2007年05月24日
「犯罪不安社会」

11(新書3) 浜井浩一、芹沢一也 著/光文社 刊
(本年度読了本記録からあらたに分類内に『新書』を追加することとしました)
国内における犯罪件数はむしろ以前よりも減少しているのに、なぜかマスコミでは「凶悪犯罪の増加がいちじるしい」などと論評がとびかっているし、また国民の間でも体感治安の悪化が語られている。そんな現状を統計学と社会学の両面からそれぞれアプローチすることで、政治の変化に直結しかねない世論を安易に醸成させないために、風評や印象に流されずに沈思黙考する姿勢を説いた一冊。いまだ為政者の煽りに流されやすいこの国において、この問題は実に喫急の課題であると思う。私もあまり「最近の世情は悪くなるばっかりだよね」と口にしたり観念として固執したりしないように気を付けようと思う。ところで著者の一人である浜井氏は刑務所の管理責任者として勤務していた時期があるとのことで、老人や障害者といった社会からはみださるを得なかったハンディを持つ受刑者が多かったと経験談を述べています。そこから芹沢氏が主張する“国民同士が監視しあう息苦しい社会への危険な変化”への動線が繋がるわけですね。実際に社会にとって害をおよぼす人物だけではなく、害をおよぼしそうな人物が刑務所に送り込まれている実態がほのみえるそのくだりは、私たちの社会の視野狭窄が明らかで思わず暗澹としてしまいます。