「D0は4色」という揶揄を耳にしたことはあるだろうか。ファースト・センチュリーというD0の幕開けの時代において、ある色が不遇であったことを端的に示していた言の葉である。

その色こそが白。《花束を捧げる乙女》や《犬闘士フェンリル》の尽力、《機械竜グラシア》の奮迅の時まで、白という色は静かに静かに座すことを強いられた。

幽霊屋敷のお供に、青白遅延のフィニッシュに。白という色は徐々にその活躍範囲を広げたが、しかしそれでもなお、到達できなかった領域があった。それが軽量ビートダウンである。

華々しき赤緑、ややこじれた青に黒。各々が個性を放つビートダウンを成立させてゆく中、白は「堅守」たる色の役割をまさしく「堅守」していた。

その堅守っぷりは長きに渡って維持されており、《ブル・ショット》や《エヴァンジェリカル・エンジェル》を得てなお白のビートダウンは隆盛しなかった。スターロードはちょっと毛色が違いすぎるし。



その呪縛を放ったのがV1、「覚醒の刻」である。《聖騎士ホーリー・クレイモア》によって得た機動力、アンチカードのピンポイント運用を成立させた《白銀の衝撃》、そしてD0の攻めの難しさ、駆け引きを過去にした《忠実なる闘士フェンリル》は、ビートダウンに向くがデッキとしてまとまりきれないカードプールを1つの武器へと磨き上げるに至った。

V-1グランプリでは《B-tan博士》をタッチして優勝を飾り、2013年全最では禁呪10という最悪の燃費を誇りながらフレアロードという燃費最強の相棒と共に筑波最を制し、あの禁呪解放345レギュレーションにおいてはビートダウン唯一のアンチ《アイスドラゴン》の立場に。……まあ、これはさすがに相手が悪すぎたが。


しかし、白単ビートダウンを語るに際して重要なのは、実績よりもむしろ環境に与える影響そのものだろう。《タクティクス・グラビティ・フィールド》。白単を、そして今のD0を影で支えているといっても過言ではないベースだ。

どれほどのプレイヤーがTGFを使うか?そしてどれほどの《大巨人ウートガルザ・ロキ》《融解戦鬼灼熱王》がスクエアに顔を出すのか?メタゲームの読み合いはここからスタートする例も多かった。これからもそうなる……のだろうか。カードプールに残り続ける限りはそうなるのだろう。

環境警察であることを宿命付けられた白単は、手を変え品を変えメタゲームを監視し続ける。メタを読むことに長けるプレイヤーが操れば、逮捕できるデッキタイプの数は飛躍的にその数を向上させる。




歴史を語るとどうも前置きが長くなってしまう。さて、ご覧頂こう。全最2016優勝、2015秋3位入賞の「MatMaker」レダ氏による新環境初手の白単だ!


優勝:白単Lost Record
プレイヤー:レダ
(デッキ作成サイトで見る) 
禁呪合計: 10
メインデッキ
【ユニット】
3×《〝空爆装備〟せつな》
2×《大陸アルドの山犬》
2×《学園の刻印 デラ》
3×《忠実なる闘士フェンリル》
3×《聖騎士ホーリー・クレイモア》
1×《〝局地兵装〟とこよ》
2×《〝殲滅形態〟れいん》
3×《エヴァンジェリカル・エンジェル》
3×《シェカラート》
3×《ブックキーパー・エンジェル》
2×《光の天使ピース》
【ベース】
2×《タクティクス・グラビティ・フィールド》
【ストラテジー】
3×《信頼の証》
2×《白銀の衝撃》
1×《追放》
3×《失われた記録》
2×《休戦の光》

サイドボード
【ユニット】
1×《〝局地兵装〟とこよ》
1×《〝護衛機〟いぶき》
1×《〝殲滅形態〟れいん》
2×《ブラッディ・マリー》
【ベース】
1×《ソーラービーム・サテライト》
1×《タクティクス・グラビティ・フィールド》
【ストラテジー】
2×《追放》
1×《休戦の光》


先の《エヴァンジェリカル・エンジェル》や白単の除去の顔《シェカラート》に加えて補給系デッキを軒並み遅らせる《〝空爆装備〟せつな》を搭載し、ストラテジー環境を見据えた《大陸アルドの山犬》までもが余すことなく犯罪を検知する。

とはいえ、一際目を引くのは《ブックキーパー・エンジェル》と《失われた記録》の結合セットだろう。他のユニットと違い邪魔を一切しないこのカードは、ヘイトカードの集まりでは物足りない打撃力を補填し速やかな勝利を実現させてくれる。


手札からプレイするデメリットは、白単のスマッシュレースのシビアな部分において強烈な痛手でもあった。ニューフェイスの《学園の刻印 デラ》は能力によって直接出してしまえば問題ないと、カバーできる枚数を増やし、暴力的なメリットを味わいつくせる仕様を築いている。

あの憎き犬の前で殴り続ける対象にならないパワー10000を想像してみよう。《獣闘士ガロン》も《シニスターマインド・スピリット》も、果ては《大巨人の盾》を背負った《新生獣V・ヴァナジオン》ですら乗り越えることはかなわない!


別の観点からこのデッキを見てみると、面白い点が垣間見える。白単の弱点としては「アドバンテージを稼げず枚数差で負けていく」という、アンチカードが刺さらない状態でのジリ貧が挙げられるだろう。特に、《ブックキーパー・エンジェル》という純粋な暴力はその純粋さゆえに枚数を稼ぐのが難しく、量の相対優位を築くのは難しくなる。

だが、《〝殲滅形態〟れいん》と《信頼の証》によるバックアップが用意されていればそうはならない。《休戦の光》だけでは飽き足らず《失われた記録》を都合よく引っ張り出す彼女は継戦性能を高め、《信頼の証》は《失われた記録》と共にプランをめくる希望となる。

テキストをなぞるだけでは読み取れない指向性を感じ取り、いち早くデッキとして結実させたレダ氏に拍手を送る他あるまい。




「白単を使うやつは性格が悪い」……時折D0界隈で耳にするジョークの1つである。真偽はともかく、餅は餅屋。犯罪を見つけられる者は犯罪者と同じかそれ以上に狡猾であることには間違いない。覚えておくがいいさ、「白」昼堂々の犯罪は捕らえられても仕方ないってね。