2010年03月01日
三洋三連覇
09〜10シーズンも三洋の三連覇で幕を閉じました。
秩父宮は泥まみれのグラウンドでしたが、試合内容は良かったですねえ。
三洋は最近大人びた強さがあります。
秩父宮は泥まみれのグラウンドでしたが、試合内容は良かったですねえ。
三洋は最近大人びた強さがあります。
●ターンオーバーの勝利
三洋は後半、強みのターンオーバーでトヨタを圧倒しました。
ここ数年、世界的にラグビーを支配してきた局面は、タックルされた後の接点でのボールの奪い合いでした。三洋はそこに強みがありました。タックルの強さ、二人目の寄りの速さ、相手に倒されない強さと上手さ。三洋はターンオーバーが取れる局面とそうでない局面の見極めが見事で、ここ数年のトップリーグを安定的な強さで戦っている軸は、ターンオーバーの強さでした。
大学、社会人を問わず、ひとつ軸になるのは接点での攻防でした。結果、相手にターンオーバーを許すか許さないかが勝敗を分ける大きなポイントとなり、接点の重要度が増しました。また、接点での攻防を避けるため、キックを主体に敵陣に入る攻めが主流となりました。相手にターンオーバーをされるリスクを背負って自陣から攻めるより、キックで敵陣に入るエリアマネジメントが問われる展開でした。
逆に言うと、キックが多くなりすぎてラグビーがつまらなくなっている。これは、実は世界的な問題なのです。
●南半球のルール解釈の変更
この局面を深刻に受け止めているのが、南半球の三カ国(NZ豪州南ア)、なかんずく2011年ワールドカップを開催するNZでした。
そこで、2月に開幕した南半球参加国のリーグ戦・スーパー14ではタックル後のルール解釈について大胆な変更を行いました。スーパー14はプロフェッショナルラグビーですから、常に試合を面白くエンターテイメント性を高めるためにルール変更を試験的に行うリーグ戦です。
今回のルール変更はタックラーがタックルを成立させた後、倒したプレーヤーが保持しているボールに連続的に働きかけることを厳密に禁じるということです。ルールには「タックラーは直ちにタックルされたプレーヤーを放さなければならない」「さらにタックラーは直ちに立ち上がるか、タックルされたプレーヤーとボールから直ちに離れなければならない」とあります。この繰り返し出てくる「直ちに」をより厳密に解釈しましょうということです。
結果、ターンオーバー戦の尖兵だったタックラーが無力化します。その結果、ターンオーバーが激減する。その結果、攻撃側はキックに頼らずより攻撃的なラグビーを展開するようになる。というのがこの解釈変更の狙いです。
既に国際機関であるIRB主催のセブンスの大会でもこの解釈が適用されるということですから、来年のワールドカップもこの解釈でプレーされることが濃厚です。ということは日本も速やかにルール解釈を変更した対応をしなければなりません。5月に行われるワールドカップ予選でも同様の解釈がなされる可能性大です。
ただ、現時点でスーパー14はクスリが効きすぎて極端に点が入るラグビーになっています。この解釈にはまだ紆余曲折があるかもしれません。
●節目はイノベーションの好機
ルールの解釈変更はどのクラブにとっても伸長のチャンスです。ルール解釈変更を生かせば、今までとは違ったラグビーのフェーズが生まれてくることが予想されます。
例えば・・・
※タックルの重要性が増す
国内ではターンオーバーを意識するあまり、低い「倒すタックル」ではなく、高い姿勢で相手を抱え込むよう「止めるタックル」が主流でした。解釈変更でもう一度原点である「倒すタックル」が求められるようになるでしょう。タックルしても相手ボールに絡む可能性は低くなるので、しっかり倒すことが重要になるでしょう。
※相手を下げるディフェンス
ターンオーバーが難しいとなると、まずディフェンスで相手を押し下げる早いディフェンスが効果を上げそうです。もちろんリスクは増しますが、リスクを背負って攻めてくる相手に見合うリスクを守備側も取る必要があります。パスとランで陣地を稼げないとなると、キックを蹴ってくる可能性も高まります。接点でのターンオーバーが無理なら、キックを蹴らせてボールを奪い返すという思想が色濃くなるでしょう。
※展開ラグビーに有利
接点でのスローダウンが難しくなるので、自ずとクイックボールが増えます。早い球出しからの展開を得意とするチームはますます攻撃のリズムがあがって、有利に働く可能性があります。大学では今年クイックボールからの攻撃を磨いてきた慶應、法政あたりは大歓迎の歓迎になるでしょう。
※重いチームはフェーズを重ねると破れる
巨大なチームとしては下手な小細工をせずにオーソドックスにタテに出ると確実にゲインを切れるということもあるようです。接点に人数をかけなくていいので、攻撃に参加できるコマの数が増えていきますから、粘り強くこじ開ける攻めは案外効果的です。実際にスーパー14では屈指の強力FWのブルズが猛威を振るっています。
・・・
とまぁ、チーム強化の方向性としてどこにターゲットを絞るかが重要なようです。スーパー14の戦いぶりを見ると、前に出るディフェンスが効果的なように感じます。とにかく反応を速くして、思い切って前に出て守るというコンセプトを統一させるのが日本にとっては大切な考え方のように感じます。
5月の日本代表の試合でこのルールをどう咀嚼してチーム作りをするのか。ワールドカップまであと1年ですので、非常に注目したいところです。
三洋は後半、強みのターンオーバーでトヨタを圧倒しました。
ここ数年、世界的にラグビーを支配してきた局面は、タックルされた後の接点でのボールの奪い合いでした。三洋はそこに強みがありました。タックルの強さ、二人目の寄りの速さ、相手に倒されない強さと上手さ。三洋はターンオーバーが取れる局面とそうでない局面の見極めが見事で、ここ数年のトップリーグを安定的な強さで戦っている軸は、ターンオーバーの強さでした。
大学、社会人を問わず、ひとつ軸になるのは接点での攻防でした。結果、相手にターンオーバーを許すか許さないかが勝敗を分ける大きなポイントとなり、接点の重要度が増しました。また、接点での攻防を避けるため、キックを主体に敵陣に入る攻めが主流となりました。相手にターンオーバーをされるリスクを背負って自陣から攻めるより、キックで敵陣に入るエリアマネジメントが問われる展開でした。
逆に言うと、キックが多くなりすぎてラグビーがつまらなくなっている。これは、実は世界的な問題なのです。
●南半球のルール解釈の変更
この局面を深刻に受け止めているのが、南半球の三カ国(NZ豪州南ア)、なかんずく2011年ワールドカップを開催するNZでした。
そこで、2月に開幕した南半球参加国のリーグ戦・スーパー14ではタックル後のルール解釈について大胆な変更を行いました。スーパー14はプロフェッショナルラグビーですから、常に試合を面白くエンターテイメント性を高めるためにルール変更を試験的に行うリーグ戦です。
今回のルール変更はタックラーがタックルを成立させた後、倒したプレーヤーが保持しているボールに連続的に働きかけることを厳密に禁じるということです。ルールには「タックラーは直ちにタックルされたプレーヤーを放さなければならない」「さらにタックラーは直ちに立ち上がるか、タックルされたプレーヤーとボールから直ちに離れなければならない」とあります。この繰り返し出てくる「直ちに」をより厳密に解釈しましょうということです。
結果、ターンオーバー戦の尖兵だったタックラーが無力化します。その結果、ターンオーバーが激減する。その結果、攻撃側はキックに頼らずより攻撃的なラグビーを展開するようになる。というのがこの解釈変更の狙いです。
既に国際機関であるIRB主催のセブンスの大会でもこの解釈が適用されるということですから、来年のワールドカップもこの解釈でプレーされることが濃厚です。ということは日本も速やかにルール解釈を変更した対応をしなければなりません。5月に行われるワールドカップ予選でも同様の解釈がなされる可能性大です。
ただ、現時点でスーパー14はクスリが効きすぎて極端に点が入るラグビーになっています。この解釈にはまだ紆余曲折があるかもしれません。
●節目はイノベーションの好機
ルールの解釈変更はどのクラブにとっても伸長のチャンスです。ルール解釈変更を生かせば、今までとは違ったラグビーのフェーズが生まれてくることが予想されます。
例えば・・・
※タックルの重要性が増す
国内ではターンオーバーを意識するあまり、低い「倒すタックル」ではなく、高い姿勢で相手を抱え込むよう「止めるタックル」が主流でした。解釈変更でもう一度原点である「倒すタックル」が求められるようになるでしょう。タックルしても相手ボールに絡む可能性は低くなるので、しっかり倒すことが重要になるでしょう。
※相手を下げるディフェンス
ターンオーバーが難しいとなると、まずディフェンスで相手を押し下げる早いディフェンスが効果を上げそうです。もちろんリスクは増しますが、リスクを背負って攻めてくる相手に見合うリスクを守備側も取る必要があります。パスとランで陣地を稼げないとなると、キックを蹴ってくる可能性も高まります。接点でのターンオーバーが無理なら、キックを蹴らせてボールを奪い返すという思想が色濃くなるでしょう。
※展開ラグビーに有利
接点でのスローダウンが難しくなるので、自ずとクイックボールが増えます。早い球出しからの展開を得意とするチームはますます攻撃のリズムがあがって、有利に働く可能性があります。大学では今年クイックボールからの攻撃を磨いてきた慶應、法政あたりは大歓迎の歓迎になるでしょう。
※重いチームはフェーズを重ねると破れる
巨大なチームとしては下手な小細工をせずにオーソドックスにタテに出ると確実にゲインを切れるということもあるようです。接点に人数をかけなくていいので、攻撃に参加できるコマの数が増えていきますから、粘り強くこじ開ける攻めは案外効果的です。実際にスーパー14では屈指の強力FWのブルズが猛威を振るっています。
・・・
とまぁ、チーム強化の方向性としてどこにターゲットを絞るかが重要なようです。スーパー14の戦いぶりを見ると、前に出るディフェンスが効果的なように感じます。とにかく反応を速くして、思い切って前に出て守るというコンセプトを統一させるのが日本にとっては大切な考え方のように感じます。
5月の日本代表の試合でこのルールをどう咀嚼してチーム作りをするのか。ワールドカップまであと1年ですので、非常に注目したいところです。