2012年03月25日

藤浪VS大谷

 以前、「この二人が対戦すると大注目」といった花巻東の大谷と大阪桐蔭の藤浪が初戦でぶつかってしまいました。

 この二人の投げ合いを見られたのは、うーん、誠にラッキー。

 二人とも将来が楽しみな大器です。こういう選手が毎年出てくる日本野球の底力は凄い!



●調整不足だった大谷

 試合は大阪桐蔭が花巻東を圧倒した形になりました。大谷は調整不足という感じで、後半スタミナが切れてしまいました。

 ただ、持っている能力は一級品ですね。193センチの長身ながら身のこなしはまったく違和感がありません。高い運動能力を感じさせる投球でした。変化球はスライダーが絶品。指先の感覚はいいように思いました。ただ、怪我がちな体質が心配です。高校2年間でフルに野球をやれている期間って半年くらいしかないんじゃないでしょうか。それゆえ、体の芯からほとばしるような体力を感じないんですよねぇ。ボールに対して自分のパワーを十分伝えきれていないというか。

 股関節を痛めていたそうですが、バッターに向かっていく「ドン」という力強い踏み込みが感じられませんでした。高校生ならそれくらいでもいいのですが、やっぱりプロでやっていくにはそういう力強さがほしいです。問題はこしょうがちの体質でそういう厳しいトレーニングに耐えられる体なのかということです。体が丈夫になればまだまだ伸びるというか、底知れぬ可能性を感じるだけに、ここは思案のしどころです。夏に向けて体調万全な姿を見たいです。

 びっくりしたのがバッティングです。第1打席で藤浪のカーブを右中間に叩き込みました。緩急に騙されず柔らかく体重を残すステップ、ボールを飛ばす角度にバットを入れられるセンス。これは、大変なものです。打者でもドラフト1位でしょう。193センチの体格ですから、ボールも飛びます。バットに乗せて運ぶ独特のセンスは、今のプロで言えば岩本(広島)クラスでしょうか。高校生のバッティングとしては春日部共栄の中里を見たとき以来の衝撃です。(イマイチ伝わらないか。。。。)

●藤浪にビックリ

 一方、大阪桐蔭の藤浪。これはビックリしました。凄いピッチャーになると思います。持っている能力はダルビッシュを凌ぐといっても過言ではありません。あとは、その能力を伸ばす精神力が彼に備わっているかということですが。

 藤浪は197センチあるのですが、その身長に妥協しないいいフォームで投げます。踏み出すときにややインステップしながら、思い切り打者に踏み込んできます。長い腕から肘がグーッと打者の方向に伸びてきて、腕を振ります。打者の感覚は大げさではなく、自分の目の前で腕を振られている印象でしょう。18・44メートル先の打者のヘルメットに手が届くのではないかという錯覚すら受けそうです。

 藤浪の素晴らしさは二つの「直線」が円運動の中に入ってくるところにあります。投球動作というのは基本的に円運動です。腕の動き、足を上げて肩・腰を回して打者に向かっていく動き。この二つの円運動にいかに直線的な動作を入れることが出来るか、円を描く動きが楕円になればなるほど、投手にとっていい動きということになります。藤浪はまず打者に向かって大きく踏み出すことで、直線的な動きが一つ入ってくる。そして、腕がぐっと打者のほうに肘から出て行く動きでもう一つ直線的な動きが入る。
 
 この直線的な動きが打者を惑わせ、タイミングを狂わせる。

 まだまだ、いいところはありましたね。まず、腕の振り。長い腕が背中にまで絡みつくように力強く腕を振っている。あれだけ強く腕を振れれば変化球のキレもより強くなります。変化球もスライダーは変化点が打者に近くて曲がりが大きい。あの身長・体躯ならばフォークボールも練習してほしいところです。

 もう一ついいところはボールがあまり抜けないというところです。一番強いボールが行くツボが低めにあるところもいいです。大抵、腕を強く振る速球派は強いボールは高めに行く傾向にあります。そのツボを低めに持っていくことが一つのプロの壁で、アマチュアでは高めで抑えられても、プロだと打たれます。そこで、低めにボールを投げなくてはいけないのですが、腕が振れずに置きにいく状態となって打たれてしまう。低めにキレのあるボールを投げることは結構難しい技術が必要なのです。

 ところが、藤浪はもうかなり高いレベルで低めに強い、キレのあるボールを投げる技術を持っている。フォームのメカニズムがそうなっているように感じます。ステップの幅、ヒジが前に出て行くことで、強いボールが低め、少なくともベルトより下のゾーンに行くようになっている。

 体格はやや細めに見えて、それゆえ体力が無いのかなという印象もあるのですが、実際は頑健な体を持っているように思います。めちゃくちゃ鍛えてもきっと壊れない体だと思います。センバツでどこまで勝ち進むか楽しみですし、今年のドラフトでも亜細亜の東浜と並んで多くの球団が入札する逸材でしょう。
 

ted9aoki23 at 07:46│Comments(2)TrackBack(0) 高校野球 | ドラフト候補評

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この記事へのコメント

1. Posted by 野球狂   2012年03月26日 03:30
純正野球ファンさんが大型投手の事を取り上げられて以降、同じ着目点の記事をよく見かけるようになりました。巨人時代のジャイアント馬場が当時活躍していたのが今の時代のような状況なら…プロレス、プロ野球の歴史が変わってますかね^^
2. Posted by 純正野球ファン   2012年03月27日 19:56
野球狂様
いつもコメントありがとうございます。
身長208センチ、馬場正平・・・プロレスの全盛期は知らないんですが、相当なアスリートだったらしいです。僕のイメージはおじさんでポォって感じですけど、デビューした頃は米国でもトップレスラーだったらしいですからね。馬場さんのスケールは野球よりプロレスの方が良かったのかもしれませんけど、野球で208センチって想像しただけでわくわくしますね。

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