2009年05月07日
ショートゴロ2題
今日のお題は「ショートゴロ」です。
一つは走塁面から、もう一つは守備面から。
一つは走塁面から、もう一つは守備面から。
●ノリの好走塁
昨日、西武ドームに行っていたのですが、最近よく耳にするのは「楽天の強さは本物か」ということ。これまで勝ち越したことの無い創立5年目の新球団がここまで貯金8で首位を快走しているのですから、そういう話題になるのは当然。
ノムさんは「春の珍事」とか言ってとぼけていますが、これは本物で、ノムさんも内心、相当の手ごたえ、優勝の可能性もかなり高いと確信しているのではないかと思います。
今年の楽天を見ていると、97年、下馬評の低かったスワローズが首位を独走したシーズンを思い出します。とにかく連敗しない年でした。4月5月は「あ、また勝った」と思っている間に、あれよあれよと走りぬけたシーズンでした。今年の楽天はそんな雰囲気を感じます。
野村野球が良く浸透していると感じたのは昨日の西武戦で楽天が同点に追いついたシーンでした。先頭の中村ノリが左中間を破る二塁打。続くセギノールが強い当たりのショートゴロを打ったシーンでした。
ノリは迷わず三塁を陥れました。よく走ったなという走塁で今日もずっとその場面の事を考えていました。
無死二塁では右方向のゴロがセオリー。しかし、セギノールの場合あまり制約せずに好きに打たせたほうが結果が出やすいタイプです。ということは、二塁走者のノリとしては「ショートゴロでの進塁」も十分考えておかなければならないシーンでした。
無死二塁でショートゴロが飛んだ場合、最初から三塁を諦めているのと、狙っているのでは結果が全然違います。ショートに飛んだ打球でスタートを切るのは勇気が必要です。しかし、三塁にボールを放るのも同じくらい勇気が必要です。
●走るリスク、走らないリスク
仮に走らなかったとしましょう。次の打者でノリが生還できるのは最低でもヒットです。外野手は五分五分のタイミングだと100%本塁に返球してきます。一か八かのタイミングでも本塁でのタッチアウトを狙って外野手はトライしてくるでしょう。ワンヒットで本塁を陥れる確率はノリの走力を考えるとかなり低いということになります。
次にショートゴロで三塁に走った場合。遊撃手はどれくらいの確率でアウトに出来ると確信したら三塁に送球するでしょうか。多分ですが「100%アウトに出来る」くらいの確信が無ければなかなか三塁には送球できないのではないでしょうか。ちょっとでも「間に合わないかな」と思ったら、一塁で確実にアウトのではないでしょうか。無死二塁でフィルダースチョイスの無死一三塁はベンチに帰ったら何を言われるか分かりません。
ということは、ノリは走者としてかなり強い意志で「ショートゴロでもGO」と思っていなくちゃいけないということになります。極端な話、1%でも「行ける」と確信すれば迷い無く三塁に行かなきゃダメです。ためらいなく走る姿勢が相手側にためらいを与えるのです。相手のスキを突くとはまさにこういった走塁。無死三塁だと犠牲フライや内野ゴロでの得点もあり得ます。実際、ノリは高須の犠牲フライで本塁に帰ってきたのでした。
このシーンはかなり楽天野球の成熟を感じたのです。ノリほどのベテランが走塁に対して高い意識を持っていて、チームとしての方針も徹底されている。こりゃ、強いなぁと実感しました。
●宮本慎也の凄い判断
攻める側は多少のリスクは取るべきで、守る側はいささかのリスクも犯してはならない。これが「鉄則」かと思いきや、真逆のシーンが今日のスワローズとタイガースとの試合で起こりました。
6回表タイガースは一死三塁で打者鳥谷。三塁走者は赤星でした。鳥谷の当たりはショートゴロ。スワローズのショートは宮本でした。宮本は一塁寄り(自分よりも左側)に飛んだゴロを捌くと、体を反転させて三塁に送球。赤星を刺したのです。
全く唸るほかないプレーです。
走者赤星です。ゴロが転がれば一点は確実と見るのが普通です。しかし、赤星は宮本の守備位置を見てびっくりしたのではないでしょうか。ただの前進守備ではなく「超前進守備」を敷いていたのです。赤星ほどの「走り屋」が一度飛び出して三塁でアウトになるなんて考えられないのですが、赤星が考えられないほど宮本は前に守っていた。
宮本の心理としては「赤星だから並の前進守備では本塁では殺せない。一か八かの守備位置で絶対本塁で刺そう」といったところではないでしょうか。6回同点1対1です。一点勝負の展開で「賭け」に出たのでしょうか。あるいは石川の投球の組み立ての中で、極端に前に守ったのかもしれません。いずれにしても赤星がギャンブルスタート(バットにボールが当たった瞬間スタートを切る走塁)に出ても殺せるところを宮本は守っていたのです。宮本の凄さは守備位置の決め方で7割方勝負を決めてしまうところです。
さらに驚くのは、宮本は赤星が慌てて帰塁するのを見越して迷い無く三塁に送球した点です。ちょっとためらうと三塁では刺せません。「ショートゴロ→前進守備→慌てて戻る」という一連の流れをわかっていたように、取った瞬間三塁に向き直ったのです。
もしも、向き直った瞬間、赤星の帰塁が早ければ一塁に送球し、「行ける」と確信できれば三塁に送球する。赤星ほどのセンスがあればこの守備位置で打球を処理すれば100%三塁に戻る。これくらいは十分に予想していないとあのプレーはできないでしょう。
今まで何度も宮本の恐ろしさは見てきましたが、今日ほどのプレーはそうそう記憶にありません。「どうして、どうやったら、そんなプレーが出来るんですか?」と聞いてみたい限りです。
今季は三塁手として試合に出続けた宮本でしたが、ここ数試合は川島慶三の故障と不調もあって、遊撃に回っています。まだまだ宮本のショートが見たい、そう思わせるプレーでした。
それにしても宮本は一体どこまで予期してプレーしていたのでしょう。果たしてノリが三塁にスタートを切った場面で、ショートが宮本だったらどうしていたでしょう。三塁に投げたでしょうか。
昨日、西武ドームに行っていたのですが、最近よく耳にするのは「楽天の強さは本物か」ということ。これまで勝ち越したことの無い創立5年目の新球団がここまで貯金8で首位を快走しているのですから、そういう話題になるのは当然。
ノムさんは「春の珍事」とか言ってとぼけていますが、これは本物で、ノムさんも内心、相当の手ごたえ、優勝の可能性もかなり高いと確信しているのではないかと思います。
今年の楽天を見ていると、97年、下馬評の低かったスワローズが首位を独走したシーズンを思い出します。とにかく連敗しない年でした。4月5月は「あ、また勝った」と思っている間に、あれよあれよと走りぬけたシーズンでした。今年の楽天はそんな雰囲気を感じます。
野村野球が良く浸透していると感じたのは昨日の西武戦で楽天が同点に追いついたシーンでした。先頭の中村ノリが左中間を破る二塁打。続くセギノールが強い当たりのショートゴロを打ったシーンでした。
ノリは迷わず三塁を陥れました。よく走ったなという走塁で今日もずっとその場面の事を考えていました。
無死二塁では右方向のゴロがセオリー。しかし、セギノールの場合あまり制約せずに好きに打たせたほうが結果が出やすいタイプです。ということは、二塁走者のノリとしては「ショートゴロでの進塁」も十分考えておかなければならないシーンでした。
無死二塁でショートゴロが飛んだ場合、最初から三塁を諦めているのと、狙っているのでは結果が全然違います。ショートに飛んだ打球でスタートを切るのは勇気が必要です。しかし、三塁にボールを放るのも同じくらい勇気が必要です。
●走るリスク、走らないリスク
仮に走らなかったとしましょう。次の打者でノリが生還できるのは最低でもヒットです。外野手は五分五分のタイミングだと100%本塁に返球してきます。一か八かのタイミングでも本塁でのタッチアウトを狙って外野手はトライしてくるでしょう。ワンヒットで本塁を陥れる確率はノリの走力を考えるとかなり低いということになります。
次にショートゴロで三塁に走った場合。遊撃手はどれくらいの確率でアウトに出来ると確信したら三塁に送球するでしょうか。多分ですが「100%アウトに出来る」くらいの確信が無ければなかなか三塁には送球できないのではないでしょうか。ちょっとでも「間に合わないかな」と思ったら、一塁で確実にアウトのではないでしょうか。無死二塁でフィルダースチョイスの無死一三塁はベンチに帰ったら何を言われるか分かりません。
ということは、ノリは走者としてかなり強い意志で「ショートゴロでもGO」と思っていなくちゃいけないということになります。極端な話、1%でも「行ける」と確信すれば迷い無く三塁に行かなきゃダメです。ためらいなく走る姿勢が相手側にためらいを与えるのです。相手のスキを突くとはまさにこういった走塁。無死三塁だと犠牲フライや内野ゴロでの得点もあり得ます。実際、ノリは高須の犠牲フライで本塁に帰ってきたのでした。
このシーンはかなり楽天野球の成熟を感じたのです。ノリほどのベテランが走塁に対して高い意識を持っていて、チームとしての方針も徹底されている。こりゃ、強いなぁと実感しました。
●宮本慎也の凄い判断
攻める側は多少のリスクは取るべきで、守る側はいささかのリスクも犯してはならない。これが「鉄則」かと思いきや、真逆のシーンが今日のスワローズとタイガースとの試合で起こりました。
6回表タイガースは一死三塁で打者鳥谷。三塁走者は赤星でした。鳥谷の当たりはショートゴロ。スワローズのショートは宮本でした。宮本は一塁寄り(自分よりも左側)に飛んだゴロを捌くと、体を反転させて三塁に送球。赤星を刺したのです。
全く唸るほかないプレーです。
走者赤星です。ゴロが転がれば一点は確実と見るのが普通です。しかし、赤星は宮本の守備位置を見てびっくりしたのではないでしょうか。ただの前進守備ではなく「超前進守備」を敷いていたのです。赤星ほどの「走り屋」が一度飛び出して三塁でアウトになるなんて考えられないのですが、赤星が考えられないほど宮本は前に守っていた。
宮本の心理としては「赤星だから並の前進守備では本塁では殺せない。一か八かの守備位置で絶対本塁で刺そう」といったところではないでしょうか。6回同点1対1です。一点勝負の展開で「賭け」に出たのでしょうか。あるいは石川の投球の組み立ての中で、極端に前に守ったのかもしれません。いずれにしても赤星がギャンブルスタート(バットにボールが当たった瞬間スタートを切る走塁)に出ても殺せるところを宮本は守っていたのです。宮本の凄さは守備位置の決め方で7割方勝負を決めてしまうところです。
さらに驚くのは、宮本は赤星が慌てて帰塁するのを見越して迷い無く三塁に送球した点です。ちょっとためらうと三塁では刺せません。「ショートゴロ→前進守備→慌てて戻る」という一連の流れをわかっていたように、取った瞬間三塁に向き直ったのです。
もしも、向き直った瞬間、赤星の帰塁が早ければ一塁に送球し、「行ける」と確信できれば三塁に送球する。赤星ほどのセンスがあればこの守備位置で打球を処理すれば100%三塁に戻る。これくらいは十分に予想していないとあのプレーはできないでしょう。
今まで何度も宮本の恐ろしさは見てきましたが、今日ほどのプレーはそうそう記憶にありません。「どうして、どうやったら、そんなプレーが出来るんですか?」と聞いてみたい限りです。
今季は三塁手として試合に出続けた宮本でしたが、ここ数試合は川島慶三の故障と不調もあって、遊撃に回っています。まだまだ宮本のショートが見たい、そう思わせるプレーでした。
それにしても宮本は一体どこまで予期してプレーしていたのでしょう。果たしてノリが三塁にスタートを切った場面で、ショートが宮本だったらどうしていたでしょう。三塁に投げたでしょうか。