2012年08月15日

オリンピック終わる

 ロンドンオリンピックが終わりました。結局、純正スポーツファンは日本が金メダルを獲る瞬間を全て、ライブで観戦しました。

 欧州時間は日本時間で夕方5時くらいから競技が始まり、翌日の朝方5時に競技が終了する。睡眠時間さえ削れば見られるわけだ。この時差は、、、正直しんどかったです。

 

●各国メダル数ランキング

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 予想通り米国が首位を奪回した。金メダル数、総メダル数ともに中国から首位を奪回し、スポーツ大国としての威信を取り戻した格好。全ての競技に高い競争力を維持する米国はやはり豊かなスポーツ文化を持っている。

 中国は2位に終わったが、バドミントンでの「無気力試合」が象徴されるように、メダル至上主義、勝利至上主義ではやはりいけないのだ。スポーツは「自由」が発露されなければならない。これは、レスリングで感動的な金メダルを獲得した小原日登美さんがかつて言っていた言葉なのだが「生きるためにレスリングをするのではない。生きているからレスリングをする」。こういう価値観こそがスポーツに息吹を与えるんだと思う。中国にそういう思想があるのだろうか。

 日本は金メダル7、銀メダル14、銅メダル17。目標としていた「金メダル15以上」には届かなかったが、総メダル数は38で史上最多。これは、ナショナルトレーニングセンターの整備によるところが大きい。選手の努力はさることながら、国として一元的にスポーツを強化する体制が整った。バルセロナ、アトランタあたりに低迷し、ナショナルトレセンの整備の議論が持ち上がり、2001年に国立スポーツ科学センターを開設。アテネ、北京、ロンドンと「投資」が正しかったことが証明された。
 私はかつて、仕事の関係で国立スポーツ科学センターを見学させてもらう機会があったのだが、案内をしてくれた馳浩衆議院議員(ロサンゼルス五輪レスリング日本代表)が「ナショナルトレセンが出来れば日本のメダルはじゃんじゃん取れるようになる」と豪語していたが、その通りになったというわけだ。

 このナショナルトレセン整備のモデル国となったのがシドニー五輪に向けていち早くナショナルトレセンを整備したオーストラリア。豪州はメダルランキング上位の常連国だったが、今回は歴史的な不振に見舞われ、金メダル数も日本と同じ7個。総メダル数も35個にとどまった。シドニーに向けて強化は進むのだが、その後も維持することは難しいということだろう。

●開催国・英国の大躍進

 開催国英国は実に29個もの金メダルを獲得した。自転車競技で男子ロードTTのウィギンス、トラック競技では7つもの金メダルを獲得し。金メダリスト同士でイチャイチャラブラブだったりして(笑)。まあ、とにかくノリノリです。男子トライアスロンのブランリー兄弟の金と銅も印象的でした。

 メダルも一杯とって大成功といえるでしょうね。ロンドンはまず街の風格があります。マラソンやトライアスロンなどコースが素晴らしい。これだけ風格あるコースを東京で用意することが出来るだろうかとちょっと心配になりました。そして、観客の雰囲気が素晴らしい。もちろん、英国の選手には大声援を送るのだが、それ以外の国の選手にも等しく声援を送り、スポーツを楽しんでいる。さすがは、近代スポーツ発祥の地である。自国のことしか考えない中国の後だったか余計に、英国の余裕というか自由な雰囲気に感動した。

●ボクシング発祥の地で金メダル

 英国はボクシング発祥の地である。拳と拳で殴りあうという極めて原始的なスポーツであるボクシングは、ある意味では互いの理性がなければ競技として成立せず、フェアプレーの精神が強く反映されたスポーツである。もちろん、ボクシングはテニスや卓球とは違う。一度リングへと迎えば、命の保障はないスポーツだ。だからこそ、観客は熱狂する。(別にテニスや卓球が熱狂しないって意味じゃないですからね、念のため)。
 英国で19世紀にクインスベリールールが公表され、ボクシングはスポーツとして発展してきた。

 そのボクシング発祥の地でのオリンピックで日本は48年ぶりに村田諒太が金メダルを獲得した。しかも、世界一層の厚いミドル級で。私はその快挙を喜ぶ。これは、世界的に誇れる金メダルだ。

●レスリングと柔道
 
 日本のレスリングと柔道は明暗を分けた。レスリングは女子3、男子1計4個の金メダルを獲得した。女子は小原が映画になるようなストーリーの末に金メダルを獲得。伊調は破格の強さで3連覇を達成。吉田はいろんな形で研究されてきたが、それを乗り越えて見事に3連覇を達成した。男子は米満が24年ぶりに金メダルを獲得した。
 レスリング躍進の秘訣はひとつはナショナルトレセンが整備されて、強化環境が充実したことがあるだろうが、ジュニアレベルでの育成にも一貫して取り組んでいることも見逃せない。協会の福田会長以下、男女ともにジュニアレベルの育成に熱心だという。元々メジャーではないレスリングに取り組む子供たちを発掘して丁寧に育ててきたということだろう。これから少子化の時代。こういう姿勢はますます必要になってくる。

 一方、柔道は史上初めての男子がメダルゼロ。女子も「野獣」松本薫の一つに終わった。松本が金メダルが決まった瞬間、可憐な女子となって監督の胸に涙ながらに飛び込んだ姿は、そのギャップにキュンキュンした。だが、いい年した男たちが負けてメソメソ泣く姿はちょっと情けなかった。

 柔道の低迷は今に始まったことではない。今までたまたま金メダルが取れていただけで、北京も石井の金メダルの一つだった。勝負は時の運だから、今回の五輪で急激にレベルが下がったとは言いがたい。以前から危機的な状況は続いていたわけだ。

 ところが柔道連盟はそれに対して明確な対応策を取ってきた形跡がない。胡坐をかいている姿勢が見え隠れする。これでは柔道の低迷はますます拍車がかかるだろう。柔道にはいつも超人的な柔道家がいた。まず負けることのない「エース」である。山下泰裕、斎藤仁、古賀稔浩、吉田秀彦、田村亮子、野村忠宏、井上康成。こんな柔道家が今の五輪代表に居ただろうか。全柔連は全力を挙げてこういう柔道家をジュニアレベルから発掘しなければならない。

●やはり感動したなでしこ
 
 今回、最も注目され、マークもされたサッカー女子日本代表。それでも、五輪史上初のメダルを手にして、ファイナルまで進んだ。これは賞賛に値する快挙だと思う。ブラジル、フランスには攻め込まれながら勝ちきり、米国には2点を先行されながら1点を返して粘った。金メダルはリオに取っておこう。
 男子も頑張った。しかし、3位決定戦の韓国戦は情けなかった。韓国にこれしかないという攻めで2点を決められた。センターバックの二人の疲労が頂点だったと思う。五輪は試合間隔が短いからW杯と違う戦い方をしなくてはならない。18人全員で試合をこなす感覚が必要だったと思う。ボランチ二人を含めてディフェンスの選手に替えが無くて、その無理が最後に出た形か。

●韓国選手の例の行為に対する感想

 全く稚拙な事件が起こったものである。

 五輪憲章で五輪の舞台で政治的な主張をすることは禁じられている。言うまでも無いことだが五輪は世界的な影響力がある。こういう場で政治的な主張をすることは、政治の側にスポーツが利用される恐れがあるからだ。政治とスポーツは常にある種の緊張関係にある。政治がスポーツを利用しようとすれば、前述したような「生きるためにスポーツをする」という状況が現出する。スポーツは「生きているからする」行為なのであって、五輪憲章にはこうした根源的な問題への歯止めがかかっているのだ。

 その上で、私は五輪の舞台で政治的な主張をすることが一概に悪いとは言わない。スポーツマンである前に一人の人間であって、五輪の権威よりも己の尊厳が大事だと思えば、主張に走る選手がいることは残念なことだけれども、理解は出来る。

 有名なのは1968年メキシコ五輪での「ブラックパワー・サリュート」である。男子200メートルで金メダルを獲得したトミー・スミスと銅メダルを獲得したジョン・カーロスは表彰式で、貧困を意味する黒い靴下で表彰台を踏み、黒い手袋をはめた拳を掲げて、米国での人種差別への抗議をした。
 
 この行為は大いに非難をされた。彼らはメダルを剥奪された。しかし、彼らの行為は米国内での人種差別撤廃運動に拍車をかけ、差別は廃止される。現在、米国における黒人の社会的地位の向上、スポーツにおける活躍に貢献したといってもいい行為だった。

 彼らはいまだに五輪からは除名されている。いかに、政治的に正しい行為をしたとしてもだ。彼らは自らの手でメダルを捨てたのだ。

 あるいはローマ五輪で金メダルを獲得したカシアス・クレイ。彼は文字通り、自らの手でメダルを川に捨てた。クレイはメダルを獲得したにもかかわらず、米国内での人種差別が変わらないため、その状況に失望し、自ら「こんなメダルには価値が無い」と思い、捨てた。そして、プロに転向し、名前もモハメド・アリと改名した。その後の栄光は説明不要だろう。

 彼らに共通しているのは「自らの意思でメダルよりも大切なものを守った」ということだ。こうした行為は五輪の尊厳を大いに傷つけたが、それ以上に人間としての価値とか名誉を守ったのだ。その行為自体は、スポーツマン、オリンピアンである以前に一人の人間として誇りのある行為だと思われる。

 それと比べて今回の行為はどうだろう。大韓サッカー連盟は彼の行為を「偶然」と位置づけて、悪意が無いからメダルを与えてほしいという。なんと情けないんだろう。「独島は韓国の領土であり、そのことを世界にアピールするために日本に勝つ」と言ってああいう行為に及んだのではないのだ。間逆なのだ。

 私はあの韓国選手にメダルを「くれてやれ」と思う。彼にとって「独島」の存在は、メダルやら兵役免除に比べると軽いものなのだろう。そんな名誉も誇りもない人間に恨み言を言われるのはたまらない。稚拙な人間にはくれてやるのが丁度いいと思う。

 実際は、メダルは「剥奪」されるだろう。IOCはそんなに甘くない。もちろんその「剥奪」の意味はトミー・スミスやジョン・カーロスとは180度違うものだけれども。

。。。。

 こんな話題で締めくくるのは不本意だけれども、ちょっと疲れたのでまた後ほど。(続く) 
 
 

ted9aoki23 at 11:34│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by むきお   2012年08月16日 22:30
北京での柔道の金メダルは
石井と内柴の二つですよ

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