ベース、ベース、ベース。補給。
《大巨人ウートガルザ・ロキ》を投下、《アイスドラゴン》。
《大地の緒》。《融解戦鬼灼熱王》。
《大巨人ウートガルザ・ロキ》を投下、《アイスドラゴン》。
《大地の緒》。《融解戦鬼灼熱王》。
「ファッティ」というデッキタイプはいつしか補給による大型生物の展開を指すようになった。2013年5月の北最においてじょん氏が《大地の緒》の可能性を呈示して以降はより顕著だろう。
《大巨人ウートガルザ・ロキ》が、《再改造手術》が、《貴婦人の微笑み》が、他の同質のカードに比して高いパワーを有する故の淘汰であろう。いや、すまない、ちょっと《スクラップ・ファクトリー》は座っていてくれ。
2013年から2015年初期において、ファッティは巨人を投げつけるために全力を出し、ビートダウンは《貴婦人の微笑み》に対抗するために全力を出した。そういう構図であった。
ファッティ界隈の補給一強体制を打ち破ったのが筑波ターボである。レダ氏と清書氏が作成したそのデッキは補給を用いず、専ら「《フレイム・フライ》と《バイオ・サーバー》」とガイアロードのサイクルというユニット由来のエネルギー加速手段を用いるデッキであった。
厳密にはファッティという括りに入れていいものかどうかは悩みどころではあるが、エネルギー差をつけて《〝閉封世界〟苦諦》や《神龍》を降臨させる風景が一般的なわけで、まあ、いいだろう。ユニットがエネルギー加速を担っているからファッティに見えない、という要因もありそうだし。
さて、筑波ターボがファッティ、ひいてはD0の環境に投じた一石が「ユニットでエネルギー加速」というのはいいが、それは2つの意味を持つ。
ひとつは「エネルギー加速手段がそのまま止めを刺しに来る」、ということだ。
ベースはスマッシュを入れられない。しかしユニットでありさえすれば、ひ弱な《フレイム・フライ》であってもスマッシュを叩き込むことは可能なのだ。
冒頭の補給ファッティ恒例の7点フレーズはむしろベースに加速を頼る欠点から生まれた殺戮手段と言えよう。細かい打点を持たない悲哀が生み出したフィニッシュである。
そして、もうひとつが「ユニットは火力になる」ということだ。
ベースはユニットにぶつけられない。まあ、除去ベースはあるが、使えば補給は遠ざかる。しかも置き溜めできない。ベーススクエアはいつだって3つしかない。
一度でも敵軍に到達できた《フレイム・フライ》や入れ替われた《大陸アルドのレプラコーン》は、ベースと違って地に足の着いたエネルギーをもたらしてくれる。役割を果たせば相手の生物と「道連れになれる」。一石二鳥の活躍じゃあないか。
《〝棄国の皇子〟玖珂 白陽》でお手軽火力に変換することもでき、骨の髄までおいしくしゃぶりつくせる。ユニットでエネルギーを増やすというのはそういうことだ。
その2つのメリットは今や界隈に広く知られることとなり、一般的な知見として認識されている。本日お届けするのは、2つのメリットを新しいカードに適用した、見慣れつつも新しいデッキだ。
3位:緑赤炎上ガイア
プレイヤー:緋蓮
禁呪合計: 10
メインデッキ
【ユニット】
【ベース】
【ストラテジー】
サイドボード
【ユニット】
【ストラテジー】
《炎上案件》。F-3を見たときに誰もが強さに驚き、誰もが危惧した緑のパワーカードだ。ユニットが「2枚」、「手札とエネルギーに」、「好きな組み合わせで」置くことができるという、欲しがりの要求をきっちり満たす三ツ星料理。
とはいえ、贅沢な悩みではあるが何せ自由度が高いものだから、F-3からF-4のリリースまでに大きな大会が無かったことも併せて強い使い方は模索段階の域を出ていなかったと言える。今回の緋蓮氏はそれをしっかりと詰めてきた。
5コストのストラテジーを撃つということが意味するもの。それは補給ファッティが抱える欠点と何ら変わるものではない。盤面に直接干渉できない5コストを手拍子で放つなら、相手の攻勢を受けきることなど出来ないに等しい。
ベースを並べて炎上して補給するというのは戦場の真っ只中で戦車を組み立てるようなものだ。その5ターンは、永遠にも等しいだろう。
そこで登場するのが筑波ターボ由来のガイアパッケージ。《洞魔レチュギア》と《大陸アルドのレプラコーン》、お供の《ウツロイ・ドリアード》は今も力を貸してくれる。
残念ながらフライサーバーはセットの都合でお役御免だが、かわいい新顔《〝伏侍獣〟ヨル》ちゃんと《命の絆》から3ターン目に繰り出される案件はどんな企業も真っ青になる。《命の絆》が手札でもプランでも撃てるってのが美しいね。
序盤さえ乗り切り、無事に炎上さえ出来てしまえばあとは「選べる」利点だけが残る。ユニットで遊ぶ手段が《〝棄国の皇子〟玖珂 白陽》だけでなく《大巨人ユミル》も加わり、《大地の緒》の可能性はもはや無限だ。
2コスト払ったらお出ましになる《機械竜エスティタート》。うーん、考えたくもないね。
《アニヒレイト・ドラゴン》が厚めに採られているのも見逃せない。7コストの出しやすさが極限レベルまで高まっているこのデッキではスムーズにアクセスできるマスデストラクションだし、ミラーマッチで《大地の緒》とユニットを根こそぎ持っていく光景は圧巻だ。
《国家の耳目 継弓》は極めてクールな採用だ。どうしたって《炎上案件》を用意できないときはあり、その時に欲しいユニットを探す手段というのは有難いものだ。
《大陸アルドのレプラコーン》と《大陸アルドのフェアリー》から変身して《〝棄国の皇子〟玖珂 白陽》に変わる4コストという絶妙な間隙の突き方もナイス。《〝棄国の隷属者〟亞曇 壱英》のメイン登用もあり、本家筑波ターボよりもコスト可変性が向上しているといえるだろう。
サイドボードも面白い構成だ。7コストが厚いこのデッキで《タクティクス・グラビティ・フィールド》を睨む必要はなく、白単へは《〝剛龍腕〟緋裔》を鎮座させて盤を貰おうと言う合理的な選択。
墓地対策は《鬼眼の三策》だけでなく《〝孤軍将〟貞圀 征匳》も採用。大事なのだ、《炎上案件》で探せて《大地の緒》で出せるユニットという種別は。
《炎上案件》を使おう、という意思がカードの選択の至るところに感じ取れることがお分かりいただけただろうか?攻勢を捌けるファッティというのは恐ろしいものだ。
少しでも動きを緩めれば、あなたもすぐに炎上することになる。《炎上案件》に打ち勝つには、案件が発生してからでは遅いのだ。何事も結果ではなく原因、端"緒"を潰しておくのが肝心なのさ。
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