2010年08月21日
大旗は南海を渡る
今年の夏の甲子園は沖縄・興南が春夏連覇の偉業を達成しました。沖縄県勢としては史上初の夏優勝・春夏連覇。我喜屋監督は素晴らしいチームを作り上げました。
●夏は打力
興南を支えたのはやはり打力でした。一昔前の長打、長打というスタイルではなく、鋭い、強いゴロを打って繋ぐ打線でした。これは今年の傾向と言ってもいいかもしれません。早実が中京大中京相手に1イニング12点を取った試合がありましたが、走者を二塁、三塁に送ることで、内外野の前進守備を引き出し、強い打球で間を抜いていく。こういうバッティングスタイルが顕著になった大会だったと思います。
その象徴が興南だったと思います。
体重移動で遠くに飛ばすのではなく、低い重心、少ない体重移動、手元に引き付けてフルスイング。こういうスタイルが各打者に共通していました。高校野球では今後、ますますこういうスタイルが多くなるでしょう。
WBCで長打力のなかった日本が連覇したことが、高校野球にも影響しているんですかね。世界一のギリギリの一発勝負で強いスタイルは、長打力よりも確実性、繋ぎということになります。
こういうスタイルに対処する技術としては、守備力が重要です。強い打球をアウトに出来る技術を鍛えなければならないでしょう。あと、ベンチワーク。走者二塁なら外野前進、三塁なら内野前進という機械的なシフトならば、かえってビッグイニングを助長します。点差、イニング、相手の打力を考えたシフトを採らないと、1点を防ぐのが逆に大量点に繋がりかねません。
●島袋の直球勝負根性
優勝投手となった島袋君ですが、まあ、素晴らしい投手でした。ピンチになればなるほど、直球に拘って打者をねじ伏せました。こういうピンチで力を出せる能力は好きですねぇ。ストレートは球威があればわかっていても打てないボールで、キレと角度に加えて、夏はスピードも増していました。低目に140キロ台中盤のボールを集められる「根性」は、春夏連覇を達成する投手に相応しい能力でした。
決勝で打たれた一二三ですが、完全にスタミナ切れでした。ストレートの球威が4回以降、明らかに落ちましたから。島袋はニ連投、一二三は三連投というところに違いがあったかもしれません。
島袋は連投に耐えられるスタミナを培ってきたということでしょう。決勝ではこれまでのストレート中心の配球を、変化球中心の組み立てに変えて、東海大相模打線の的を絞らせなかった「戦略」も見事でした。
●沖縄の悲願を最も難しい春夏連覇で達成
史上6校目の春夏連覇。目標にもされ、これだけ対戦校の情報も容易に入るなかで、春夏連覇は本当に「偉業」です。
興南の我喜屋監督は就任4年目での偉業達成。本当に名監督です。我喜屋監督は「大昭和の我喜屋」というと、北海道のオールドファンには馴染みの深い存在だそうです。北海道に34年暮らし、大昭和で都市対抗を湧かせた名監督で、駒大苫小牧の香田監督に「雪上ノック」のアイディアを授けたのも我喜屋さんだそうです。
沖縄は春は強かったのですが、夏はなかなか壁を破れずにいました。興南の生活習慣から改め、一から全国で勝てるチームを作ってきた。
我喜屋さん自身、夏にベスト4まで進んで敗退した経験があるだけに、沖縄県全体の真紅の大優勝旗にかける執念が、決勝戦で出たように感じました。奇跡でも偶然でもない、横綱相撲の試合振りに感服しました。
●名解説者も引退
そして、この試合は鍛治舎巧さん、最後の解説となりました。鍛治舎さんはいつも温かく球児を見守る解説で、本当に心温まる人柄が出た解説でした。
最後の最後まで選手を溢れる愛情で見守り、野球文化を育む責任感に満ち溢れた解説でした。特にこの温かい姿勢はワンサイドゲームでこそ輝く。必死でひとつのアウトを採ろうとする東海大相模に対して、批判めいたことを一切言わない鍛治舎さん。最後に相応しい試合だったかもしれません。
その姿勢は、私にとっては野球を見る上での師、いや人生の師と言っても過言ではありません(あったことないけど)。
鍛治舎さんのような温かい人柄の人々が、日本の野球文化を守り育てているんだなぁと実感しました。その気概は、シニアの指導を通じて、脈々と受け継がれていると思います。
もう、あの「いいボールですねえ」「ああ、ナイスプレーだ」「腰の据わったいいバッティングですねぇ」が聞けないかと思うと寂しい。
そうか、「腰の据わったいいバッティング」ってのは、今年の興南こそそういうチームだった。
あぁ、いい解説だったですねぇ。ありがとう、カジタク。ありがとう、カジタク。
興南を支えたのはやはり打力でした。一昔前の長打、長打というスタイルではなく、鋭い、強いゴロを打って繋ぐ打線でした。これは今年の傾向と言ってもいいかもしれません。早実が中京大中京相手に1イニング12点を取った試合がありましたが、走者を二塁、三塁に送ることで、内外野の前進守備を引き出し、強い打球で間を抜いていく。こういうバッティングスタイルが顕著になった大会だったと思います。
その象徴が興南だったと思います。
体重移動で遠くに飛ばすのではなく、低い重心、少ない体重移動、手元に引き付けてフルスイング。こういうスタイルが各打者に共通していました。高校野球では今後、ますますこういうスタイルが多くなるでしょう。
WBCで長打力のなかった日本が連覇したことが、高校野球にも影響しているんですかね。世界一のギリギリの一発勝負で強いスタイルは、長打力よりも確実性、繋ぎということになります。
こういうスタイルに対処する技術としては、守備力が重要です。強い打球をアウトに出来る技術を鍛えなければならないでしょう。あと、ベンチワーク。走者二塁なら外野前進、三塁なら内野前進という機械的なシフトならば、かえってビッグイニングを助長します。点差、イニング、相手の打力を考えたシフトを採らないと、1点を防ぐのが逆に大量点に繋がりかねません。
●島袋の直球勝負根性
優勝投手となった島袋君ですが、まあ、素晴らしい投手でした。ピンチになればなるほど、直球に拘って打者をねじ伏せました。こういうピンチで力を出せる能力は好きですねぇ。ストレートは球威があればわかっていても打てないボールで、キレと角度に加えて、夏はスピードも増していました。低目に140キロ台中盤のボールを集められる「根性」は、春夏連覇を達成する投手に相応しい能力でした。
決勝で打たれた一二三ですが、完全にスタミナ切れでした。ストレートの球威が4回以降、明らかに落ちましたから。島袋はニ連投、一二三は三連投というところに違いがあったかもしれません。
島袋は連投に耐えられるスタミナを培ってきたということでしょう。決勝ではこれまでのストレート中心の配球を、変化球中心の組み立てに変えて、東海大相模打線の的を絞らせなかった「戦略」も見事でした。
●沖縄の悲願を最も難しい春夏連覇で達成
史上6校目の春夏連覇。目標にもされ、これだけ対戦校の情報も容易に入るなかで、春夏連覇は本当に「偉業」です。
興南の我喜屋監督は就任4年目での偉業達成。本当に名監督です。我喜屋監督は「大昭和の我喜屋」というと、北海道のオールドファンには馴染みの深い存在だそうです。北海道に34年暮らし、大昭和で都市対抗を湧かせた名監督で、駒大苫小牧の香田監督に「雪上ノック」のアイディアを授けたのも我喜屋さんだそうです。
沖縄は春は強かったのですが、夏はなかなか壁を破れずにいました。興南の生活習慣から改め、一から全国で勝てるチームを作ってきた。
我喜屋さん自身、夏にベスト4まで進んで敗退した経験があるだけに、沖縄県全体の真紅の大優勝旗にかける執念が、決勝戦で出たように感じました。奇跡でも偶然でもない、横綱相撲の試合振りに感服しました。
●名解説者も引退
そして、この試合は鍛治舎巧さん、最後の解説となりました。鍛治舎さんはいつも温かく球児を見守る解説で、本当に心温まる人柄が出た解説でした。
最後の最後まで選手を溢れる愛情で見守り、野球文化を育む責任感に満ち溢れた解説でした。特にこの温かい姿勢はワンサイドゲームでこそ輝く。必死でひとつのアウトを採ろうとする東海大相模に対して、批判めいたことを一切言わない鍛治舎さん。最後に相応しい試合だったかもしれません。
その姿勢は、私にとっては野球を見る上での師、いや人生の師と言っても過言ではありません(あったことないけど)。
鍛治舎さんのような温かい人柄の人々が、日本の野球文化を守り育てているんだなぁと実感しました。その気概は、シニアの指導を通じて、脈々と受け継がれていると思います。
もう、あの「いいボールですねえ」「ああ、ナイスプレーだ」「腰の据わったいいバッティングですねぇ」が聞けないかと思うと寂しい。
そうか、「腰の据わったいいバッティング」ってのは、今年の興南こそそういうチームだった。
あぁ、いい解説だったですねぇ。ありがとう、カジタク。ありがとう、カジタク。
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この記事へのコメント
1. Posted by 野球狂 2010年08月25日 00:30
鍛冶舎巧さん、達磨せいいちさん、高校野球解説といえばこのお二方の名前が浮かびます。私が小学生くらいの頃からですので、四半世紀程になりますかね。時代の移り変わりを感じます。