2009年12月08日

プロの条件 その1

 もう半月くらい前になりましょうか。

 大学日本代表対U26プロ選抜という試合がありました。

 大学3年以下の有望株を一望できるという願っても無い試合。地上波の中継もありました。その試合を見ながら、

 果たしてプロで活躍できる投手の条件とは何だろうかと考えました。



●斎藤佑樹の憂鬱

 まずは、のっけから条件を示してしまいましょう。

 私の考える「条件」とは次の三つです。

1)制球力

2)絶対的変化球

3)球威(スピード)

 言われてみると「なーんだ」という話なんですが、この三つを備えてプロに入る投手はまず居ません。プロに入ってこの三つとも極めた投手もまず居ません。このうち一つでも満たせばプロで飯が食えます。二つ備われば10勝級。三つ揃えば20勝級です。

 で、この三つは明確に優先順位があります。つまり、?と?があれば、スピードは無くてもプロで十分通用します。

 基本的にそう考えてください。

 この三つを軸に話を果てしなく続けていきたいと思っていますが、まずは今日は「ハンカチ王子」こと早稲田の斎藤のことです。

 思えば「ハンカチ王子」から派生したのが「ハニカミ王子」で、その王子がトヨタのCMじゃ飯島直子に「今更」といわれてしまうのだから、時の流れは非常に早いものです。石川遼は3年で賞金王まで登り詰めましたが、斎藤は未だアマチュアです。そう考えると18歳から22歳までの4年間ってのは可能性も詰まっている、微妙な年代です。

 で、話を戻すと、斎藤なんですが、その試合で先発したわけですが、ピッチングを見ていて率直に言って「なんだかもったいないなぁ」と思いました。

 彼は大学に入ってしばしばスピードへのこだわりを口にしていました。高校時代の斎藤はなかなかの制球力を備え、変化球も独特のスライダーは非常に面白い球種でした。

 彼は他のプロ選手(例えば田中マー君)と比べると体も小さい。プロに入れば自ずと「制球力」「変化球」で勝負するタイプになったでしょう。斎藤には他の投手に無いクレバーさがあります。

 彼は本当に賢いなあと感心したのは、そのプロアマ戦で「自分もプロで通用するかなと思った」とコメントしています。どこまでも謙虚でいるならばこんな台詞は出てきません。若い頃からマスコミに囲まれていると、どういう発言すれば周りが喜ぶか分かっていて、その通り発言できて、かつ失言がない。こういう賢さは斎藤や石川にあって、亀田兄弟には無い部分。ついでに言えば、こういう賢さを持っている相撲取りは山本山くらいしか思い当たりません。

 この能力は、ある種の洞察力だと思うんですね。彼のこういう部分は間違いなくマウンドで生きると思います。

 そういう斎藤が大学に入ってスピードに拘った。思うに、若い頃の桑田真澄のイメージなんだろう。桑田も体が小さかったが凄いストレートを投げた。「わかっていて打てないストレート」というのは投手にとって目指すべき命題である。学生の斎藤がそこに目標を見出し、目指したのは理解できる。

 先ほど挙げた三つが全て備わって一流、二つで一流半、一つでもあれば二流とすれば、斎藤は明確に一流を志している。それは素晴らしいこと。

 しかしながら、結果としてスピードへのこだわりがバランスを崩して、絶対的変化球が絶対的でなくなり、制球力もややアバウトになってしまっている。

 その結果、坂本には甘く入ったスライダーを痛打され、新井には外角低目を狙ったのが高く入ってタイムリーを打たれた。もうちょっとバランス良く能力を伸ばせばいいのに、あえてストレートに突出した鍛え方をここ数年していると思う。そこがちょっと「もったいない」と思うのだ。志が高過ぎて、自分を見失う結果にならないかと心配にもなる。

 ただ、斎藤が「通用するかな」と口にしたのはそれなりの自信も得たということだろう。一イニング限定とは言え、斎藤の投じていたストレートは低めでも伸びがあって、スピードもある。プロでも十分通用するストレートだったと思う。新井には見え見えのストレート勝負を挑んだが、もう少し低めに抑えればセカンドゴロだったという手応えを掴んだと思う。

 3年の冬にここまで出来れば十分、あとは変化球と制球力を仕上げればいいと思ったはずだ。そこを確認して、あと1年に生かせるクレバーさが斎藤にはあるだろう。少なくとも自分を見失ったりはしないだろう。この辺が、そこらの若い選手とはモノが違うと思う。

 とにかく大学ラストイヤーは誰もが注目する。「ハンカチ王子」から3年経っても東京ドームを満員(前売り券は売り切れた!)に出来るだけの「動員力」を持っている。その事実を持ってしても斎藤はドラ1の資格がある。

 最後の一年は「仕上げ」に費やして欲しいな、というのが斎藤を見た感想である。

ted9aoki23 at 20:30│Comments(0)TrackBack(0) ドラフト候補評 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔