。
緑の苔むしっぷりも見事。
人と時の流れが作り上げた、一級の芸術品である。
旧道は竹に浸食され竹藪化。
石造の道祖神。
ヒョウタンツギのような形状。
細田隧道の坑内を堪能した後、八幡神社境内から旧道へ。
旧道は深い切通しとなっており、太い木の根が切通しに食い込み、密林のような大迫力の光景。
すぐそこが普通の集落とは思えないくらいの秘境感。
旧道から現道を見下ろす。
高度差は5mくらいはあるだろうか。
泥が積もっているものの深い轍があり、それなりに使われている道であることが分かる。
倒木に赤い物体が生えていた。
椿の花びらかと思い調べたら、恐らくカンゾウタケというキノコらしい。
色と形状が舌のようで不気味。
田圃や畑や春の花に囲まれた、楽園のような農道を進む。
細いダート道の先には…。
◆狸谷隧道(建設:明治末〜大正初期(推定)、延長:36.5m、幅員:2.8m、有効高:2.4m)
出ました!
異形の坑口の素掘りトンネル。
この窪みには、細田隧道と同じように道祖神を祀っていたのだろうか。
今は穴があるのみである。
坑内を進むと、将棋の駒状の五角形断面へと変化。
日本古来の観音掘りの形状が色濃く残っている。
なのに照明はLED対応で、地域に欠かせない生きてるトンネルだと伺える。
変形断面の坑口。
一方、新興住宅地側の坑口。
同じトンネルとは思えない程、断面形状が異なる。
市原市月崎の永昌寺隧道ほどではないが、観音掘りの五角形断面が明瞭。
トンネルの先は直ぐに新興住宅地が広がっている。
農道のような長閑な細道から、トンネルを抜けると今時の新興住宅地。
タイムトンネルを体験できる。
◆千葉・房総の素掘りトンネル 茂原市押日素掘トンネル群 (2)
◆千葉・房総の素掘りトンネル 茂原市押日素掘トンネル群 (3)
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