2007年12月04日

日の丸の重み 短期決戦の重み

 アテネ五輪の準決勝。日本は豪州に0−1で敗れました。

 最後の打者は誰だったか、覚えていますか。


 最後は谷佳知でした。

 私はその場面を忘れることは出来ません。谷は二塁ゴロを打ちました。センターに抜けるかという当りでした。谷は一塁に駆け込むとき、右足を思い切り伸ばしました。その結果、ベースに強く着地し、右足首を負傷し、残りにシーズンを棒に振りました。
 一塁を駆け抜けるときに、歩幅が合わずに無理して足を伸ばすことは負傷を招くことになります。これは固定ベースでやるときにイロハのイで、谷は重々承知だったはずです。足を伸ばすことでケガをするリスクを頭に入れながら、谷は無理をしたのでしょう。

 私は非常に感動しました。

 これが日の丸の重みなのだと、実感しました。


 あの試合はロングリリーフに出てきたジェフ・ウイリアムスが完璧なリリーフをしました。走者が出ない時は「一人出ればわからない」と思うものです。谷のプレーにはそういう気持ちが伝わってきました。

 たかが一試合でケガをするのはアホらしいと言う人がいるでしょう。私はそうは思いません。瞬間に全てを賭けることを奨励したり、無理強いをするつもりもありません。しかし、それを止めたり、批判したりする気にはなれません。

 高校野球の連投を批判する人がいます。私はそうは思いません。本当に、仲間のためにチームのために連投を厭わない精神力と肉体を持った高校生はいるのです。そういう子は故障をしないのです。また、故障する危険性がある子を無理して連投させる指導者では、上位に進めることは望めないと思うんですよね。

 最近はスポーツ医学も発達しています。高校時代に酷使して、プロに入って故障した選手って少なくなったと思うんですよね。

 況や、岩瀬のロングリリーフが何だって言うのか。
 
 9年連続50試合以上登板という、空前絶後の鉄腕に「無理させすぎ」とは…。むしろ岩瀬に失礼な話だと思います。台湾戦は最初から放らせるつもりはなかったんでしょう。それくらい韓国戦が大事だったということでしょう。
 
 私が監督なら、韓国戦の8回は迷いました。表の追加点が無かったら(つまり1点の余裕も無かったら)頭から上原を投入して2イニングを任していたかもしれません。ただ、1点の余裕があったから8回は1点くれてやっても岩瀬に託しました。

 継投には2つのタブーがあります。一つは「イニングを跨ぐこと」。もう一つは「人が走者がいる段階で継投すること」。これはどちらも同様のリスクがあります。星野監督の判断は前者を取った。これは一つの判断です。どちらが正しいとは言いようがありません。ただ、岩瀬を信頼していたという点に尽きます。

 井端のバントも無理をさせたとは思いません。井端の立場ならば、出来る事は何でもやるという進境だったでしょう。走れなくても、バントは出来るという場合、せめてそれくらいの貢献はしたい、という井端を止めることは出来ないと思うのです。日の丸はそれくらい重いということでしょう。

 だから、名古屋で「無理させすぎだ」なんて話が出ているってのは率直に言って信じられません。

 岩瀬も井端もプロです。そして、星野監督もプロです。確かに、かつて星野監督は中日の投手をよく潰しましたが、たった1試合の張り詰めた試合で、シーズン中と違う使い方をしても、彼らの生活まで奪いかねない起用はしないでしょう。選手も瞬間のプレーで生活を潰すかもしれません。ただ、起用法で潰されるとしたら、自ら拒否するでしょう。でも、「出来る」と思ったら躊躇無く起用に応えるのもまた、プロの姿だと思うんですよね。

 もっと選手を信じてあげたらと思います。

ted9aoki23 at 22:21│Comments(8)TrackBack(0) 2007NPBポストシーズン 

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この記事へのコメント

1. Posted by 岐阜のドラファン   2007年12月04日 23:24
こういう意見や試合の進め方もありだと思う。
星野監督らしくていいとも思う。
ただ、落合野球を見てきた中日ファンとしては、
確実に勝つ方法を取るのか、
投手と心中してまでも信用して投げ続けさせるのか、
代表監督なら前者を取るべきではないのか?
と思うのです。

ただ星野氏が代表になった時点で、こういう「男気」溢れる野球を
皆が期待しているのは分かっています。
なので、名古屋だけの内輪話ということで分かってあげてください。


2. Posted by 匿名   2007年12月05日 10:52
こっちに書けば良かった(笑)

今回の件では、岩瀬・井端には無理をさせてはいないと思います。
まずそこの認識が違うような気がします。

岩瀬続投については、それが勝つために妥当だったかが
議論の対象になると思っていました。
個人的にはあそこは頭から藤川かな、と思っていたので。

ただ繰り返しますが、東海ラジオのアナウンサーの言う事なんて‥(略)

P.S.
高校球児の連投については、僕は否定的です。
3. Posted by Hache   2007年12月06日 01:53
こちらには初めてお邪魔します。五輪予選が始まる時期を知らなかったので、試合をまったく見ていないので臨場感を体験しておりませんので、的外れかもしれませんが。

周囲の中日ファンで五輪予選の試合を見ていた人たちに聞いてみても、岩瀬続投に否定的な人は皆無でした。データを見ると2回と1/3で「ロングリリーフ」という時代なんだなと思いました。年齢の問題はありますが、元ファンからしても、岩瀬は中継ぎの経験も豊富で、台湾には失礼かもしれませんが、最大の難敵である韓国戦での登板、回数は妥当ではないかと思います。最後は上原が控えているわけで、「オールジャパン」としては、当然ではないかと。

「名古屋」、「中日ファン」と一括りにされても、すべての人が同じ意見ではありません。道頓堀に飛び込む人たちが「阪神ファン」のすべてと同じだと言われるような違和感を覚えますね。
4. Posted by 匿名   2007年12月06日 11:15
>Hache様

たしかに、一括りにされた方が不快に感じられることを書いていました。
たいへん申し訳ありません。

中日ファンの方からの意見に対して、
つい昔年の怨みが噴き出てしまったのかもしれません。
やはり「憤兵は敗る」ですね。。。

応援チームに関係なく、今回の起用を妥当と考える人が
大半なんじゃないかと思っていたので、
Hacheさんとその周辺に否定的な意見の方が
いないという話を聞いてホッとしました。
5. Posted by Hache   2007年12月06日 22:10
ted9aoki23さまには申し訳ありませんが、匿名様への「私信」です。

そんなに大した問題ではないので、大丈夫ですよ。
あえて「空気」を読まない発言をしてしまうと、
周囲の中日ファンは日本一でお腹一杯で、
あとは五輪でメダル(最低でも金、最高でも金てなノリ)でしょとか完全に「タカ派」状態ですね。

岩瀬の継投に話題を振っても、
岩瀬だったら当然でしょという程度で終わりです。
3億8千万もらってるんだし、中日で活躍するのは
当然で、日本代表で頑張るぐらい当たり前でしょ
というのが周囲の反応です。ほとんどが、韓国戦の
スタメン入れ替えに話題が集中した程度で、
継投なんて私から話を振らないと話題にすら
ならない感じです。むしろ、こちらの記事を
拝見して意外と難しい話なんだなと思ったぐらい
です。
6. Posted by 由良   2007年12月08日 19:42
岩瀬の継投、阪神ファンの私は拝見していてヒヤヒヤドキドキ、手に汗を握りました。延長を想定して藤川は温存したという監督談話もあり、とくに違和感は覚えませんでした。井端のバントは、バントだけなら問題なかったのでしょうが、相手がエラー気味の処理でもたついていて普通なら一塁もセーフの場面だったんですよね。そこで足がつらい井端もつい頑張ってしまったように見えました。さすがにそこまでしなくてもとは思いましたが、それさえなければ特にどうとは。

考えられるのは、名古屋のファンは星野さんに対する抵抗感が底にあってなにか文句を言いたいものだから、井端と岩瀬の件でケチをつけているのではないですか。きっとなかなかに地元の微妙な心理が反映されているのではないか、と察します。
7. Posted by さのよいよい   2007年12月11日 17:38
「抵抗感」もありますがそれよりも「恐怖感」ですね。

近藤・上原・与田・今中と、才能を星野時代に潰された悲劇の選手を幾人も見ている一ドラファンとしては、選手は信頼できても、代表監督は信頼できないものですから、また落合監督が投手をあまり酷使しないタイプなので、なおさら今回の岩瀬の使い方は過去のトラウマが呼び起こされるのです。

後、「阪神のSDでもありながら、なんで中日の選手をいつまでも自分の子分みたいな使い方・言い方をするんだ」、「シーズン中大事に使ってきたのは、星野がここで酷使するためじゃない」っていうのもあります(少なくとも私には)。ここら辺は極めて内向きな感情ですが「中日を捨てた」星野に対する愛憎もありまして・・・。
8. Posted by 純正野球ファン   2007年12月11日 21:13
皆々様
 正直、こんなに濃厚なコメントをいただけるとは思いませんでした。酔いに任せて、半ば中日ファンへの「やっかみ」で書いたエントリーでして…。
 お恥ずかしい限りです。
 それにしても、星野仙一を挟んだ中日・阪神両ファンの微妙な感情が垣間見えて面白かったです。
 ただ、北京ではもっと過激なシーンが登場すると思うんですよね。そこで「受けて立つ」のがトッププレイヤーの責任感なんだと思います。また、自チームに帰ってファンの期待に応えるのも責任感です。二つが相反するとき、大抵の選手は「目の前にある危機」に向かっていくものだと思います。それは、監督に「させられている」のではなく、「自ら望んでしている」行為なんだと思います。そこは温かく見守りたいし、我々は見守るしかない立場だということだけは、改めて言いたいと思います。

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