2011年10月04日

エディ新監督への期待と不安

 どうも、日本ラグビー協会は次の監督のターゲットをエディ・ジョーンズ氏に絞ったようである。

 エディさんは豪州、南アフリカでW杯優勝に貢献。昨シーズンはサントリーのGM兼監督として日本選手権制覇に貢献した。世界的な知名度は抜群。妻は日本人で日本文化への理解も深い(多分)。

 協会としては切り札的な存在だろう。

 でも、ホントにそれでイイのかな・・・

●明らかになった日本ラグビーの課題

 20年勝てなかったラグビーワールドカップ。今回、明らかになった課題としていくつかある。

曰く「トップリーグは外国人が在籍しているが、ワールドカップは外国人が15人。2〜3人ならば止められるが、15人ならば難しい」

曰く「ジュニア世代の強化が効率が悪い。特に大学ラグビーの4年間」

 が目に付いた主なものだろうか。

 一番目の課題としては日本代表が出来るだけ海外で試合をすることや、海外でプレーできる経験を増やすことである程度解消できるだろう。これもなかなか難しいが。トップリーグは世界的なプレーヤーが年々増えているし、10月29日から開幕する今シーズンもワールドカップで活躍しているプレーヤーがやってくる。だが、それだけでは足りないということだ。

 二番目の課題は、例えば強化指定選手を決めて、その選手はトップリーグに入れてしまうか、海外のクラブに修行に出す。

 いずれにしても、この辺は協会が主導権を握らなければならないが、残念ながら日本ラグビー協会はワールドカップを誘致したり、国立競技場を8万人規模の競技場に改修することには誠に熱心だが(会長人事を見ればよくわかる)、肝心の代表チームの強化に対する姿勢は一貫して、控えめに言って心もとない。

 理想はカーワン時代の5年間を総括して、何が足りなくて、何が成果だったかを位置づけて、その結果としての監督人事・強化体制を構築すべきだが、日本人は極めてこういうことが苦手だ。そりゃ、まぁ、政治を見ればわかると思うんだ。大体、何年「国家戦略」と言い、何年「持続可能な社会保障制度の構築」と言っているんだ。誰もが「将来にわたって安心できる社会」とか「新しい成長戦略」とか言いながら、いざ具体的にモデルを示すと、そこに足を引っ張る存在がいて、何一つ変えられない。日本人は一つ目標を見据えると力強く結束して前進するが、そこを見出すまでの時間が掛かり過ぎるし、往々にして今の状態に甘えてしまう。

 ラグビー協会も全く同じで、だから私はそもそもラグビー協会に多くは期待しない。「現場に丸投げ」ではいけないのだが、反省も無くこの轍を踏もうとしている。

●エディさんには期待している

 で、エディさんは「丸投げ」に足る人材なんだろうか。

 とにかく世界に名だたる名将で、日本ラグビーの特性もよく理解している。

 終わったことを言うのは何かいやな気分にさせられるが、カーワンは指導者としての実績は一流とは言い難かったし、理解に苦しむ選手起用・人選を考えると、やはりコーチとしての力量に欠く部分があったと思う。

 昨シーズンのサントリーのラグビーは見ていて楽しくて、スリリングに勝利を目指していた。何よりスタイルを確立しようという姿勢が見えたのが好感が持てた。

 是非、ジャパンでもこの方向性を貫いてほしい。今大会でフランスに金星を挙げたトンガはとにかくフィジカルの強さを前面に押し出した。こういう信じるに足る「何か」を持っているチームが強い。日本が信じるに足る強さといえば、

・速さ(ディフェンスで前に出る速さ)

・低さ

・向う見ずな姿勢

といったところだろうか。

 話は変わるが、最近「坂の上の雲」を読み返して思ったのだが、日清戦争にしても日露戦争にしても当時としては大それた、向う見ずな戦争をして、日本は勝っている。奇跡とも言っていい戦果を挙げているわけだが、こういう民族的特性を考えると、ラグビーにおいても絶対に必要な勇気を日本人は持っているはずなのだ。ここら辺を信じられるチームをもう一度作ってほしい。

 ところで、エディさんが監督を受ける条件として「2019年は日本人指導者に」ということを挙げていた。自分はサポートの回る、というのだ。

●サニックスの藤井コーチを招聘せよ!
 
 長期的な指導を考えるとエディさんに指揮を執ってほしいのだが、日本人の特性を真に理解したコーチの方が、いいという判断なんだろう。
 
 躍進著しいアルゼンチンは「外国人コーチを招聘しない」という原則を貫いているそうだ。海外からの理論を持ってくるだけでは、アルゼンチンのラグビーは築けないということだろう。

 これは一つ、ヒントになるのではないだろうか。

 ワールドカップを見ていてラグビーは非常に多様なスポーツだと感じている。パワー、スピード、テクニック。いろんな要素を発揮できるように感じる。例えば、トンガやサモア、南アフリカのようになパワーを身に着けることは難しいが、ザック・ギルフォードのようなランニングスキルを研究し、言語化し、身につけることは体の強さや足の速さを伸ばすことよりは可能だ(相当難しいけど)。

 研究熱心な日本人なんだから、誰も想像できないようなライン攻撃を考え出したり、独創的なムーブを考え出すことだって出来るのではないだろうか。要はそういうことにトライする姿勢が大事なのだ。

 必要は発明の母というけれども、そういうことを出来る指導者・指導体制はやっぱり日本人指導者のほうがいいということなのではないだろうか。

 といういわけで、今取りざたされている人といえば・・・

薫田・・・東芝で実績を挙げたけれども、パワーに頼るスタイルは結局海外の後追いでしかない。うーん。

清宮・・・早稲田を立て直した手腕は見事だが、サントリー時代に底が見えた気がする。ドメスティックな指導者でしかないと思う。

元木・・・未知数だ。実績が無い。

 私が是非2019年に日本代表の監督をしてもらいたいのは、サニックスの藤井雄一郎 部長兼監督だ。

 天理高校から名城大。社会人ではニコニコ堂、サニックスでプレーしたセンター・ウイングだ。もちろん、代表経験は無い。藤井監督はサニックスで九州リーグ出身の無名の選手を鍛えて、トップリーグで堂々と渡り合っている。何より面白いラグビーをする。スクラムは押される、ブレイクダウンは苦戦することを前提に、走って、走って、走り勝つラグビーを標榜している。8年間という限られた時間を託すならば、鍛えても仕方が無い部分を思い切って捨てて、鍛え甲斐のある部分に思い切ってフォーカスできる指導者が欲しい。

 これは賭けかもしれない。惰性にならないためには、このくらい思い切ったことをして欲しい。彼自身の経験は8年もあれば十分ではないだろうか。

ted9aoki23 at 21:43│Comments(0)TrackBack(0) RWC2011 

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