日々是ママゴト

普段の生活と物語の中を、行ったり来たり。 不思議な話を渉猟中。

豚の島の女王


前回の記事でとりあげた「奇妙な孤島の物語」、この本を読んで、島って本当に奇妙な物語の舞台にふさわしい場所だよなあと思った。

そんな島を舞台に繰り広げられる、奇妙で不思議な小説をいくつか思い出してみた。

少し、自分で選んだ島アンソロジーの楽しさに浸ってみたい。

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「奇妙な孤島の物語」に、フロレアナ島についての記述がある。
ワグナー男爵夫人と名乗る女が、この島に楽園を築こうとして三人の愛人を引き連れて移住してきた。
この島の住人はすでに移住していた原始生活推進派の二人の男女(それぞれ故郷に妻と夫がいる)ともう一家族だけ。

一人死に二人死に、ある者は行方不明となり、「そして誰もいなくなった」形式のミステリーが展開され、いまだに真相は謎のままという実際に起きた事件である。


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このワグナー男爵夫人の一件を冒頭にもってきた小説がある。
こんな事件がありましたと数行書いて、その後に「しかしワグナー男爵夫人の一件はポルコジト島、一名「豚の島」として知られている島で発見された白骨をめぐる話に比べれば、凡庸と見なさざるを得ないだろう。」と続けるこの小説のタイトルは、「豚の島の女王」、ジェラルド・カーシュの短篇小説だ。


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嵐にあって難破した船と無人島、奇妙な孤島の物語にうってつけの題材だ。
豚の島と呼ばれる無人島に打ち上げられて助かったのは四人だけ。
サーカス団員の四人だけだった。

手足のないラルエットと二人の踊る小人、それに世界で一番醜い力の強い大男。
ラルエットは唯一の女性で美しく聡明。
小人は凶暴性を秘めている。
巨人は醜いが心は優しい。

手も足もないラルエットの頭脳によって四人の統率がとられていたのだが、小人の凶暴性と愚かさによって悲劇が訪れる、という話。

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奇妙な孤島の物語

この地球上にはいったい幾つの島があるのだろう。

絶海の孤島、この言葉の持つ魔力と言ったら。
そしてそこが無人島であるよりも、人間が配置されることによって紡ぎだされる物語に強く惹きつけられる。


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「奇妙な孤島の物語」、このタイトルだけですでに読む気満々だが、その後に「私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島」と続けばなおのこと。
作者ユーディット・シャランスキーが文章を書き、地図を描き、装幀もしたというこの青い本は不思議な魅力に満ちている。

実在する50の島について、右側のページが文章、左側のページが島の地図という構成になっている。
その文章は実話に基づいてはいるが、本当に起きたことなのかは確認できないとある。


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大西洋、イギリスに近い島、セント・キルダには19軒の家からなる集落がある。
この村では生まれた赤ん坊のほとんどが生後間もなく死んでいく。
やれ島の食べ物が悪い、やれ近親婚のせいだ、はたまた屋根に使われている亜鉛のせいだ等々、原因はいろいろ取りざたされているが結局よくわからないままだ。
文章は女がひとり島に戻る船のデッキに立っている記述で終わる。
この島ではない場所で子供を産んで難を避け、赤ん坊と一緒に島に還るところなのだと。


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インド洋、トロムラン島。
ある船が座礁してこの島に乗り上げて大破した。
生き延びた人々は船の残骸で一艘の船を造り、ぎゅうぎゅう詰めの122人が乗り込んで島を脱出した。
60人の奴隷たちは残された。
15年経って女が7人と赤ん坊が1人残った時、通りかかった船によって島から救い出された。


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太平洋のど真ん中、ラパ・イティ島。
小さな男の子が頻繁に見る夢。
それはまったく知らない言語を誰かから教わっているというもの。
やがて大人になってその言語がポリネシアの孤島の言葉だとわかる。
その言葉を話す女と出会い二人でその島、ラパ・イティ島へ移り住んだ。

これもまた不思議な話、本当の話なのか話に尾ひれがついたのか。


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太平洋のピンゲラプ島。
島民の10%が全色盲者。


こんな調子で奇妙な孤島の物語が50編続く。
訳者があとがきでこう述べている。

「叙述の淡々とした感じ、謎を謎のままに、余韻を残してぽんと突き放してしまう感じが、荒涼とした海の中に浮かぶ島の孤影と呼応しているように思う」

まことに、1ページ毎にリドルストーリーを読んでいるような、そんな良書でした。





香水は奥が深い

香水の調合の仕方は複雑だといいますね。
奥深い香りを出すために何を混ぜるのか、調合師の腕の見せ所でしょう。

単品だと耐えられないような臭い物体も、アクセント的に調合して素晴らしい香りの一助にする。
たとえば大便の匂い成分が香水に調合されているのはよく聞く話です。ほんとか?

川瀬七緒の「メビウスの守護者」を読みました。
この法医昆虫学捜査官シリーズは第一作目から読んでいますが、やはり面白いですね。
サクサク読める、読みやすい所も魅力でしょうか。

今作には香水調合師が登場します。

主人公の昆虫学者が大活躍なのはいつも通り、顔中蝿にたかられて真っ黒状態でもどうってことない昆虫愛の女性ですよ。
蛆虫の大活躍ぶりも毎度のこと。

今回は読んでいて、犯人の見当がついてしまいました。
犯行の動機も、多分こういうことだろうなあと。
案外わかった人は多いんじゃないかしら。

それでも今作の犯人の動機とやったことのグロさは際立っていますね。
でも、わからんでもない、といったら身も蓋もないですが、この探究心はわからんでもない、うん。
ただし殺人は言語道断ですよ、当たり前。

ガーデニング 3354 - コピー

果物食 木食

また少し前のことですが、「マツコの知らない世界」に6年間果物だけを食べて生きている中野瑞樹さんという男性が出ていました。
果物の食べ過ぎは身体にどう影響するのか、身体にいいのか悪いのか、だれも実験したことがないから自分で試しているとかなんとか。

6年続けて今現在、気になる血糖値も正常範囲内、健康面で不安な要素はないと仰っていました。
ただ人間は塩分はどうしても必要なので、果物のたとえばスイカの皮などを糠漬けにして、そこから塩分を摂取しているのだとか。

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この御方を見ていて、ふと果物食と木食は同じようなものかなあと考えが飛躍しました。
木食修行は木の実類だけを食べる修行で、その行先は即身仏になることです。

中野さんの場合、スイカやイチゴも食べていて厳密には果物食ではないような気もします。
果物とは木に生る実のことですものね。
スイカやイチゴは畑でできるもので野菜だと思う。

ま、そういう細かい点はどうでもいいです。
中野さんは全然即身仏を目指しておられるわけでもなんでもないんですから。
でもやっぱり痩せておられましたね。頬がこけて。
皮膚が黄色いのは黄疸ではなく柑皮症のせいだそうですが。

以前にも書いたけど、即身仏というと井上靖の「考える人」が印象深い話でした。
即身仏と根は同じ考え方だと思うが、補陀落渡海という入滅法もありました。
同じ井上靖による「補陀落渡海記」も最近読んだのですが、人間くささを前面に出した話で読み応えがありました。

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水谷豊の「相棒」にも即身仏を扱った回がありました。
現代においては法に触れる行為ですし、手伝った人も罪に問われます。
「相棒」はドラマで絵空事なんだけども、実際に今、この現代においても、即身仏的な死を目指す人がいるのだろうか。
ドラマを見ている時も、「うっそー、今こんなことやる人がいるの?今、今、即身仏の話かい!」と突っ込みをいれながらでしたよ。

思想的にも昔と今では異なるし、即身仏を目指す一連の修行が並大抵なこっちゃないから、そんな人は皆無だろうとは思う。
そもそも、最後の処理の手助けなどはどうしても人に頼まざるを得ず、一人では成し遂げられないことなので、罪に問われてまで手助けをしようと思う人が、まずいないでしょうな。

鬼無鬼島

ちょっと前の話題ですが、いよいよ原発が再稼働されるというニュースがありました。
それはどこかというと、九州の川内原発だという。
「ふーん、かわうち原発ねえ、どこですか、そこは」などとつぶやいて大恥をかいたのですが、「川内」は「せんだい」と読むのだそうです。

川内原発は九州の鹿児島県の海岸近くにあるのだそうです。
ニュースで地図が表示された時、この川内原発の近くにわりと大きな島があって、お、こんな所に大きな島があるんだ、何という島なのかなあ、天草諸島かなあ、と更に大恥を重ねたのですが、事ほど左様に九州についての知識が乏しいのです。

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それはともかく調べたところ、この島は甑島列島という島だとわかりました。
甑島がまた読めない。
九州は知らないことだらけだなあ、私にとって未知の世界だなあ、とても興味深い地であります。

甑島はこしき島と読むのだそうで、なんとなーく聞いたことがある気はします。

さて甑島とはどんな島だろうと興味がわいたので調べてみると、出てくるのが妙な宗教の噂なんですな、これが。

その島の一部の集落にだけ、隠れキリシタンから派生して土着化し伝えられてきた宗教があって、その宗教のそれはそれは恐ろしいしきたりが、本当にあったことのようにまことしやかに噂されているのです。

まだ死んでいないもうすぐ死にそうな人のアレをアレするだとか、ネット上には不穏な噂話が踊っている。
ほんとかね?
この現代社会においてそんなことがまかり通るわけがない、とは思いつつ、閉鎖集落ではいまだに何かが行われている可能性が無きにしも非ず・・・かもしれない・・・と頭の中で妄想が広がる中、その噂話の出所だと言われる小説があるのを知るのです。

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堀田善衛の「鬼無鬼島」
これは読まざるを得ないでしょう、ここまできたら。

で、読み終えて。
恐ろしい恐怖小説をつい期待してしまいましたが、やはり純文学作品だと思います。

死にそうな人のアレをアレするという儀式の真偽も作中に出てきます。
というか、島の若者である主人公も、儀式を執行する役目のサカヤといわれる人物も、そのことで悩み続ける話、といってもいいのかな。

しかし噂話というのは怖いですね。
甑島のその集落に生きる現代の人々も、いい迷惑でしょうな。
この集落の家々がやけに高いブロック塀に囲まれているのは、中でアレをアレする儀式が行われるからだとか、噂に尾ひれがついているようだけど、半端なく強い海風から守るための塀でしょうよ、単純に。
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