2008年02月25日

真の日本一の外野手を探す

スワの新星・佐藤由規が154キロデビューですか。この時期にこのスピードは凄いです。コイツ、ホントに160キロ投げるかもしれません。これだけのスピードがあれば外角の出し入れ(スライダーも一級品!)で勝負できますね。結構、一年目から勝つかもしれません。あと、実戦で投げているのを見るとフォームのリズムが速いですね。あれ、足が上がったと思ったらもうキャッチャーが捕っていたって感覚。タイミングも取りにくいでしょうねえ。
 高校時代から体も大きくなっているし、より思い切り腕を振っている印象。夏の甲子園から十分練習したんでしょうね。

 さて、守備の数字をいろいろとまさぐるのが好きなんですが、今日は「真の日本一の外野手は誰か?」をテーマにいろいろと考えてみたいと思います。


刺殺とは??

 外野手の能力を測る最も効果的な指標は何か。私は「刺殺」という数字に拘りたい。刺殺とは守備側プレイヤーが打者や走者を直接的にアウトにすること、またはその野手に記録される守備記録のことである。反対の言葉は「捕殺」でランナーを送球でアウトにすることである。なんか反対のように感じるんですが、とにかく野球界では「刺殺」と「捕殺」はそういう関係で成り立っています。
 内野手にとって刺殺はフライを捕ったときや、フォースアウトを捕ったときに記録されます。それ故、一塁手に多くつきます。また、三振を捕ったときに捕手に記録されます。だから捕手も多く刺殺が記録されます。
 さて、外野手が刺殺を記録される時、それはフライ・ライナーをキャッチしたときにしか記録されません。外野手が二塁や三塁で送球をキャッチしてフォースアウトを取ることはあり得ませんからね。それ故、外野手の刺殺数はいかに多くの打球をダイレクトでキャッチしたかを表します。外野手の守備範囲の広さを如実に表現する数字です。

2007シーズン刺殺ランキング

 昨年の刺殺数ランキング(100刺殺以上)を掲載します。小数点のついた数字は「刺殺率」と言いましょうか、刺殺数を試合数で割ったもので、単純に「1試合出場するといくつフライをキャッチしたか」の数字です。守備位置は私が勝手に決めました。大体、ここ守ってたなあという目安です。


               刺殺数 試合数 刺殺率
森本稀哲(日ハム)中堅  342 143 2・39
サブロー(ロッテ)右翼  278 130 2・13
ガイエル(ヤク) 右翼  274 142 1・93
鉄平  (楽天) 中堅  270 132 2・05
G佐藤 (西武) 右翼  267 131 2・04
青木宣親(ヤク) 中堅  265 143 1・85
金城龍彦(横浜) 中堅  257 137 1・88
稲葉篤紀(日ハム) 右翼  255 123 2・07
早川大輔(ロッテ) 中堅  246 128 1・92
多村仁(ソフト) 中左  223 126 1・77
イ・ビョンギュ(中日) 中堅  222 127 1・75
柴原洋 (ソフト) 右翼  210 123 1・70
高橋由伸(巨人) 右翼  210 128 1・64
赤星憲広(阪神) 中堅  209 118 1・77
大村直之(ソフト) 中左  203 110 1・84
礒部公一(楽天) 右翼  198 117 1・69
和田一浩(西武) 左翼  195 102 1・91
金本知憲(阪神) 左翼  186 144 1・29
下山真二(オリ) 右翼  185 106 1・75
ラミレス(ヤク) 左翼  184 132 1・39
村松有人(オリ) 中堅  181 118 1・53
福地寿樹(西武) 中堅  177  95 1・86
福留孝介(中日) 右翼  171  79 2・17
谷佳知 (巨人) 左翼  171 139 1・23
森野将彦(中日) 左翼  156  99 1・57
ホリンズ(巨人) 中堅  167 112 1・49
前田智徳(広島) 左翼  147  96 1・53
アレックス(広島) 中堅  139  73 1・90
ベニー(ロッテ) 左翼  129  91 1・41
坪井智哉(日ハム) 左翼  126  80 1・58
嶋重宣 (広島) 右翼  123  82 1・50
佐伯貴弘(横浜) 左翼  122  91 1・34
内川聖一(横浜) 右翼  119  79 1・51
栗山巧 (西武) 中堅  119  68 1・75
アレン (オリ) 左翼  116  74 1・57
工藤隆人(日ハム) 左翼  114  69 1・65
牧田明久(楽天) 右翼  113  92 1・23
リック (楽天) 左翼  104  78 1・33
大西宏明(オリ) 右翼  102  73 1・40
英智  (中日) ※   102  86 1・19
桜井広大(阪神) 右翼  101  73 1・38

 うーん。森本の342ってのは凄い数字です。後で紹介しますが、タイガースの年間刺殺数の半分近い数字を一人で稼いでいます。もうちょっと分かりやすい数字で、刺殺率のベスト10も掲載します。

森本 稀哲(日ハム) 中堅  342 143 2・39
福留 孝介(中 日) 右翼  171  79 2・17
サブロー (ロッテ) 右翼  278 130 2・13
稲葉 篤紀(日ハム) 右翼  255 123 2・07
鉄   平(楽 天) 中堅  270 132 2・05
G.G.佐藤(西 武) 右翼  267 131 2・04
ガイエル (ヤ ク) 右翼  274 142 1・93
早川 大輔(ロッテ) 中堅  246 128 1・92
和田 一浩(西 武) 左翼  195 102 1・91
アレックス(広 島) 中堅  139  73 1・90

 こう見ても森本の数字が際立っている。森本は名実ともに日本ナンバーワンの外野手と言って差し支えないでしょう。稲葉も数で8位、率で4位に食い込んでいます。二人で多くのアウトを稼いでいることは明白です。
 刺殺率が中堅になるにつれて高くなるのは、守備範囲にファールゾーンがありませんから、高くなるのは当然として、次に多いのは右翼。びっくりしたのはガイエルですね。青木よりも9つも多くアウトを稼いでいる。これは、ラミレスの守備範囲の狭さにもよるのでしょう。青木が左中間方面をカバーして、右中間方面はガイエルに任せるという図式が成り立っていたのでしょうか。ガイエルはシーズン直後に勝負どころで落球するなど、守備がダメという印象を持っていましたが、結果的に多くのフライを捕っていたんですね。神宮の外野が狭かったことを考慮するのは、ちょっとこの数字は怪奇的ですらあります。

 また、和田一浩の数字も以外の一言。率、数とも左翼手では最高の数字です。和田って意外と守備範囲、広かったんですね〜。あとGG佐藤もビックリです。ガイエル、和田、GGってのは長い距離を走ると足が速いタイプなのかもしれません。見た目には速く見えませんが、そういうのっているんですね。ガイエルのランニング本塁打は速かったですよ。確かに。
それとメジャーに行ってしまいましたが、率に直すと福留は相当高い。福留の守備範囲の広さは本物だったんですねえ。フル出場していたら312刺殺を記録していた計算になります。落合監督はどうして福留をセンターで使わなかったんでしょうかね。謎です。

チーム別刺殺数ランキングをチェック 

チーム別に並べるとこれもまた面白い。というか気分がいい(笑)。刺殺数と全刺殺数(つまり総アウト)に占める外野手の刺殺数の割合を記しておきます。

北海道日本ハムファイターズ  933  24・15%
西武ライオンズ        907  23・87%
千葉ロッテマリーンズ     885  22・73%
福岡ソフトバンクホークス   836  21・56%
オリックスバファローズ    825  21・39%
東北楽天ゴールデンイーグルス 824  21・58%
中日ドラゴンズ        801  20・85%
広島東洋カープ        760  19・79%
東京ヤクルトスワローズ    752  19・93%
読売ジャイアンツ       746  19・30%
横浜ベイスターズ       738  19・45%
阪神タイガース        702  18・17%

 これまた綺麗にパリーグが上位にいきました。パリーグの球場は全体的に外野が広いということが原因と思われます。特にファイターズの本拠地・札幌ドームは非常にファールゾーンが広いですから、刺殺数が多くなるのも当たり前です。
 ん、外野が広くてファールゾーンが広いグラウンドを本拠地にしている球団が最下位じゃないか。阪神タイガース。こりゃ、どういうことですか。ファイターズの外野陣と比べると約6%も捕球できる当たりをヒットにしているということになります。外野の刺殺数が少ないイコールヒットが増えているということですからね。こりゃ、大分違いますよ。そもそも、タイガースは少ない点差を守り勝つチームなのに…。
 意外なのは中日ですかね。鉄壁の外野陣と言われていますが、実はオリックスよりも大したこと無い外野陣ってことですかね。いや、ちょっと待てよ、中日の場合、そもそも外野にボールが飛ばないくらい、いい投手陣を持っているということかもしれません。
 
外野守備こそ日本野球の華

 改めて森本稀哲の342刺殺という数字がいかに破格か。あるサイトに92年から06年までの刺殺数が掲載されていた。(余談ですがこの「セットポジション」ってサイトは本当に凄いですね。私の大好きなサイトです。一度お会いしてみたいなあ、製作者に)。
 年間300刺殺を記録した外野手は過去16年で延べ9人。いずれも歴史に残る名外野手である。

94年 秋山 幸二(ダイエー) 304
95年 飯田 哲也(ヤクルト) 305
97年 緒方 孝市(広  島) 317
97年 井出 竜也(日本ハム) 313
97年 田口  壮(オリックス)302
00年 柴原  洋(ダイエー) 300
01年 大村 直之(ダイエー) 315
05年 青木 宣親(ヤクルト) 320
06年 青木 宣親(ヤクルト) 306
07年 森本 稀哲(北日ハム) 342

 これを見ると例えばイチローやSHINJOなんか一度も「300刺殺」を記録していない。300刺殺は年に1回出るか出ないかのとてつもない数字なのだろう。青木の2年連続300刺殺以上も偉大な記録だが、森本の342という数字が凄い。92年以降のプロ野球界でダントツの新記録だ。プロ野球記録はいくつなんだろうか。もしかしたら、最近の球場の広さを考えると、昨年の森本の数字はプロ野球記録だったのかもしれない。

 日本野球は外野守備のレベルが高い。これは間違いのないことであるが、その中でも森本の外野守備は最高傑作ということだろう。確かに、守備範囲が広いだけでなくそのポジショニングも一級品。日ハム投手陣を明確に救っている。これは是非とも注目したい才覚なのである。

 もう一人、青木も今年は2年ぶりの300刺殺を狙って欲しい。しかし、2年連続300刺殺の青木がどうして今年に限って265なんて平凡な数字に終わったか・・・

 ん!? 

 そうか、去年は魔将ガイエル様が隣にいたんだな。

 これはきっと魔将ガイエルが時空を歪めて、センターフライをライトフライにしてしまっていたのだ!! そうに違いない!!


 恐るべし、魔将ガイエル…

ted9aoki23 at 22:58│Comments(6)TrackBack(0) 守備論 

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この記事へのコメント

1. Posted by とおりすがり3   2008年02月26日 18:24
以前(といっても随分前ですが)守備のデータを分析していて壁に当たったのが、守備のイニング数や外野のポジション別への総飛球数などのデータが野球体育博物館の端末使っても手に入らなかったことですね(いまでもそうでしょうか?)。
千葉のプボさんならそういうデータも持っていそうですが、公式判定ではないでしょうし。
公式記録員の人が飛球ごとに守備すべきだったポジションを判定、記録してくれればいいのに、などと思ったりしました(笑)。
ただ、外野を極端に左右に振るシフトとか7人内野(2人外野)とか多用するチームがあるとデータが偏りそうです。
2. Posted by 1中日ファン   2008年02月27日 13:10
福留は06年序盤にセンターやったのですが、あんまりしっくりいかなかったのですぐにライトに戻ったんです。本人も拘りがある様で、カブスに入ったのはライトでの起用を確約してくれたこともある様です。
外野の刺殺数については、中日の場合荒木、井端がかなり深くまでフライを取りに行くので、彼らに任しているってのもあるんじゃないでしょうか。
3. Posted by 純正野球ファン   2008年02月27日 22:07
とおりすがり3様
 確かにそういう壁はわかります(笑)。守備の場合ポジショニングが与える影響も大きいですしね。特に外野の場合。ただ、今あるデータでもかなり均されているようにも感じますが。
1中日ファン様
 福留はライトにこだわりがあるんですか。それは知りませんでした。もったいないなぁ。
 それから、外野の刺殺数についてはリーグ全体に言える事ですが、セリーグの方が全体的に三振が多いんですね。チーム別の被安打数とか奪三振数をセパで比較してみると、意外な事実が…。
4. Posted by 元IB現PB   2008年02月28日 20:58
 セットポジションはすごいサイトで大好きです。とそれを言いたいために書き込んでる私ってもいかがかと思いますが。
 私は大洋(横浜)戦しかロクに見ていない偏ったファンなので視野は狭いのですが、刺殺数は青木がダントツだと思ってました。あと、敵としてみるとガイエルの守備は絶対悪くないですよ。いった!抜けた!と思うといつのまにかそこにちゃんといる感じです。

 
5. Posted by 和登村   2008年02月29日 09:44
外野手刺殺数の日本記録は1948年の青田昇で391刺殺です。

1947年のチーム打率トップは3位大阪タイガースの.262ですが、48年にこれより低かったのは8球団中1チームだけです。

同様に、47年のチーム防御率最下位は6位大陽ロビンスの3.47ですが、48年にこれより良かったのは優勝したジャイアンツだけです。

つまり、1948年のシーズンは極端に「打高投低」にシフトした年ですから、ちょっと比較対象外かもしれません。

2リーグ分立後の最高記録は1963年広瀬叔功の353刺殺ですが、これは150試合制のシーズンです。全盛期の福本が130試合制のときに351刺殺を記録したのは1977年です。断片的な記録しか把握していないのですが、それ以来350刺殺は出ていないはずです(たぶん)。
6. Posted by 純正野球ファン   2008年03月06日 21:22
元IB現PB様
 ガイエル、敵から見ると壮見えるんですか。やっぱりシーズン当初の甲子園の落球のイメージが強いのかな。今年はちょっと肯定的に注目してみます。
和登村様
 貴重なコメント、ありがとうございます。これほどまでの「マニア」の方に訪れていただけて光栄です。
 森本の342ってのは悪くないんですね。今年は350を目標にしてもらいたいです。しかし、391ってのは不滅の大記録ですね。

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