2007年08月28日

外野守備は勝負を決す

 これは私が見に行った試合だったのですが、文星芸大附と今治西の3回戦。返す返すも「どうだったかなぁ」って思う場面がありました。

 6回表、文星2点リードで2死一・二塁という場面。結果から言うと今治の3番・福岡君がセンター前にはじき返した当たりがゴロで一気に右中間を割って、一塁走者も生還して同点となった場面です。

 5回まで無安打に抑えていた文星のエース佐藤君。今治は6回のワンチャンスで試合を振り出しに戻した格好です。

 「どうだっかなぁ」と思うのは文星の外野守備、シフトの問題です。




 恐らくは「二死だし1点返されたくない守備陣形」だったと思います。つまり、外野の前進守備ってことですね。最近は(こりゃプロでもそうかもしれませんが)外野の守備は場面場面で相当守備位置を変えています。この場面は「二塁走者を本塁で刺そう」という守備陣形だったわけで、それが裏目に出ました。

 私は6回中盤という状況、エース佐藤君の出来などを考えると「一塁走者の本塁突入は防ごう」という守備陣系でよかったのではないかと思います。1点でもリードしていた方が終盤を有利に戦えたと思うんですよね。実際、同点に追いついた今治西が元気になったのは対照的に、文星は7回裏にスクイズを失敗するなど焦りが目立ってしまい、結果的には今治西が9回に4点を奪って勝ちました。

 この辺は勝負のあやだと思うんですよね。「1点でも取られると相手にリズムを奪われる」と考えたのかもしれません。そこは監督さんの判断ですからね。なんとも言えません。6回、まだ安全策で良かったのではないかという思いがあります。

 このように外野守備の陣形というのは試合の流れをガラリと一変させてしまうもんなんですよねぇ。

 内野守備には「前進守備バックホーム態勢」とか「中間守備」といった用語がありますが、外野にはそういう用語がまだ確立されていません。例えば、テレビ中継のときに、外野手がホームから何mのところに守っているのか、とか、あるいは画面の片隅に守備陣形が映し出すこととか出来ないんでしょうかねぇ。こういう取り組みで野球の面白さがまた広がると思うんですけど。

 最後に、最近の高校野球を見ていて思う一つの印象論なんですけど、序盤から過剰に前進守備をしてきたりするチームが増えているように思うんですよね。多少の失点は覚悟して「最後に1点勝っていればいいんだ」的にどっしり構えるチームの方が強いと思います。文星ももうちょっと余裕があればなぁ、と。決勝に進んだ2チームはそういった余裕が守備にあったように思えます。

 広陵の外野なんて左打者のポテンヒットを警戒して左翼手がびっくりするくらい浅く守っている場面もありました。「頭越されてもホームまで行かれなきゃいい」ってなもんでしたね。野球ってのは確率のスポーツですから、万に一つのレフトオーバーよりも、遥かに可能性の高いポテンを警戒していた方がいい。それで長打になったら、なったときに考えればいいくらいの構えが出来ていたように思います。

 ついでに佐賀北と3回戦で戦った前橋商。2回2死ニ塁でセンターがダイビングキャッチを試みて失敗してランニング本塁打を許した場面がありました。まぁ、取っていればチェンジとは言え、あそこでダイビングは無い。何せ2回。1点くらい返されてもまた攻めればいいわけで、どっちかというと状況判断の問題だったでしょう。

 ランニング本塁打を狙って本塁でタッチアウトってのは見た記憶がありません。思うに、ランニング本塁打のカットプレーの練習なんてほとんどやっていないんですよねぇ。大抵、本塁への送球が逸れている気がします。「ランニングホームランだ!」と思わせておいて、ホームで刺しちゃうチームって見てみたい気がします。強豪校なんかやっぱり練習しているものなんでしょうかね?
 

ted9aoki23 at 22:47│Comments(6)TrackBack(0) 守備論 

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この記事へのコメント

1. Posted by    2007年08月29日 15:22
あいかわらず深いですねえ。外野守備というのは、確かに解説されることも少ないですよね。イチローのバックホームは野球の面白さを深めてくれましたが、守備位置もなるほど重要なのですね。
それからおっしゃる通り、ランニングホームランのクロスプレーって見たことないですなあ。納得であります。
2. Posted by 3gou   2007年08月29日 17:28
過剰に失点を怖れるってのは、やたら失敗を嫌がる今時の子の心情が反映されてるのかもしれませんねぇ・・・やっぱ教育かしらん。

最近のTVカメラは性能が良くなって、選手の顔の大アップを捉えることが出来るようになり、それはそれで迫力があって良いのですが、引いた絵が減って守備のシフトが分かりづらくなりました。
マニアックすぎる視点だというのもわかるのですが中継に工夫を求めたいところです。
かといって球場に行くと、選手の顔がよく見えなかったりすることに今度は物足りなさを感じたりもしちゃうんですよねぇ。
3. Posted by 純正野球ファン   2007年08月29日 22:42
か(笑)様
誰かと思っちゃいましたよ。
ランニングホームランは裏を返すと黙っていてもランナー三塁になる場面でわざわざ回すチームってのもなかなか無いのかなって思いました。自分で書いておって恐縮な話ですが。更に裏を返すと、一か八かで本塁に突っ込ませるチームがあってもいいのかなぁって思います。
 いずれにしてもランニングホームランは守っている方はとことん焦るんでしょうね。
3gou様
>やっぱ教育かしらん
そうかもしれません。失敗しても再チャレンジできない子供たちの問題と、失敗させることで親御さんから指弾されることを恐れる監督の問題の両方があるかと思います。
「熱闘甲子園」という番組はアップ過ぎて私はほとんど見ません。見てももっぱらネタ漁りですねw
4. Posted by 匿名   2007年08月30日 12:49
おっしゃるとおり、最近はどのチームも相手チームを研究して
かなり徹底した守備位置を採っているように感じます。

ただ、やっぱり個々の選手の状況判断の部分では
気になるプレイが多かった気がします。
ランナー二塁でヒットが飛んできたときに
カットが取れる低い球を意識して投げる外野手が
ほとんど見あたらなくてがっかりでした。
ダイビングも、イチローがやるように
尻餅をつくようなタイプのものを選べば
球を後ろへ逸らしにくくなると思うのですが。。

あと、NHKの中継では、外野の守備位置を
比較的写してくれている印象があります。
でも大リーグの中継のように、
「普段はこの辺りに守っているけど
 今はこれぐらい前に出ている」
と線を引いて教えてくれるともっとありがたいですね。

P.S.
広島・前田の二千本安打、生で観たいです〜。
神宮まで待ってくれるとありがたいのですが、
広島で決めてしまいそうですね。
5. Posted by 萬二郎   2007年09月01日 03:59
今年の神奈川大会の決勝でありましたよ。たしか東海大相模の1番か3番だったと思うんですが、その時は桐光学園が見事にホームでアウトにしました。ただバッターランナーが危険なスライディングをしたのでキャッチャーは負傷退場してしまいました。僕としては甲子園にあと一歩のチームがあんなスライディングをするのかと腹が立ってしまい、桐光学園の見事なカットプレーを忘れていました。
6. Posted by 純正野球ファン   2007年09月02日 23:32
匿名様
いつもありがとうございます。本塁送球のカットプレーは基本の「き」なんですけどね。レーザービームの悪影響でしょうか。
前田はやりましたね。
萬二郎様
ありがとうございます。相模の田中君ですね、打ったのは。確かに、あれはバッターランナーでしたね。あれはスライディングではなくキックでした。終盤で一発勝負で本塁に突入したんでしょうが、甲子園に出るチームは落ち着いていましたね。
昨日の東都でもランニングホームランを目撃しました。やっぱり、カットで焦ってポロっとやってしまって返球できないというパターンが多い気がします。

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