2010年01月18日

力士の才能

 余力があるのでもう一つ。

 

 日曜日の大相撲の解説は貴乃花親方だった。
 
 貴乃花親方、何言っているかよくわからないのですが、よく聞いていると結構難しいことをサラリと言うから面白い。

 白鵬・稀勢の里は熱戦だった。

 稀勢の里が土俵際まで押し込まれたが、そこから左四つ右上手に組みとめ、右上手を引き付けて白鵬を土俵際まで寄り立てた。が、そこから白鵬が粘って左下手をじわりじわりと取って、切れ味鋭い投げで切って捨てた。

 貴乃花親方は稀勢の里の勝機を寄り立てたときと見て、寄り切れなかったのが「右の上手が伸びていたから。深く取り直せば勝てただろう」と分析した。

 ああ、なるほどなあと思う。確かに白鵬と稀勢の里の実力ならば、右のまわしが伸びきっては寄り切れない。が、これは言うはやすしだ。

 稀勢の里としては右上手の位置は完璧だった。深く引きなおすということは一度掴んだまわしを離す必要がある。その瞬間まわしを切られるかもしれない。
 
 あるいはがぶるような格好で出て行って引き直すという選択肢もあっただろう。だが、これは突き落としを食らう可能性もある。

 こうなると相撲の奥深さを感じてしまう。

 貴乃花はこういった難しいことを平然とやってのけた。よく見たのが、下手を一旦離してヒジを張って相手の上手を切る動き。アレも簡単そうにやっていたけど、並の力士じゃ怖くて下手を自ら離すなんてできないんでしょうなぁ。

 稀勢の里も並の力士というか、まだ剥けるべき一皮があるということだろう。

 そう考えるとほとんどの親方は解説席で判を押すように「前に出ろ」と言うが、果たしてそれで本当に正しいのだろうか。もっと、技巧を尽くしているはずなのに、どうして解説できないのだろうか。そういう言葉を持っていないのかもしれない。

 進境著しいバルト(もう変換が面倒なんですが)の相撲にも貴乃花は面白いことを言っていた。土俵中央で日馬富士と組み合って止まっているとき、こういう状況だと大きいほうが有利になると言った。バルトはいずれ上手に届くと確信し、焦らず組み合った。このあたりはバルトは相撲のコツを掴んだのかもしれない。今場所のバルトは差し身がいい。勝機を見逃さなくなってきた。

 バルトは曙や武蔵丸や貴ノ浪の相撲を見るのが好きなんだそうだ。自分の力を生かす方法は親方なんか教えてくれないんだろうな。自分で研究する。好きこそものの上手なれというけれども、先達がどうやって勝機を逃さずにやってきたかを研究した成果が今場所は出ているように思える。技能賞をやってもいいくらいだ。

ted9aoki23 at 23:00│Comments(0)TrackBack(0) その他のスポーツ 

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