2011年10月23日

All Blacks 24年ぶりのW杯制覇!

 すごい決勝戦でした。8対7。わずか1点差でオールブラックスが24年ぶりにワールドカップを制しました。誰がこのスコアを予想できたでしょう。まさしく、これまでのオールブラックスの苦難の道のりを象徴する、決勝でした。



●フランスとの因縁

 オールブラックスがフランスとワールドカップで対戦したのは第1回大会の決勝が最初。その時はオールブラックスがフランスを圧倒し、第1回のチャンピオンになりました。その後、フランスはいつもオールブラックスに立ちはだかりました。1999年の準々決勝、2007年の準々決勝。ともに、オールブラックスが圧倒的に有利といわれた中で、フランスがオールブラックスに勝ちました。まさに天敵。

 今大会はニュージーランドはフランスと同じ予選プールに入り、予選ではオールブラックスが圧勝しました。その後、オールブラックスは全勝で決勝戦まで勝ちあがってきましたが、フランスは予選プールでトンガにいいところなく破れ、2勝2敗で決勝トーナメントに進出。イングランド、ウェールズを破り、決勝に上がってきました。

 下馬評はオールブラックスが圧倒的に有利。しかし、相手はフランス。「フランスのことは世界の誰にも分からない」。そんな雰囲気で決勝が始まりました。

●互角のしのぎあい

 試合はフランスの頑張りが目立つ展開。接点で負けない強さがフランスにあり、オールブラックスは相当てこずりました。どこを振り返るべきか分からない展開。もう、すごい、激闘でした。フランスは一体これが本当にトンガに負けたチームなのかと目を疑いました。特にフランスの第三列の仕事量がすごかった。気持ちでオールブラックスに負けてはいませんでした。

 後半、フランスがトライとゴールで1点差に迫ると、オールブラックスは浮き足立ち、もうなんかとんでもないことが起こるのではと予感させました。それでも、オールブラックスは反則せず、結束してフランスの攻撃をしのぎ、後半残り3分、マイボールを奪い返すと、最後までフランスにボールを奪い返させず、1点差で勝利!
 
 すごい試合でした。

●平坦ではなかったオールブラックスの道のり

 自国開催で、奇しくも優勝したのは前回自国で開催した1987年のみ。オールブラックスはまさに国民全員が優勝を期待し、優勝を義務付けられたチームでした。この24年間、ずっと世界のラグビーをリードしてきたオールブラックス。なぜかワールドカップで勝てないオールブラックス。すべての呪縛をとく戦いは決して平坦ではありませんした。

 まず、ダン・カーターの怪我。世界最高のゲームメーカーであるダン・カーターが離脱することは、全NZ国民にとって悪夢だったでしょう。さらに、控えSOのコリン・スレイドも怪我で離脱。急遽、アーロン・クルーデンを召集し、さらにベテランのスティーブン・ドナルドまで招集することになりました。今日の試合で決勝PGを決めたのは、「第4の男」ドナルドでした。(クルーデンも試合中に怪我で離脱した)。裏を返せば、王国の層の厚さを見せた形でしたが、カーターが怪我をしたときは本当に優勝が危ういかと思いました。

 それでも、オールブラックスが優勝にたどり着けたのは、主将のリッチー・マコウの存在感でしょう。マコウ自身、故障で本調子でないなか、すばらしいリーダーシップでチームを牽引しました。「事実上の決勝戦」といわれた豪州戦では、すばらしいパフォーマンスでチームを勝利に導きました。

 そして決勝。わずかなミス・反則が命取りになる中で、全く気の緩みも無く最後まで1点を守りきったのはマコウの力は大きかったでしょう。

 今大会、自国開催のプレッシャーがあるはずなのに、オールブラックスはすべての局面で相手を集中力で圧倒しました。堅いディフェンス、接点での粘り、ルーズボール、ハイボールへの働きかけ、チャンスに一気に取りきる力。準決勝まではすべて圧倒しました。ただ、決勝は簡単ではありませんでした。これはフランスを称えるべきです。

●ハッピーエンド

 多分、NZ人は世界一ラグビー好きでしょう。南アフリカとは互角かもしれませんが。初戦のトンガ戦は視聴率80パーセントだったそうです。今日も多分、そのくらい行っているでしょう。このラグビー熱がわずか人口400万人ちょっとの国が、世界一のラグビー王国を形成しているのです。

 ワールドカップを開催するのは、まさに国運をかけたビッグイベントだったでしょう。NZはサッカーのワールドカップやオリンピックを開催できるほどの経済規模はありません。唯一、国際的なスポーツイベントを承知できるのが、世界で3番目の大きなスポーツイベントと言われるラグビーW杯の招致でした。

 もし、ここでオールブラックスが優勝を逃すようだと、これは本当にNZは国中が大変なことになったでしょう。かんべえさんに聞いた話ですが「NZは政治的に深刻に対立することが無いお国柄。唯一国論を二分したのが、オールブラックスをアパルトヘイトの南アフリカに遠征させるか」だったそうですから、もし、今日、敗れれば、どうなったでしょうか。まさに怖いもの見たさですが、いや、やっぱりやめた方が良かったでしょう。

 最後に、表彰式でリッチー・マコウがウェブ・エリスカップを掲げ、オークランドの港から花火が上がったとき、「いや、本当にハッピーエンドで良かったなぁ」としみじみ思いました。もし、ドナルドがPGを外していたら・・・もし、トランデュクが50メートル近いPGを決めていたら・・・一体どうなっていたんでしょう。まぁ、ラグビーの神様はさすがにそこまでの悪戯はしなかったということでしょうか。

●ラグビーに出会えて良かった

 私がラグビーを見始めたのは丁度第1回ワールドカップの頃でしょうか。フランスとの決勝戦。昼間の試合で天気雨が降って綺麗な虹がかかり、カーワンがプラスチック製のコーナーフラッグを粉々に砕くトライを挙げたことを覚えています。
 
 昨日、Jスポーツで87年の決勝を放送していたのですが、懐かしい選手が目白押しで面白かった。多分、子供のときに見たのも同じ感覚だったかもしれません。あれから24年。ラグビーはプロ化し、選手の体は大きくなり、スピードも運動量も当時とは比べ物もないくらい増えました。それでも、ラグビーの持つ勇気とか気迫、熱気がもたらす面白さは、当時と全く変わっていないように感じました。ナイトゲームになって、イーデンパークの雰囲気も大きく変わりました。87年の時は会場の外に仮設(かつ私設)スタンドがあって、そこにお客さんが入っていたんですから。当時は、試合が終わるとすぐにユニホームを交換していましたが、今はピチピチのジャージなんで脱ぐのも一苦労で、その文化も無くなってしまいました。

 それでも、ラグビーがラグビーであることは変わらないんですよねぇ。なんか、そういう感慨を持った大会でした。時差も少なかったし、本当に楽しめました。ありがとう!

●World In Union

 最後に、私たちはニュージーランド戦でキー首相がグラウンドに下りてきて、選手と一緒に整列し、国歌を歌い、ともに東日本大震災とクライストチャーチ地震の被災者への弔意をしめしてくれたことを忘れてはなりません。

 NZはホスト国として本当に暖かく各国を迎えてくれたようですし、現職の首相が日本と同じ立場に立ってくれたこと、この暖かさを忘れてはなりません。

 ラグビーワールドカップの主題歌は「World In Union」という曲なんですが、日本だと平原綾香のジュピターでおなじみのメロディです。この歌が本当にいいんですねぇ。ラグビーの世界は応援席も無くて、対戦国のファンが隣り合って座って応援するすばらしい文化があるんです。終わったら、ノーサイド。敵も味方もなくともに称えあい、ともに敬意を払う。スポーツマンシップの原点です。このほかのどのスポーツに無い文化だけは、次の世代についで行ってもらいたいと思います。
 
 その意味では、最近、応援席を作るトップリーグとか大学の試合はイカンよねー。そんなんじゃ2019年のホスト国として笑われますぜ。
 

ted9aoki23 at 19:47│Comments(0)TrackBack(0) RWC2011 

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