2008年11月06日

原監督の胆力

 今日の試合ははっきり言って、ライオンズが勝てた試合、勝たなきゃいけない試合でした。

 それを、巨人の大勝に導いたのは原監督の采配によるものだったと思います。その気迫が選手に伝わった結果ではないでしょうか。

●李のスタメン落ち、上原の降板

 巨人は全く調子の上がらない李をスタメンから外し5番には指名打者で阿部を起用しました。初回、西武が先制した次の回、阿部が本塁打で同点に追いついたことで原監督の選手起用がまず当たりました。

 しかし、西武の流れは止まらず上原が3回に2点目を奪われると、あっさり上原を諦め、山口を投入した。上原は中4日の影響からか、ストレートが走らず、フォークを駆使して何とか最少失点でこらえていた。「エース」とは言えシーズンでは二軍落ちも経験した上原。信頼と不審が交錯するエースを見切り、涌井相手に1点勝負となることをベンチに知らしめた。絶品の継投だった。

 「調子のいいものから使う」という原監督の方針はシーズンからぶれていなかった。選手層が厚い巨人のなせる業だが、春先から調子が上がらない選手を我慢して使うのではなく、ベンチの戦力を自在に起用してきた原監督の采配が、土壇場でチームの強さとなったと思う。今日は亀井、脇谷といった「脇役」が「主役」となった試合だった。


●好機を逃した西武

 初回、西武が3連打で無死満塁とした場面から、「このまま西武が爆発するな」と思った。しかし、無死満塁から1点に止まり、3回は坂本のエラーから1点を勝ち越すが、そこからの「追い打ち」が出なかった。序盤の巨人はわざわざ負けてくれるような試合運びだったが、序盤で試合を決めることが出来ず、中盤からは巨人の潤沢なブルペンに行く手を阻まれた。

 そして、細川、中島の負傷交代である。細川はベストナイン確実の安定感で、負傷退場は7回巨人に逆転を許した際、銀仁朗のリードは細川に比べると心許ないものだった。中島は攻撃の大黒柱。滅多なケガでは休まない中島が試合から去ったことは、西武ベンチに大きな動揺を与えただろう。

 序盤から乗り切れなかったところで、試合の流れは変わっていった。昨日、西武は一度乗ると止まらないと指摘したが、乗りかけた西武を完全に乗らせなかったのは、上原の踏ん張りであり、ブルペンを惜しげもなく投入した原監督の采配だった。

●エースへの信頼

 中4日でマウンドに上がった涌井だったが、中盤以降明らかに疲れていた。ブルペンが充実していたならば、7回は頭から交代だったろう。予兆は6回から現れていたと思う。二死三塁で木村拓也を渾身のストレートで三振に抑えたが、変化球は全て高めに浮き、まさにあっぷあっぷの状態だった。

 1点差で終盤はリリーフに出る投手にとっても厳しい場面。渡辺監督はエース涌井に懸けたのだろう。この辺の信頼は上原を諦めた原監督と好対照だが、これも投手出身監督だからだろうか。西武に信頼できるセットアッパーがいれば、と思うがこれも後の祭である。いずれにしても、西武は涌井を引っ張り過ぎた。7回に突如乱れたのは、当然という思いがしないでもない。

 いずれにしても、巨人は王手で西武は追い込まれた。04年は西武は同じ状況から敵地で連勝して日本一に輝いたが、今度は難しいだろう。中島の負傷が痛すぎる。エースで落として、打線の中心を欠いた。頼みの中村も今日はノーヒット2三振では苦しい。唯一の光明は平尾がクルーンから放った9回の本塁打か。まだ、闘争心は残っていることを知らしめた。

 昨日は「流れは西武だ」と言いながら、一日でここまでぶれてしまうのも情けないが、今日の巨人の戦いぶりはまさに「強い」というものだった。昨日の流れが続いているのを試合中に断ち切って巻き返した巨人の強さに、西武はもう一度巻き返すことが出来るだろうか。04年は松坂という大エースが残っていたが、今年はもう涌井を使い切ってしまっている。



※追記

●ラミちゃんの激走について

 7回巨人逆転の口火を切ったのはラミレスの走塁でした。打球が二塁ベースに当たって大きく弾んだところで一気に二塁を陥れた走塁だったのですが、ヤクルト時代からラミちゃんに熱視線のおいらとしては、「二塁行ける」と思いました。
 ラミちゃんは加速がつくと結構速いんです。右打者で唯一の200本安打を記録した裏には引っ掛けた三遊間のあたりをせっせと走って内野安打を稼いだことが大きかった。

 果たして西武の守備陣にそういう頭があったか。ライトの佐藤の動きは映像に捉えていないのでわかりませんが、二塁手の片岡の動きを見ていると「スキ」があったような気がしてならない。こういうのは高くつく。

 もう一つ、阿部のライト前でラミちゃんが生還したのですが、この場面でもライトの守備位置が気になった。「同点OK」の守備位置だったのではなかろうか。まぁ、佐藤があまり肩がないタイプってのもあるけど、あそこは三塁で止めないといけない場面で、守備位置をもう少し浅く構えていれば、踏みとどまったように覆う。恐らくビッグイニングを怖れていたのだろうが、涌井に託した以上1点に拘った守りをしてもよかったのではないだろうか。同点に追いついた時点で、この試合は巨人に流れが傾くのは明らかだったのだから。
 

ted9aoki23 at 22:39│Comments(1)TrackBack(0) NPB2008 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by 野球狂   2008年11月07日 00:18
相変わらずの鋭い分析、毎日楽しく読ませて貰ってます。
今日は初回で何点取られるか、といった様相でしたが上原も悪いなり(三回で被安打7ですか)に最後の一線を守り切ったのは、よく踏ん張ったと言えますね。
原監督もCSでのクルーンの見切りといい、短期決戦での采配なかなかでは?
西武はよく考えたら前半の快進撃を支えたGGやブラゼルがいないですもんね。たらればいっても詮無い事ですが居てれば凄い厚みです

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔