2012年08月05日

野球不在の五輪

 オリンピックの盛り上がりの中で、実は野球が種目にありません。

 野球は1984年の公開種目となって以来、24年間五輪種目でしたが、今回正式種目から外れました。寂しい気もしますが、正式種目復活への道は極めて難しいと言わざるを得ません。



●やっている国は少ない
 
 野球は競争力を持っている国が少ない。米国、カナダ、メキシコ、ベネズエラ、日本、台湾、韓国くらいでしょう。あとオランダとイタリア・・・。世界最高の舞台に相応しい競技かというとちと違う気がする。

●競技場が特殊
 
 野球のグラウンドって極めてユニークですよね。四角じゃないし、他の競技に転用できないし、何よりグラウンドの中心に「マウンド」なる小高い丘がある。五輪をやる国がそんな変わったグラウンドを整備しなくちゃいけないと思うと、種目から外したくなりますわね。

●最高のプレーヤーが集わない
 
 五輪がプロ化した影響が逆説的に野球を正式種目から外されました。IOC前会長のサマランチは「五輪を世界最高のアスリートが集う場に」という理念を掲げ、アマチュアリズムを捨て去り大胆にプロ化への道を進めました。私はこれは正しかったと思います。スポーツが商業化の一途をたどる中、選手の生活を考えても時代の流れを捉えた選択だったと思います。
 結果、バスケットボールやアイスホッケーはNBA、NHLの選手が「ドリームチーム」を編成し、五輪を大きく盛り上げることに寄与しました。しかし、MLBは選手を五輪に派遣しませんでした。五輪期間中はシーズン中ということもあるでしょう。むしろWBCという別の大会を用意しました。3Aの選手による米国代表チームは現代五輪の理念と合致しません。

●アンチドーピングへの取り組み
 
 IOC現会長のジャンニ・ロゲはアンチドーピングの姿勢が強い人です。MLBは何年か前にステロイド問題がありました。現在もステロイドを使用している可能性は極めて強いです。仮にMLBの選手が五輪に出場する権利を得ても、IOCの厳しいドーピング基準をクリアできる選手は少ないことが予想されます。その意味でも、五輪種目に戻すことは困難です。

●男女同種目原則

 現代の五輪種目は「男女同種目」が原則です。男子だけ、女子だけという種目はシンクロナイズドスイミングと新体操くらいでしょうか。2016年のリオでラグビー7人制が正式種目に採用されますが、これはIRBが女子の普及を進めたことが大きく影響しているでしょう。
 野球は男性のみが行います。女子野球もありますが、男子以上にまともな競争力を維持している国は少ないですから。野球はソフトボールと機構を統一して「男子は野球、女子はソフトボール」という形で正式種目復活を目指すようですが、これもIOCの理念からすると難しい。

・・・・

 ことほど左様に野球の正式種目化復活は難しい。もちろん私も五輪の舞台で野球が見たいし、かつてのようにアマチュアによるチーム編成が望ましいと思っている。だが、実際、これだけの問題を目の前にすると、とても「野球が復活してほしいなぁ」なんて無邪気に言えない。これだけの問題をクリアするには相当な情熱が必要なのだ。それも日本、キューバ、韓国の三カ国くらいで運動しなくちゃいけない。

 山本英一郎がほぼ一人で為し遂げたといえる野球の正式種目化。これには途方もない情熱が必要だったということでしょう。それくらいの情熱を持つ野球人が現れなければ復活は難しいだろう。この事実は「ほぼ不可能」と思ってしまうのである。
 

ted9aoki23 at 07:32│Comments(0)TrackBack(0) ロンドン五輪 

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