12月14日は昨年から通算6回目、今年度最後の産地見学バスツアー。
富士吉田市のお隣の西桂町の機屋がメインです。
朝9時に新宿を出発し、バスの中では産地の置かれた状況と、
ドビー、ジャカード、シャトル、レピア等の織機の基本用語について解説。
まずは、富士吉田市の富士浅間神社にお参り。
富士山の登山道の出発点になる神社で、超パワースポットと言われています。
ここでは全員で記念写真撮影も。
富士工業技術センターに移動し、五十嵐さんから産地や甲斐絹(かいき)の歴史、織物についてのレクチャー。
そして甲斐絹などの歴史的資料を拝見。
大正時代の生地見本帳には、当時の織物の営業トークが記されていて、
「今時の若者はアメリカかぶれで・・・」なんていう記述も。
このレクチャーは見学をより効果的に行うための準備となります。
工業技術センターの工場に移動し、織機を見ながら構造について説明。
すると・・1時間程前に撮影した記念写真が、織物になっています!!
このプレゼンには皆から歓声が上がりました。
※通常は、こんな極短時間で織物にはなりません。
そしていよいよ西桂の機屋見学に。
武藤株式会社天然素材で風合いこだわったストールを作っています。
もともとこの産地は絹織物のような薄地が得意ですが、
武藤さんはさらに天然繊維で、薄くて軽くて柔らかい素材を追求しています。
織物を見た後は、工場でシャトル織機を見学。
小野田染色こちらは神社の鳥居の右脇に工場があります。
その目の前(鳥居の左側)には、清冽な富士山の湧水が流れています。
この富士山の湧水(実際は地下水)を活用したかせ染が中心だそうです。
※
綛(かせ):ぐるぐると巻かれた糸の束山崎織物株式会社自家織機を持たず、企画に特化し、ネクタイやストールの多品種に対応。
説明を受けている見学者の後ろには数万本?のネクタイサンプルが・・。
様々な紡績から依頼が持ち込まれるほど、新たな糸に挑戦した素材開発が強いそうです。
今回はどの工場でも実際にオリジナル生地をオーダーするための
ロットや価格、デザイン上の制約、紋紙のことなどを説明してもらいました。
織元東邦シルクネクタイ生地が中心ではありますが、紗(しゃ)織も手がけています。
夏の和装、お坊さんの夏の袈裟や、烏帽子等にも使われる隙間があいて見える生地です。
普通に隙間を開けただけでは、糸がずれてしまうのですが、
紗織では、経糸(たていと)がクロスして、糸を締め付けるような構造になっています。
そのため、経糸を上下するソウコウが、左右にも動くのですが・・・、
説明を受けて織機をじっくり見ても仕組みがよくわかりません。
ただ、複雑な動きをしていて、織機の調整が難しいことはわかりました。
この写真の左側にも特別な仕組みがあります。
株式会社槙田商店1866年創業の老舗で、国産先染め傘地シェアではナンバーワン。
最新ジャカード織機も導入し、服地も好調です。
180cm幅の織機によるジャカード。
傘地は立体感が印象的な柄を活かす織組織の設計に注目。
傘生地は光にかざすので、極小の傷でも目立ってしまう、
だから細心の注意と繰り返しの検反が必要なのだそうです。
織機の2階部分。ジャカードの心臓部。
1階で詳細な説明。スゴイ音がしています。
本社に移動し、200年前ぐらいの海外の織物設計資料を拝見。
昔、織物工場が儲けて他所ではゴルフ会員権を買っていたような時期に
貴重な海外の資料を少しずつ集めていたそうです。
それが財産になっていて、ここの企画室を訪れると見ることができます。
そして傘の製造工程を見学。
この2年ぐらい見学が増えて、職人さんの説明も素晴らしく上手くなってきました。
そして最後は恒例の職人とクリエイター達の懇親会。
短い時間でしたが、お互いしっかり話をしてきました。
みんな名残惜しくてなかなか話が終わらず帰路は1時間遅れに。
毎回ですが、たいへん充実した産地見学となりました。
織物は機械を使っているのだから、簡単に作れると勘違いされることがあるのですが、
何万本という糸が切れずに織られるように機械を手入れして、調整して調整して
さらに美しい生地になるように何度も織組織の試行錯誤を重ねて、
微妙な色がピタリときまるように色を管理して、
僅かな傷も無いように何度も何度も検反して、
さらに後加工で風合いを加えて、できあがってきます。
そんな過程を知っていれば、
安易にオリジナル生地を求めたり、価格を下げさせたり、
納期を無理言ったりすることが理不尽なことだと思えるのですが、
機屋さん達は、理不尽な要求にも何とか努力して応えてしまうので、
(しかも苦労をみせないので)
流通やアパレル等は「生地を作るのは簡単」と勘違いしてしまいます。
私は日本のファッション業界ではテキスタイルの役割が大きいので、
デザイナー達がモノづくりの現場に尊敬と感謝の念をもってくれるようにも
工場見学を続けていきたいと思っています。
ほんとうに現場を見て、職人の熱意と創意に触れて
織物や織機の構造を知ることが、
自社製品のオリジナリティを高めることにつながります。
工場がたんにアパレルや流通等の言いなりになるのではなくて、
対等のパートナーとして、知恵やノウハウを十二分に提供する関係になることを期待しています。
結果としてブランドが確立しているところほど、そうなっているのではないでしょうか?
見学を受け入れてくれた工場の皆様、
バスツアーを主催した富士工業技術センターの五十嵐さん、皆様
とても楽しく、勉強になり、新しい出会いとテキスタイル愛をいただきました。
どうもありがとうございました。
鈴木様 すばらしいレポートありがとうございました。対等な関係でものづくりができるパートナーとの出会いということでは、ネバアランドさんたちをはじめ、少しずつ結果が出てきていてうれしい限りです。今後もそうしたパートナーシップが生まれるよう、ご指導よろしくお願いいたします。