2007年02月12日

「10代の女の子は、生まれつき持っているカードだけで勝負しなくちゃならない。」 (名言・迷言集)

小説・夢にも思わない・宮部みゆき

宮部みゆき氏の作品。
前回ご紹介した「今夜は眠れない」で登場した主人公、こと緒方雅男くんと、親友の島崎俊彦くんのコンビが活躍するシリーズ2作目です。

「僕」の大好きなクドウさんが、下町の庭園で殺された!?というショッキングなシーンから始まるこの物語。

息苦しく、逃げ場のない家庭に生きることの恐怖。
少女売春問題。
前作でもテーマであった、メディアに踊らされ、身近な者を傷つける人たち。
生きていく為に、善良な一般市民が、当たり前のように悪と共生する世界。


中学1年生の主人公たちが直面するのは、あまりにも汚らしい現実。
それでも彼らは、強さと優しさを失いません。
そして、自分が信じるものと、大切な友人たちのために戦うお話です。

それにしてもこの主人公、なかなか大したものです。
可愛らしい同級生のクドウさんに恋心を抱きながらも、モテないタイプの女の子、「伊達さん」についてもキチンと考察しているのだから。
タイトルの台詞と併せて、彼はこう語っています。


10代の女の子は、生まれつき持っているカードだけで勝負しなくちゃならない。
最初からいい手を持っている女の子には、どう張りあったって勝ち目がない。
そのことを、賢明な伊達さんは理解している。
それはとっても悲しい聡明さを持っている事なのかもしれないけど。

僕は伊達さんが好きだ。
でも、彼女に会ってポウッっとはしない。
だけど、クドウさんを見るとポウッとする。
伊達さんが好きだけど、彼女に恋はしない。
でも、クドウさんには恋してる。
こういう傾向は、僕たちの年代の男の子たちみんなが持っているものだと思う。
残酷だけど、でも事実だ。

伊達さんタイプの女の子は、ある年齢にさしかかるまで、みんな同じような思いを抱えてゆくのだと思う。
男の僕がこんなこと言うのもおかしいけど、でもそう思う。
だけどそのことで、伊達さんは曲がったり歪んだりはしないだろうとも思う。
だからこそ、彼女は「クウちゃん(=クドウさん)」への友情を、大事に大事にすることができるのだ。



すごいね。
オレが中学生のころ、こんなことをキチンと考えてた男子なんて、居なかったんじゃないかな?
宮部みゆきは、優しくて繊細な作家だなぁ。と、つくづく思います。
男性の作家には、まず書けない表現でしょう。


あと1つ、とても気に入っているフレーズがあります。
物語の根幹に関わってくる場面の台詞なので、詳しく書けないんですが。
それはこんな台詞。


それは思いやりか?
そうだろう。
効果が限定された、選ばれた人たちに対しての思いやり。
部外者は立ち入り禁止。



これも主人公の台詞なんですが、この台詞を吐く時の彼の心情、察するに余るものがあります。
これが誰に対しての言葉だと思いますか?
ぜひ読んでみて下さい。

こんな事、気付かなくてもよかったのに、考えなくてもよかったのに。
でも、彼のまっすぐな心は、真実から目を背ける事を許さなかったのです。

こうして彼は、少し大人になりました。

tappygoal at 22:00│Comments(0) 名言・迷言集 

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