座考

気になるアレやコレや、ちょっと座って考えてみよう

2014年02月

年齢との関係でいえば、高齢者ほどピロリ菌への感染率が高くなっています。20歳までの世代では1割にも満たない感染率が、60歳を超えると8割前後にまで急上昇するのです。これは、ピロリ菌の感染源と関係があります。 主な感染源は井戸水や河川ですが、衛生環境に問題があると、それらに排便などが混入する場合があります。排便の中にピロリ菌が混じることもあり、そういった井戸水などを飲むと感染しやすくなります。上下水道の衛生環境は、時代が下るにしたがって整備されましたが、その点で高齢者はピロリ菌の感染率(保菌率)が高いのです。そして大都市ほど上下水道の整備も早く、郊外では遅れて整備されたため、出身地域によっては60歳より下の世代でも高い感染率があります。 日本国内では上記の通りですが、各国の状況によっても異なります。上下水道が整備されている先進国ほど日本に近い年齢構成ですが、発展途上国などは比較的低い年齢層でもピロリ菌感染率は高くなっています。 男女比は、特段の違いはないと思われますが、はっきりとはしていません。男女による感染率に差はないとする論文があるものの、男性の方が検査による陽性の割合が高かったとするデータもあるためです。とはいえ、そのデータも男女比は6対4程度と、特段の差はありませんでした。

通常、胃の中は胃液によってpH1~2程度の強い酸性に保たれています。pH6~7程度がピロリ菌の活動に適していますが、 このような状況では通常の菌は生きられません。しかし、そのような環境下でもピロリ菌は棲み続けていられるのです。 これには、2つの理由があります。 1つ目は、表層粘液の中で活動しているためです。胃粘膜とは、いわゆる胃の壁で、常時胃液と接触しています。胃液に溶かされないよう胃粘膜が分泌するのが、表層粘液です。表層粘液中には、pH8.2程度と弱いアルカリ性である重曹も含まれており、胃液をある程度中和し、胃を守る働きがあります。ただし、これだけではピロリ菌は棲み続けられません。ある程度弱まったものの、酸性であること自体は変わらないためです。それを解消するのが2つ目の理由です。 2つ目は、ピロリ菌自体がバリアを張っているためです。ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を生み出します。この酵素は、胃の中の尿素を分解する作用があり、アンモニアを生成します。アンモニアは、pH11程度と強いアルカリ性を持っており、胃液の酸性を中和する作用があります。 つまり、アンモニアというバリアを自らの周囲に張って、強い酸性の胃液から身を守っているのです。 以上2点が、ピロリ菌が胃液で死なない理由です。

ピロリ菌の除菌が完了した後で、再度感染することは非常にまれです。しかしながら、除菌後の検査で再感染が認められる場合もあります。ただし「そもそも除菌が完了していなかった」ケースがほとんどです。 ピロリ菌の除菌治療は、最終検査で陰性判定が出ると完了です。ところが、検査によって陰性判定が出たとしても、必ずしもピロリ菌が除去されたとは言い切れません。なぜなら、ピロリ菌が弱りつつも生き残っているような状況では、検査で偽の陰性判定が出てしまう場合があるためです。この場合、弱ったピロリ菌に対して追加の投薬が行われることもないため、ピロリ菌は再度力を回復させ、活発に動き回ることとなります。 除菌後1ヶ月以内に検査を行うと、このようなケースに陥る可能性が高いのです。このため、最終検査は通常、投薬期間が終了してから約3ヶ月後に行われます。3ヶ月ほどのタイムラグを設けることにより、たとえ上記のパターンであったとしても、ピロリ菌が復活しだしているため、陽性判定が出やすくなります。 上記の「除菌が完了していなかった」ケース以外に、本当の再感染もまれにあります。感染源は未だはっきりと解明されてはいませんが、経口感染が主な原因です。ピロリ菌保持者と同じコップを使用しての回し飲みや、キスなどで感染するといわれています。 しかし、その確率は2%以下という研究結果もありますので、気にし過ぎることはないでしょう。

ピロリ菌の除菌中、アルコール(飲酒)は控えましょう。これには2つの理由がありますが、いずれも肝臓に関することです。 まず1点目は、肝臓への負担の問題です。除菌中は抗生剤を、朝と夕方の2回服用します。薬自体、肝臓にある程度の負担を強いますが、その上にアルコールが入ることにより、さらなるダメージを招きます。 そして2点目は、代謝の問題です。アルコールは体内で、アセトアルデヒドという物質に分解されます。これは一般的に二日酔いの原因と見られており、頭痛や頻脈、動悸や悪心などの症状を引き起こす、人体に有害な物質です。ただ、肝臓内にはこれをも分解してくれる、アセトアルデヒド脱水素酵素という有益な酵素があります。ところが、ピロリ菌除菌のための抗生剤は、この酵素の働きを抑制してしまうのです。このため、通常はお酒に強い人であっても、悪酔いは避けられません。 以上2点が除菌中にアルコールを避けるべき理由ですが、2点目に関しては2次除菌に用いるメトロニダゾールが問題であり、1次除菌に用いるクラリスロマイシンはアルコールに作用しません。むしろ、1次除菌の成功率が僅かながら上昇したデータもあります。 とはいえ、1点目の理由である肝臓への負担に関しては変わりません。やはり除菌中のアルコールは素直に控えるべきです。

ピロリ菌を除菌する際、副作用が発症する場合があります。投薬期間中に現れる主な症状は以下です。
  • 発熱
  • かゆみや発疹などのアレルギー反応
  • 腹痛を伴う下痢
  • 軟便
  • 食べ物に金属のような味を感じる味覚異常
また、肝機能の検査値が上昇する場合もあります。 これらの副作用は腸内の細菌バランスが崩れるために起こると考えられており、いずれも一時的なものであることが多いです。しかし、適切な対処を怠ると症状が悪化する危険性も高まります。 発熱や腹痛を伴う下痢、かゆみや発疹があらわれた場合は、服用中の薬の使用を中止してください。その後、かかりつけの医師へ相談してください。 軟便や味覚異常の場合は、服用中の薬を中止する必要はありません。投薬された分量を最後まで服用してください。ただし、副作用のさらなる悪化がみられるようならば、すぐにかかりつけの医師へ相談してください。 そして、投薬期間終了後、つまり除菌成功後に発症する副作用もあります。十二指腸液や胃液が、食道へ逆流して炎症を引き起こす逆流性食道炎です。これは、ピロリ菌の除菌によって、それまで低下していた胃液の分泌力が、正常な値に戻るために起こる一時的なものです。胃液の分泌を抑制する薬が必要な場合もありますが、ほとんどは軽微な症状であり、特段の心配は不要です。

このページのトップヘ