2010年04月26日

経済産業省「今後の繊維・ファッション産業のあり方に関する研究会」報告書の公表

土曜日に徳永が1週間ぶりに退院。私はこの週末も書類や資料作りに追われていました。

月曜日は区内企業の新プロジェクト担当者達に「ブランドコンセプト立案」についてのレクチャー。

その後新入居者ヒアリング、早くも2回目になった者がいます。初回のヒアリングで自分のやりたいことと強みについて見直しを図り、今回事業コンセプトをさらに煮詰めて提案してくれました。

区役所でTASK(台東・荒川・足立・墨田・葛飾区合同)プロジェクト推進委員会。昨年度の報告と今年度の事業内容について、各区から報告。TASKと芸大の連携は解消で、各区が必要に応じて連携申し込みをすることに。TASKものづくり大賞は参加者のモチベーションを高めるので、もっと告知して参加者を増やすべき。ハンズとのコラボは消費者や売場担当者との交流が図れて好評。など。

私からは、昨年度から足立区が加わったので、5区横断での交流ができないか提案しました。事務局の仕事が増えるのですが、人のつながりが新しいビジネスを生み出します。

戻ってすぐに、シモジマさんでデザビレ施設公開にあわせた地域連携イベントの相談。


さて、本日経済産業省から、
「今後の繊維・ファッション産業のあり方に関する研究会」報告書が公表されました。

内容としては、日本の繊維・ファッション産業については、平成19年度繊維特別対策が終了していることもあり国としては産業としての生き残りは諦めた、という印象です。前半では支援を打ち切る理由としての繊維産業の衰退ぶりがデータで明確にされています。

また、中小零細企業中心のファッション用途から、大企業中心の資材用途への転換という表現が目立ちます。

ファッションについてはデザインや感性での成長の可能性を示唆するに留まっていますが、そもそものSWOT分析による前提が甘く、一般論として語られていて、実効性のある具体策には言及されていません。(以下長くなるので注意)

繊維・ファッション産業のSWOT
<強み>←客観的ではなかったり、現場に即していなかったり・・。
【全体】
・川上・川中・川下が全てそろっている ←後段では揃う必要が無いと言っている
・巨大で質の高い国内消費市場が存在 ←購買力は著しく低下

【川上・川中】
・技術面、品質管理等では、世界トップレベル ←たしかにそうですが、中国に追いつかれている

【川下】
・個々のデザイナーの感性・能力は、世界トップレベルの評価 ←裏づけ無し
・日本市場のファッション性の豊かさや世界
一厳しいと言われる消費者に鍛えられた品質管理 ←品質管理に特化した商品が海外で支持されるかは不明

<弱み>←弱いところはよくわかっています。
【全体】
・汎用分野(定番品)では、人件費等のコスト競
争力のある新興国・途上国に対抗が困難
・国際感覚の欠如(内向きのビジネスモデル)
・複雑・多段階の流通構造、非効率な取引慣行
・工程別・素材別・地域別に細分化された業界団体

【川中】
・委託加工中心の業務形態や小さい事業者規模

【川下】
・海外での日本ファッションへの高い関心(日本
の雑誌の売れ行きがアジアで好調等)と少ない
輸出の現状とのギャップ
・ブランド力の弱さ
・欧米を中心とした特殊なビジネスモデルの存在


<機会>
【全体】
・アジア等新興国市場の拡大 ←中国市場への進出はかなり出遅れ
・新たな課題(環境問題・安全安心問題等)への対応の可能性
・情報通信技術の高度化・普及 ←日本は発信力が弱く活かせるかが課題
【川上・川中】
・産業資材分野での繊維素材・技術の適用可能性←〇
【川下】
・“クール・ジャパン”に代表される日本への関心の高まり←実は日本で騒ぐほどクールジャパンは海外で浸透していないという政府調査もあったので期待しす ぎるのは危険。


<脅威>
【全体】
・新興国による追い上げ(技術面含む)
・新興国等による低価格品の台頭(先進国企業主導のファストファッションを含む)や景気後退を発端とする需要縮小、価格下落圧力
・国内人口の減少(国内市場の縮小)
・人材の繊維産業離れ(外国人研修・技能実習生への依存)
【川中(川下)】
・産地の技術・機能の喪失、高齢化の進展
・中国等における模倣品の影響【川下も含む】

このように見ていくと、「製造業」としてのファッション分野の生き残りは難しく「アパレル(企画卸)」機能としては、海外生産を活用することで可能性がある。ということになります。
このあたりはかなり以前から「産業のグローバル化」として分かっていたことですが、国としての対策が効果を得ることができませんでした。

日本は800数十兆円の借金があると言いますが、その金額は、回りまわって消費に向かっていました。
クレジットカードのリボ払いで国民みんなが買い物をしていたような景気が、クレジット限度額を超えたときに買い物をできなくなってきた状況になってきています。

お金が借りられるうちに、将来の備えをしておけばいいのに、お金が無くなってからどうしようか、と考えているようなかんじでしょうか。


さて、この後目指すべき姿とか対策とかが続くのですが、
疲れてきたので、簡単に私の意見だけ言っておくと、

繊維・ファッション最後の支援として平成15年から中小企業自立事業が実施されて、海外進出を目指す製造業者が一気に増えたのですが、
助成金は出してもノウハウやネットワークを提供しなかったために、当時繊維業界ではがんばっていた企業でさえ海外進出に効果が出なくて脱落していきました。
この時期に「お金をかけても海外進出は難しい」という苦手意識を業界に植え付けてしまったように思います。(私がアドバイザーとして参加したのは、この海外進出が一段落した頃で、その後自立事業は国内小売へとシフトしていきます)

本来であれば、海外進出の成功事例を生み出して、そのノウハウを後続企業に還元することで、加速させることが望ましかったのですが、事業全体の効果を最大化するという戦略意識が欠けていたのかもしれません。

これは、「国は企業の営利活動に立ち入らない」という原則があるからなのですが、
むしろ(韓国では大統領が財閥系企業の営業をしたりする)アジア諸国のように、政府が企業の営利活動を直接・間接に支援するような大胆な施策が必要だったのではないかと思われます。

今さら遅いのですけど。


それから、日本の繊維ファッション産業は、感性面で伸びる余地があると言いながら、JFWは公的助成が無くなります。衰退している日本のファッション業界だけで国際競争力を確保することができるのでしょうか。