「誰も見向きもしないもの」は基本的に価値がないとみなされる。逆に言えばみんなが振り向くものは価値がある。よくある簡単な需給の話だ。
手札もスクエアもエネルギーもみんな大切にする。だからこそそれを供給するコストも取り去るコストも安いものではない。
だが、墓地は?
「黒」という色に許された領域、それが墓地だ。ユニットを殺し、手札を削げる黒の役割。、朽ちたカードの集まる墓地こそが真に聖域たる場所である。
他の色はほとんどその領域を扱えず、そして黒は大いに活用する。そんな特権的な領域を、《幻影王ルドルフ》の時代から黒は散々使い倒してきた。
《貪欲時計デーモンガスト》《幽鬼の谷》の刻んだ痕は大きく、ややおとなしめとはいえ《ナイトメア・ソルジャー》が引き連れる《融解戦鬼灼熱王》もうんざりするには十分だ。
「誰も見向きもしないもの」は基本的に価値がないとみなされる。逆に言えばみんなが使えないものに支払う対価は安い。よくある簡単な需給の話だ。
墓地は黒以外は(基本的に)大切にしない。だからこそそれを更にどこかにどけてしまう手間にかかる賃料は高くならない。
思えば《祭儀の踊り子リムセ》が「ついでに」墓地を掃う赤青急襲の出現から墓地という領域はいとも容易く、雑に雑に扱われるようになってきた。
《ブロンズキッド・ドラゴン》や《シルバーワイズ・ドラゴン》もさることながら、墓地対策を主眼とせずとも片手間に墓地を弾く彼女の存在感は大きい。
V-1の《錯乱時計パニックヴォイス》が「壊れてる」強さであったのは、それだけ墓地利用が(少なくともカードプール的には)斜陽だったことを示していると言えるかもしれない。
強烈な対処手段を持たれた墓地は、それをバネにしてより強烈な利用法を呈示していく。黒という領域を超えて、《アイスドラゴン》は今なお環境のファッティの最奥にその姿を留めている。インフレは止まることを知らない。《精霊使いアキロ》の登場はメタゲームに尋常ならざる変革をもたらし、そして去っていった。思えば、彼の禁止までは黒という色は理不尽な枷を受けていた。
いや、今もなお受けている、と表現してもよいかもしれない。嗚呼、いかに憎きことか、《鬼眼の三策》よ。
とにかく、そんな墓地バトル大インフレ時代が過ぎ去った後、黒は(黒は前もか)間違いなく《微睡む人形スージー》を起点として動いていた。
《人形遣いの休息》による強烈なボードコントロールを軸に、《墓堀公クローゼ》《愛撫の魔煙フェザー》《アルカード伯爵》によるループを組み込んだり、とにかく除去除去でユニットを枯らし尽くす構造は長く愛されている。
《人形遣いの休息》による強烈なボードコントロールを軸に、《墓堀公クローゼ》《愛撫の魔煙フェザー》《アルカード伯爵》によるループを組み込んだり、とにかく除去除去でユニットを枯らし尽くす構造は長く愛されている。
2016年の東北最で駆炎氏が呈示した黒単は《〝器械姫〟つぶて》をフィーチャーした由緒正しきビートダウンであったが、それでも《人形遣いの休息》というスペシャルカードの力を大きく受けていることは間違いない。また、《光の巫女ホリプパ》の禁止は間違いなく追い風だったことだろう。
黒を手に取る理由として誉れ高き《微睡む人形スージー》と《人形遣いの休息》。F-3,F-α,F-4のリリース後の世界で新たな活用法を編み出したのは、ここ東北の地で誕生した、新しきプレイヤーであった。
4位:黒緑策式サイクル
プレイヤー:D
禁呪合計: 10
メインデッキ
【ユニット】
【ベース】
【ストラテジー】
サイドボード
【ユニット】
【ベース】
めくるめくスクエアの世界へようこそ、《トガ〝ザ・ドラゴン〟》!そしてD!
プレイヤー:D
禁呪合計: 10
メインデッキ
【ユニット】
【ベース】
【ストラテジー】
サイドボード
【ユニット】
【ベース】
めくるめくスクエアの世界へようこそ、《トガ〝ザ・ドラゴン〟》!そしてD!
墓地を使ったコスト軽減、策式能力、3コスト以下の蘇生。考えてみれば、結合コンビとここまでシナジーを形成するカードはそうそうない。
墓地を食べることによるプレイコストの奇妙な軽さは、相方に選ばれた緑の《バニー・フラッシュ》と《遺稿の三策》によってさらなる異常さへと昇華されており、1ターンにおける行動数は他のデッキに類を見ないほどに大きくなっている。
呼び出される《大陸アルドのフェアリー》が《バニー・フラッシュ》を呼び、それが《スパイク・ガールズ》を呼び、両者を食い荒らす《〝強食種〟ナバテア》が供給したエネルギーが再び相手の手札を、ユニットを狩り尽くす。
黒という色が持つ役割をここまで徹底した「黒コントロール」はなかなかお目にかかれまい。あと何度除去を受ければ中央で生き残れるか?そんな希望を残らず削る無間地獄をこのデッキは見せてくれる。
《肉屋の注文書》がもたらすシルバー・バレット戦術は見逃してはならない強みだ。《浄化する沙綾》はいつでも相手の墓地を睨み続け、《突き刺す人形シェリー》は疲弊した自分の墓地を再びにぎやかしてくれる。《調整体ノゼ》は文字通り「お守り」としてプレイヤーを救ってくれるだろう。
そもそも《肉屋の注文書》自体が能力のトリガーであり、そして次発装填の合図であることも覚えておこう。全力投入も納得のシナジー満載パワーカードと言って差し支えあるまい。
とはいえ墓地を引っこ抜ければ塵芥、ちょっと軽めな中級サイズが出てくるだけなのだろう?…………油断すること勿れ。
サイドボードからは《大巨人の盾》を背負う《〝ランジン〟L=ホウセン》が、《闇の天使アポカリプス》が、純粋な力を以ってあなたを速やかに倒してしまうだろう。
追加の《突き刺す人形シェリー》も併せて、自分が何をされるかはきちんと弁えている。そのための対抗手段はちゃんとここにあるのだ。
「黒緑策式」、いかがだっただろうか。筆者としては懐かしくも新しい、そんな印象を抱いた。黒コントロールの系譜を辿りつつも、その動きはしっかりとFixerSの息吹を感じる。
新しい視点は新しいカードも旧いカードも平等にそれを審理する。新たなプレイヤーの手ずから築いたこのデッキとその成績を大いに称えようじゃないか。
牙を磨くのも忘れぬように。さもなくば勢いづいた新星を誰が咎めるというのかね。
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