囲まれた女いろいろ、なつかしー

2010年01月13日

ユニクロ栄えて何滅ぶ

スポーツ紙によると、西武ライオンズの新入生の菊池雄星くんは、入寮の荷物に「私服がない」ということでした。面白がられてました。
さすが、といえば失礼ですけど、花巻の高校生の野球部員ですから、制服と練習用のジャージ以外は、あんまりニーズがないわけで、生活パターンに「私服」があんまり必要ないのでしょう。

よくわかります。というか、僕らも田舎の高校生でしたので、まさにそのまま。制服とパジャマがわりの体操服+ワンくらいで十分でした。
時代を問わず、都会の高校生は、遊びも豊富、行動半径も広いので、お小遣いもたくさん必要だし、そうするとやっぱりオシャレになります。簡単にいうと「あかぬけ」してます。

僕らなんて(菊池選手を一緒に扱っていいかはともかく)、小遣いの使い先もないので、千円札一枚あれば気分はかなりリッチだったのを覚えています。なので、たまに街に行っても、ケンタッキーフライドチキンなんて、高すぎてとても食べられなくて憤慨した思い出があります。いいとこマクドナルドで単品でしたね。

そういう意味では、四半世紀経って値段がむしろ下がっているマクドナルドはエライなあとも思うわけですが、ことファッション、私服、アパレル品なんてのは、相当好きでないと投資できない分野でした。安いトレーナーでも一枚、数千円はしましたから・・・。

そこへもってきて、今は「着るもの」(=ファッションとあえて呼ばない)も安価になって、しかも全国どこでも手に入るわけですから、さすがに高校生の「私服ゼロ」は、なんとも牧歌的な感じがしますね。


さてここから本題。(長いぜ)
そこでその代表格のユニクロですけど、品質を訴求しながらも安価大量、ベーシック路線を中心に「合理的」な衣料品ニーズにこたえて、超・成功してますね。
ぼくも、愛用してます。でも一部、見えないとこだけ。下着とかソックスとか・・・。
なぜなら、丈夫だし、種類豊富、どこでも売ってるし、カシミヤは軽くて暖かい、ヒートテックはそのまま温かい・・というのが「合理的」ってことですねん。

昨年、文藝春秋に掲載された、浜矩子さんの「ユニクロ栄えて国滅ぶ」という論文が批判対象になっていましたが、内容はともかくこのタイトルについては僕はおおいに大賛成、支持してます。 ユニクロさんは尊敬してますけど、他の批判者の方のは、誉め方が間違いなんですね。

代表例、池田信夫さんが、ユニクロのビジネスを、日本企業のグローバル化のモデルと称えて、価格についても、限界費用以下にはならないから不当な安売りじゃない、みたいな反論されてました。

これ、経済学者さんだから仕方ないのですけど、アパレル、つまりファッションはそんな机上の経済ではありません。
このユニクロの限界費用にはファッションも文化も含まれていません。大量生産と流通を前提にして、そこにすべての費用を薄く乗せているにすぎません。

この「薄く載せている」部分こそが、日本のソフト力なんです。中国で生産を肩代わりしてもらうことのできない部分なんです。

アパレルメーカーがワンピース一枚企画するのに、たくさんの労力とアイデアの試行錯誤があります、そして作るのは、日本の場合、従来は1マークあたり数100着のみ。 
なので、まずもって同じワンピースを着ている人と街ですれ違うことはありませんよね。 しかも取り扱う店舗は、都会に限られていますから、ショッピング自体が非日常のイベントになれていたのです。

そのような、素材から企画製造販売までの、アパレル業界でいう川上から川下の
産業に携わっている人は、経済を学んで経済に携わっているつもりではなくて、ファッションを学んで技術を身に付けた、アーティストと職人さんたちなんです。

そして、その人たちの数は、経済学者よりもはるかに多くて、それがそのまんま日本の雇用と収入を支えてきたわけです。

そこをすっ飛ばして安価な品が出来ているわけで、それはユニクロがビジネスとして賢くて大成功しているのは大大大ブラボーですが、しかしそれを日本のグローバル化のモデルだなんて言ったら、ちゃんちゃらおかしいです。

アパレルとしてのソフトが全く入ってない商品では、日本のファッションが世界で生き残れるはずもありません。

そして、あっちもこっちもみ~んな同じ服着ていて平気な若者、ファッションや個性に消極的な消費者ばかりが増えたら、そりゃもう、日本の文化が滅びます。

ファッションは経済ではありません。

経済的に無駄なこそこそ、おシャレなんです。

ユニクロが栄えて国が滅びるかどうかよりも、学者が出しゃばったら国が滅びるんじゃないかって心配すべきです。

ted803 at 05:47│Comments(0)TrackBack(0) 経済 

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