エア彼女

すべてに、疲れた僕は彼女に出会う。 その人はどうやら僕にしか見えないらしい。 でも、僕はそんな彼女といるのが幸せだ。 ※この小説は、パズルのピースがバラバラになっているようなもの、なのかもしれません。

すべてに、疲れた僕は彼女に出会う。 その人はどうやら僕にしか見えないらしい。 でも、僕はそんな彼女といるのが幸せだ。 ※この小説は、パズルのピースがバラバラになっているようなもの、なのかもしれません。

窓の外では、しんしんと雪が積もっていく。受験勉強をしながら、うとうとしていると窓にいきなり雪球がぶつかった。
びっくりして、窓をあけるとそこには茜がいた。白い息を吐きながら、こっちにおいでと手招きをしている。真っ赤な包みを恥ずかしそうに抱えて、上目遣いに僕をみつめる茜。「ね、ちょっとだけ目をつぶってくれないかな。」僕が、不思議そうな顔をすると茜は、「いいから、つぶって。」と怒ったようにいった。僕は、目を閉じた。その瞬間、唇に暖かいものが触れ、口の中が甘くなった。 

ポニーテルがまるで振り子のように揺れている。胴衣をまとった彼女はその折れてしまいそうな細い腕を振り下ろし、見えない相手に竹刀を振り下ろす。そんな、茜を僕はいつも見つめていた。
僕の視線に気づくと、茜は恥ずかしそうに視線を逸らした。中学のあの日僕は初めて恋をした。茜と初めて出会ったときのことを考えても、いつもあの部活姿の茜が頭をよぎる。恋というものがどんなものであるかさえわからなかった僕は、あのときの感覚をひきずったまま大人になってしまった。 

人間の知覚というものは所詮脳が感じているに過ぎない。僕に彼女がいたことは幻だったのかもしれない。
でも確かに彼女は存在していた。茜が、口元を緩めてこういった。
「あなたには、彼女がいたんでしょ?でもそれは、こういうことだったの。」
彼女は腕の傷をさりげなく見せて、僕の首に手をかけた。その瞬間、彼女が何者であったのか。
やっと理解できた。僕は、薄れゆく意識の中であのぬくもりを感じていたかっただけなのかもしれない。



 

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