2008年01月19日

人的補償制度はおかしい!

 久々に野球の話題ですが、埼玉西武ライオンズがFAで中日ドラゴンズに移籍した和田一浩外野手の人的補償として、岡本真也投手を獲得するそうだ。

 うぅん・・・。

 岡本はセットアッパーとしてバリバリ活躍していた選手だ。ここ4年連続50試合以上登板し、昨年は62試合に登板して防御率2・89をマーク。岩瀬への繋ぎ役として、いつもいつもマウンドに立っていた印象がある。

 それを獲得したライオンズは「いい買い物」かもしれない。



●人的補償大流行
 一応、説明しておくとFAで選手を獲得した球団は、出て行ったチームに対してお金を払うか、人的補償として選手を一人提供しなければならない。人的補償は28人の選手はプロテクトされるが、それ以外の選手は獲得する側が自由に選べる制度である。
 これまでも人的補償による移籍はあった。ライオンズの江藤智(豊田清の人的補償)や、ベイスターズの工藤公康(門倉健の人的補償)などが代表的だった。しかし、一年に3人もの選手が人的補償で移籍するのは、今年が初めてではなかろうか。

スワローズ 福地寿樹(石井一久の人的補償)

カープ   赤松真人(新井貴浩の人的補償)

ライオンズ 岡本真也(和田一浩の人的補償)

今年、FA制度で国内移籍を食らった球団は揃って、「お金」ではなく「人的補償」を選んだわけだ。それぞれの球団の事情を探ってみよう。

●一番左翼が期待できる福地
 高田スワローズは大胆なチーム再編を図っている。その中軸に据えるのは「足」ということがはっきりしている。福地獲得はその明確なビジョンに基づいているといえるだろう。福地は西武に移籍してブレイクした俊足選手。走塁技術は12球団屈指のものがある。
 スワローズはラミレスが離脱しオーダーの再編を迫られている。星野ジャパンでも3番を打った青木を据えて、2番には昨年3割をマークした田中浩康。問題は1番だ。候補筆頭は昨季23盗塁の3年目・飯原なんだろうが、打撃が心許ない。不動の一番打者に育て上げるにはライバルが必要だ。
 そこにうってつけの人材が福地というわけだ。06年途中にライオンズに移籍してから出場機会に恵まれた福地は2年連続で20盗塁以上をマーク。昨季は117試合に出場し盗塁は28個。打率も2割7分3厘と悪くない。足でかき回す新生スワローズ野球の象徴になれるかもしれない。

●赤松か?投手か?
 カープが新井貴浩の人的補償で獲得した赤松は、カープファンの間では不評のようである。「なぜピッチャーを獲らないのか」ということらしい。確かに、能見、筒井、桟原あたりは残っていそうなものだが・・・。
 しかし、赤松はいわゆる「カープ野球」にアジャストする選手ではあるだろう。足の速さは赤星を上回るらしいし、機動力を使っていくならば赤松は確かに人材だ。
 ただ、カープとして目指す野球の方向性が今ひとつ見えないのも事実。機動力で勝負するのか、長打力で勝負するのか・・・。新井が抜けたということは機動力にシフトしていくのかもしれないが、目指す方向性が今ひとつ徹底していないのが、カープの歯がゆいところである。
 それにしても、喜田、赤松とカープはいよいよタイガースの二軍と化してきた気がします。

●岡本はデカイ
 福地、赤松に比べて、ライオンズの岡本獲得はいかにも大きい。もしかしたら抑えのエースとなりうる人材を「人的補償」で獲得してしまった。ちょっと差があるが和田と岡本の一対一のトレードがあっても不思議ではない人材である。
 ドラゴンズは若手の有望株が多いので、28人のプロテクトを決めるのは結構苦労したことだろう。岡本がリストから外れたとことにドラゴンズの苦渋と、球団としての「若手中心」というシフトを感じる。川上、岩瀬、井端、荒木と中心選手が揃って冴えない表情で契約更改をしたことの延長線上に、岡本放出劇があったと思う。
 
●そもそもFAって??
 ここまで人的補償をめぐる各球団の事情を見てきたが、ファンとしてはこういうのを見ているのは楽しい。しかし、FA本来の目的と逸脱しているように感じる。
 そもそも、出場機会を探る選手が自由に移籍出来るように作られた制度だったはずだ。FA権取得の要件は出場試合数ではなく、一軍登録日数で与えられる。つまり、ベンチウォーマーに出場機会をというのが制度の主眼だったはずだ。
 だが、これだけ人的補償での移籍が横行すると、獲得する側の球団が抑制的になるだろう。一昨年だったか、オリックスバファローズの塩崎真がFA宣言をしたが、どこの球団も獲得に手を上げず、残留したということがあった。
 現在の制度では塩崎クラスの選手を獲得するにはリスクが大きすぎる。多額の出費を迫られるか、人的補償で有望な若手や、チームに欠かせないバイプレイヤーが持っていかれる。しかも誰を持っていかれるかわからないから、チームの編成上もFA選手を獲得することによって、不確定要素が増していく。それなら、本当にオールスター選手クラスしかFAで獲る必要が無いという判断に傾くだろう。
 
 私は本来、FAは出場機会を求めて行使されるべき権利だと思うが、これだけ人的補償が流行すると、今後、球団側はますますFA選手の獲得に慎重になるだろうし、FA制度が一流選手やメジャー移籍を目指す選手にしかメリットを与えない制度になっていると思う。
 
 人的補償制度は止めるべきだと思う。その上で、国内移籍に限ってはFA取得年数を減らすべき、と考える。

 そうすれば、弱い球団もFAで選手を補強することが出来る。補強とはジャイアンツのように金にモノを言わせて大物選手を獲得することではないだろう。他球団でくすぶっている選手、環境を変えてあげれば大きく化ける可能性のある選手を、各球団が独自に調査して、獲得していくことも立派な「補強」だ。金が無い球団はこういう「補強策」しかないだろう。ピンポイント補強を可能にするには、FA制度の活性化が一つの方策となると思う。広島なんか、FAと言えば「持っていかれる」とばかり考えているように思う。逆転の発想も必要だと思うけどな。

ted9aoki23 at 12:00│Comments(2)TrackBack(0) プロ野球 

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この記事へのコメント

1. Posted by kazu-ct   2008年01月26日 21:52
3者の戦力分析、どれも説得力ありです。
特に岡本はネームとしては大きいですよね。

ただ、人的補償制度自体はどうでしょう。以前の江藤、工藤、吉武らも含め岡本、福地クラスが動くくらいのダイナミズムがあると見る方は楽しめる、というメリットの方が大きい気がします。カネがないチームもFA獲得側に回れるようにという目的なら、むしろ金銭補償を無くすか小さくする方が効果的ではないでしょうか。
2. Posted by 純正野球ファン   2008年02月05日 21:07
金銭補償がメジャー移籍だと発生しなくて、日本国内では発生するってのも問題ですし、日本のFA制度は出来や使い勝手が悪いなーという気はします。

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