ビッグアイという隊列召喚はその費用対効果が本当に高く、2コストで中央に直接6000スマッシュ2が出現する上にメリット能力が付与される。
ユニットが縦に3体並ぶというのは移動エネルギーを考えると本来効率の悪い行為で、それを補って余りあるメリットを用意した結果だと僕は考えている。

ここで史上最も活躍したビッグアイは誰か?と問うならば、《料理長コック・ハワード》を挙げる人も少なくないだろう。しかしやはり、《ガン・ドリアード》こそがその座に相応しいのではないだろうか。
ユニットを出し、進み、隊列をし、エネルギーを増やし、ユニットを出し……と、ユニットとエネルギーの色たる緑の長所を存分に活かし、「新世界の呼声」登場時からセット落ちまで緑のビートダウンを華々しく飾っていた。

V1の《ホウキ・ドリアード》はそのリメイクとも言うべき存在で、彼女は隊列ごとにエネルギーを重ねる量的パワーと引き換えに任意のエネルギーをセットできる質的パワーを得た。どちらが上位ということもないが、リメイク後のホウキは実績をしてやや大人しげだ。


スラッシュ・バックスラッシュ。V2で登場した新たな(といっても7年前のことだが……)隊列召喚は、縦並びのデメリットを背負うビッグアイに対してラインをずらせる点でメリットであるが、3ライン選べる自由性が消えており、結果として相手が受けやすい(3ライン全てを睨む必要がない)形になっている。

そのピーキーな配置・リスクに対して用意された4種類のカードのうち《ペルセポネ》と《大陸アルドのパラディン》はやや力不足という評価が固まっており、実質的には《大陸アルドのウンディーネ》の一人勝ち状態といって差し支えないだろう。
そもそも青緑、次いで赤がスクエアを駆けやすい色である以上、白黒はハンデを背負わざるを得ないのだが。

さて、緑の《大陸アルドのフラワーナイト》は、《大陸アルドのウンディーネ》に比すれば地味な能力であることは間違いない。《ガン・ドリアード》単発分。
別に《シニスターマインド・スピリット》が飛び出るわけでもなく、エネルギーが1枚増えるのみだ。世間の声は色よいものとまではいかない。


隊列召喚を有するユニットはそもそも大型であり、隊列召喚をしたいデッキはそれができないときに無駄な札として抱え落ちするリスクを持つ。
ユニットがよく動けるビートダウンで使いたい。ビートダウンでは隊列召喚ユニットはうまく動けない。枚数は抑えられがちになる。

なぜこんな湿っぽい話をするのか?そりゃまあ、此度の東北最の準優勝の座に着いたデッキとして紹介するのが、《ホウキ・ドリアード》に《大陸アルドのフラワーナイト》というやや可哀想な位置づけともとれるこの2種類を6枚フル搭載した緑単ビートだからに決まっているだろう。



準優勝:緑単隊列
プレイヤー:ロシア
(デッキ作成サイトで見る) 
禁呪合計: 10
メインデッキ
【ユニット】
3×《大陸アルドのキメラ》
3×《〝海産拳〟エイツ》
3×《〝選定者〟マウリヤ》
3×《妖魔の美容師ヒル》
3×《花園の歌姫》
2×《大陸アルドのフェアリー》
2×《嘘をつくフェアリー》
3×《ウツロイ・ドリアード》
3×《大陸アルドのフラワーナイト》
3×《獣騎士ガロン》
3×《ホウキ・ドリアード》
2×《〝強食種〟ナバテア》
【ストラテジー】
3×《バニー・フラッシュ》
1×《深緑の衝撃》
3×《遺稿の三策》

サイドボード
【ユニット】
3×《〝強食種〟キルキア》
1×《嘘をつくフェアリー》
3×《妖魔の精霊使いアスタ》
【ストラテジー】
3×《造換目標》


ここまで書いた時点でロシア氏が昨年も隊列6枚搭載であることに気づいたが気にせずいくぞ。

「最大効率のエネルギー量を以って盤上を駆け抜けよ」。緑単ビートのカード選択は実に明快な理念に基づいている。エネルギーを増やし増やして展開と移動を極限まで突き詰める。
そのエネルギーへの執念は、ファッティのそれとは違う形でデッキリストに表れる。「リリース」。《バニー・フラッシュ》に加えて《遺稿の三策》が鳴り物入りで参上だ。


ビートダウンの体を取るということは、ゲームの時間が短いということだ。エネルギーブーストを愚直に行うことだけでは実はエネルギー使用量にも限界がある。
このターン1エネ浮くこと、あるいは次のターン以降1エネ多く使えることだけでは行動回数は増えるとは言いがたい。増えなくはないが、満足は出来ないのだ。

《バニー・フラッシュ》《遺稿の三策》はこのターンの1を2に変え、2を3に変え、未来を今へと変える。
プラン覚醒で2エネ、ビッグアイも2エネ。1エネでは出来ないことも、2エネあれば出来てしまう。1エネで追加ターンを買えるなら、その取引に応じないわけがないだろう?


どうしてもそのプランのカードが使いたい?既に寝ているユニットを捧げさえすれば、0を1にさえ出来てしまう。《〝強食種〟ナバテア》は、二の矢を継ぐだけでなく差し迫った今を追いもする。
更新しておいしく、箒で掃いてもおいしい。重さを考慮しても2枚搭載する気持ちもわかっちゃうってもんだ。

起こし起こしを眺めていれば《〝海産拳〟エイツ》がフルパンチ。2コスト移動1スマッシュ1の「犯罪」スペックを携えつつも敵軍まで切り込む勇姿は実に頼れるものだ。《遺稿の三策》の加速付与モードをうっかり頭から吹っ飛ばしたら……ゲームセットと言って差し支えないだろう。


リリースによって得られる実質的なエクストラターンの中で肥大し迫り来るユニットが隊列で襲い来る。序盤中盤でゲームは終わるものの、行動回数は計り知れない。圧縮された時の中で、相手は何度の攻撃を受けるか?
"瞬間を生きる"緑単。ロシア式"Mormental Green"に踏み入れば、海産拳によって浦島太郎になることは間違いないね。