タロットREIKOのハワイアン・エッセイ

南の島を彷彿とさせるのは、どんなシーンでしょうか? ハワイ在住18年目のタロットREIKOが感じたハワイの香りを、爽やかエッセイで、時には創作ストーリーでお届けします。読んでいる間だけでも、あなた自身があたかもハワイにいるような、トロピカル気分になっていただけら、という願いをこめて・・・。

「不思議なハワイのスピリチュアル・パワー」

3077d334.JPG ワイキキから車で約45分、オアフ島の東に位置するクアロア。この地は古代から、オアフ島では最も神聖な場所と言われ、不思議な話しが多く伝わる地。現在でも不思議な現象がよく起こっている。私はなぜかここが大好きで、よく癒されたくなるとこのクアロアにあるビーチや谷に足を運ぶのだが、きょうはこのクアロアに住む知人、タイラーの案内で、普段はあまり人が行かない谷の奥まで連れて行ってもらうことになった。
なかばジャングルのような山道を、ハイキングをしながら丘の上まで上がっていくと、突然目の前に真っ青な海が広がり、チャイナマンズ・ハットと呼ばれる帽子のような形をした島がぽつんと浮かんでいるのが見えてきた。「いやあ、気持ちいい!」と感動する私に「あのチャンなマンズ・ハットは水晶でできた島なんだよ」と衝撃的な発言をしたタイラー。このあたり一帯の霊力が強いことをまさに物語っている。「だいたい太平洋の真ん中にあるハワイは、地球のおへそなんだよ。だから地球上でいろいろな霊的パワー(霊気)が集まりやすい場所で、ここだけじゃなく、カウアイ島のある地面下には世界で一番大きな水晶の塊があり、そこに立つと不思議な体験をしたり、活力の元となるパワーを得ることができると、昔から伝えられているんだよ」という興味深い話に釘付けになってしまった。たしかに地盤に水晶があれば、水晶のエネルギーが発せられているのだから、かなりの霊力を受けるに違いない。「ねえねえ、もっとおもしろい話を聞かせてよ!」と、タイラーの腕をつかんで、その場に座らせてしまった。
「実は昔からこのクアロアのあたりで、開発や工事をしようとすると、海の水位が急に増して洪水になることがしょっちゅうなんだ。今でもそうだよ。これはおそらくここに住む霊が、自分たちの土地を荒らされたくなくて、水害を起こしてるとみんな思ってるんだ」とタイラー。「へえ、そうなの。で、あなたは自分の目でも、このあたりで起きた不思議なことをいろいろと体験したことがあるの?」と聞くと、自慢そうに「もちろん!」という答えが返ってきた。「このあたり一体、夜になるとね、かなり真っ暗になるんだけど、誰もいないのに、誰かが歌をくちずさんでいたり、影が走ったりなんかはしょっちゅうだよ!」。思わず無口になった私に「このあいだなんか、夜中に家の窓から外を見ていたらさ、海の上をハワイアンの髪の毛の長い男が歩いてるんだよ! もちろん足には何もつけてないし、まさに海の上をスッーと滑るように歩いてたんだ。あれにはちょっとたまげたけどね」とタイラー。「うわっ! それってすごい」と驚く私に「だって俺にはハワイアンの血が入ってるんだぜ。こういう体験は子供のときからしているし、俺の母親もよく『ほら、あそこにお化けがいる!』なんて平気で言ってたもんだよ。見えないっていうと、自分の目に指を当てて、それからその指を俺のまぶたの上に置くんだ。そしたら俺にもそのお化けが見えるようになるってわけ、まあおまじないさ」。「それで、ほんとうにお化けが見えたわけ?」「見えたこともあったさ」と肩をすくめて笑ってみせた。
 「ハワイアンってほんとうに不思議な力をもっている人が多いわよね」というと、「実はね、昔のハワイアンのカフナ(祈祷師)は、今の時代のカフナとは比べ物にならないくらい、パワーを持ってたんだよ」とタイラー。なんでも毎年8月になると、その土地のカフナが集合して、会議を行い、地域に関する問題や領地のことで争ったりするならわしになっていたのだとか。そのとき、問題によっては大喧嘩になり、そうなるとカフナ同士が、まるでドラゴン・ボールさながらに、手から火の玉を作り出して相手に投げつけたり、身体を動かさずして、近くにあるものを投げつけたりして喧嘩をしたという。そういえば、昔フラの先生からも昔の「カフナ」は今の「カフナ」と違い、とんでもない魔力を身につけていたと聞いたことがあったので、あながち嘘ではなさそうだ。「でもそういうパワーを喧嘩に使うだけじゃなくって、本来は癒しとかほかの作業にも使うわけでしょ?」という私の質問に「そうそう、たとえばロミロミなんかにね」と答えながら、腕を揉むしぐさをしてみせた。
 ハワイには、古くから伝わるロミロミと呼ばれるマッサージ方法があり、実はこのマッサージ法も以前は誰でもできる技ではなかったのだそうだ。長年の修行を積んだのち、選ばれた者だけがロミロミ専門のカフナとして認められたのだ。このマッサージは、本来はハワイ独特のハーブを使用しながらマッサージをするのだが、中国の「気功」的なものも取り入れ、マッサージをしながら悪い部分を「気」を用いて取り除くというものだ。エネルギーに敏感な人なら、エネルギーをカフナに注入されているときに、それを感じることができる。「ロミロミ・マッサージだけではなく、ハワイにはエネルギー・ヒーリングができるヒーラーはけっこういるよ。ハワイの大きな病院でも、希望すればヒーラーによるエネルギー・ヒーリングやハーブ治療も可能なんだよ」とタイラー。ハワイならではの治療方法が今も民間に伝わり、病院でも行われているというのは、文化継承の意味でもとても喜ばしいことだと思う。
 「でもね、なんで今の時代の人間には、昔のカフナのようなパワーがないと思う?」とタイラー。「さあ、修行できる人が少なくなったからかしら」と言う私に、「それだけじゃなくてね、みんな物質的にも恵まれてきて、欲や自我が出てきてしまって、人のためにパワーを使うというよりは、自分のため、お金のためになってきてしまったから、そういうパワーを神様がもう、お授けにならなくなったんだよ」とタイラー。たしかに最近、日本でもスピリチュアルな物事は、ビジネスとして立派に成立し、ある意味では人を助けるより惑わすことをしている場合も多い。目の前に限りなく広がる太平洋を見つめながら、タイラーはぽつんと言った。「忘れちゃいけないよね、感謝の気持ちと人への優しさ。これって俺らハワイアンの文化だし、世界中の人にもそういう気持ちを持ってほしいよ。そういう気持ちが持ててこそ、はじめてスピリチュアルについて語れるんだからさ」。

思い出は「ココナッツ・シュリンプ」の香り

2765293b.jpg 朝目覚めたら、雲ひとつない快晴。なぜか今までめったに出かけたことのない、オアフ島の西の端、マカハ地区とカエナ岬まで、行ってみたくなった。マカハといえば、日本の相撲界で頑張ったKONISHIKIや武蔵丸の出身地よりまだ西。そしてカエナ岬は死者の魂が出入りするスピリチュアルな場所として有名な場所であり、その先にはもう続く道がないという、オアフ島の最西端。
 車を飛ばして西へ行けば行くほど、オアフ島の風景はずいぶんと変り、ホノルルの街の喧騒とは違った田舎っぽい景色が続く。時おり車を止めて、道端の草花や蝶、ビーチなどの写真を撮影しながら進むうちに、カエナ岬のビーチにまで辿りついた。
 ビーチに足を踏み入れると、平日の午前中ということもあって人影がなく、ライフガードのお兄さんぐらいしか目に入らない。目の前に広がる青い海に心を洗われる思いで深呼吸をしながらふと足元を見ると、大きな足跡が砂にくっきりとついている。その足跡の先をたどっていくと、波打ち際に座る一人の男性の姿があった。なんとなく孤独そうで、それでいて波が打ち寄せるのを楽しんでいるかに見える彼の姿をカメラに収めていると、その気配に気付いた男性が「何やってるの?」と声をかけてきた。
その波打ち際の男性、ボブはハワイに10年住んでいるという陽気なニューヨーカーだった。現在は、アルコールや薬物中毒患者のトリートメント施設でカウンセラーをしているという彼は、自分がハワイに来た行きさつや、大好きだったお祖父さんに9歳の頃に死に別れて心がはり裂けそうになった話、それ以来続いたいろいろな障害や苦労などをぽつりぽつりと、おもしろおかしく語って聞かせてくれた。でも明るくふるまおうとすればするほど、彼の胸には孤独で哀しい過去がいっぱいつまっているように感じずにはいられなかった。
 「ハワイの自然は大好き。でもハワイにいる間中、毎日が学びで毎日が試練で毎日が苦しみでもあったんだ」というボブ。それでも我慢して、頑張って、努力してきた甲斐があって、大きな会社に就職が決まり、そのトレーニングのためにあと数日でハワイを後にするという。「あなたなら、きっと頑張れて、成功するわよ!世界を股にかけて走りまわる人になるわ!」というと、「そうなりたいと思う。でもきっとハワイのこの空気、自然がいつまでも心に焼き付いて消えることはないだろうなあ。去るとなるとやっぱり、寂しいんだよ。僕にとっては修行の場だったハワイだけど、やはり人生の転機を与えてくれたし、忘れられない思い出がいっぱいあるよ。だからきょうは、ハワイの海の音をたっぷり聞いて、一生この音や匂いを忘れないようにしようと思うんだ」とボブ。
 しばらく海を見つめながら感傷に浸っているかのようだった彼がおもむろに、「あの、お願いがあるんだけど」と話かけてきた。「あそこにランチ・ワゴンが来てるだろ。あそこですっごくおいしい『ココナッツ・シュリンプ』を売ってるんだ。僕の大好物!ココナッツの実を細かく裂いたものを、パン粉の代わりに衣に使って、から揚げにしてるんだけど。あれを一緒に食べてくれないかな?ハワイで最後に過ごしたビーチでの思い出に、君といっしょに『ココナッツ・シュリンプ』が食べたんだ!」「あら、そんなのお安い御用よ!」と私は立ち上がって、ランチ・ワゴンに「ココナッツ・シュリンプ」を買いに行った。 
紙皿いっぱいに盛られた揚げたてのアツアツのそれを持ってボブの横に戻り、ふたりで並んで海を見ながらそのご馳走をほうばった。ぷりぷりとしたエビの旨みとココナッツの甘みが口の中でブレンドされ、絶妙な味を作りだし「おいしい!」と思わず叫んだ私。そんな私ににっこりと暖かい微笑みを返しながら「このココナッツの香りとハワイの海の美しさ、これから何かあった時に必ずこの日のことを思い出すよ。そしたら辛くてもきっと頑張れる。僕のハワイでの最後の思い出作りの中に、君が登場してくれたことも、きっと神様からのプレゼントだろうね」と、センチメンタルに振舞っておきながら、無理やり「ココナッツ・シュリンプ」を私の口の中に押し込んだ。「わっ〜!」と驚いて、思わず彼を突き飛ばしながら笑い転げた私。同じく私の横で笑い転げていたボブが海に向かって叫んだ。「忘れないよ!このココナッツの香りも海の香りも、君のことも!ありがと〜!」と。その後で私を振り返ったボブの目には、うっすらと涙が光っていたようだった…。

ノスタルジックな街『ヒロ』は、アロハな香り

223b8455.JPG 実に12年ぶりに訪れたハワイ島ヒロの街。以前は存在しなかった大型ショッピングセンターがいくつも建設され、やはり12年の歳月の流れを感じさせられる風景があるものの、ダウンタウンは昔ながらのノスタルジックな佇まいのまま。快晴に恵まれた滞在期間中、松の木越しに見える富士山ならぬ、ヤシの木越しに見える雪をかぶったマウナケア山が綺麗に見え、私の久しぶりの訪問を歓迎してくれているかのようだった。
 水曜の朝、ダウンタウンで早朝から開催される「ファーマーズ・マーケット」の朝市に出かけてみた。たくさんの屋台の上に、新鮮な野菜が並んでいる。中にはゼンマイや白菜、ごぼうなどの日本野菜もある。私たち日本人にとっては珍しいカカオの実や、ランブータンというライチのようなフルーツなどを見ていると「日本から来たの? みかん食べる?」と日系人風のおじいさんが、突然冬みかんを差し出してくれた。きょとんとしている私に、こんどはその後ろかやって来たおばあさんが「飴食べる?」と飴を差し出した。ヒロの人たちって、知らない人にでもこうやって簡単に声をかけてきては、物を与えてくれるのだろうか? でもこのみかんと飴がきっかけで、私はこのふたりとしばしの時間を過ごすことになった。
 みかんをくれたロナルドさんは、沖縄日系2世の90歳。その年齢には見えないほど、元気でかくしゃくとしている。そして飴をくれたおばあさんはやはり沖縄系で84歳のヨシエさん。ふたりはヒロ沖縄会のお友達で、よく一緒に早朝のマーケットにやって来る。私がホノルル在住だけど、もともと日本からだと知った彼らは「ちょっとお茶でもしませんか?」と誘ってくれ、「ハワイアン・スタイル」というコーヒーショップに入ることにした。
 そのコーヒーショップで「コーヒーを3つください」と注文すると、ハワイアンのおじさんが、てんでバラバラのサイズの紙コップを3つ差し出しながら「そこにあるポットから好きなだけ入れてくれ」と言った。「おじさん、コップの大きさが違うよ」と尋ねると、「そんなこと気にしてないさ」とニヤッと笑った。なんともざっくばらんなハワイアン・スタイル。まさに店名のとおりだ。「いくらかしら?」「えっと、3個だから$3!」と消費税がつくこともなく、これまたおおざっぱ。なんだか嬉しくなってしまった。
 テーブルに腰をかけて待っていたロナルドさんとヨシエさんのもとにコーヒーを運んであげると、ふたりは待ってましたとばかり、昔話を始めた。ロナルドさんは若い頃、さとうきび畑で労働者をしていて、かなりの苦労を積んだ末、自分で土地を買ってさとうきび園を作り、ビジネスに成功したのだとか。今は息子にその経営をまかせて隠居生活を楽しんでいる。一方ヨシエさんは60年前に沖縄からヒロに嫁に来たものの、「どうしてこんなところに来たのかしら?」と、知り合いがひとりもいない街で、寂しい思いをしたのだそうだ。しばし彼らの思い出話を聞くうちに「これから私の家に来ないかい?」とロナルドさんが自宅に招待してくれることになった。
 ヨシエさんと一緒にロナルドさんの運転でヒロの街外れにある彼の家に出かけた。大きな敷地には、みかんの木をはじめ、マンゴ、パパイヤ、パイナップル、バナナ、タロ芋などあらゆる野菜や果物が植えられていて、これを全部ロナルドさんがひとりで世話しているというから驚きである。自宅ではやはり沖縄系の彼の奥さん、ハナエさんが大歓迎をしてくださった。自宅で取れたフルーツはもちろんのこと、手作りのお饅頭やケーキまで登場し、「たんと食べて帰ってね!」とテーブルの上は食べ物で覆い尽くされてしまった。会ったばかりの人間をこれほど暖かく迎えてくれる人に、今まで私は出会ったことがない。
 歓談しながら食事をしていると、「ロナルドさん、いただきますよお〜」と庭から誰かが声をかけてきた。外を見ると3人の老婆が立っていた。「お好きなだけどうぞ」とロナルドさん。「いったい何なのかしら?」と不思議そうに聞く私に「庭にできたみかんを取りに来たんだよ。いっぱいあるからの」。「みんなこうやって勝手に取りに来るんですか?」「だって、ふたりだけじゃ食べきれんじゃろう。自分たちが必要なだけ取ったら、あとは欲しい人に分けてあげるのが、ハワイのスタイルなんじゃよ」と語るロナルドさんの横で、妻のハナエさんも微笑みながらうなずいていた。「ここは昔からそう、今もそうよ、取れたものは自分だけでひとりじめせずに、みんなで分け合うの」とヨシエさん。最近、特に日本では失われつつある、古き良き時代の風習がこのヒロには今も残っているのだ。
 親切にもてなしてくれたロナルドさんたちにお別れをする時間が来た。ほんの数時間一緒にいただけだったが、彼も奥さんもそしてヨシエさんもみんな「知り合ったばかりだけど、なんだかとても寂しいわ。またきっと来るのよ。もう友達なんだからね」と、それぞれが固く抱きしめてくれた。そして私の手には持ちきれないほどのみかんやお饅頭などのお土産でいっぱいになっていた。
 ヒロからホノルルに戻って1週間後、郵便受けを開けると1通の手紙がヒラリと手に落ちた。差出人を見ると、なんとヒロのロナルドさん。孫にもらったというデジタルカメラで写したあの日の集合写真が同封されていた。みんなの満面の笑顔が写った写真からは、暖かい思い出と共に、最高のアロハの香りが漂ってきた。
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