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立坑櫓のメンテナンス・・・・・・・前回はケージ交換の話でしたが、
今回はそれに似たような話で、ロープの交換の話です。






グラフィックス1


②ロープの交換

近代のケーペ巻き立坑櫓には、「メインロープ」「テールロープ」と言う物が備わっています。
先述のケージの上に付いていて、ケージを引き上げ・引き下ろしの役目を持つのがメインロープ。
ケージの下に付いていて、ケージ運行のバランスを保つ「重り」となるのがテールロープです。

(超重要部品です。今後テストに出ますのでよく覚えておきましょう)

図の赤い線がメインロープ
青い線がテールロープです。


そんなメインロープとテールロープは、毎日高速で巻揚げられたり巻き下ろされたりしていたので、
立坑のパーツの中でも一番と言っていいほどに摩耗の激しいパーツでもありました。


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ピンボケしていて申し訳ないのですが、
住友赤平炭鉱で保存されている各種ロープです。

1番右の太いロープがメインロープの一部、
1番左の平たい塊がテールロープの一部です。
実際にはこれが何百mも続いており、総重量は何トン単位になりました。







前回の記事でもチラっと話しましたが、
1本何億円もする特殊なロープでケージと同じく、これも特注品です。

ですが、ケージと違ってロープには・・・・・・恐らく予備が無いと思われます。
自分の調べが足りない可能性もありますが、何百mにもなるロープに予備があると聞いた事はありませんし、そもそもケージなら予備を作るのも容易いでしょうが、1本何億円のロープを作っておいて予備として持つのは色々と不都合がありそうです。

摩耗していけば、ロープですからいつか千切れてしまいます。
言ってしまえばエレベーターのロープのような物ですから、それはもう重要なパーツです。
ケージ運行中にこの2つの、どちらかひとつでも切れてしまった場合、
大事故は免れません。


また予備がないので、立坑の操業停止がケージの故障の時より長引きます。
前回の記事でも話しましたが、立坑が止まる期間が長ければ会社は青ざめていくのです。





なので、ロープは毎日しっかり点検されました。
立坑の巻揚機をわざわざ低速で回し、目視でロープに痛みが無いかどうが点検する時間があったくらいですから、相当な念の入れようだったのでしょう。油も差して、点検して・・・・・・まぁ、それでもたまぁに千切れたのですが、それはまぁ立坑の運転を間違えた結果だったりするので、その話は置いておきましょう。





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メインロープが痛んで来たなぁ!と思ったら、メーカーにロープを発注する・・・・・と思います。

それから交換作業の日程を決めて、交換をする訳ですが、その方法は・・・・・・実はよく知りません。
取り付け方法は知っているんですが、交換となるとまた話が違ってきますよねぇ・・・・・・

””躍進派にとって基礎知識みたいなモンだ””って前回言ってたじゃないか!って感じですが、
大体分かるんだけど、細かく突き詰めてみると案外分かっていない例のひとつです。
資料もないから、、、仕方ない・・・・・・・





今回は随分と曖昧な解説になってしまいますが、その点を予めご承知ください。
以下の大まかな流れは、ロープ取り付けやケージ交換から導き出した
あくまで「私の予想」です。


今回はメインロープを交換すると言う設定で行きましょう。




・ケージの固定
前回も説明しているので多くは語りません。ちゃちゃっと固定しちゃいましょう。
ただし、ケージを固定するのは地上付近、立坑の坑口より数m下だったのではないかと思います。

・ロープを取り外す
前回も説明していますが、今回はメインロープだけ取り外します。
メインロープを・・・・・・たぶんガイド槽に固定してケージから取り外します。




・ロープを回収する
ここからが問題で、各立坑によって回収方法は様々だったようです。




☆住友奔別や住友赤平の場合
ロープを取り付けするときに使う、アームの先端に滑車の付いた機械がありました。
たぶんこれを使って、ロープの回収もやっていたのではないかと思いますが、真相は不明です。
(実はこの機械、似たようなものが羽幌炭鉱に現存しています)

ある程度ロープを回収したら、今度は地下に固定したケージからもメインロープの連結を開放します。ナン百mもあるロープ=何トンもあるロープには物凄い力が掛かっているので、回収時に暴れる可能性があります。そのため、地下で連結を開放したメインロープに細いロープを取り付けて回収していき、動きを制御していた・・・・・んじゃないかなぁと思います。

例(住友奔別?、住友赤平、羽幌)




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☆北炭幌内やその他の炭鉱の場合

北炭幌内は後日取り付けだったようですが、立坑櫓にロープ回収用の小型滑車が取り付けられています。地上にウィンチか小型巻揚げ機を設置する事で、後はその滑車を使って、簡単にロープの巻取り&回収が可能です。詳細は不明ですが、大部分の立坑櫓がこの方法を使って回収してい可能性があります。


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青い丸の中にある、小さい滑車がそれです。


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北炭幌内炭鉱の布引立坑には、
ロープ取り換えに使っていたと思われるウィンチが、
巻揚げ機室の真向かいに放置されています。








また、三井砂川・三井芦別の立坑櫓では立坑櫓に装備した小型滑車でスキップの取り換えを補助していたらしく、その小型滑車を使ってロープの交換もやっていた可能性が十分に考えられます。


・新しいロープを搬入する

ロープを回収した際、その終端に細いロープを取り付けたのではないか?と先程書きましたが、その細いロープの先に重りを取り付けて、今度はそれを立坑内部にゆっくり降ろしていきます。細いロープがある程度降下したら、細いロープの地上側に新しいメインロープを取り付けてゆっくりと地下へ降ろしていく・・・・・・・つまり、細いロープにメインロープの先導をさせる訳です。

住友赤平の場合は、まず細いロープの先導で巻揚げ機(ケーペドラム)にメインロープを巻き付け、
ヘッドシーブを経由して立坑内部へロープを降ろしていたようです。
幌内はさっきの滑車を使ってやっていたんだと思います(詳しくは分からん!資料が無いんじゃ!)



・ロープを連結
ロープをケージに連結して、作業終了です。
メインロープの交換はこんな感じですが、テールロープの交換は、、、、
たぶん一度ケージを外に出す必要があったんじゃないかと思います。
考えただけでもクッソめんどくさそうです。






ロープの交換手順は以上のような流れになった?と思います。
全然自信がないのですが、まぁ今後正しい資料が見つかって、
上記の内容が間違っているようなら全部横線を引く事になるでしょう。










あと、余談ですが、
住友奔別・住友赤平の場合、回収の時は建物の中を通して回収していました。
地下の先に、ロープ回収のドラムがあったのですが、それが今でも残っています。

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住友奔別の場合、スキップ巻き側(ブラウンボベリ)の建物に残っている木のドラムが、
なんかそれっぽいような気がするんですが、詳細は不明です。
そもそもなんで屋根の上にドラムがあるのか、、、(苦笑い)


立坑にはロープ以外に、電気関係のケーブルなどもありましたので、
それの回収用だったかも知れません。


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住友赤平の場合は道路の真横に残っているんですが・・・・・・
木で出来たドラムは長年の年月によって崩壊し、ドラムの中心だった鉄部品だけが残っています。

部品のすぐ上に小さい四角の穴がありますが、
たぶんここからロープを出し入れしていたのではないかと思います。

いや、けどそんなところまで届くような直径の木製ドラムだったのか??
うーん、W A K A R A N U !


写真小さくてごめんね!
意識して撮った事なかったから!






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余談その2


実はメインロープの交換も、ケージ同様にめちゃめちゃ時間の掛かる作業でした。
交換中はもちろん立坑の操業を止める必要があるので、会社としては損害になります。

そんな交換作業をどれだけ早く終わらせれるか
「三井芦別炭鉱」はその研究を念入りに続けていたようで、
三井の炭鉱で発行されていた「三井ダイジェスト」と言う技術冊子には、
その恐ろしいまでの情熱と成果が事細かに記録されています。









で、






三井芦別炭鉱には最新式の立坑 「主立坑」 があったのですが、
このメインロープ交換作業は当初

所要工数147工数

交換所要時間49時間45分
 が必要でした。


ロープの交換に
丸2日掛かったんですよ!


きっと寝る間も惜しんで作業していたんでしょうが、
作業に関わった人たちからしてみれば地獄だった事でしょうねぇ・・・・・・

しかも、このロープの交換は特殊公休・・・・・・山神祭の日や正月の連休を利用して行われました。
作業の関わった人たちは祭りにも参加できず、正月も家で過ごせないのです!
あゝ、なんと悲しい事か。




三井芦別のグループは、この作業を出来るだけ短くするために
その全体的な作業を徹底的に研究・改善していったのです。


まず、工数をじゃんじゃん減らし、それでも安全な作業が出来るようなく工夫・保安対策を行いました。
エラーを排除するための事前練習や、工具の改造をじゃんじゃん行い、工法を細かいステップに分け、
それぞれのシーンに於いてどんな省略が出来るかを研究したと言います。




















その結果













↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓






昭和47年8月



所要工数67工数へ減!


交換所要時間 21時間20分を達成!


今まで2日掛かっていたロープ交換を、なんと1日でやってのけたのです。
これで特殊公休でなくとも、普通公休での交換が可能となりました。
努力のたまものと言いますか、大人の真剣な運動会と言いますか・・・・・・
とにかくまぁ、総力の発揮と言うのは凄いものだなぁと思います。


実は、ここに至るまでに7回ほどチャレンジをしており、1回でどーんと成し遂げた訳ではありません。
芦別は割と交換スパンが短かったようで、1年半に1回ペースで交換していたようで、
その間、従業員はどれだけ作業を短く出来るか必死に、地道に考えていたようですね。
全く、素晴らしい努力の結晶です。

その成果が認められ、
第6回目の23時間交換達成時には「全炭技改善賞」と言う、
炭鉱技術の功績を称える賞を受賞しています。



最終的には18時間での交換を目指していたようですが、結果どうなったのかは不明です。






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余談その3

話が少し逸れますが、
なぜこのような、立坑櫓のメンテナンス方法が判明しつつあるのか、
と言うお話もしておこうかと思います。


立坑櫓という建築物そのものが、
その土地の地盤、立坑の深さ、炭鉱の事情、気候、性能などなど
全ての項目を吟味した結果産まれた「特注品」の建築物なので、
それぞれの立坑櫓に違いや個性があります。

で、そのそれぞれの立坑櫓でメンテナンス方法も違ってくるので、
各々の立坑櫓には、立坑櫓を建設した会社から「~~取り換え方法概要」とか、
「~~交換工事説明書」と言うような物が渡されていました。

板谷氏はこの手の書類を「メンテナンスブック」と呼んでいるようなので、
私もそれに習って、その呼称を使わせて頂きましょう。


当時の写真や、立坑櫓の構造を見ればある程度整備の方法が分かるのですが、
完璧にすべての手順を知りたい!と言う事であれば、虎の子「メンテナンスブック」が欠かせません。
メンテナンスブックは。。。そう簡単に見つかるモノでも無いので難儀しています。


今の所、私が発見した事があるものだと、住友赤平第一立坑の「ロープ&ケージを1から取り付ける作業のメンテナンスブック(つまり完成した直後の取り付け作業手順書)」だけですが、なぜか板谷氏は住友奔別のメインロープやケージの交換方法を知っています・・・・・・メンテナンスブックを持ってはいないそうですが、それに類するものをシコタマ読んだようで、その知識に感服です。いずれじ~っくり教えて貰いたいものですねぇ・・・・・










立坑櫓のメンテナンス方法まで知っている板谷氏
そしてある程度メンテナンス方法を想像していた私でしたが、
最近になって「新たな立坑櫓のメンテナンス」が発見されました。

2人の盲点でもあったそのメンテナンスとは?一体何なのか、
次回ご紹介したいと思います・・・・・・・。


次回に続く






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