生き方
2014年12月14日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「自分を愛する力」
「自分を愛する力」(2013) 乙武洋匡 講談社現代新書
（推薦度）○
乙武洋匡さんは、1976年生まれ。東京都出身。早稲田大学在学中に書いた「五体不満足」がベストセラーとなる。
はじめに
乙武さんは「五体不満足」を不幸とは無縁の、むしろ人生を目いっぱい楽しんでいる本に書き、「自己肯定感」＝「自分を愛する力」にたどり着く。
第1章 息子として
乙武さんのご両親は彼を養護学校に入れずに地元の公立小学校に入れた。お母さんは小学校3年まで乙武さんにつきっきりで小学校に通った。そのお母さんも乙武さんの鼻っ柱の強さには手を焼いた。乙武さんは今の性格（傲慢と乙武さんは書く）はその時から作られたと謙遜する。乙武さんのお父さんは転勤拒否までして乙武さんを育てた。お父さんは乙武さんが早稲田大学の入試の際にトイレに行けなかった話を聞いておむつを買ってきてくれた話がよい。乙武さんは一人っ子ということもあり結婚願望もあり、お父さんががんの宣告を受けたこともあり24歳の時に学生であった奥さんと結婚する。
乙武さんのご両親は乙武さんを育てるのに「ほめて育てる」方法を使ったが何もかも手伝うことはされなかった。乙武さんは口などを使い自ら工夫して作業や遊びなどをした。
小学校の高木悦男先生は乙武さんを自立して生活できるようにできることは乙武さんにさせた。すごいと思ったのは車いすを使わせず自分で歩かせた話である。乙武さんはこの経験が自分の可能性を広げ、人生の選択肢を広げたと書く。
高木先生の乙武さんをプールで夏休み中泳がせたのは次の理由であったと乙武さんは書く。「水の事故に遭った時誰かが救助に駆け付けるまで自力で水に浮いていられるようにしたかった」と聞いて乙武さんは熱いものを感じた。
中学校時代のお母さんとのけんか状態の話、大人になってからの結婚の条件などが綴られる。
乙武さんはこの章の最後に、障害の有無にかかわらず、一つひとつの命が輝くことの出来る社会の実現に向け尽力したいと書く。私が乙武さんの追っかけをするのもこういう言葉をさらりと書けるぐらいの彼の努力・人間性に惚れてしまったからであろう。
第2章 教師として
早稲田大学卒業後はスポーツライターで活躍をし、新宿区教育委員会の非常勤職員をし「子どもの生き方パートナー」、2007年4月から3年間杉並区立杉並第4小学校の教諭をする。乙武さんは「恩送」りという気持ちで次の世代、子どもたちのために力を尽くす番と考えた。そして大学に入り直し教員免許を取得した。
杉並区が乙武さんを採用した理由が振るっている。
�ー�らを価値ある存在としてとらえられる
�⊆�らの生き方を主体的に取り出す力
��困難を乗りこえて力強く生きる力
�ぜ匆颪侶狙�者として自立できる力
そして小学3年生達への教育、「君たちならどうする」という問いかけをして実践する。発達障害児への教育の仕方は乙武さんしかできないだろう。この章は教育者でなくても共感できるほど素晴らしい。
第3章 父親として
しっかり者の長男とマイペースな次男の個性豊かな二人の息子を乙武さんは育てている。扇風機事件は子供の指が扇風機に巻き込まれるのを乙武さんが必至で止める事件であり、乙武さんが「僕に手があったら…」と書く箇所はもらい泣きしてしまう。
乙武さんは教育について「何をしてあげたか」が重要ではなく、子どもたちが「どう成長してくれたか」が重要と書く。
また、奥さんとの出合いは乙武さんが21歳、彼女が18歳と書く。乙武さんは「自己肯定感」に満ち彼女はなかったと書くが、乙武さんの生き方が奥さんを強く変えたと私は思う。乙武さんは真っ正直な人柄で、挨拶もでき、笑顔がよい。男の私が惚れるのだから奥さんは異性として惹かれて行ったはずである。
終章 自分を愛せない人への処方箋
対談で乙武洋匡X泉谷開示(精神科医)とある。
泉谷氏は自己肯定感は「健全な自己愛」で「自分を愛する」と事という。「自己肯定感」を持てない人には「あなたの感じていることとか違和感はものすごく真っ当だと思う」と言って基本的に彼らの感情や考え方を肯定する。
乙武さんは、自分で見つけ生み出した価値観で生きていける人間になりなさいと書く。
読後感のさわやかな新書で、62歳の私も乙武さんから「自己肯定感」＝｛自分を愛する心」について教えられた。
（推薦度）○
乙武洋匡さんは、1976年生まれ。東京都出身。早稲田大学在学中に書いた「五体不満足」がベストセラーとなる。
はじめに
乙武さんは「五体不満足」を不幸とは無縁の、むしろ人生を目いっぱい楽しんでいる本に書き、「自己肯定感」＝「自分を愛する力」にたどり着く。
第1章 息子として
乙武さんのご両親は彼を養護学校に入れずに地元の公立小学校に入れた。お母さんは小学校3年まで乙武さんにつきっきりで小学校に通った。そのお母さんも乙武さんの鼻っ柱の強さには手を焼いた。乙武さんは今の性格（傲慢と乙武さんは書く）はその時から作られたと謙遜する。乙武さんのお父さんは転勤拒否までして乙武さんを育てた。お父さんは乙武さんが早稲田大学の入試の際にトイレに行けなかった話を聞いておむつを買ってきてくれた話がよい。乙武さんは一人っ子ということもあり結婚願望もあり、お父さんががんの宣告を受けたこともあり24歳の時に学生であった奥さんと結婚する。
乙武さんのご両親は乙武さんを育てるのに「ほめて育てる」方法を使ったが何もかも手伝うことはされなかった。乙武さんは口などを使い自ら工夫して作業や遊びなどをした。
小学校の高木悦男先生は乙武さんを自立して生活できるようにできることは乙武さんにさせた。すごいと思ったのは車いすを使わせず自分で歩かせた話である。乙武さんはこの経験が自分の可能性を広げ、人生の選択肢を広げたと書く。
高木先生の乙武さんをプールで夏休み中泳がせたのは次の理由であったと乙武さんは書く。「水の事故に遭った時誰かが救助に駆け付けるまで自力で水に浮いていられるようにしたかった」と聞いて乙武さんは熱いものを感じた。
中学校時代のお母さんとのけんか状態の話、大人になってからの結婚の条件などが綴られる。
乙武さんはこの章の最後に、障害の有無にかかわらず、一つひとつの命が輝くことの出来る社会の実現に向け尽力したいと書く。私が乙武さんの追っかけをするのもこういう言葉をさらりと書けるぐらいの彼の努力・人間性に惚れてしまったからであろう。
第2章 教師として
早稲田大学卒業後はスポーツライターで活躍をし、新宿区教育委員会の非常勤職員をし「子どもの生き方パートナー」、2007年4月から3年間杉並区立杉並第4小学校の教諭をする。乙武さんは「恩送」りという気持ちで次の世代、子どもたちのために力を尽くす番と考えた。そして大学に入り直し教員免許を取得した。
杉並区が乙武さんを採用した理由が振るっている。
�ー�らを価値ある存在としてとらえられる
�⊆�らの生き方を主体的に取り出す力
��困難を乗りこえて力強く生きる力
�ぜ匆颪侶狙�者として自立できる力
そして小学3年生達への教育、「君たちならどうする」という問いかけをして実践する。発達障害児への教育の仕方は乙武さんしかできないだろう。この章は教育者でなくても共感できるほど素晴らしい。
第3章 父親として
しっかり者の長男とマイペースな次男の個性豊かな二人の息子を乙武さんは育てている。扇風機事件は子供の指が扇風機に巻き込まれるのを乙武さんが必至で止める事件であり、乙武さんが「僕に手があったら…」と書く箇所はもらい泣きしてしまう。
乙武さんは教育について「何をしてあげたか」が重要ではなく、子どもたちが「どう成長してくれたか」が重要と書く。
また、奥さんとの出合いは乙武さんが21歳、彼女が18歳と書く。乙武さんは「自己肯定感」に満ち彼女はなかったと書くが、乙武さんの生き方が奥さんを強く変えたと私は思う。乙武さんは真っ正直な人柄で、挨拶もでき、笑顔がよい。男の私が惚れるのだから奥さんは異性として惹かれて行ったはずである。
終章 自分を愛せない人への処方箋
対談で乙武洋匡X泉谷開示(精神科医)とある。
泉谷氏は自己肯定感は「健全な自己愛」で「自分を愛する」と事という。「自己肯定感」を持てない人には「あなたの感じていることとか違和感はものすごく真っ当だと思う」と言って基本的に彼らの感情や考え方を肯定する。
乙武さんは、自分で見つけ生み出した価値観で生きていける人間になりなさいと書く。
読後感のさわやかな新書で、62歳の私も乙武さんから「自己肯定感」＝｛自分を愛する心」について教えられた。
2014年09月12日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「ビ−ルを愉しむ」
「ビ−ルを愉しむ」（1997）上原誠一郎 ちくま新書
（推薦度）〇
上原氏の「ビ−ルを愉しむ」を読む。
上原氏は
1948（昭和23）年新潟県生まれ。
東京芸術大学を経てイタリアに渡り、俳優・演出家として舞台、映画、テレビで活躍。
1988（昭和63）年に帰国し、
1990年上原酒造の５代目社長に就任。
地ビール解禁のなか、
1995年2月に日本の地ビール第１号「エチゴビール」を発売した。
表紙裏の解説では、
「本書は異色の経歴を経てビールの世界に魅せられ、日本の地ビール第一号を生んだ著者が、味わいから造り方、愉しみ方まで基礎知識を分かりやすく説いた、『ビールの新しい常識』となる一冊」
とある。
「はじめに」では
上原氏の「地ビ−ル」に対する強い思いが書かれる。
章立ては5章である。
第１章 地ビール入魂
�‐絽胸瓩論脅鬚梁�元を継ぐに当たり、自分にしかできない何かに取り組みたいという思い出、地域に根付いたビ−ルを造れないかと思ったと書く。
1993年、再びドイツに旅立ち、小規模ビ−ル醸造プラントの見積もりと製造に関するノウハウ取得のためであった。
��1994年2月、正式開業の前に100回醸造実習するという目標を立てた上で、ビ−ルの試験醸造免許の申請をした。
上原氏は免許がおりる前、さらにドイツ、イギリス(エールの現状)、アメリカ(マイクロ・ブルワリー)の中小ビ−ル醸造所の視察をし、ノウハウを蓄積した。
��小林健輔、菊池明という20代の若いスタッフの参加もあり、上原氏は「地ビール入魂」というスローガンを掲げ試験醸造を繰り返した。
続いて、ガーナのビ−ル醸造の専門家のバワ・デムヤコ氏も加わり、マイクロ・ブルワリーの中での酵母開発、製品管理などの問題が一挙に解決したと上原氏は書く。
�ぞ絽胸瓩蓮�地ビ−ルには、
＜フレッシュネス＝新鮮さ＞と
＜ローカルプライド＝地域の誇り＞
が必要であるとする。
特に人に語るときは、
＜ローカルプライド＞を
＜ローカルロマンティシズム＞にと
上原氏は言い換える。
そして、オリジナリティとヴァラエティの2つの要素を中心にビ−ル造りをするようにした。
�ゥ咼▲屮譽ぅ�「ビ−ルの歴史」(P30−P34)はなかなかの薀蓄の語りでありお読みください。
第２章 各国ビール事情
上原氏の奥さんはドイツ人でドイツは第2の故郷と表現する。
ドイツだけで300箇所の醸造所を回ってビ−ルを味わいビ−ルの知識の研鑽を上原氏はしたのであろう。
ミュンヘンのオクトーバーフェスト(10月の最初の日曜日を最終日として2週間開催される)でのビ−ルの味わい、
ホ―フブロイハウスでの客接待とビ−ルの飲み方、
北バイエルンのフランコニア地方での地ビ−ルの味めぐり、
ケルンのケルシュピア、
デュッセルドルフのアルト、
ベルリンのベルリナーヴァイス、
チェコのピルスナ−、
プラハのパブ醸造所の「ウフレク」のダークラガー、
ベルギーのビ−ル、
イギリスのビ−ル、
アメリカのビ−ル
について、実体験から多くを語り、その経験の豊富さと多様さが詠んでいると楽しいの。
まさに、読めば読むほど世界各国のビールを飲みたくなるほどの上原氏の記述である。
特に、アメリカのマイクロ・ブルワリーとブルーパブについては日本のお手本になるとし、上原氏自信も経営の参考にしたと記述する。
動的でフレキシブル、
さまざまな演出スタイル、
経営者の経歴・知見の応用
などが参考になるとのことである。
ブルーパブはビ−ル醸造釜や発酵タンクを店の中にいれ、「見る楽しみ」と「飲む楽しみ」を一体化し、上原氏は自分の醸造所にも応用した。
ビアブレイク「ビ−ルの原料」(P87−P98)も、薀蓄の塊であり、是非読んでいただきたい。。
第３章 ブルワリー便り
�．咫櫂訛い蠅隆霑辰旅�程についての知識は大事であると上原氏は書く。
�顱貿�芽造り
…選粒・浸麦
→発芽
→焙煎・乾燥・脱根
�髻忙店�み工程
…麦汁粉砕
→マッシング(糊状マッシュ)
→麦汁煮沸
→凝固物除去
→麦汁冷却
�鵝鉾�酵・熟成
…発酵
→熟成
→瓶詰め
�▲┘船乾咫櫂襪惑�間製造数量180klの小規模ブルワリーである。
10数種類のビ−ルを製造する。
1ヶ月あたり15klで1回１klの麦汁そこ見であれば、2日に1回の仕込みである。
パブを含めた広さは50坪くらいで倉庫や事務所が他にある。
��初夏のある日の仕事の実際として、上述�，鳳茲辰慎�述がされる。
具体的な内容で臨場感に溢れ、ブルワリー体験ができる。
�ぅ咼▲屮譽ぅ�「ビ−ル完成までの仕事」(P137−P141)は、発酵の管理、酵母の抜き取り、検定、熟成タンクへの移動、殺菌、スケジュール調整が上原氏というプロの目で簡潔に記述される。
第４章 ビールのスタイル
�．咫櫂襪諒�類はこれも薀蓄であり、読んでいてなかなか面白い。
�▲咼▲屮譽ぅ�「ビ−ル造りとコンピューター」(P176−P178)は、上原氏のビ−ル製造や顧客管理、経理実務にコンピューターは必須であることが間単に記述される。
第５章 テイスティング
�ー鯲爐凌該宰�
…ビ−ルにもテイスティングの専門化がいても不思議でない時代と上原氏は書く。
�▲謄ぅ好謄�ングの方法
�顱冒澗良床阻 甞壁佞泳 �
�髻防兵粗胆�別評価法
・50点法
・減点法
・プロファイル法、がある。
�鵝縫▲泙�テイスティングする方法のマッチング法の説明もする。
��ビ−ルのテイスティング用語としては、
��)アロマ(鼻で感じる香気)
�髻縫泪Ε好侫�−ル(口当たり)…フルボデイ、デプスボデイ、ライトボデイ、リッチボデイ、へヴィボデイがある。
�鵝縫侫譽ぅ凜 次文�に含んだときの味や香り、風味）
【読書時間の目安】
「ビ−ルを愉しむ」 休日にメモをとりながら半日で読む。
【実践】
とにかく、いろいろなビ−ルを飲むことである。
（推薦度）〇
上原氏の「ビ−ルを愉しむ」を読む。
上原氏は
1948（昭和23）年新潟県生まれ。
東京芸術大学を経てイタリアに渡り、俳優・演出家として舞台、映画、テレビで活躍。
1988（昭和63）年に帰国し、
1990年上原酒造の５代目社長に就任。
地ビール解禁のなか、
1995年2月に日本の地ビール第１号「エチゴビール」を発売した。
表紙裏の解説では、
「本書は異色の経歴を経てビールの世界に魅せられ、日本の地ビール第一号を生んだ著者が、味わいから造り方、愉しみ方まで基礎知識を分かりやすく説いた、『ビールの新しい常識』となる一冊」
とある。
「はじめに」では
上原氏の「地ビ−ル」に対する強い思いが書かれる。
章立ては5章である。
第１章 地ビール入魂
�‐絽胸瓩論脅鬚梁�元を継ぐに当たり、自分にしかできない何かに取り組みたいという思い出、地域に根付いたビ−ルを造れないかと思ったと書く。
1993年、再びドイツに旅立ち、小規模ビ−ル醸造プラントの見積もりと製造に関するノウハウ取得のためであった。
��1994年2月、正式開業の前に100回醸造実習するという目標を立てた上で、ビ−ルの試験醸造免許の申請をした。
上原氏は免許がおりる前、さらにドイツ、イギリス(エールの現状)、アメリカ(マイクロ・ブルワリー)の中小ビ−ル醸造所の視察をし、ノウハウを蓄積した。
��小林健輔、菊池明という20代の若いスタッフの参加もあり、上原氏は「地ビール入魂」というスローガンを掲げ試験醸造を繰り返した。
続いて、ガーナのビ−ル醸造の専門家のバワ・デムヤコ氏も加わり、マイクロ・ブルワリーの中での酵母開発、製品管理などの問題が一挙に解決したと上原氏は書く。
�ぞ絽胸瓩蓮�地ビ−ルには、
＜フレッシュネス＝新鮮さ＞と
＜ローカルプライド＝地域の誇り＞
が必要であるとする。
特に人に語るときは、
＜ローカルプライド＞を
＜ローカルロマンティシズム＞にと
上原氏は言い換える。
そして、オリジナリティとヴァラエティの2つの要素を中心にビ−ル造りをするようにした。
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第２章 各国ビール事情
上原氏の奥さんはドイツ人でドイツは第2の故郷と表現する。
ドイツだけで300箇所の醸造所を回ってビ−ルを味わいビ−ルの知識の研鑽を上原氏はしたのであろう。
ミュンヘンのオクトーバーフェスト(10月の最初の日曜日を最終日として2週間開催される)でのビ−ルの味わい、
ホ―フブロイハウスでの客接待とビ−ルの飲み方、
北バイエルンのフランコニア地方での地ビ−ルの味めぐり、
ケルンのケルシュピア、
デュッセルドルフのアルト、
ベルリンのベルリナーヴァイス、
チェコのピルスナ−、
プラハのパブ醸造所の「ウフレク」のダークラガー、
ベルギーのビ−ル、
イギリスのビ−ル、
アメリカのビ−ル
について、実体験から多くを語り、その経験の豊富さと多様さが詠んでいると楽しいの。
まさに、読めば読むほど世界各国のビールを飲みたくなるほどの上原氏の記述である。
特に、アメリカのマイクロ・ブルワリーとブルーパブについては日本のお手本になるとし、上原氏自信も経営の参考にしたと記述する。
動的でフレキシブル、
さまざまな演出スタイル、
経営者の経歴・知見の応用
などが参考になるとのことである。
ブルーパブはビ−ル醸造釜や発酵タンクを店の中にいれ、「見る楽しみ」と「飲む楽しみ」を一体化し、上原氏は自分の醸造所にも応用した。
ビアブレイク「ビ−ルの原料」(P87−P98)も、薀蓄の塊であり、是非読んでいただきたい。。
第３章 ブルワリー便り
�．咫櫂訛い蠅隆霑辰旅�程についての知識は大事であると上原氏は書く。
�顱貿�芽造り
…選粒・浸麦
→発芽
→焙煎・乾燥・脱根
�髻忙店�み工程
…麦汁粉砕
→マッシング(糊状マッシュ)
→麦汁煮沸
→凝固物除去
→麦汁冷却
�鵝鉾�酵・熟成
…発酵
→熟成
→瓶詰め
�▲┘船乾咫櫂襪惑�間製造数量180klの小規模ブルワリーである。
10数種類のビ−ルを製造する。
1ヶ月あたり15klで1回１klの麦汁そこ見であれば、2日に1回の仕込みである。
パブを含めた広さは50坪くらいで倉庫や事務所が他にある。
��初夏のある日の仕事の実際として、上述�，鳳茲辰慎�述がされる。
具体的な内容で臨場感に溢れ、ブルワリー体験ができる。
�ぅ咼▲屮譽ぅ�「ビ−ル完成までの仕事」(P137−P141)は、発酵の管理、酵母の抜き取り、検定、熟成タンクへの移動、殺菌、スケジュール調整が上原氏というプロの目で簡潔に記述される。
第４章 ビールのスタイル
�．咫櫂襪諒�類はこれも薀蓄であり、読んでいてなかなか面白い。
�▲咼▲屮譽ぅ�「ビ−ル造りとコンピューター」(P176−P178)は、上原氏のビ−ル製造や顧客管理、経理実務にコンピューターは必須であることが間単に記述される。
第５章 テイスティング
�ー鯲爐凌該宰�
…ビ−ルにもテイスティングの専門化がいても不思議でない時代と上原氏は書く。
�▲謄ぅ好謄�ングの方法
�顱冒澗良床阻 甞壁佞泳 �
�髻防兵粗胆�別評価法
・50点法
・減点法
・プロファイル法、がある。
�鵝縫▲泙�テイスティングする方法のマッチング法の説明もする。
��ビ−ルのテイスティング用語としては、
��)アロマ(鼻で感じる香気)
�髻縫泪Ε好侫�−ル(口当たり)…フルボデイ、デプスボデイ、ライトボデイ、リッチボデイ、へヴィボデイがある。
�鵝縫侫譽ぅ凜 次文�に含んだときの味や香り、風味）
【読書時間の目安】
「ビ−ルを愉しむ」 休日にメモをとりながら半日で読む。
【実践】
とにかく、いろいろなビ−ルを飲むことである。
2014年07月10日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「地方にこもる若者たち : 都会と田舎の間に出現した新しい社会」
「地方にこもる若者たち : 都会と田舎の間に出現した新しい社会」 阿部真大 朝日新書
阿部真大：wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E9%83%A8%E7%9C%9F%E5%A4%A7
Ｆａｃｅｂｏｏｋ友達の宮崎に住む尾崎哲夫さんの読書会で使われる新書である。
表紙裏の解説では、
都会と田舎の間に出現した、魅力的な地方都市。若者が地方での生活に感じる幸せと不安とは―？気鋭の社会学者が岡山での社会調査を元に描き出す、リアルな地方社会の現実と新しい日本の姿。
章立ては現在篇に３章、歴史篇に１章、未来篇に２章である。
この新書は阿部氏が重要な個所は太字にしてくれ、かつ篇ごとに要約を書いてくれてありわかりやすいかと思うと違って、そうは問屋が卸さないのである。
歴史編のＪ−ＰＯＰ についてグループ名はわかっても、具体的なアルバム名や歌の題名になるとお手上げで、読みながらＹＯＵ ＴＵＢＥのお世話になった。
現在篇 地方にこもる若者たち
第１章 若者と余暇―「ほどほどパラダイス」としてのショッピングモール
ここは軽くザーッと読む。Ｐ８２の「まとめ」をさらに要約する。
１．１９９０年代以降のモータライゼーションが生み出した大型ショッピングモール等が立ち並ぶ郊外は地方の若者にとって「ほどほどの楽しみ」になっている。
２．地方都市の「ちょうどよい」感じは田舎とも大都会とも違い理想的な場所になっている。
第２章 若者と人間関係―希薄化する地域の人間関係
Ｐ８３の「まとめ」をさらに要約する。
３．モータライゼーションは家族と同世代の仲間だけで構成される、煩わしさのないノイズレスな人間関係は若者たちの地方都市の魅力を高める。
４．地域社会での若者たちの人間関係は希薄であるが子育てなどをきっかけに新たに地域社会に参加していく可能性がある。
第３章 若者と仕事―単身プア／世帯ミドルの若者たち
５．地方の若者の仕事に対する満足度は友人・家族に対するそれより著しく低い。９０年代以降の構造的不況による労働条件の悪さがある。
６．仕事への低い満足度は仕事のやりがいや親の同居（パラサイト生活）によってカバーしているが一時的なものである。一部の若者は新しい仕事を始め現状打破を図るものも出てくる。
歴史篇 Ｊポップを通して見る若者の変容
第４章 地元が若者に愛されるまで
１．８０年代、若者の自分らしさとは社会への「反発」により担保されていた。彼らの地元は退屈な日常を象徴した。
⇒「反発の時代」…ＢＯＯＷＹ
２．９０年代、地域社会の空洞化や管理教育の見直しは若者の反発すべき「大人の世界」の安定性を崩壊させる。自分らしさは夢を叶えようと努力することで獲得される。
⇒「努力の時代」…Ｂ‘ｚ
３．若者の努力は競争となり、「勝ち組」「負け組」を作る。それを避け、「人と人との関係性」によって自分のアイデンティティを見出す。
⇒「関係性の時代」…ミスチル
４．２０００年代、モータライゼーションは第１章で書かれたような「楽しい地元」を出現させた。
⇒「地元の時代」…キック
⇒２０１０年代 「ポスト地元の時代」…ワンオク、ラッド（ｃｆ：第５章）
未来篇 地元を開く新しい公共性
第５章「ポスト地元の時代」のアーティスト
１． ２０１０年代、「他人のことはわからない」という前提を持ちながらも「他人と衝突しながら自分を高める」という価値観をもち、自分らしさも他者との出会いの中で試行錯誤しながら見つけるようになる。
２． 社会の安定性の崩壊は公共性を喪失させた。「ポスト地元の時代」では「新しい公共」の構築が求められる。
○２０１０年代は「新しい公共」…民主党政権のもとで唱えられた旧来の血縁や地縁によらない新しい人的ネットワーク
○ＯＮＥ ＯＫ ＲＯＣＫ（ワンオク）…「柔軟な決断主義」、謙虚な俺様…エモ（エモーショナル・ハードコアに略）の影響を受ける。
○ＲＡＤＷＩＭＰＳ（ラッド）
第６章 新しい公共性のゆくえ
１．流動性・多様性の増す現代社会におおいて、若者たちは２極化する。
・「分離」（違う者同士互いに干渉し合わない）
…ハイポコミュニカティブ（過少にcommunication志向）→男性に多い
・「統合」（違う者同士がぶつかり合い落としどころを探っていく）
…ハイパーコミュニカティブ（過剰にcommunication志向）
→女性に多い
２．「ギャル的マネジメント」とは身近な人間関係の多様性に意識的で、同質的な仲間集団に対する愛着心は強く、異質な他者とのコミュニケーションをいとわず集団をまとめ上げていくような仕切り方をさす。
・「分離」→「統合」へとステップアップするのに必要な資質
⇒内にこもる若者を外に引き出す鍵
⇒「新しい公共」の構築への鍵
３．阿部氏は、現在「こもっている」若者は「同化」ではなく「分離」の段階にあると書く。
○（Ｐ１８２）多様性への対応
・第１段階 抵抗…違いを拒否する＜抵抗的＞
・第２段階 同化…違いを同化（無視）させる＜防衛的＞
・第３段階 分離…違いを認める＜適応的＞
・第４段階 統合…違いを生かす・競争優位につなげる＜戦略的＞
阿部真大：wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E9%83%A8%E7%9C%9F%E5%A4%A7
Ｆａｃｅｂｏｏｋ友達の宮崎に住む尾崎哲夫さんの読書会で使われる新書である。
表紙裏の解説では、
都会と田舎の間に出現した、魅力的な地方都市。若者が地方での生活に感じる幸せと不安とは―？気鋭の社会学者が岡山での社会調査を元に描き出す、リアルな地方社会の現実と新しい日本の姿。
章立ては現在篇に３章、歴史篇に１章、未来篇に２章である。
この新書は阿部氏が重要な個所は太字にしてくれ、かつ篇ごとに要約を書いてくれてありわかりやすいかと思うと違って、そうは問屋が卸さないのである。
歴史編のＪ−ＰＯＰ についてグループ名はわかっても、具体的なアルバム名や歌の題名になるとお手上げで、読みながらＹＯＵ ＴＵＢＥのお世話になった。
現在篇 地方にこもる若者たち
第１章 若者と余暇―「ほどほどパラダイス」としてのショッピングモール
ここは軽くザーッと読む。Ｐ８２の「まとめ」をさらに要約する。
１．１９９０年代以降のモータライゼーションが生み出した大型ショッピングモール等が立ち並ぶ郊外は地方の若者にとって「ほどほどの楽しみ」になっている。
２．地方都市の「ちょうどよい」感じは田舎とも大都会とも違い理想的な場所になっている。
第２章 若者と人間関係―希薄化する地域の人間関係
Ｐ８３の「まとめ」をさらに要約する。
３．モータライゼーションは家族と同世代の仲間だけで構成される、煩わしさのないノイズレスな人間関係は若者たちの地方都市の魅力を高める。
４．地域社会での若者たちの人間関係は希薄であるが子育てなどをきっかけに新たに地域社会に参加していく可能性がある。
第３章 若者と仕事―単身プア／世帯ミドルの若者たち
５．地方の若者の仕事に対する満足度は友人・家族に対するそれより著しく低い。９０年代以降の構造的不況による労働条件の悪さがある。
６．仕事への低い満足度は仕事のやりがいや親の同居（パラサイト生活）によってカバーしているが一時的なものである。一部の若者は新しい仕事を始め現状打破を図るものも出てくる。
歴史篇 Ｊポップを通して見る若者の変容
第４章 地元が若者に愛されるまで
１．８０年代、若者の自分らしさとは社会への「反発」により担保されていた。彼らの地元は退屈な日常を象徴した。
⇒「反発の時代」…ＢＯＯＷＹ
２．９０年代、地域社会の空洞化や管理教育の見直しは若者の反発すべき「大人の世界」の安定性を崩壊させる。自分らしさは夢を叶えようと努力することで獲得される。
⇒「努力の時代」…Ｂ‘ｚ
３．若者の努力は競争となり、「勝ち組」「負け組」を作る。それを避け、「人と人との関係性」によって自分のアイデンティティを見出す。
⇒「関係性の時代」…ミスチル
４．２０００年代、モータライゼーションは第１章で書かれたような「楽しい地元」を出現させた。
⇒「地元の時代」…キック
⇒２０１０年代 「ポスト地元の時代」…ワンオク、ラッド（ｃｆ：第５章）
未来篇 地元を開く新しい公共性
第５章「ポスト地元の時代」のアーティスト
１． ２０１０年代、「他人のことはわからない」という前提を持ちながらも「他人と衝突しながら自分を高める」という価値観をもち、自分らしさも他者との出会いの中で試行錯誤しながら見つけるようになる。
２． 社会の安定性の崩壊は公共性を喪失させた。「ポスト地元の時代」では「新しい公共」の構築が求められる。
○２０１０年代は「新しい公共」…民主党政権のもとで唱えられた旧来の血縁や地縁によらない新しい人的ネットワーク
○ＯＮＥ ＯＫ ＲＯＣＫ（ワンオク）…「柔軟な決断主義」、謙虚な俺様…エモ（エモーショナル・ハードコアに略）の影響を受ける。
○ＲＡＤＷＩＭＰＳ（ラッド）
第６章 新しい公共性のゆくえ
１．流動性・多様性の増す現代社会におおいて、若者たちは２極化する。
・「分離」（違う者同士互いに干渉し合わない）
…ハイポコミュニカティブ（過少にcommunication志向）→男性に多い
・「統合」（違う者同士がぶつかり合い落としどころを探っていく）
…ハイパーコミュニカティブ（過剰にcommunication志向）
→女性に多い
２．「ギャル的マネジメント」とは身近な人間関係の多様性に意識的で、同質的な仲間集団に対する愛着心は強く、異質な他者とのコミュニケーションをいとわず集団をまとめ上げていくような仕切り方をさす。
・「分離」→「統合」へとステップアップするのに必要な資質
⇒内にこもる若者を外に引き出す鍵
⇒「新しい公共」の構築への鍵
３．阿部氏は、現在「こもっている」若者は「同化」ではなく「分離」の段階にあると書く。
○（Ｐ１８２）多様性への対応
・第１段階 抵抗…違いを拒否する＜抵抗的＞
・第２段階 同化…違いを同化（無視）させる＜防衛的＞
・第３段階 分離…違いを認める＜適応的＞
・第４段階 統合…違いを生かす・競争優位につなげる＜戦略的＞
2014年05月24日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「ナルシズム−天才と狂気の心理学」
「ナルシズム−天才と狂気の心理学」(1987) 中西信男 講談社現代新書
（推薦度）○
次に中西氏の「ナルシズム」を読む。
中西氏は1927年東京に生まれる。東京大学文学部卒。大阪大学名誉教授。専攻は教育心理学とある。カウンセリング、人間診断法に関する研究など造詣が深い。
表紙に、
「<自己愛>（ナルシズム）の心理は誰のこころにも潜んでいる。自己を生かす創造の活力源となる健全なナルシズム、狂気と破滅をもたらす歪められた未熟なナルシズム、過剰な自己顕示、性的倒錯、妄想型神経症など、多くの症例を通して、正常と異常を分かつ、こころの不思議にメスを入れる。」とこの新書のキーワードが並ぶ。ナルシズムには健全なものと未熟なものがある。未熟なものがいろいろ問題を起こし『自己愛人格障害』という狂った心理的状態になると中西氏は説明する。
「まえがき」では中西氏は「創造的な天才が，時には周囲の人から狂気の人と見られることがある。画家・岸田劉生、陶芸家・北大路魯山人、…ヒトラーなど」と書き、「こうした天才と狂気とを分かつ鍵概念としてナルシズム<自己愛>という言葉がある」と続ける。ハインツ・コフートのナルシズム論で解説していく。章立ては７章である。
１−あなたはナルシストか
ネッケと言う精神分析学者は「自分の姿や自分の肉体にのみ愛や性欲を感じる」という性倒錯を「ナルシズム」と命じた。
フロイトは、「自分自身を、自分の身体を、愛の対象とする人」と拡大解釈した。フロイトは乳児の時期の「自体愛」、次に「自己愛(ナルシズム)」の段階になり、この時期は同性愛的傾向がしばし生ずる。その後で、他人に対する愛情が生まれ、「対象愛」の時期になるとする。「対象愛」の段階になってそれに挫折すると、人々は異性や他者への愛情を撤回し、再び自分自身への愛情や関心にふけるようになり、『自己憐憫』、『心気症』『自己愛神経症』に落ち込むとある。健全な自己愛期を『一次的ナルシズム』とよび、病理的に幼児に退行したものを『二次的ナルシズム』とフロイトは考える。
ハインツ・コフートは「自体愛」から始まるが、その後「未熟な乳児期自己愛期」があり、次に「高度で健康な自己愛期」を考える。コフートは自己愛を自然な発達段階に見られるものと考え、未熟な自己が親の適切な対応で次第に成熟した「機能した自己」へと発達するものと見る。
未熟な自己愛期には、一方で、
�ー�分を万能と思う誇大自己
�⊆�分を見せびらかす顕示的自己
の特徴が見られ、他方で
�￣冤鎖鯒�
�▲好拭嫉照�
を通して自己をその一部と考える原始的な理想化が見られるとする。
コフートは、このような幼児的な自己愛期にとどまってそれ以上に発達しない人や、いったんは健康な自己愛まで成長しながら退行した人をナルシストと考えている。ナルシストの特徴やヒステリー性格の違いについては読んでいただく。
自己愛人格障害については以下の特徴がある。
�ー�分の重要性や独自性についての誇張された感覚
�¬妓造寮�功、権力、才気煥発、最高の美、理想的な恋愛などの空想にふける
��自己顕示的であり、他人から注目され、讃美される事を渇望する
�の簔犬別鬼愎瓦機�激怒、劣等感、恥辱感、屈辱感、批判に対する空虚さ、他人への無関心、敗北感
�ヂ仗祐愀�
・特権への要求
・対人関係における一方的な搾取
・相手を極端に理想化するか逆に軽視するかの間を揺れ動く対人関係
・共感性の欠如
２−モナ・リザの“謎の微笑”（レオナルドは何を描いたか；ナルシズムと同性愛）
表紙裏に書かれた次の文章を読んでいただく。
「フロイトによれば、母ひとりに育てられた子は、母に愛された自分の立場を逆転させて、自分を母の立場におき（同一化という）、自分自身の幼い姿に似た者（少年）を愛の対象とする。すなわら、『いま成人となったレオナルドが愛している子どもたちは、子どもであった彼自身の代理であり更新にほかならないのである』。したがって、過去の自分を愛するということは、幼いときに遡って、自分自身を愛すること、すなわち自己愛におちいったわけなのである。フロイトはこの心理的なプロセスを次のような文章で表現している。『それをわれわれは、彼はナルチシズム（またはナルシズム）の途上で、愛の対象を見出すというふうに表現するのである』」
３−シュレーバー博士の奇怪な幻想
フロイトによる「シュレーバー症例」の考察により、ナルシズムの問題をリピドー発達に関連させて理論化する。画家・岸田劉生は病理的に幼児に退行した『二次的ナルシズム』の特徴を持ち、外界からリピドーを撤回して自己に向けるという心理状態に近いと中西氏は書く。10代の劉生の挫折は内心の不安にもとづくものであるが、この不安を防衛するように独断的な劉生が現われ、自己愛的確信に到達した後は、不安や脅威は抑圧されて自信にみち満ちた権威的な人格に生まれ変わってしまった。
４−トーマス・マンと三島由紀夫
トーマス・マンの「ヴェニスに死す」について、コフートは自身のナルシズム論からマンの自己発達における自己愛的段階の病理を発見し、「自己愛的退行」、美少年への「理想化転移」による若者の美・完全性を獲得するための「自己対象」という分析をする。ナルシズムの発達に関するフロイトモデル・コフートモデルのP88の図は読んで理解いただく。「自己対象」には「鏡映転移」という誇大自己を示すものがある。
三島由紀夫の「仮面の告白」についても「理想化転移」と「自己対象」というコフートのナルシズム論から説明できるとした後、クリーガマンの言う「現代はパフォーマンスする事を喜び、観客からの直接的な賞賛を喜ぶ“パフォーマンス時代”が現出し、これこそナルシズム時代の象徴とも言うべきとして、三島はその先駆者である」と引用する。
５−ヒトラーにみるナルシズムの病理
ヒトラーの15歳からの10年間はエリクソンの言う「モラトリアム時代」であった。自分が何者かわからず、建設的な社会的役割を身につけることが出来なかった。この後、反ユダヤ主義を核心として「同一性達成」を形成し、青年期の弱々しい自己像を覆い隠し傲慢な総統ヒトラーに変貌したとある。コフートはこの変貌の過程を「自己愛的確信」という用語で説明する。ブロンバークはヒトラーを「自己愛人格障害者」と診断している。
コフートは、ヒトラーの、反ユダヤ主義のように自分の信念を絶対的に正しいとする感覚を持った人を「メシア的指導者」と呼び、チャーチルのように自分に力があると確信している指導者を「カリスマ的指導者」と呼んだ。
６−なぜナルシストになるのか
ハインツ・コフートの生涯と精神分析的人間観が語られる。陶芸家・北大路魯山人やミスター�召覆匹鯲磴縫侫蹈ぅ函▲灰奸璽箸陵�論が詳細に展開される。まとめとしてお読みいただくのが良い。
７−ナルシズムの病理と現代社会
健康なナルシズムと病的なナルシズムを「凝集自己」の段階から説明する。次に反社会的な自己愛人格障害について述べ、最後にナルシズム社会の危機につき中西は言及し、警鐘を鳴らすのである。
（推薦度）○
次に中西氏の「ナルシズム」を読む。
中西氏は1927年東京に生まれる。東京大学文学部卒。大阪大学名誉教授。専攻は教育心理学とある。カウンセリング、人間診断法に関する研究など造詣が深い。
表紙に、
「<自己愛>（ナルシズム）の心理は誰のこころにも潜んでいる。自己を生かす創造の活力源となる健全なナルシズム、狂気と破滅をもたらす歪められた未熟なナルシズム、過剰な自己顕示、性的倒錯、妄想型神経症など、多くの症例を通して、正常と異常を分かつ、こころの不思議にメスを入れる。」とこの新書のキーワードが並ぶ。ナルシズムには健全なものと未熟なものがある。未熟なものがいろいろ問題を起こし『自己愛人格障害』という狂った心理的状態になると中西氏は説明する。
「まえがき」では中西氏は「創造的な天才が，時には周囲の人から狂気の人と見られることがある。画家・岸田劉生、陶芸家・北大路魯山人、…ヒトラーなど」と書き、「こうした天才と狂気とを分かつ鍵概念としてナルシズム<自己愛>という言葉がある」と続ける。ハインツ・コフートのナルシズム論で解説していく。章立ては７章である。
１−あなたはナルシストか
ネッケと言う精神分析学者は「自分の姿や自分の肉体にのみ愛や性欲を感じる」という性倒錯を「ナルシズム」と命じた。
フロイトは、「自分自身を、自分の身体を、愛の対象とする人」と拡大解釈した。フロイトは乳児の時期の「自体愛」、次に「自己愛(ナルシズム)」の段階になり、この時期は同性愛的傾向がしばし生ずる。その後で、他人に対する愛情が生まれ、「対象愛」の時期になるとする。「対象愛」の段階になってそれに挫折すると、人々は異性や他者への愛情を撤回し、再び自分自身への愛情や関心にふけるようになり、『自己憐憫』、『心気症』『自己愛神経症』に落ち込むとある。健全な自己愛期を『一次的ナルシズム』とよび、病理的に幼児に退行したものを『二次的ナルシズム』とフロイトは考える。
ハインツ・コフートは「自体愛」から始まるが、その後「未熟な乳児期自己愛期」があり、次に「高度で健康な自己愛期」を考える。コフートは自己愛を自然な発達段階に見られるものと考え、未熟な自己が親の適切な対応で次第に成熟した「機能した自己」へと発達するものと見る。
未熟な自己愛期には、一方で、
�ー�分を万能と思う誇大自己
�⊆�分を見せびらかす顕示的自己
の特徴が見られ、他方で
�￣冤鎖鯒�
�▲好拭嫉照�
を通して自己をその一部と考える原始的な理想化が見られるとする。
コフートは、このような幼児的な自己愛期にとどまってそれ以上に発達しない人や、いったんは健康な自己愛まで成長しながら退行した人をナルシストと考えている。ナルシストの特徴やヒステリー性格の違いについては読んでいただく。
自己愛人格障害については以下の特徴がある。
�ー�分の重要性や独自性についての誇張された感覚
�¬妓造寮�功、権力、才気煥発、最高の美、理想的な恋愛などの空想にふける
��自己顕示的であり、他人から注目され、讃美される事を渇望する
�の簔犬別鬼愎瓦機�激怒、劣等感、恥辱感、屈辱感、批判に対する空虚さ、他人への無関心、敗北感
�ヂ仗祐愀�
・特権への要求
・対人関係における一方的な搾取
・相手を極端に理想化するか逆に軽視するかの間を揺れ動く対人関係
・共感性の欠如
２−モナ・リザの“謎の微笑”（レオナルドは何を描いたか；ナルシズムと同性愛）
表紙裏に書かれた次の文章を読んでいただく。
「フロイトによれば、母ひとりに育てられた子は、母に愛された自分の立場を逆転させて、自分を母の立場におき（同一化という）、自分自身の幼い姿に似た者（少年）を愛の対象とする。すなわら、『いま成人となったレオナルドが愛している子どもたちは、子どもであった彼自身の代理であり更新にほかならないのである』。したがって、過去の自分を愛するということは、幼いときに遡って、自分自身を愛すること、すなわち自己愛におちいったわけなのである。フロイトはこの心理的なプロセスを次のような文章で表現している。『それをわれわれは、彼はナルチシズム（またはナルシズム）の途上で、愛の対象を見出すというふうに表現するのである』」
３−シュレーバー博士の奇怪な幻想
フロイトによる「シュレーバー症例」の考察により、ナルシズムの問題をリピドー発達に関連させて理論化する。画家・岸田劉生は病理的に幼児に退行した『二次的ナルシズム』の特徴を持ち、外界からリピドーを撤回して自己に向けるという心理状態に近いと中西氏は書く。10代の劉生の挫折は内心の不安にもとづくものであるが、この不安を防衛するように独断的な劉生が現われ、自己愛的確信に到達した後は、不安や脅威は抑圧されて自信にみち満ちた権威的な人格に生まれ変わってしまった。
４−トーマス・マンと三島由紀夫
トーマス・マンの「ヴェニスに死す」について、コフートは自身のナルシズム論からマンの自己発達における自己愛的段階の病理を発見し、「自己愛的退行」、美少年への「理想化転移」による若者の美・完全性を獲得するための「自己対象」という分析をする。ナルシズムの発達に関するフロイトモデル・コフートモデルのP88の図は読んで理解いただく。「自己対象」には「鏡映転移」という誇大自己を示すものがある。
三島由紀夫の「仮面の告白」についても「理想化転移」と「自己対象」というコフートのナルシズム論から説明できるとした後、クリーガマンの言う「現代はパフォーマンスする事を喜び、観客からの直接的な賞賛を喜ぶ“パフォーマンス時代”が現出し、これこそナルシズム時代の象徴とも言うべきとして、三島はその先駆者である」と引用する。
５−ヒトラーにみるナルシズムの病理
ヒトラーの15歳からの10年間はエリクソンの言う「モラトリアム時代」であった。自分が何者かわからず、建設的な社会的役割を身につけることが出来なかった。この後、反ユダヤ主義を核心として「同一性達成」を形成し、青年期の弱々しい自己像を覆い隠し傲慢な総統ヒトラーに変貌したとある。コフートはこの変貌の過程を「自己愛的確信」という用語で説明する。ブロンバークはヒトラーを「自己愛人格障害者」と診断している。
コフートは、ヒトラーの、反ユダヤ主義のように自分の信念を絶対的に正しいとする感覚を持った人を「メシア的指導者」と呼び、チャーチルのように自分に力があると確信している指導者を「カリスマ的指導者」と呼んだ。
６−なぜナルシストになるのか
ハインツ・コフートの生涯と精神分析的人間観が語られる。陶芸家・北大路魯山人やミスター�召覆匹鯲磴縫侫蹈ぅ函▲灰奸璽箸陵�論が詳細に展開される。まとめとしてお読みいただくのが良い。
７−ナルシズムの病理と現代社会
健康なナルシズムと病的なナルシズムを「凝集自己」の段階から説明する。次に反社会的な自己愛人格障害について述べ、最後にナルシズム社会の危機につき中西は言及し、警鐘を鳴らすのである。
2014年05月01日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「喜劇の手法笑いのしくみを探る」(
「喜劇の手法笑いのしくみを探る」(2006) 喜志哲雄 集英社新書
（推薦度） ○
喜志氏は1935年兵庫県生まれである。京都大学卒業、同大学院修了、1964年から1999年まで京都大学に勤務し、京都大学教授を経て、現在は名誉教授。専門は、英米演劇。著書に、『劇場のシェイクスピア』、『英米演劇入門』などがある。訳書はたくさんある。『研究社シェイクスピア辞典』（共著）も面白いのではないか。
喜志哲雄：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%96%9C%E5%BF%97%E5%93%B2%E9%9B%84
表紙裏の解説では、
「劇場で喜劇を観るのは心躍る体験だが、なぜそれが面白くて楽しいのかという疑問に答えてくれる本は意外に少ない｡
本書は、誰もが喜劇と認める作品を手がかりにして、その問いに具体的に答えようと試みる。
喜劇の観客はよく笑う。
その＜笑い＞はいったいどこから生まれてくるのだろう。
著者は＜笑い＞のエッセンスを、シェイクスピアやモリエール、さらにはニール・サイモンやハロルド・ピンターなどの代表作から注意深く抽出し、そこに仕掛けられた創意あふれる手法を読み解き、笑いの源泉へと迫っていく。
演劇的知を駆使して喜劇の魅力を解き明かした、最良の演劇入門書。」とある。
喜劇（きげき）とは、人を笑わせることを主体とした演劇や映画、ラジオやテレビのドラマ作品や、それらのなかの笑いを誘うやりとりを指す。コメディとも言う。西洋演劇に端を発するコメディ（Comedy）は、元々は悲劇（Tragedy）の対照を成すものであり、必ずしも笑えるものとは限らなかった。例えば、ダンテの『神曲』も原題は「La Divina Commedia（神聖な喜劇）」である。（フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』）
章立ては序に5章の構成である。
序 笑う—喜劇の観客
喜劇を観るのがなぜ楽しいのか、それに答える本が少ないと喜志氏は書く。シェイクスピアの『間違いの喜劇』やモリエールの『守銭奴』など誰もが喜劇と認める作品を手がかりにして、喜劇を語るのが喜志氏のスタンスである。それぞれの作品がどんな手法を用いることにより喜劇的効果（＝笑いと喜志氏は定義）を生み出しているか検討をする。
笑いとは当事者ではなく事件と無関係な者にのみ可能な反応である。当事者が笑うとすれば、自分自身を他者として捉え、自らに対して一定の距離を作るからというのが喜志氏の説である。
劇の提示は、作家によって処理を施された事件であり、作家は自らの作品を顧客･読者がどのように受容するかを念頭に置きながら素材を処理する。従い、悲劇･喜劇になるのは劇作家の立場、題材に対する劇作家の自在というのが喜志氏の説である。
ドイツの劇作家ブレヒト(1898−1956)の『肝っ玉おっ母とその子供たち』やミラー（1915−2005）の『セ ―ルスマンの死の』例を挙げ、ブレヒトの＜異化効果＞の説明もする。
ある程度の喜劇を見ると、アイデンティティの混乱が多くの喜劇の根幹を成すという喜志氏の説は理解すると喜劇がわかる(P15−P16)。ただ、顧客はアイデンティティの混乱についてすべてを知らなければならないのである。
�� だます—喜劇と意識
１.変装
シェイクスピアの喜劇『十二夜』『ヴェローナの二人の紳士』では、女性の登場人物が男に変装するという設定がある。劇で重要なのは、女装や男装した人はそれぞれ女性･男性として認められることである。近代藝術観からは不自然なため、近代以降は変装という手法はあまり用いなくなっている。
２．一人二役
変装する人物は、自分の意思で2種類のアイデンティティを獲得する。一つは実体、一つは見かけである。その例外としてどちらも実体である、ゴルドーニ(1707−93)の『主人二人の召使アルレキ−ノ』が喜志氏によって解説される。この喜劇はイタリアの伝統的な喜劇であるコメディア・デラルテの影響を受けている。喜志氏はイギリスの笑劇作家クーニーの『ラン・フォー・ユア・ワイフ』をあげ、ゴルドーニの『主人二人の召使アルレキ−ノ』と同じ設定を用いて近代リアリズム劇風の作品を書けることを書く。喜志氏は最後に、顧客相手の駆け引きではクーニーはゴルドーニにはるかに及ばないと書く。
３．嘘
ワイルド(1854−1900)の喜劇『真面目が大事』やシェルダン(1751−1816)の『恋敵』などが嘘を扱った劇として紹介される。この2つの劇は嘘が実体になり劇は終わるが、嘘が嘘のままばれないで展開する喜劇がある。ウィッチャリー(1641-1715)の『田舎女房』である。嘘が最後まで嘘のままで残酷な結末を迎えるコルネイユ(1606−84)の『嘘つき男』も解説される。喜志氏は最後に嘘は放蕩者や悪人と異なり、本質的に演技性が要求される活き方であると書く。
４．変身
特定のアイデンティティを備えていた人物が、ある時間が経過した後、別のアイデンティティを獲得するという物語を扱った喜劇がある。その人物は劇が終わるときには、少なくとも見かけにおいては変身を遂げる。シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』はそういう状況を描いている。喜志氏はギリシア劇以来のスティコミシア「隔行対話」につきここで解説する。バーナード・ショー(1856−1950)の『ピグマリオン』(ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作)は変身がめでたい結末にならない例として喜志氏があげる。
�� 迷う—喜劇と無意識
５．双生児
シェイクスピアの『十二夜』の喜劇的効果は変装にあったが、双生児の効果もある。このように変装や双生児は人物のアイデンティティの混乱によって喜劇的効果を生み出す。双生児という設定は二人の人物をひとりに統合する効果がある。この代表作はシェイクスピアの『間違いの喜劇』である。この種本はプラウトゥスの『メナエクムス』兄弟である。
シェイクスピア『間違いの喜劇』では、登場する2組の双生児は間違えられる側にもなり、間違える例にもなる。取り違えの対象になると同時に取り違えの主体にもなる。双生児という設定は不自然なものになるがシェイクスピアはこの不自然さを作品全体がもつ不条理感で包み込むことにより解消している。そして、大詰めで何とも言えない感動に変化させると喜志氏は書く。
６．偶然の一致
モリエールの喜劇『守銭奴』から喜志氏は説明する。観客は共感を抱き寄せる人、突き放す人という状況認識を与えられる。顧客はすべての事情を心得ている。喜志氏はデウス・エクス・マーキナ(「機械仕掛けの神」)という手法の説明をして、この章を終える。
７．反復
フランスの代表的笑劇作家のフェドー(1862−1921)の『自由交換ホテル』は反復を多用する作品である。人間を機械のようにものに見せる効果があると喜志氏は書く。イギリスのカワード(1899−1973)の『花粉熱』は反復が同時に平行して起こる話として喜志氏によって説明される。カワードの『私生活』は時間の経過とともに反復(喧嘩別れと和解)が起こる例として説明される。
８.循環
現代アメリカの人気作家サイモン(1927−)の『おかしな2人』は「ワン・ジョーク・コメディ」の典型である。この喜劇は喜志氏によれば、設定(潔癖症の男とルーズな男の同居)に無理をした結果、傑作になり損ねた喜劇であると書く。ベケット(1906−89)の『ゴドーを待ちながら』はほとんど同じ事件が2度繰り返され、この劇が捉えている閉塞状況を観客に伝えていると説明される。
９．逆転
イギリスのラティガン(1911−77)の『シルヴィアとは誰か』やグリーン(1904−91)の『慇懃な恋人』について喜志氏は解説する。特に後者は劇の状況について顧客に個々の劇中人物の情報をどう提供するのか作者が綿密に計算しているかがわかると喜志氏は書く。優位に立っていた不倫の相手が相手の男により不利な立場に追い込まれる逆転の様子が描かれている。
�� 間違える—喜劇の状況
10.誤解
ゴーゴリ(1809−52)の『検察官』は喜劇の作者がどんな情報をどんなやり方で顧客に提供するかという問題についての模範解答であると喜志氏は書く。イギリスの劇作家ブリーストリー(1894−1984)の『警部来訪』が喜志氏によって簡単に解説される。
11.身代わり
ロスタン(1868−1918)の『シラノ・ド・ベルジュラック』の喜志氏の解説は秀逸で読んでいて、この劇をぜひ見たくなる。肉体的な性愛と精神的な情愛が峻別され、精神的なものが人を幸福にして、至福な死を迎えられるのではと考えさせられるのである。シラノは死の間際に自分の想いがロクサーヌに通じたことを知り満足に満ち死を迎えるのである。喜志氏はシェイクスピアの『尺には尺を』と対比させこの劇の＜親密な関係＞は純粋に肉体的なものであり精神性を欠いていると解説する。
12.自縄自縛
ドイツの劇作家クライスト(1777−1811)の『壊れ甕』はギリシア悲劇のソポクレスの『オイディプス王』と同じである喜志氏は書く。
13.誤算
カウフマン(1889−1961)とハート(1904−61)の共作の『一生にただ一度』の解説もまあまあ面白い。作者たちは、脱出不可能の状況を自らに対して設定し、次々に奇手を繰り出し解決に成功する。喜志氏によれば、観客の心理の根底には、翻弄されしことにより快感を得られるという嗜虐的なものが認められるらしい。最近のアメリカ映画ではこの手法が数多く使われいる。
�� 語る—喜劇の言葉
14.傍白
モリエールの『守銭奴』『女房学校』の中の傍白（独白の一種）を喜志氏は解説する。
15.アイロニー
シェリダンの『悪口学校』の「衝立の場」は有名な場面である。そこでのアイロニーが喜志氏によって語られる。
チェーホフの『櫻の園』をあげ、台詞の中に隠された意味について解説する。
16.沈黙と間
ピンタ(1930−)の『昔の日々』で「沈黙」と「間」を使い分ける。
17.機智合戦
シェイクスピアの『空騒ぎ』は複数の筋が絡まる喜劇である。その中で機知合戦が繰りひろげられる。相手の台詞の形式・言葉をそのまま守り、内容を変える手法であり、それが連続していくことに意味がある(＝連続性)。コングリーブ(1670−1729)の『世の習い』にも現れると喜志氏は書く。
18.スラップスティック(道化の持った『叩き棒』)
オートン(1933−67)の『薔薇と棺桶』は殺人と銀行強盗についての笑劇であるが、喜志氏は、不条理な状況を扱った笑劇のスラップスティックであると書く。トラヴァーズの『略奪』もまさに不条理な状況を扱った劇である。
�� 考える—喜劇についての喜劇
19.バーレスク
ゲイ(1685−1732)の『乞食のオペラ』とそれを下書きにした『三文オペラ』を喜志氏は比較する。サヴォイ・オペラの『ミカド』が簡単に説明される。
20.パスティーシュ(模作)
イギリスの劇作家ハンプトン(1946−)の『博愛主義者』はモリエールの『人間嫌い』の
パスティーシュだという。そして、根源的な問題に迫り、その問題は演劇的認識の根底にある逆説に他ならないと喜志氏は書く。
21.劇中劇
ヴィラーズ(1628−87)が中心になって書いた『舞台稽古』という劇がある。喜志氏は劇について、�仝楜劼里燭瓩里發里任△襪箸い�考えかたと、��近代リアリズムを尊重するものがある。劇中劇という手法は、劇という表現形式の本質を吟味させてくれる。ジュネ(1910−86)の『女中たち』についても喜志氏は説明する。「劇中劇は劇と現実の複雑な関係に我々の目を向けさせるという、高度な結果をもたらす場合もある」と最後に書くが、よくわからない。
22.夢
シェイクスピアの『真夏の夜の夢』は少なくとも3つの箇所で｢夢｣が現実認識のあり方を規定する言葉として使われる。エピローグと職人のボトムが目覚めたとき、4人の若者が夜明けとともに正気に戻ったときに｢夢｣を見たという。観客はそれらが現実であるというすべての事情がわかっている。喜志氏は最後に、｢夢という発想は、こうした劇の観客の存在そのものと観客の認識の両方を根元的に疑わせる結果をもたらす｣と書き、「最終的に笑われるのは我々自身だからである」と続けるがこれが良くわからない。夢を見ているからなのか……。
23.ハッピー・エンディング
｢悲劇は死で終わり、喜劇は結婚で終る｣というのが一般論である。シェイクスピアの『あらし』は人間のセクシュアリティを吟味した作品である。最後に喜志氏はこの『あらし』は観客を無条件で幸せにする喜劇には必ずしもなっていないと書くが、実際に劇を見るかやはり戯曲を読まないとわからない。つまり喜劇といえどもただ笑うだけというだけの単純なものでないのであろう。
（推薦度） ○
喜志氏は1935年兵庫県生まれである。京都大学卒業、同大学院修了、1964年から1999年まで京都大学に勤務し、京都大学教授を経て、現在は名誉教授。専門は、英米演劇。著書に、『劇場のシェイクスピア』、『英米演劇入門』などがある。訳書はたくさんある。『研究社シェイクスピア辞典』（共著）も面白いのではないか。
喜志哲雄：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%96%9C%E5%BF%97%E5%93%B2%E9%9B%84
表紙裏の解説では、
「劇場で喜劇を観るのは心躍る体験だが、なぜそれが面白くて楽しいのかという疑問に答えてくれる本は意外に少ない｡
本書は、誰もが喜劇と認める作品を手がかりにして、その問いに具体的に答えようと試みる。
喜劇の観客はよく笑う。
その＜笑い＞はいったいどこから生まれてくるのだろう。
著者は＜笑い＞のエッセンスを、シェイクスピアやモリエール、さらにはニール・サイモンやハロルド・ピンターなどの代表作から注意深く抽出し、そこに仕掛けられた創意あふれる手法を読み解き、笑いの源泉へと迫っていく。
演劇的知を駆使して喜劇の魅力を解き明かした、最良の演劇入門書。」とある。
喜劇（きげき）とは、人を笑わせることを主体とした演劇や映画、ラジオやテレビのドラマ作品や、それらのなかの笑いを誘うやりとりを指す。コメディとも言う。西洋演劇に端を発するコメディ（Comedy）は、元々は悲劇（Tragedy）の対照を成すものであり、必ずしも笑えるものとは限らなかった。例えば、ダンテの『神曲』も原題は「La Divina Commedia（神聖な喜劇）」である。（フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』）
章立ては序に5章の構成である。
序 笑う—喜劇の観客
喜劇を観るのがなぜ楽しいのか、それに答える本が少ないと喜志氏は書く。シェイクスピアの『間違いの喜劇』やモリエールの『守銭奴』など誰もが喜劇と認める作品を手がかりにして、喜劇を語るのが喜志氏のスタンスである。それぞれの作品がどんな手法を用いることにより喜劇的効果（＝笑いと喜志氏は定義）を生み出しているか検討をする。
笑いとは当事者ではなく事件と無関係な者にのみ可能な反応である。当事者が笑うとすれば、自分自身を他者として捉え、自らに対して一定の距離を作るからというのが喜志氏の説である。
劇の提示は、作家によって処理を施された事件であり、作家は自らの作品を顧客･読者がどのように受容するかを念頭に置きながら素材を処理する。従い、悲劇･喜劇になるのは劇作家の立場、題材に対する劇作家の自在というのが喜志氏の説である。
ドイツの劇作家ブレヒト(1898−1956)の『肝っ玉おっ母とその子供たち』やミラー（1915−2005）の『セ ―ルスマンの死の』例を挙げ、ブレヒトの＜異化効果＞の説明もする。
ある程度の喜劇を見ると、アイデンティティの混乱が多くの喜劇の根幹を成すという喜志氏の説は理解すると喜劇がわかる(P15−P16)。ただ、顧客はアイデンティティの混乱についてすべてを知らなければならないのである。
�� だます—喜劇と意識
１.変装
シェイクスピアの喜劇『十二夜』『ヴェローナの二人の紳士』では、女性の登場人物が男に変装するという設定がある。劇で重要なのは、女装や男装した人はそれぞれ女性･男性として認められることである。近代藝術観からは不自然なため、近代以降は変装という手法はあまり用いなくなっている。
２．一人二役
変装する人物は、自分の意思で2種類のアイデンティティを獲得する。一つは実体、一つは見かけである。その例外としてどちらも実体である、ゴルドーニ(1707−93)の『主人二人の召使アルレキ−ノ』が喜志氏によって解説される。この喜劇はイタリアの伝統的な喜劇であるコメディア・デラルテの影響を受けている。喜志氏はイギリスの笑劇作家クーニーの『ラン・フォー・ユア・ワイフ』をあげ、ゴルドーニの『主人二人の召使アルレキ−ノ』と同じ設定を用いて近代リアリズム劇風の作品を書けることを書く。喜志氏は最後に、顧客相手の駆け引きではクーニーはゴルドーニにはるかに及ばないと書く。
３．嘘
ワイルド(1854−1900)の喜劇『真面目が大事』やシェルダン(1751−1816)の『恋敵』などが嘘を扱った劇として紹介される。この2つの劇は嘘が実体になり劇は終わるが、嘘が嘘のままばれないで展開する喜劇がある。ウィッチャリー(1641-1715)の『田舎女房』である。嘘が最後まで嘘のままで残酷な結末を迎えるコルネイユ(1606−84)の『嘘つき男』も解説される。喜志氏は最後に嘘は放蕩者や悪人と異なり、本質的に演技性が要求される活き方であると書く。
４．変身
特定のアイデンティティを備えていた人物が、ある時間が経過した後、別のアイデンティティを獲得するという物語を扱った喜劇がある。その人物は劇が終わるときには、少なくとも見かけにおいては変身を遂げる。シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』はそういう状況を描いている。喜志氏はギリシア劇以来のスティコミシア「隔行対話」につきここで解説する。バーナード・ショー(1856−1950)の『ピグマリオン』(ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作)は変身がめでたい結末にならない例として喜志氏があげる。
�� 迷う—喜劇と無意識
５．双生児
シェイクスピアの『十二夜』の喜劇的効果は変装にあったが、双生児の効果もある。このように変装や双生児は人物のアイデンティティの混乱によって喜劇的効果を生み出す。双生児という設定は二人の人物をひとりに統合する効果がある。この代表作はシェイクスピアの『間違いの喜劇』である。この種本はプラウトゥスの『メナエクムス』兄弟である。
シェイクスピア『間違いの喜劇』では、登場する2組の双生児は間違えられる側にもなり、間違える例にもなる。取り違えの対象になると同時に取り違えの主体にもなる。双生児という設定は不自然なものになるがシェイクスピアはこの不自然さを作品全体がもつ不条理感で包み込むことにより解消している。そして、大詰めで何とも言えない感動に変化させると喜志氏は書く。
６．偶然の一致
モリエールの喜劇『守銭奴』から喜志氏は説明する。観客は共感を抱き寄せる人、突き放す人という状況認識を与えられる。顧客はすべての事情を心得ている。喜志氏はデウス・エクス・マーキナ(「機械仕掛けの神」)という手法の説明をして、この章を終える。
７．反復
フランスの代表的笑劇作家のフェドー(1862−1921)の『自由交換ホテル』は反復を多用する作品である。人間を機械のようにものに見せる効果があると喜志氏は書く。イギリスのカワード(1899−1973)の『花粉熱』は反復が同時に平行して起こる話として喜志氏によって説明される。カワードの『私生活』は時間の経過とともに反復(喧嘩別れと和解)が起こる例として説明される。
８.循環
現代アメリカの人気作家サイモン(1927−)の『おかしな2人』は「ワン・ジョーク・コメディ」の典型である。この喜劇は喜志氏によれば、設定(潔癖症の男とルーズな男の同居)に無理をした結果、傑作になり損ねた喜劇であると書く。ベケット(1906−89)の『ゴドーを待ちながら』はほとんど同じ事件が2度繰り返され、この劇が捉えている閉塞状況を観客に伝えていると説明される。
９．逆転
イギリスのラティガン(1911−77)の『シルヴィアとは誰か』やグリーン(1904−91)の『慇懃な恋人』について喜志氏は解説する。特に後者は劇の状況について顧客に個々の劇中人物の情報をどう提供するのか作者が綿密に計算しているかがわかると喜志氏は書く。優位に立っていた不倫の相手が相手の男により不利な立場に追い込まれる逆転の様子が描かれている。
�� 間違える—喜劇の状況
10.誤解
ゴーゴリ(1809−52)の『検察官』は喜劇の作者がどんな情報をどんなやり方で顧客に提供するかという問題についての模範解答であると喜志氏は書く。イギリスの劇作家ブリーストリー(1894−1984)の『警部来訪』が喜志氏によって簡単に解説される。
11.身代わり
ロスタン(1868−1918)の『シラノ・ド・ベルジュラック』の喜志氏の解説は秀逸で読んでいて、この劇をぜひ見たくなる。肉体的な性愛と精神的な情愛が峻別され、精神的なものが人を幸福にして、至福な死を迎えられるのではと考えさせられるのである。シラノは死の間際に自分の想いがロクサーヌに通じたことを知り満足に満ち死を迎えるのである。喜志氏はシェイクスピアの『尺には尺を』と対比させこの劇の＜親密な関係＞は純粋に肉体的なものであり精神性を欠いていると解説する。
12.自縄自縛
ドイツの劇作家クライスト(1777−1811)の『壊れ甕』はギリシア悲劇のソポクレスの『オイディプス王』と同じである喜志氏は書く。
13.誤算
カウフマン(1889−1961)とハート(1904−61)の共作の『一生にただ一度』の解説もまあまあ面白い。作者たちは、脱出不可能の状況を自らに対して設定し、次々に奇手を繰り出し解決に成功する。喜志氏によれば、観客の心理の根底には、翻弄されしことにより快感を得られるという嗜虐的なものが認められるらしい。最近のアメリカ映画ではこの手法が数多く使われいる。
�� 語る—喜劇の言葉
14.傍白
モリエールの『守銭奴』『女房学校』の中の傍白（独白の一種）を喜志氏は解説する。
15.アイロニー
シェリダンの『悪口学校』の「衝立の場」は有名な場面である。そこでのアイロニーが喜志氏によって語られる。
チェーホフの『櫻の園』をあげ、台詞の中に隠された意味について解説する。
16.沈黙と間
ピンタ(1930−)の『昔の日々』で「沈黙」と「間」を使い分ける。
17.機智合戦
シェイクスピアの『空騒ぎ』は複数の筋が絡まる喜劇である。その中で機知合戦が繰りひろげられる。相手の台詞の形式・言葉をそのまま守り、内容を変える手法であり、それが連続していくことに意味がある(＝連続性)。コングリーブ(1670−1729)の『世の習い』にも現れると喜志氏は書く。
18.スラップスティック(道化の持った『叩き棒』)
オートン(1933−67)の『薔薇と棺桶』は殺人と銀行強盗についての笑劇であるが、喜志氏は、不条理な状況を扱った笑劇のスラップスティックであると書く。トラヴァーズの『略奪』もまさに不条理な状況を扱った劇である。
�� 考える—喜劇についての喜劇
19.バーレスク
ゲイ(1685−1732)の『乞食のオペラ』とそれを下書きにした『三文オペラ』を喜志氏は比較する。サヴォイ・オペラの『ミカド』が簡単に説明される。
20.パスティーシュ(模作)
イギリスの劇作家ハンプトン(1946−)の『博愛主義者』はモリエールの『人間嫌い』の
パスティーシュだという。そして、根源的な問題に迫り、その問題は演劇的認識の根底にある逆説に他ならないと喜志氏は書く。
21.劇中劇
ヴィラーズ(1628−87)が中心になって書いた『舞台稽古』という劇がある。喜志氏は劇について、�仝楜劼里燭瓩里發里任△襪箸い�考えかたと、��近代リアリズムを尊重するものがある。劇中劇という手法は、劇という表現形式の本質を吟味させてくれる。ジュネ(1910−86)の『女中たち』についても喜志氏は説明する。「劇中劇は劇と現実の複雑な関係に我々の目を向けさせるという、高度な結果をもたらす場合もある」と最後に書くが、よくわからない。
22.夢
シェイクスピアの『真夏の夜の夢』は少なくとも3つの箇所で｢夢｣が現実認識のあり方を規定する言葉として使われる。エピローグと職人のボトムが目覚めたとき、4人の若者が夜明けとともに正気に戻ったときに｢夢｣を見たという。観客はそれらが現実であるというすべての事情がわかっている。喜志氏は最後に、｢夢という発想は、こうした劇の観客の存在そのものと観客の認識の両方を根元的に疑わせる結果をもたらす｣と書き、「最終的に笑われるのは我々自身だからである」と続けるがこれが良くわからない。夢を見ているからなのか……。
23.ハッピー・エンディング
｢悲劇は死で終わり、喜劇は結婚で終る｣というのが一般論である。シェイクスピアの『あらし』は人間のセクシュアリティを吟味した作品である。最後に喜志氏はこの『あらし』は観客を無条件で幸せにする喜劇には必ずしもなっていないと書くが、実際に劇を見るかやはり戯曲を読まないとわからない。つまり喜劇といえどもただ笑うだけというだけの単純なものでないのであろう。
2014年03月25日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「座右のゲーテ：壁に突き当たったとき開く本」
「座右のゲーテ：壁に突き当たったとき開く本」(2004) 齋藤孝 光文社新書
（推薦度） ◎
先ず、齋藤氏の「座右のゲーテ」を読む。
斉藤孝：whikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BD%8B%E8%97%A4%E5%AD%9D_(%E6%95%99%E8%82%B2%E5%AD%A6%E8%80%85)
｢まえがき｣で、
ゲーテは、齋藤氏が知る限り、人類最高レベルの資質を持った人間であると書く。1つの分野だけでも超一流なのに、何役も同時並行して極めたと賞賛する。ゲーテは82歳で没するまで現役として活動し、1人の人間が生まれて死ぬまでの間にどれだけ自己を豊かにさせることができるかという点において、限界に近いレベルまで達した人物であった。
齋藤氏は30代の精神的にどん底の時、ゲーテの言葉、｢人間が自分に与えることのできるもっと驚くべく教養は、他の人たちは自分のことなど求めていない、という確信である｣で力づけされたと書く。
弟子のエッカーマンがゲーテとの会話をまとめた「ゲーテとの対話」を齊藤氏は読み、その著術の一言一言に線を引いたとある。「日付を入れておけ」「小さな対象から始めろ」など具体的行動の工夫を開陳してくれていた。
その本質は｢上達論｣であると齋藤氏は書く。具体的・本質的というゾーンに向けて、自分のすべてを収斂させる方法をゲーテは教えてくれたというのが齋藤氏の言葉である。
章立ては5章で、31の技法が紹介される。
�機―乎罎垢�
１．小さな対象だけを扱う
・対象に向かって問題を細分化して考えれば、解決策はシンプルになる。
・テーマを小分けにし、それから1つ1つを絞り込み、ポイントごとに自分の全精力をつぎ込んでいくようにする。
２．自分を限定する
・ 自分の得意なこと、専門的なことを限定する。自分の専門でないものはすっぽり切りすてる。
・最も偉大な技術とは、自分を限定し、他から隔離するものを言う。
・自分が本当に使いこなせる技術、つまり活動面で他者に対しても通用する技術を何か確立すべきである。
・表現手段はミニマムに、吸収の器はマキシマムに。
３．実際に応用したものしか残らない
・「これをやるんだ」「絶対にものにするんだ」という気構えを前提にもつ。
・日常の些細な場面において、常に実践的に学びを生かそうという心構えを持って取り組んでいるかで差が出る。
４．日付を書いておく
・日付を添えることは、その1瞬を唯一無二のものとして実感させる効用がある。
・後から俯瞰した時に、何をやってきたかを一目で見ることができる。
・「出来事の記念日化」も記憶に残すことで効果がある。
５．完成まで胸にしまっておく
・ 物事の完成までの“沈黙”はエネルギーにとって重要なことである。
・心の中に“秘密の場所”を持ち、そこに帰れば息を吹き返せるように感じる場所をつくる。心のサンクチュアリ（聖域）である。
・その人の魂にとって大事なことをむやみにしゃべるなという意味である。
６．実際的に考える
・抽象的に偏って考えない。本質を具体的なものの上に見ようとする。
・実際の経験や観察を通して、目で見た現象から物の本質を知る。
�供ゝ杣�する
７．最高を知る
・ 最高を知れば、後は自ずとわかるようになる。
・最高峰を知れば、後はそこから相対的に位置づければよい。
・「古典」によって自分の趣味を確立すれば、物を判定するきちんとした尺度ができる。時間の空費を避けることができる。
・ジャンルで好き嫌いを言わない。
８．独創性などない
・ シェイクスピアやモーツァルトのようにもっとも独創的だと思われているものが既存の良いものを上手に消化して使っている。
・偉大なものには素直に対応し、勉強し続ける。
９．独学は非難すべきもの
・ 才能を身につけさせるには、大家について、腕を磨いて相当なものになる必要がある。
・レオナルド・ダ・ヴィンチは遠近法と解剖学という絵画の基礎を先ず習得し、更に大家のものでいろいろなものを学んだ。師匠に学ぶと体系的に基礎を学ぶことができる。
10．自分だけの師匠を持つ
11.「素材探し」を習慣化する。
・ 素材が豊富だと人を楽しませることができる。そのために素材探しをする。
12．使い尽くせない資本をつくる
・ 若いうち、エネルギーのあるうちに全精力を傾けて身につけておくこと。
・ 集中して一番良いものを対象にする。
�掘―亶腓�
13．愛するものからだけ学ぶ
・ 自分が敬愛でき、かつ自分の個性と似通ったところがある相手からだけいい影響を受けた。
・自分と美意識や感性、或いは人生の向き合い方などセンスの違う人から何かを得ようというのなら、学ぶべき時期というものがある。
14．豊かなものとの距離
・ 憧れに憧れることは大切だが、“憧れの星”との距離感が大事である。
・強烈な刺激を受けても。支配されないくらいの距離を保つ。
・創作物に触れたとき、どうやってつくるのか、そのプロセスまでを念頭に描きながら向き合うことである。
15．同時代、同業の人から学ぶ必要はない
・ 異なる時代、異業種こそ刺激の宝庫である。
・かつての成功から学ぶ。
・健康な力強さを持っている古代のものから学ぶ。
16．性にあわない人とも付き合う
17．読書は新しい知人を得るに等しい
・ 自分の違いなど、差異を求めて読書する。
・すでに自分の中にあるものを再現して、確認し、書物によって自分を肯定してもらいたいというような読書である。
・齋藤氏は、守りに入らないように心がけているとの事。女性の書いたものを多く読もうという目標を持って読書する。
・自分の守備範囲でない本を最後まで読むことによって、少し心が広がる。
18．癖を尊重せよ
・ 井上雅彦（漫画家）の言葉
…人間の関わり合いが1つのドラマとして面白くなるのは人間に癖があるからだ。それなくしてドラマが始まらない。
・文学を読み癖の強い人に慣れておけば、少々のことはありえると肝が据わる。
・癖は長所と表裏一体であり、相手の癖を含めて愛せるようになると、人間関係はビジネスを超えて深まる。
�検〇�続させる
19．先立つものは金
・ いろいろ経験するのに、お金が必要だ。
・お金をどこに使うかによって、人生は凄く変わってくる。それは年齢を重ねるとさらにはっきりしてくる差である。
20．儀式の効用
・ 全体のバランスを見ながら役割を果たす。
21．当たったら続ける
・ 勝っているときはやり方を変えない。それで勝ち続けられるかを見極める。
・成功の見通しを先ずたてよ。
・本来仕事というものは、これが魚場だと思ったらすべてをそこにつぎ込むことも大事だ。
・どんなビジネスでも、小さなアイデアを大きく育て、「その手があったか」と思わせることがある。徹底することに凄さがある。
・当たったなと思ったら居座ることも大事である。魚の群れは再び戻ってくる。
・作り上げた作品には執着しない。ある頂点を見た後ほど、引き際が大事なこともある。“引き際の基準”を用意する。
22．他人の評価を気にしない
・ ゲーテの作品は、自分自身の向上と、同じような傾向を持つ少数の人のために書いた。
・自分と非常に興味があっている人、レベルのあっている人など、ごく少数にわかってもらえればいいと思って表現を練っていくと、逆に大きな波として、大衆に受け入れられることもある。
・ターゲットを定め、力をそこに集中することから、意外にレベルが高いものが出来上がる。
23．異質なものを呑み込む
・ 「自分探し」というアイデンティティの確立においても、異質なものを呑み込むことにより、そのすべてが自分だと考えるほうが個性はずっと豊かになる。
・いろいろなものを呑み込み、肯定的な形で「らしさ」を作り出すほうが精神性に余裕が出る。
24．邪魔の効用
・ 中断されることにより仕事の質が高まる場合がある。
・ライバルと差別化できるポイントは難だろうかと徹底的に考え抜くと新しい道が見えてくることがある。
・「考え詰めたら一回地下に行け」（ラッセル）の言葉も良いのではないか。
・邪魔というリスクに対抗する方法は、自分の仕事に「納期」を課すことである。しかも出来れば「前倒し」にする。
�后’馨討垢�
25．現在というものに一切を賭ける
・ 創作については、一気呵成にすべてをつぎ込む態度を取る。
・一瞬の情熱に捉えられたとき、その情熱を紙に書いたり、写真に撮ったり何か形にしておくことが大事である。
・「何かに心を奪われる瞬間」を技化する。
26．計り知れないものが面白い
27．感情を生き生きと羽ばたかせよ
・ 「先ず市場調査をしてから」をやめ、最初から「これを売るのだ」という前提で動くのが大事。それが売れるかどうかの判断は生き生きした感情のあるなしである。
28．詩的に考える
・「自分は今、散文のように考えているな（＝論理的）」「今は詩的に話しているな」というように自由自在に使いこなせると、シチュエーションに合わせて適切な思考が都合よく引き出せる。
・連想をする訓練は、脳を柔軟にしておくのに役立つ。
29．過去に執着しない
・終わってしまったらすぐに次のプランを考える。
・自分の中でかかずり合う対象を、あらかじめ短期・中期・長期に分けておく。いくつもの時間軸があると常に違いが楽しめる。
30．青春の過ちを老年に持ち込むな
・ 人生のステージごとにやるべき仕事を全うする。その時期ごとの課題というものに一生懸命生きてみよ。
・悔恨の念に区切りをつけよ。
31．年を取ったら、より多くのことをする
・自分自身を更新する。
・50歳からの人生は長く、「人生2毛作」は可能である。
（推薦度） ◎
先ず、齋藤氏の「座右のゲーテ」を読む。
斉藤孝：whikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BD%8B%E8%97%A4%E5%AD%9D_(%E6%95%99%E8%82%B2%E5%AD%A6%E8%80%85)
｢まえがき｣で、
ゲーテは、齋藤氏が知る限り、人類最高レベルの資質を持った人間であると書く。1つの分野だけでも超一流なのに、何役も同時並行して極めたと賞賛する。ゲーテは82歳で没するまで現役として活動し、1人の人間が生まれて死ぬまでの間にどれだけ自己を豊かにさせることができるかという点において、限界に近いレベルまで達した人物であった。
齋藤氏は30代の精神的にどん底の時、ゲーテの言葉、｢人間が自分に与えることのできるもっと驚くべく教養は、他の人たちは自分のことなど求めていない、という確信である｣で力づけされたと書く。
弟子のエッカーマンがゲーテとの会話をまとめた「ゲーテとの対話」を齊藤氏は読み、その著術の一言一言に線を引いたとある。「日付を入れておけ」「小さな対象から始めろ」など具体的行動の工夫を開陳してくれていた。
その本質は｢上達論｣であると齋藤氏は書く。具体的・本質的というゾーンに向けて、自分のすべてを収斂させる方法をゲーテは教えてくれたというのが齋藤氏の言葉である。
章立ては5章で、31の技法が紹介される。
�機―乎罎垢�
１．小さな対象だけを扱う
・対象に向かって問題を細分化して考えれば、解決策はシンプルになる。
・テーマを小分けにし、それから1つ1つを絞り込み、ポイントごとに自分の全精力をつぎ込んでいくようにする。
２．自分を限定する
・ 自分の得意なこと、専門的なことを限定する。自分の専門でないものはすっぽり切りすてる。
・最も偉大な技術とは、自分を限定し、他から隔離するものを言う。
・自分が本当に使いこなせる技術、つまり活動面で他者に対しても通用する技術を何か確立すべきである。
・表現手段はミニマムに、吸収の器はマキシマムに。
３．実際に応用したものしか残らない
・「これをやるんだ」「絶対にものにするんだ」という気構えを前提にもつ。
・日常の些細な場面において、常に実践的に学びを生かそうという心構えを持って取り組んでいるかで差が出る。
４．日付を書いておく
・日付を添えることは、その1瞬を唯一無二のものとして実感させる効用がある。
・後から俯瞰した時に、何をやってきたかを一目で見ることができる。
・「出来事の記念日化」も記憶に残すことで効果がある。
５．完成まで胸にしまっておく
・ 物事の完成までの“沈黙”はエネルギーにとって重要なことである。
・心の中に“秘密の場所”を持ち、そこに帰れば息を吹き返せるように感じる場所をつくる。心のサンクチュアリ（聖域）である。
・その人の魂にとって大事なことをむやみにしゃべるなという意味である。
６．実際的に考える
・抽象的に偏って考えない。本質を具体的なものの上に見ようとする。
・実際の経験や観察を通して、目で見た現象から物の本質を知る。
�供ゝ杣�する
７．最高を知る
・ 最高を知れば、後は自ずとわかるようになる。
・最高峰を知れば、後はそこから相対的に位置づければよい。
・「古典」によって自分の趣味を確立すれば、物を判定するきちんとした尺度ができる。時間の空費を避けることができる。
・ジャンルで好き嫌いを言わない。
８．独創性などない
・ シェイクスピアやモーツァルトのようにもっとも独創的だと思われているものが既存の良いものを上手に消化して使っている。
・偉大なものには素直に対応し、勉強し続ける。
９．独学は非難すべきもの
・ 才能を身につけさせるには、大家について、腕を磨いて相当なものになる必要がある。
・レオナルド・ダ・ヴィンチは遠近法と解剖学という絵画の基礎を先ず習得し、更に大家のものでいろいろなものを学んだ。師匠に学ぶと体系的に基礎を学ぶことができる。
10．自分だけの師匠を持つ
11.「素材探し」を習慣化する。
・ 素材が豊富だと人を楽しませることができる。そのために素材探しをする。
12．使い尽くせない資本をつくる
・ 若いうち、エネルギーのあるうちに全精力を傾けて身につけておくこと。
・ 集中して一番良いものを対象にする。
�掘―亶腓�
13．愛するものからだけ学ぶ
・ 自分が敬愛でき、かつ自分の個性と似通ったところがある相手からだけいい影響を受けた。
・自分と美意識や感性、或いは人生の向き合い方などセンスの違う人から何かを得ようというのなら、学ぶべき時期というものがある。
14．豊かなものとの距離
・ 憧れに憧れることは大切だが、“憧れの星”との距離感が大事である。
・強烈な刺激を受けても。支配されないくらいの距離を保つ。
・創作物に触れたとき、どうやってつくるのか、そのプロセスまでを念頭に描きながら向き合うことである。
15．同時代、同業の人から学ぶ必要はない
・ 異なる時代、異業種こそ刺激の宝庫である。
・かつての成功から学ぶ。
・健康な力強さを持っている古代のものから学ぶ。
16．性にあわない人とも付き合う
17．読書は新しい知人を得るに等しい
・ 自分の違いなど、差異を求めて読書する。
・すでに自分の中にあるものを再現して、確認し、書物によって自分を肯定してもらいたいというような読書である。
・齋藤氏は、守りに入らないように心がけているとの事。女性の書いたものを多く読もうという目標を持って読書する。
・自分の守備範囲でない本を最後まで読むことによって、少し心が広がる。
18．癖を尊重せよ
・ 井上雅彦（漫画家）の言葉
…人間の関わり合いが1つのドラマとして面白くなるのは人間に癖があるからだ。それなくしてドラマが始まらない。
・文学を読み癖の強い人に慣れておけば、少々のことはありえると肝が据わる。
・癖は長所と表裏一体であり、相手の癖を含めて愛せるようになると、人間関係はビジネスを超えて深まる。
�検〇�続させる
19．先立つものは金
・ いろいろ経験するのに、お金が必要だ。
・お金をどこに使うかによって、人生は凄く変わってくる。それは年齢を重ねるとさらにはっきりしてくる差である。
20．儀式の効用
・ 全体のバランスを見ながら役割を果たす。
21．当たったら続ける
・ 勝っているときはやり方を変えない。それで勝ち続けられるかを見極める。
・成功の見通しを先ずたてよ。
・本来仕事というものは、これが魚場だと思ったらすべてをそこにつぎ込むことも大事だ。
・どんなビジネスでも、小さなアイデアを大きく育て、「その手があったか」と思わせることがある。徹底することに凄さがある。
・当たったなと思ったら居座ることも大事である。魚の群れは再び戻ってくる。
・作り上げた作品には執着しない。ある頂点を見た後ほど、引き際が大事なこともある。“引き際の基準”を用意する。
22．他人の評価を気にしない
・ ゲーテの作品は、自分自身の向上と、同じような傾向を持つ少数の人のために書いた。
・自分と非常に興味があっている人、レベルのあっている人など、ごく少数にわかってもらえればいいと思って表現を練っていくと、逆に大きな波として、大衆に受け入れられることもある。
・ターゲットを定め、力をそこに集中することから、意外にレベルが高いものが出来上がる。
23．異質なものを呑み込む
・ 「自分探し」というアイデンティティの確立においても、異質なものを呑み込むことにより、そのすべてが自分だと考えるほうが個性はずっと豊かになる。
・いろいろなものを呑み込み、肯定的な形で「らしさ」を作り出すほうが精神性に余裕が出る。
24．邪魔の効用
・ 中断されることにより仕事の質が高まる場合がある。
・ライバルと差別化できるポイントは難だろうかと徹底的に考え抜くと新しい道が見えてくることがある。
・「考え詰めたら一回地下に行け」（ラッセル）の言葉も良いのではないか。
・邪魔というリスクに対抗する方法は、自分の仕事に「納期」を課すことである。しかも出来れば「前倒し」にする。
�后’馨討垢�
25．現在というものに一切を賭ける
・ 創作については、一気呵成にすべてをつぎ込む態度を取る。
・一瞬の情熱に捉えられたとき、その情熱を紙に書いたり、写真に撮ったり何か形にしておくことが大事である。
・「何かに心を奪われる瞬間」を技化する。
26．計り知れないものが面白い
27．感情を生き生きと羽ばたかせよ
・ 「先ず市場調査をしてから」をやめ、最初から「これを売るのだ」という前提で動くのが大事。それが売れるかどうかの判断は生き生きした感情のあるなしである。
28．詩的に考える
・「自分は今、散文のように考えているな（＝論理的）」「今は詩的に話しているな」というように自由自在に使いこなせると、シチュエーションに合わせて適切な思考が都合よく引き出せる。
・連想をする訓練は、脳を柔軟にしておくのに役立つ。
29．過去に執着しない
・終わってしまったらすぐに次のプランを考える。
・自分の中でかかずり合う対象を、あらかじめ短期・中期・長期に分けておく。いくつもの時間軸があると常に違いが楽しめる。
30．青春の過ちを老年に持ち込むな
・ 人生のステージごとにやるべき仕事を全うする。その時期ごとの課題というものに一生懸命生きてみよ。
・悔恨の念に区切りをつけよ。
31．年を取ったら、より多くのことをする
・自分自身を更新する。
・50歳からの人生は長く、「人生2毛作」は可能である。
2014年03月02日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう「若者のための仕事論 : 負けてたまるか!」
「若者のための仕事論 : 負けてたまるか!」(2010) 丹羽宇一郎 朝日新書
推薦度◎
丹羽宇一郎氏：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B9%E7%BE%BD%E5%AE%87%E4%B8%80%E9%83%8E
表紙の裏をめくるとこう書かれている。
仕事は人生の喜びを深くする｡
大きな仕事を成し遂げて、仲間と分かち合う喜びは、さらに深い｡
ただし、その喜びは、努力を重ねた先でしか味わえない｡
仕事の迷い、焦り、不満が消えていく、
伊藤忠商事･丹羽宇一郎の｢仕事哲学｣｡
「まえがき」には
「本書は私から若者に向けたエールです。」と丹羽氏は書く．
・仕事を通して味わえる素晴らしい喜び
・大きな仕事を成し遂げた時の達成感
をこの新書で教えたいと書く。
丹羽氏の信条は、「人は仕事で磨かれ、読書で磨かれ、人で磨かれる」です。
章立ては序章と3章である。
序章 若者よ、小さくまとまるな!
丹羽氏の現状認識は「日本は今大転換期で国難に面している」です。
国民の給料は1997年の山一證券、北海道拓殖銀行破たんより下がり続けている。
リーマンショック後の強いドルへの不信、人口減少・高齢化という少子高齢化時代への赤信号、日本の増え続ける借金、2009年の民主党への政権交代など難問が山積している。
丹羽氏は教育に国は投資すべきであり、しない国は没落すると言い切る。
国が生き延びるには「人と技術」に投資することで、「人を育て、技術力を高め、優秀な労働力を持ち、欠陥品の無い、高品質で信頼される日本ブランドを武器にして貿易で稼ぐしかないと丹羽氏は続ける。
第1章 DNAのランプが点灯するまで努力せよ—人は仕事で磨かれる
○今の若者は伝書バト…そのままでは「悪いのはあなた」方式から抜け出れないと丹羽氏は書く。
○最初の二年間は授業料を払え…丹羽氏が伊藤忠の新入社員にいう言葉。
○アリのように泥まみれになって働く…入社後10年間すれば社会の仕組みが見えてくる。
○評価されることが目的ではない…先ずは誰にも負けないくらい仕事をする。
○言いたいことは言え…しかし、それはアリのように働き周囲に認めてから。
○ありのままの自分でいるしかない…等身大の自分を磨くのがよいと丹羽氏は書く。
○アリ・トンボ・人間になれ…アリ（30歳代前半まで）、トンボ（40歳代前半まで）とは複眼的な見方ができること、人間(50歳代)とは血の通う暖かい人間になれるかである。
○国際人につき丹羽氏は、「その国のため、その国の人のために働くという意志を持つ人」と定義づける。
○エリートは「人の喜びを自分の喜びにできる人」と続ける。
○丹羽氏のモットーは「清く明るく美しく」です。よい言葉です。
○世の中で、お金で買えないものは人の「心」と「信用」と書くがその通りである。
○自分が正しいと思う発言を通すために代表権を持つ常務になろうと丹羽氏は思った。
○丹羽氏のいう「人は自分を磨くために働く」という言葉を私はよいと思う。漱石が言う精神的向上心に似ている。
第2章 本は仕事と人生を深くする—人は読書で磨かれる
○｢空いた時間などない、とにかく本を読め｣と丹羽氏は言う。
○丹羽氏の血肉となる本(P98-P99)
�‖膤愡�代…ロマン・ロラン「魅せられたる魂」「ジャン・クリストフ」、倉田百三「出家とその弟子」、マハトマ・ガンジー「ガンジー自伝」、福沢諭吉「学問のすゝめ」、E・H・カー「ソビエト革命史」
��入社時代…ディヴィド・ハルパースタム「メデイアの権力」
��30歳代…ローマクラブ「成長の限界」「転機に立つ人間社会」「国際秩序の再編成」「浪費の時代を超えて」、オルテガ・イ・ガセット「大衆の反逆」、オスベスト・シュペングラー「西洋の没落」、ジェフリー・サックス「貧困の終焉」、キース・ジェーキンズ「歴史を考えなおす」、トルストイ「人生論」、モンテーニュ「エセー」などを読まれた。
○伊藤忠入社時はガロに連載された「カムイ伝」に丹羽氏は血湧き肉を躍らせていた。
○論理的な話は読書で身に付く
○読書は人間（自分）の中を流れる「動物の血」を抑制し、「理性の血」に置き換える。
○読書は「想像力」を育てると丹羽氏は断言する。
○本を読んで感動したところは必ず「メモ」に残す。
第3章 己を知り、他人を知り、人間社会を知る—人は人で磨かれる
○私にとって忘れられない上司…嘘のない天真爛漫な上司が大きな影響を丹羽氏に与えた。
○｢一切の隠しごとはするな｣—人生最大のピンチを救ってくれた言葉であったと丹羽氏は続ける。
○丹羽氏は伊藤忠の社長時代に3950億円の特損処理をした時にけじめをつけると言い、給料返上（ただ働き）
をした。
○丹羽氏を変えた一言は「自分の評価は他人が決める」というものであった。
○また、自分の信念を貫くのは良いが独りよがりになってはいけないと忠告する。
○部下を育てるには「認めて、任せて、褒める」ことであると丹羽氏は書く。
○人は誰でも自分に持っていない良さや優れた部分があるのでそれを見てあげるのが大事であると書く。
○課長になったら自分の部下のことはよく知ろうと努力するべきである。人間の把握できる数はおおよそ30名程度と丹羽氏は言う。
○贅沢をしたらキリがない。不自由を常と思えば不足なしと言い切る。
○経営者はいかに人を動かすかが大事である。経営者は最終的に一人で判断をしなければならない。そのために丹羽さんトップは独裁者であるという自覚が必要であると書く。
○教養とは相手の立場に立って物事を考える力があることだと丹羽氏は書きこの新書を終える。
人生指南書のような新書です。
推薦度◎
丹羽宇一郎氏：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%B9%E7%BE%BD%E5%AE%87%E4%B8%80%E9%83%8E
表紙の裏をめくるとこう書かれている。
仕事は人生の喜びを深くする｡
大きな仕事を成し遂げて、仲間と分かち合う喜びは、さらに深い｡
ただし、その喜びは、努力を重ねた先でしか味わえない｡
仕事の迷い、焦り、不満が消えていく、
伊藤忠商事･丹羽宇一郎の｢仕事哲学｣｡
「まえがき」には
「本書は私から若者に向けたエールです。」と丹羽氏は書く．
・仕事を通して味わえる素晴らしい喜び
・大きな仕事を成し遂げた時の達成感
をこの新書で教えたいと書く。
丹羽氏の信条は、「人は仕事で磨かれ、読書で磨かれ、人で磨かれる」です。
章立ては序章と3章である。
序章 若者よ、小さくまとまるな!
丹羽氏の現状認識は「日本は今大転換期で国難に面している」です。
国民の給料は1997年の山一證券、北海道拓殖銀行破たんより下がり続けている。
リーマンショック後の強いドルへの不信、人口減少・高齢化という少子高齢化時代への赤信号、日本の増え続ける借金、2009年の民主党への政権交代など難問が山積している。
丹羽氏は教育に国は投資すべきであり、しない国は没落すると言い切る。
国が生き延びるには「人と技術」に投資することで、「人を育て、技術力を高め、優秀な労働力を持ち、欠陥品の無い、高品質で信頼される日本ブランドを武器にして貿易で稼ぐしかないと丹羽氏は続ける。
第1章 DNAのランプが点灯するまで努力せよ—人は仕事で磨かれる
○今の若者は伝書バト…そのままでは「悪いのはあなた」方式から抜け出れないと丹羽氏は書く。
○最初の二年間は授業料を払え…丹羽氏が伊藤忠の新入社員にいう言葉。
○アリのように泥まみれになって働く…入社後10年間すれば社会の仕組みが見えてくる。
○評価されることが目的ではない…先ずは誰にも負けないくらい仕事をする。
○言いたいことは言え…しかし、それはアリのように働き周囲に認めてから。
○ありのままの自分でいるしかない…等身大の自分を磨くのがよいと丹羽氏は書く。
○アリ・トンボ・人間になれ…アリ（30歳代前半まで）、トンボ（40歳代前半まで）とは複眼的な見方ができること、人間(50歳代)とは血の通う暖かい人間になれるかである。
○国際人につき丹羽氏は、「その国のため、その国の人のために働くという意志を持つ人」と定義づける。
○エリートは「人の喜びを自分の喜びにできる人」と続ける。
○丹羽氏のモットーは「清く明るく美しく」です。よい言葉です。
○世の中で、お金で買えないものは人の「心」と「信用」と書くがその通りである。
○自分が正しいと思う発言を通すために代表権を持つ常務になろうと丹羽氏は思った。
○丹羽氏のいう「人は自分を磨くために働く」という言葉を私はよいと思う。漱石が言う精神的向上心に似ている。
第2章 本は仕事と人生を深くする—人は読書で磨かれる
○｢空いた時間などない、とにかく本を読め｣と丹羽氏は言う。
○丹羽氏の血肉となる本(P98-P99)
�‖膤愡�代…ロマン・ロラン「魅せられたる魂」「ジャン・クリストフ」、倉田百三「出家とその弟子」、マハトマ・ガンジー「ガンジー自伝」、福沢諭吉「学問のすゝめ」、E・H・カー「ソビエト革命史」
��入社時代…ディヴィド・ハルパースタム「メデイアの権力」
��30歳代…ローマクラブ「成長の限界」「転機に立つ人間社会」「国際秩序の再編成」「浪費の時代を超えて」、オルテガ・イ・ガセット「大衆の反逆」、オスベスト・シュペングラー「西洋の没落」、ジェフリー・サックス「貧困の終焉」、キース・ジェーキンズ「歴史を考えなおす」、トルストイ「人生論」、モンテーニュ「エセー」などを読まれた。
○伊藤忠入社時はガロに連載された「カムイ伝」に丹羽氏は血湧き肉を躍らせていた。
○論理的な話は読書で身に付く
○読書は人間（自分）の中を流れる「動物の血」を抑制し、「理性の血」に置き換える。
○読書は「想像力」を育てると丹羽氏は断言する。
○本を読んで感動したところは必ず「メモ」に残す。
第3章 己を知り、他人を知り、人間社会を知る—人は人で磨かれる
○私にとって忘れられない上司…嘘のない天真爛漫な上司が大きな影響を丹羽氏に与えた。
○｢一切の隠しごとはするな｣—人生最大のピンチを救ってくれた言葉であったと丹羽氏は続ける。
○丹羽氏は伊藤忠の社長時代に3950億円の特損処理をした時にけじめをつけると言い、給料返上（ただ働き）
をした。
○丹羽氏を変えた一言は「自分の評価は他人が決める」というものであった。
○また、自分の信念を貫くのは良いが独りよがりになってはいけないと忠告する。
○部下を育てるには「認めて、任せて、褒める」ことであると丹羽氏は書く。
○人は誰でも自分に持っていない良さや優れた部分があるのでそれを見てあげるのが大事であると書く。
○課長になったら自分の部下のことはよく知ろうと努力するべきである。人間の把握できる数はおおよそ30名程度と丹羽氏は言う。
○贅沢をしたらキリがない。不自由を常と思えば不足なしと言い切る。
○経営者はいかに人を動かすかが大事である。経営者は最終的に一人で判断をしなければならない。そのために丹羽さんトップは独裁者であるという自覚が必要であると書く。
○教養とは相手の立場に立って物事を考える力があることだと丹羽氏は書きこの新書を終える。
人生指南書のような新書です。
2014年02月23日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「世界反米ジョーク集」
「世界反米ジョーク集」(2005) 早坂隆 中公新書ラクレ
（推薦度） ○
およそ10年前に書かれた新書です。共和党の息子ブッシュ大統領の頃のジョークが中心です。10年経って今読むほうがジョークの中の批判精神が読み取れます。
早坂氏の「世界反米ジョーク集」を読む。
早坂隆：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A9%E5%9D%82%E9%9A%86
裏表紙に、
「傲慢で独善的な外交政策、人種差別を始めとする深刻な国内問題。アメリカの病根は深い。唯一の超大国を揶揄した傑作ジョークに的確な解説を交えて、危険で矛盾だらけの『病めるアメリカ』の核心を衝く。」とある。
「まえがき」で、
早坂氏は「アメリカに対する世界の目は激変した」と書き、アメリカが持っていた文化や価値観はその魅力を失ったと書く。
2001年のブッシュ大統領の就任、9.11事件勃発、ネオコン派の台頭、イラク戦争、ブッシュの再選などアメリカは21世紀に変貌し始めている。
この新書は、2005年時点でのアメリカの政治・経済・外交・社会・文化など歴史の視点を加えてコンパクトに書かれている。
アメリカのことを学ぶにはジョークも覚えこの新書が1冊あれば事足りるのではないかというのが私の実感である。
第1章 世界の超大国アメリカ
1−1．単独行動主義（ユニラテラリズム）
9.11事件は「見えざる敵」であるテロリストに対する戦いという「非対称型」の構図を形成した。
この事件以降、ユニラテラリズムが強く現れるようになった。
2001年のアフガニスタン空爆は3000人以上の死者を出し、9.11の犠牲者の数を上回った。
2002年の「ブッシュドクトリン」では、アメリカ単独の先制攻撃の可能性にまで言及するにいたる。
●あの大統領…つかまった無能な大統領とは…フサインorブッシュ…
●神童…アメリカの現大統領は神童！？…10歳にして現在と同じ知性と理解をもつ…
●本人の証明…ブッシュ大統領、ピカソ、アインシュタインはそれぞれ証明したが…
●酒場にて…スコッチ、バーボンに続いて…J・W・ブッシュ、既婚とは（大笑い）…
1−2．軍事大国
2004年度軍事予算は3991億ドル。
140万人の正規軍、250万人の予備役＋州兵。
全世界130ヶ国、700カ所に軍隊を駐留している。
ブッシュ大統領はTMD(戦域弾道ミサイル防衛)を勧めるが、これが完備すると国際社会で圧倒的な優位を占める。
早川氏は、「アメリカは特別な使命を持つ国」という例外主義(エクセプショナリズム)が「アメリカン・アロガンス(傲慢)」を感じさせると書く。
●野蛮の定義…食人種にとって食べない敵を殺すこと…
●本屋にて…「平和国家・アメリカ」という本は…ファンタジーノーベルの棚にある…
1−3．保守主義
チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官は「タカ」派のネオコンであった。9.11事件を契機にその勢力を拡大した。
ネオコン派は国連など国際機関に懐疑的であり、軽視する傾向がある。
その理由は、「神の国であるアメリカの主権を制限する」からである。
彼らは「アメリカの国際的役割の自覚」を政策目標として、「世界をよりよく塗り替えるためにアメリカは積極的に行動するべき」「世界から悪を排除して善を拡大する」と考え、アメリカ単独の軍事行動を辞さないという立場をとると早坂氏は書く。
●アメリカンドリーム…アメリカは自由とチャンスの国…2004年11月ブッシュが証明…
●ブッシュの再就職…大統領を辞したブッシュ…ワシントンとリンカーンも判らず…それでも就職試験に合格…
1―4．宗教右派
ブッシュは「ボーン・アゲイン・クリスチャン」であるが、これは「キリストをこの目で見て生まれ変わった」とする共和党の膨大な組織票となるキリスト教右派(キリスト教原理主義)の思想である。
ブッシュは最も影響を受けた思想家をキリストと答える。
早坂氏はネオコン派とキリスト教原理主義の関係は伝統的に強く、それはレーガン時代の新右派との連繋まで遡ると書く。
1845年メキシコ領であったテキサスを併合する際に、「アメリカが領土を拡大することは神から与えられた使命」としたが、これは一種の選民思想である。
アメリカの膨張思想の原点にあるものだ。そして、これはイラク戦争の際にも引用された。
●怒りの矛先…スタッフの飲酒にブッシュは厳しい…大酒を飲んだ側近がモーツァルト、へミングウェイなどと会話を楽しんでいたと言ったのを聞きブッシュは…（小笑い）
1−5．共和党と民主党
9.11事件のブッシュ大統領の対応に国民は高い支持率を示し、民主党はブッシュ批判に慎重になった。
イラク戦争終結宣言後、イラクの政情が安定しないことで、2004年の大統領選では反ブッシュの声が上がったが、最後はブッシュ大統領が勝利を収め、国民はブッシュの「テロとの戦い」の進路変更は望まなかった。
民主とは2008年の選挙選で誰が候補者になるのだろうか。
第2章 アメリカの外交政策
2−1．イラク開戦までの経緯
2002年のブッシュ大統領の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と名指した。
2003年のイラク戦争では「予防的先制攻撃」というコンセプトの実践がなされた。潜在的敵国に対して予防的に先制攻撃を仕掛けることで、自国に向けられた脅威を取り除くと言う行為を実行したのがイラク戦争であったと早坂氏は書く。
ブッシュはテロとの戦いでは、場合によっては予防的な先制攻撃もありえるという可能性を示した。
早坂氏が危惧するのは、この論理が、インド・パキスタン、イラン・イスラエルなどの間で使用されることである。
同盟国は「力の論理」を振りかざすアメリカから「睨まれる」ことを避けようとする。自国の防衛は国連よりもアメリカとの付き合い方により担保されるという事になるが、早坂氏は「アメリカに反対しづらい構図」と表現する。
アメリカを理解するのに、早坂氏は、
�ー�由への信奉、
�⊆�己愛的性格、
�２，敬佞洩閏膽腟舛鯲鶺鵑群鮴發垢襪�、�△亮�己愛的性格が私にはもっとも理解しやすいものではないかという思いがある。
●演説の効用� 張屮奪轡綢臈�領の演説…間違い探し(爆笑）
●演説の効用�◆沈こγ罎亮禺圓吠拔�の必要性を与えた…
●問題の所在…ブッシュ大統領の演説の草案を書く人間の学が足りない…箴言…
●IQ…IQ60の謎の友人は…ホワイトハウスへ遊びに来ないかと誘う？？？…
●非常識…夜中にトランペットを吹くアメリカのビジネスマン…傲慢・不遜or無知蒙昧
2−2．石油利権
ブッシュ政権は石油財閥に支えられた政権である。
チェイニー副大統領は、父ブッシュ政権時の国防長官を最後に野に下ったが、石油切削会社ハリーバートン社のCEOとなり、全世界に130の支社を展開するまで拡大した。
ライス、オニール、エヴァンスなど皆石油業界に強いパイプを持った人物である。
アメリカは湾岸地域に見切りをつけ、カスピ海と中央アジアをその代替地域として補填しようと言うエネルギー戦略を進めていた。
それはクリントン前大統領時代からカザフスタンやグルジアとの軍事提携を進めていたことからも見て取れる。
アメリカは世界第3位の石油産出国であるが、約60％を輸入に依存している。
●地獄に落ちたネオコン…ブッシュ、チェイニーは…地獄の悪魔曰く、彼らは地獄の底でも石油を掘っている…
2−3．イラク戦争後の混乱
イラク戦争後の迷走、状況の不安定化が進行する中で、ネオコングループの凋落ぶりが目立つ。
イラク戦争時のマスコミの「でっち上げ報道」が早坂氏によって語られるが、プラグマティズムの悪しき例証であろう。
見つからない大量破壊兵器、湾岸戦争時の「プール方式」という代表取材制（＝政府のマスコミ「プードル化」、「金魚のフン化」）、イラク戦争の「従軍方式」（＝「埋め込み方式」）
の説明が早坂氏によって書かれる。
「サダム以降」のシナリオ（＝「出口戦略」）については、民族構成、宗教地図、独特の文化への配慮がなく、多方面の分析がなされなかった。
アメリカは当初「解放者」として迎えられたが、杜撰な戦後計画により、「侵略者」扱いとなったと早坂氏は断定する。
レベルの低い捕虜虐待問題、宗教戦争への危険性（アメリカには約700万人のイスラームー教徒がいる）、新イラクへの政権移譲後の問題が早坂氏によって語られるが、2007年6月現在でもまだ不透明である。
●世界最強の軍隊…ウサギ狩大会でドイツ軍、ロシア軍に続いてアメリカ軍は…捕まえたアライグマに「私はうさぎです！」と言わせた…（笑い）…
●各学会の結論…パリ郊外、北京郊外、そしてワシントン郊外では…地中500mで何も発見されなかった…アメリカは約5000年前にアメリカに携帯電話が普及していた…
●愛の告白…アメリカ兵を殺したイラク人の告白に対し…くだらない武勇伝という…
●調べる…メスの羊を買うときは体中綿密に調べることを父親は息子に語る…それを聞いた息子は数日後、姉がアメリカ兵に買われると父親に告げる…
●アラブの未来は…スターウォーズにアラブ系の俳優が出なかった…ブッシュ曰く、「あの映画は未来の物語であるから」…ブラックユーモア…
●性のはけ口…ブッシュ大統領が中東の砂漠で1人迷子になる…モヤモヤが起こり駱駝に何しようと迫るが抵抗され断念…そのあと1人の女性を助け、そのお礼として彼女に求めたものは…大笑い…
●イラク復興政策要領…（P113）面白い…全文抜き書きしたいぐらい…お読みいただく
2−4．中東問題
イラクを巡る問題にも根底にはパレスチナ問題がある。
アメリカは一貫してイスラエルを支援する。
イスラエルを最初に国家承認をしたのもアメリカであった。1987年アメリカはイスラエルを非NATOの主要な同盟国と位置づけた。
ブッシュ大統領は特に親イスラエルである。
彼を支えるキリスト教徒右派はキリストの再臨や千年王国を信奉し、熱烈なイスラエル支持者と早坂氏は解説する。
エルサレム、ベツレヘム、ナザレといったキリストにまつわる聖地を抱くイスラエルはキリスト教徒の魂のふるさとである。
ネオコン派もユダヤ系のウォルフォウィッツ(「ユダヤの神童」の異名を持つ)、ダグラス・ファイス、ルイス・リビーがいて、イスラエルを支持する。
9.11は「テロ」と言う共通の敵があることをアメリカとイスラエルの間で認識された。
●ラクダの利用法…ラムズフェルドの質問…兵士はラクダを使って性の処理をすると答える…
●野球…ブッシュとシャロンでの野球論議…ブラック・ブラック・ユーモア！？
●熱心な捜索…テロリストの手配写真は同一人物を4方向から撮ったものであったが…田舎の警察では3人捕まえ、あと1人は目下捜索中？？？？…
第3章 悩めるアメリカの内側
3−1．嫌われるアメリカ
●アメリカ人対フランス人� 張侫薀鵐洪佑六藩兀僂潺灰鵐鼻璽爐鬟螢汽ぅ�ルして…
●アメリカ人対フランス人�◆張▲瓮螢�人は死ぬまでアメリカ人でいたいと言うが…
●生前の報い…フランス人、ドイツ人は死後それぞれ見合った女性をあてがわれるが…アメリカ人はあてがわれる人間となり…
3−2．国内に広がる不安
●アメリカ人のジョンは9.11以降飛行機嫌いになり…鞄に爆弾を入れ飛行機に乗った…
3−3．経済
●アメリカ流モデル…ボート競技の話…やればやるほどイギリスに負ける…なぜ？？…
●経済予測…アメリカの経済評論家は過去4回の不況のうち何回当てたか…8回？！…
3−4．過熱する健康志向
●悲しき真実…大食漢は食べたもの半分で生き、半分で死ぬ…お祈り…
●最新式の体重計…ブラウン夫人は早速買って計ったが…一人ずつお乗りください…
●驚くべき調査結果…こういうデータの活用がアメリカ的…真面目に読んでしまう…
●人間の矛盾� 張泪�ドナルドにいるアメリカ人の注文…
●人間の矛盾�◆捗馘垢砲い襯▲瓮螢�人の本の購入…
●人間の矛盾��…アメリカ人の住む家を見れば…
3−5．宗教
●残酷な罰…牧師のマービンはミサをサボってゴルフに行くが…神様は罰として…
●我慢の限界…忍耐の要る牧師でも許せないのは…
3−6．人種問題
●安心の理由…先住民の台詞…これの面白さは？？解釈が必要…
●歯の手術…黒人問題…白人と黒人の治療代が圧倒的に黒人の方が高い…理由は…
3−7．犯罪大国
●効果てきめん…夜警募集をかけたら泥棒にあった…
●泥棒の復讐…スイカを盗れなかった泥棒は…青酸カリの入ったスイカが2つだと書く
3−8．訴訟大国
●届いた請求書…プロゴルファーから300＄の請求を受けた女性は…相談弁護士から
●世界一不幸な男…不妊を理由に妻から離婚請求、お手伝いからは子供の認知を迫られた…両方とも敗訴した…これって面白いかな…あり得る話では…？？？
3−9．家庭
●浮気相手…3人の主婦の夫の浮気談義…ある妻は夫の鞄の中にあったコンドームに穴を開けたらしい…それを聞いた一人の主婦が卒倒…OL小咄で聞いたジョーク…
●新発明…出産時の母親の苦しみを父親が共有できる機械であった…それを試したところ父親はけろっとしていた…妻が退院して家に帰ると隣の家の主人の葬式であった…彼はなぜか突然悶絶死したらしい…ジョーク！ジョーク！で締めくくる。
（推薦度） ○
およそ10年前に書かれた新書です。共和党の息子ブッシュ大統領の頃のジョークが中心です。10年経って今読むほうがジョークの中の批判精神が読み取れます。
早坂氏の「世界反米ジョーク集」を読む。
早坂隆：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A9%E5%9D%82%E9%9A%86
裏表紙に、
「傲慢で独善的な外交政策、人種差別を始めとする深刻な国内問題。アメリカの病根は深い。唯一の超大国を揶揄した傑作ジョークに的確な解説を交えて、危険で矛盾だらけの『病めるアメリカ』の核心を衝く。」とある。
「まえがき」で、
早坂氏は「アメリカに対する世界の目は激変した」と書き、アメリカが持っていた文化や価値観はその魅力を失ったと書く。
2001年のブッシュ大統領の就任、9.11事件勃発、ネオコン派の台頭、イラク戦争、ブッシュの再選などアメリカは21世紀に変貌し始めている。
この新書は、2005年時点でのアメリカの政治・経済・外交・社会・文化など歴史の視点を加えてコンパクトに書かれている。
アメリカのことを学ぶにはジョークも覚えこの新書が1冊あれば事足りるのではないかというのが私の実感である。
第1章 世界の超大国アメリカ
1−1．単独行動主義（ユニラテラリズム）
9.11事件は「見えざる敵」であるテロリストに対する戦いという「非対称型」の構図を形成した。
この事件以降、ユニラテラリズムが強く現れるようになった。
2001年のアフガニスタン空爆は3000人以上の死者を出し、9.11の犠牲者の数を上回った。
2002年の「ブッシュドクトリン」では、アメリカ単独の先制攻撃の可能性にまで言及するにいたる。
●あの大統領…つかまった無能な大統領とは…フサインorブッシュ…
●神童…アメリカの現大統領は神童！？…10歳にして現在と同じ知性と理解をもつ…
●本人の証明…ブッシュ大統領、ピカソ、アインシュタインはそれぞれ証明したが…
●酒場にて…スコッチ、バーボンに続いて…J・W・ブッシュ、既婚とは（大笑い）…
1−2．軍事大国
2004年度軍事予算は3991億ドル。
140万人の正規軍、250万人の予備役＋州兵。
全世界130ヶ国、700カ所に軍隊を駐留している。
ブッシュ大統領はTMD(戦域弾道ミサイル防衛)を勧めるが、これが完備すると国際社会で圧倒的な優位を占める。
早川氏は、「アメリカは特別な使命を持つ国」という例外主義(エクセプショナリズム)が「アメリカン・アロガンス(傲慢)」を感じさせると書く。
●野蛮の定義…食人種にとって食べない敵を殺すこと…
●本屋にて…「平和国家・アメリカ」という本は…ファンタジーノーベルの棚にある…
1−3．保守主義
チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官は「タカ」派のネオコンであった。9.11事件を契機にその勢力を拡大した。
ネオコン派は国連など国際機関に懐疑的であり、軽視する傾向がある。
その理由は、「神の国であるアメリカの主権を制限する」からである。
彼らは「アメリカの国際的役割の自覚」を政策目標として、「世界をよりよく塗り替えるためにアメリカは積極的に行動するべき」「世界から悪を排除して善を拡大する」と考え、アメリカ単独の軍事行動を辞さないという立場をとると早坂氏は書く。
●アメリカンドリーム…アメリカは自由とチャンスの国…2004年11月ブッシュが証明…
●ブッシュの再就職…大統領を辞したブッシュ…ワシントンとリンカーンも判らず…それでも就職試験に合格…
1―4．宗教右派
ブッシュは「ボーン・アゲイン・クリスチャン」であるが、これは「キリストをこの目で見て生まれ変わった」とする共和党の膨大な組織票となるキリスト教右派(キリスト教原理主義)の思想である。
ブッシュは最も影響を受けた思想家をキリストと答える。
早坂氏はネオコン派とキリスト教原理主義の関係は伝統的に強く、それはレーガン時代の新右派との連繋まで遡ると書く。
1845年メキシコ領であったテキサスを併合する際に、「アメリカが領土を拡大することは神から与えられた使命」としたが、これは一種の選民思想である。
アメリカの膨張思想の原点にあるものだ。そして、これはイラク戦争の際にも引用された。
●怒りの矛先…スタッフの飲酒にブッシュは厳しい…大酒を飲んだ側近がモーツァルト、へミングウェイなどと会話を楽しんでいたと言ったのを聞きブッシュは…（小笑い）
1−5．共和党と民主党
9.11事件のブッシュ大統領の対応に国民は高い支持率を示し、民主党はブッシュ批判に慎重になった。
イラク戦争終結宣言後、イラクの政情が安定しないことで、2004年の大統領選では反ブッシュの声が上がったが、最後はブッシュ大統領が勝利を収め、国民はブッシュの「テロとの戦い」の進路変更は望まなかった。
民主とは2008年の選挙選で誰が候補者になるのだろうか。
第2章 アメリカの外交政策
2−1．イラク開戦までの経緯
2002年のブッシュ大統領の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と名指した。
2003年のイラク戦争では「予防的先制攻撃」というコンセプトの実践がなされた。潜在的敵国に対して予防的に先制攻撃を仕掛けることで、自国に向けられた脅威を取り除くと言う行為を実行したのがイラク戦争であったと早坂氏は書く。
ブッシュはテロとの戦いでは、場合によっては予防的な先制攻撃もありえるという可能性を示した。
早坂氏が危惧するのは、この論理が、インド・パキスタン、イラン・イスラエルなどの間で使用されることである。
同盟国は「力の論理」を振りかざすアメリカから「睨まれる」ことを避けようとする。自国の防衛は国連よりもアメリカとの付き合い方により担保されるという事になるが、早坂氏は「アメリカに反対しづらい構図」と表現する。
アメリカを理解するのに、早坂氏は、
�ー�由への信奉、
�⊆�己愛的性格、
�２，敬佞洩閏膽腟舛鯲鶺鵑群鮴發垢襪�、�△亮�己愛的性格が私にはもっとも理解しやすいものではないかという思いがある。
●演説の効用� 張屮奪轡綢臈�領の演説…間違い探し(爆笑）
●演説の効用�◆沈こγ罎亮禺圓吠拔�の必要性を与えた…
●問題の所在…ブッシュ大統領の演説の草案を書く人間の学が足りない…箴言…
●IQ…IQ60の謎の友人は…ホワイトハウスへ遊びに来ないかと誘う？？？…
●非常識…夜中にトランペットを吹くアメリカのビジネスマン…傲慢・不遜or無知蒙昧
2−2．石油利権
ブッシュ政権は石油財閥に支えられた政権である。
チェイニー副大統領は、父ブッシュ政権時の国防長官を最後に野に下ったが、石油切削会社ハリーバートン社のCEOとなり、全世界に130の支社を展開するまで拡大した。
ライス、オニール、エヴァンスなど皆石油業界に強いパイプを持った人物である。
アメリカは湾岸地域に見切りをつけ、カスピ海と中央アジアをその代替地域として補填しようと言うエネルギー戦略を進めていた。
それはクリントン前大統領時代からカザフスタンやグルジアとの軍事提携を進めていたことからも見て取れる。
アメリカは世界第3位の石油産出国であるが、約60％を輸入に依存している。
●地獄に落ちたネオコン…ブッシュ、チェイニーは…地獄の悪魔曰く、彼らは地獄の底でも石油を掘っている…
2−3．イラク戦争後の混乱
イラク戦争後の迷走、状況の不安定化が進行する中で、ネオコングループの凋落ぶりが目立つ。
イラク戦争時のマスコミの「でっち上げ報道」が早坂氏によって語られるが、プラグマティズムの悪しき例証であろう。
見つからない大量破壊兵器、湾岸戦争時の「プール方式」という代表取材制（＝政府のマスコミ「プードル化」、「金魚のフン化」）、イラク戦争の「従軍方式」（＝「埋め込み方式」）
の説明が早坂氏によって書かれる。
「サダム以降」のシナリオ（＝「出口戦略」）については、民族構成、宗教地図、独特の文化への配慮がなく、多方面の分析がなされなかった。
アメリカは当初「解放者」として迎えられたが、杜撰な戦後計画により、「侵略者」扱いとなったと早坂氏は断定する。
レベルの低い捕虜虐待問題、宗教戦争への危険性（アメリカには約700万人のイスラームー教徒がいる）、新イラクへの政権移譲後の問題が早坂氏によって語られるが、2007年6月現在でもまだ不透明である。
●世界最強の軍隊…ウサギ狩大会でドイツ軍、ロシア軍に続いてアメリカ軍は…捕まえたアライグマに「私はうさぎです！」と言わせた…（笑い）…
●各学会の結論…パリ郊外、北京郊外、そしてワシントン郊外では…地中500mで何も発見されなかった…アメリカは約5000年前にアメリカに携帯電話が普及していた…
●愛の告白…アメリカ兵を殺したイラク人の告白に対し…くだらない武勇伝という…
●調べる…メスの羊を買うときは体中綿密に調べることを父親は息子に語る…それを聞いた息子は数日後、姉がアメリカ兵に買われると父親に告げる…
●アラブの未来は…スターウォーズにアラブ系の俳優が出なかった…ブッシュ曰く、「あの映画は未来の物語であるから」…ブラックユーモア…
●性のはけ口…ブッシュ大統領が中東の砂漠で1人迷子になる…モヤモヤが起こり駱駝に何しようと迫るが抵抗され断念…そのあと1人の女性を助け、そのお礼として彼女に求めたものは…大笑い…
●イラク復興政策要領…（P113）面白い…全文抜き書きしたいぐらい…お読みいただく
2−4．中東問題
イラクを巡る問題にも根底にはパレスチナ問題がある。
アメリカは一貫してイスラエルを支援する。
イスラエルを最初に国家承認をしたのもアメリカであった。1987年アメリカはイスラエルを非NATOの主要な同盟国と位置づけた。
ブッシュ大統領は特に親イスラエルである。
彼を支えるキリスト教徒右派はキリストの再臨や千年王国を信奉し、熱烈なイスラエル支持者と早坂氏は解説する。
エルサレム、ベツレヘム、ナザレといったキリストにまつわる聖地を抱くイスラエルはキリスト教徒の魂のふるさとである。
ネオコン派もユダヤ系のウォルフォウィッツ(「ユダヤの神童」の異名を持つ)、ダグラス・ファイス、ルイス・リビーがいて、イスラエルを支持する。
9.11は「テロ」と言う共通の敵があることをアメリカとイスラエルの間で認識された。
●ラクダの利用法…ラムズフェルドの質問…兵士はラクダを使って性の処理をすると答える…
●野球…ブッシュとシャロンでの野球論議…ブラック・ブラック・ユーモア！？
●熱心な捜索…テロリストの手配写真は同一人物を4方向から撮ったものであったが…田舎の警察では3人捕まえ、あと1人は目下捜索中？？？？…
第3章 悩めるアメリカの内側
3−1．嫌われるアメリカ
●アメリカ人対フランス人� 張侫薀鵐洪佑六藩兀僂潺灰鵐鼻璽爐鬟螢汽ぅ�ルして…
●アメリカ人対フランス人�◆張▲瓮螢�人は死ぬまでアメリカ人でいたいと言うが…
●生前の報い…フランス人、ドイツ人は死後それぞれ見合った女性をあてがわれるが…アメリカ人はあてがわれる人間となり…
3−2．国内に広がる不安
●アメリカ人のジョンは9.11以降飛行機嫌いになり…鞄に爆弾を入れ飛行機に乗った…
3−3．経済
●アメリカ流モデル…ボート競技の話…やればやるほどイギリスに負ける…なぜ？？…
●経済予測…アメリカの経済評論家は過去4回の不況のうち何回当てたか…8回？！…
3−4．過熱する健康志向
●悲しき真実…大食漢は食べたもの半分で生き、半分で死ぬ…お祈り…
●最新式の体重計…ブラウン夫人は早速買って計ったが…一人ずつお乗りください…
●驚くべき調査結果…こういうデータの活用がアメリカ的…真面目に読んでしまう…
●人間の矛盾� 張泪�ドナルドにいるアメリカ人の注文…
●人間の矛盾�◆捗馘垢砲い襯▲瓮螢�人の本の購入…
●人間の矛盾��…アメリカ人の住む家を見れば…
3−5．宗教
●残酷な罰…牧師のマービンはミサをサボってゴルフに行くが…神様は罰として…
●我慢の限界…忍耐の要る牧師でも許せないのは…
3−6．人種問題
●安心の理由…先住民の台詞…これの面白さは？？解釈が必要…
●歯の手術…黒人問題…白人と黒人の治療代が圧倒的に黒人の方が高い…理由は…
3−7．犯罪大国
●効果てきめん…夜警募集をかけたら泥棒にあった…
●泥棒の復讐…スイカを盗れなかった泥棒は…青酸カリの入ったスイカが2つだと書く
3−8．訴訟大国
●届いた請求書…プロゴルファーから300＄の請求を受けた女性は…相談弁護士から
●世界一不幸な男…不妊を理由に妻から離婚請求、お手伝いからは子供の認知を迫られた…両方とも敗訴した…これって面白いかな…あり得る話では…？？？
3−9．家庭
●浮気相手…3人の主婦の夫の浮気談義…ある妻は夫の鞄の中にあったコンドームに穴を開けたらしい…それを聞いた一人の主婦が卒倒…OL小咄で聞いたジョーク…
●新発明…出産時の母親の苦しみを父親が共有できる機械であった…それを試したところ父親はけろっとしていた…妻が退院して家に帰ると隣の家の主人の葬式であった…彼はなぜか突然悶絶死したらしい…ジョーク！ジョーク！で締めくくる。
2014年01月31日
奥山貞三の生きる知恵―新書を読もう 「ユーモアのレッスン」
「ユーモアのレッスン」(2003) 外山滋比古 中公新書
（推薦度） ○
外山滋比古：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%B1%B1%E6%BB%8B%E6%AF%94%E5%8F%A4
表紙裏の解説
では、「しゃれて気の利いたユーモアは、その場かぎりのものでなく、聞く者の記憶に長くとどまる。気まずい場の雰囲気をたちまち明るくし、ときに、厳しい追及をさらりと受け流すのにも役立つ。
だが、ユーモアを発揮する側はもとより、それを感じとる側にも、洗練されたことばの感覚が必要である。本書は、思わず頬がゆるんでしまうエピソードをまじえながら、その効用に光を当てる。このレッスンには教則本も近道もありません」
とある。
�機．罅璽皀¬篥�
ユーモアは1901年坪内逍遥が始めて使うが英語の発音の「ヒューマー」にならなかったが、それは当時のイギリスの発音であった。
もともとはヒポクラテスの四体液説から始まり、ユーモア(＝体液)という言葉に人間の特質という意味合いが濃くなり、気質そのものをあらわすようになった。
19Cのベン・ジョンソンは“気質喜劇”を書き、特異な気質（＝変わった人間）が観客の笑いを誘うとした。
ユーモアは特異なものに触れて生まれる笑い、おかしみ、そのものを呼ぶようになり、今日の意味になったというのが外山氏の説である。
ユーモアとはオックスフォード辞典では、次のような意味になる。
�，�かしさを呼び起こす行動・話・文章の働き(発信側)
��会話や文章の、おかしさ、面白さを感知する能力、表現する作用（受け取る側）
ウィットとの違いは、ユーモアは知的要素が少なく共感的性格(＝ペーソス＜哀しみ＞)を帯びると外山氏は説明する。
また、
カザミアンの「ユーモアは感情的なものであり、直観と常識で処理しようという生活の知恵」や
ブリーストリーの「皮肉やばからしさを感じ取れる能力、ある程度の現実感覚、愛情である」を引用する。
外山氏自身は、ユーモアを次のように描く。
�．罅璽皀△麓�分をも他人と同じく脇から眺めて、その可笑しさを笑うことの出来る能力
�⊆�分と他者を同じ高さにおき、しかも相手に思いやりをかけて笑うときにこそ、真のユーモアが生まれ、そのときこそ笑いが人間の心を結びつける固い絆になる
�Ｅ�事者本人が、そのまま傍観者への立場へ飛び移るところに独自の面白さがある
ユーモアの効用として、言葉や会話で衝突しそうになった時、次元の違う論理（＝肩すかし論理）で対応できると外山氏は書く。
・ちょっとひねる
・少しはずす
・いくらか変形させる
また、ユーモアは言葉の働きでうまれるので、ユーモアを解するには教養が必要であると続ける。
19Cのジョージ・メレディの「笑いとはピストルの弾丸のようなもの」を引用しユーモアは野暮ではだめ、周りの通人にわからなければだめと言う。
ユーモアのフラストレーション効果については、相手の裏をかく、相手の勢いを殺いでしまうことをいい、受け手もその意外さを楽しみ面白いと思う。
パロディはこのフラストレーションのひとつと考えられるのである。
さらに、外山氏は連句の“ひびき”に通じると書き、俳諧がユーモアの文芸であると続ける。
ことわざや成句をひねったり、パロディ化した「地口（じぐち）」というものが日本にはある。
地口、もじり、パロディにはよく知られた元の表現(＝原本)が必要である。
普通は別々のものがユーモアという触媒を入れると不調合なものを統合させ、それが笑いになる（＝外山氏のユーモア触媒説）。
ユーモリストといわれるほどの人たちは、ひそかに、心がけて、決定的機会を狙っている。
演劇的な面白さは、受け手、観客の側でとらえられるものである点が重要である。
はじめから面白いのではなく、頭で考えてなぞめいたところが解決した時に爆発的な喜びになる（＝絵解き）と外山氏は書く。
ユーモアの発達には、社会、集団、仲間の間の言葉の成熟が必要であり、粋で、しゃれていて、野暮でないことであると外山氏は解説する。
ユーモアとウィットの違いに外山氏は言及し、ユーモアは、イギリスは14Cからアイランド・フォームの文化(トレヴェリアン)であり言葉の成熟化の伴い生まれ、ウィットは大陸的文化のユーモアと書く。
言霊のさきわう東海の日本(外山氏)も島国であいまいさを詩歌の命としたり、諧謔を大事にする国であった。
しかし、明治以降の日本はおおむね謹厳、笑いを忘れて、ひたすら、事実、知識、物質、制度、論理に多忙であり、よい意味での閉鎖性が破れ、野暮な社会になったと外山氏は書く。
私、奥山貞三は、戦後、1990年以降、特に21Cはどうユーモアが日本で解されているのか考えてみたいと思う。
�供．罅璽皀△気泙兇�
１ さよう、長期的に見れば
マーク・トウェインはネーミングからはじめユーモリストと外山氏は書く。
その紹介の後、ジョークが続く。
また、イギリスの劇作家バーナード・ショウに関してのジョークも並ぶ。
18Cイギリス文壇の大御所サミュエル・ジョンソン、ケインズ、チャーチル、パーシバル将軍(��WWのシンガポールを守っていた司令官)のジョークが外山氏によって綴られる。
時計、おいしい話、とりちがえ(舞踊家イサドラ・ダンカンとバーナード・ショウの知力と肉体の話など、眼の悪いデボラ・カーの話)、身の上相談、もじり(金正日の世襲とヘミングウェイの『陽はまた昇る』をもじったもの)、チップス先生が語ったジョークが外山氏によって書かれる。
２ 人を食っている
明治の岡倉天心は日常羽織・はかまで通したが、流暢な英語を話した。
マンハッタンでのヤンキー、モンキー、ドンキーとアメリカ人に質問するジョークは有名である。
ドイツのトイレのダーメ、ヘーレンもよくあるジョークである。
内田百�里痢嵬昭磧廖�剣橋大学、牛津大学、倶楽部、幾何(中国語の発音ジオ)、簿記、握手とふって、森首相とクリントン大統領の会話（森首相はヒラリーの夫になった！）、吉田元首相の話(大磯の豪邸で海側に塀を作らなかったのはアメリカ側だからと答えたユーモア)が続いて語られる。
ユーモアを解するには頭を働かせる必要がある。言葉の感覚が洗練されていなければ受け答えもできない、笑うことも出来ないと書く。
また、ユーモアは文化的変奏という性格もあり、文化を共有していないとユーモアは通じないと書く。
東京帝国大学総長のスピーチ、デパートで寝袋を買う話、漱石のイギリス流お客対応が語られ、笑いは知的なものである、知識がないと笑えないと再度力説する。
読みそこないは、笑いの面白さが教養を下敷きにしているが外山氏は語る。
白居易の「林間暖酒焼紅葉」と川柳「厳寒に酒あたためて紅葉鍋」がその例である。
駄洒落、政治家のユーモアについて外山氏は書くが、マスコミについて批判・攻撃には慣れているがゆとりを持って面白みを喜ぶ感覚が発達していないと辛口である。
昔の電報の話、ははたいせつという授業参観での母親のはやとちり、盗品の話、カレイの（鰈と加齢）聞き違えの話、ジョークやユーモアの話が続く。
３ アサリ軍水際撃滅作戦
結婚式でのスピーチは、スカート同様短いほうがいいと言うが、本当はともにないほうがよいと外山氏は書く。
また、スピーチの極意は、差障りのない範囲で、意外なことを、自分を貶めながら披露するのがたくまざるユーモアである。
市河三喜博士のAmerican Slanguagの話、岩崎民平の借金コンクリートの話、カバン語など英文学者ならでのシャレ話が書かれる。
挨拶の用意、間どりなども語られる。
藤山寛美は間についてとてもうるさく、定間と半間のうち、特に半間の使い方にうるさかった。
戦争終了のころ、アサリ軍水際撃滅作戦と称し潮干狩りをしたが、それを思いついた人は面白さを介する人であった外山氏は書く。
４ ミシス・チムニ―
夏目漱石のユーモアが語られ、西園寺公望の雨声会という雅会の誘いを俳句で断った話し、漱石の落語好き、漱石のユーモアは英文学から学んだもの、日本のユーモアは漱石によってしっかり地に根を下ろしたと続ける。
内田百�里領更垉�『阿房列車』は類のないユーモアのエッセイである。
…浮世離れしていて純粋に自由に動き回っていると、普通は見えない面白いことが目に付くと書く。百�里了鉄嘘惺擦量臠屐慳膠辧戞�高利貸の話『うまや橋』を例として、ユーモアはエッセイ、随筆でもっともよくあらわれると続ける。
佐々木邦のユーモアはアメリカ的であった。この佐々木邦は大正期にマーク・トウェインを読みこなし、明るくて、思わず笑いダウ酔うな笑い声を愛し、自分の生涯を半ば創作した『心の歴史』を残す。
近世ヨーロッパ最大の哲人モンテーニュの『エセー』は新しい角度から見ると物事はこんなに面白いということを書いたものだと外山氏は書く。
普通の視点を捨てて、没我の境から見ると物事が違って見えるし、妙に面白いのである。
「パーキンソンの法則」は書き方、文章が面白く、自分の説に自分の名前をつけるというのは人を食った話である。
問題の扱い方はエッセイ的に少し斜に構え、文章はユーモアによって貫かれており、肩の凝らない軽妙なエッセイになっている。
物事を考えるのに、正攻法とからめ手がある。
からめ手法は、面倒な理屈を飛び越えて一挙に中核に迫ることが出来る方法がある。
物理学者、寺田虎彦のエッセイはユーモアにあふれていたと外山氏は書く。。
５ 親があっても
『徒然草』の面白さは物事を普通の人とは少し違った角度から見ているところにある。
兼好は機知を喜び、諧謔を楽しむ心の持ち主であった。
ユーモアの哲人であったのではと外山氏は書く。
大岡政談『三方一両損』、落語の『火焔太鼓』、『古今集』素性法師の和歌、大田道灌の山吹の和歌、落首、俳諧、和歌の本歌取り、連句の指合去嫌の作法、川柳、ことわざなどが外山氏によって語られる。
（推薦度） ○
外山滋比古：wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%B1%B1%E6%BB%8B%E6%AF%94%E5%8F%A4
表紙裏の解説
では、「しゃれて気の利いたユーモアは、その場かぎりのものでなく、聞く者の記憶に長くとどまる。気まずい場の雰囲気をたちまち明るくし、ときに、厳しい追及をさらりと受け流すのにも役立つ。
だが、ユーモアを発揮する側はもとより、それを感じとる側にも、洗練されたことばの感覚が必要である。本書は、思わず頬がゆるんでしまうエピソードをまじえながら、その効用に光を当てる。このレッスンには教則本も近道もありません」
とある。
�機．罅璽皀¬篥�
ユーモアは1901年坪内逍遥が始めて使うが英語の発音の「ヒューマー」にならなかったが、それは当時のイギリスの発音であった。
もともとはヒポクラテスの四体液説から始まり、ユーモア(＝体液)という言葉に人間の特質という意味合いが濃くなり、気質そのものをあらわすようになった。
19Cのベン・ジョンソンは“気質喜劇”を書き、特異な気質（＝変わった人間）が観客の笑いを誘うとした。
ユーモアは特異なものに触れて生まれる笑い、おかしみ、そのものを呼ぶようになり、今日の意味になったというのが外山氏の説である。
ユーモアとはオックスフォード辞典では、次のような意味になる。
�，�かしさを呼び起こす行動・話・文章の働き(発信側)
��会話や文章の、おかしさ、面白さを感知する能力、表現する作用（受け取る側）
ウィットとの違いは、ユーモアは知的要素が少なく共感的性格(＝ペーソス＜哀しみ＞)を帯びると外山氏は説明する。
また、
カザミアンの「ユーモアは感情的なものであり、直観と常識で処理しようという生活の知恵」や
ブリーストリーの「皮肉やばからしさを感じ取れる能力、ある程度の現実感覚、愛情である」を引用する。
外山氏自身は、ユーモアを次のように描く。
�．罅璽皀△麓�分をも他人と同じく脇から眺めて、その可笑しさを笑うことの出来る能力
�⊆�分と他者を同じ高さにおき、しかも相手に思いやりをかけて笑うときにこそ、真のユーモアが生まれ、そのときこそ笑いが人間の心を結びつける固い絆になる
�Ｅ�事者本人が、そのまま傍観者への立場へ飛び移るところに独自の面白さがある
ユーモアの効用として、言葉や会話で衝突しそうになった時、次元の違う論理（＝肩すかし論理）で対応できると外山氏は書く。
・ちょっとひねる
・少しはずす
・いくらか変形させる
また、ユーモアは言葉の働きでうまれるので、ユーモアを解するには教養が必要であると続ける。
19Cのジョージ・メレディの「笑いとはピストルの弾丸のようなもの」を引用しユーモアは野暮ではだめ、周りの通人にわからなければだめと言う。
ユーモアのフラストレーション効果については、相手の裏をかく、相手の勢いを殺いでしまうことをいい、受け手もその意外さを楽しみ面白いと思う。
パロディはこのフラストレーションのひとつと考えられるのである。
さらに、外山氏は連句の“ひびき”に通じると書き、俳諧がユーモアの文芸であると続ける。
ことわざや成句をひねったり、パロディ化した「地口（じぐち）」というものが日本にはある。
地口、もじり、パロディにはよく知られた元の表現(＝原本)が必要である。
普通は別々のものがユーモアという触媒を入れると不調合なものを統合させ、それが笑いになる（＝外山氏のユーモア触媒説）。
ユーモリストといわれるほどの人たちは、ひそかに、心がけて、決定的機会を狙っている。
演劇的な面白さは、受け手、観客の側でとらえられるものである点が重要である。
はじめから面白いのではなく、頭で考えてなぞめいたところが解決した時に爆発的な喜びになる（＝絵解き）と外山氏は書く。
ユーモアの発達には、社会、集団、仲間の間の言葉の成熟が必要であり、粋で、しゃれていて、野暮でないことであると外山氏は解説する。
ユーモアとウィットの違いに外山氏は言及し、ユーモアは、イギリスは14Cからアイランド・フォームの文化(トレヴェリアン)であり言葉の成熟化の伴い生まれ、ウィットは大陸的文化のユーモアと書く。
言霊のさきわう東海の日本(外山氏)も島国であいまいさを詩歌の命としたり、諧謔を大事にする国であった。
しかし、明治以降の日本はおおむね謹厳、笑いを忘れて、ひたすら、事実、知識、物質、制度、論理に多忙であり、よい意味での閉鎖性が破れ、野暮な社会になったと外山氏は書く。
私、奥山貞三は、戦後、1990年以降、特に21Cはどうユーモアが日本で解されているのか考えてみたいと思う。
�供．罅璽皀△気泙兇�
１ さよう、長期的に見れば
マーク・トウェインはネーミングからはじめユーモリストと外山氏は書く。
その紹介の後、ジョークが続く。
また、イギリスの劇作家バーナード・ショウに関してのジョークも並ぶ。
18Cイギリス文壇の大御所サミュエル・ジョンソン、ケインズ、チャーチル、パーシバル将軍(��WWのシンガポールを守っていた司令官)のジョークが外山氏によって綴られる。
時計、おいしい話、とりちがえ(舞踊家イサドラ・ダンカンとバーナード・ショウの知力と肉体の話など、眼の悪いデボラ・カーの話)、身の上相談、もじり(金正日の世襲とヘミングウェイの『陽はまた昇る』をもじったもの)、チップス先生が語ったジョークが外山氏によって書かれる。
２ 人を食っている
明治の岡倉天心は日常羽織・はかまで通したが、流暢な英語を話した。
マンハッタンでのヤンキー、モンキー、ドンキーとアメリカ人に質問するジョークは有名である。
ドイツのトイレのダーメ、ヘーレンもよくあるジョークである。
内田百�里痢嵬昭磧廖�剣橋大学、牛津大学、倶楽部、幾何(中国語の発音ジオ)、簿記、握手とふって、森首相とクリントン大統領の会話（森首相はヒラリーの夫になった！）、吉田元首相の話(大磯の豪邸で海側に塀を作らなかったのはアメリカ側だからと答えたユーモア)が続いて語られる。
ユーモアを解するには頭を働かせる必要がある。言葉の感覚が洗練されていなければ受け答えもできない、笑うことも出来ないと書く。
また、ユーモアは文化的変奏という性格もあり、文化を共有していないとユーモアは通じないと書く。
東京帝国大学総長のスピーチ、デパートで寝袋を買う話、漱石のイギリス流お客対応が語られ、笑いは知的なものである、知識がないと笑えないと再度力説する。
読みそこないは、笑いの面白さが教養を下敷きにしているが外山氏は語る。
白居易の「林間暖酒焼紅葉」と川柳「厳寒に酒あたためて紅葉鍋」がその例である。
駄洒落、政治家のユーモアについて外山氏は書くが、マスコミについて批判・攻撃には慣れているがゆとりを持って面白みを喜ぶ感覚が発達していないと辛口である。
昔の電報の話、ははたいせつという授業参観での母親のはやとちり、盗品の話、カレイの（鰈と加齢）聞き違えの話、ジョークやユーモアの話が続く。
３ アサリ軍水際撃滅作戦
結婚式でのスピーチは、スカート同様短いほうがいいと言うが、本当はともにないほうがよいと外山氏は書く。
また、スピーチの極意は、差障りのない範囲で、意外なことを、自分を貶めながら披露するのがたくまざるユーモアである。
市河三喜博士のAmerican Slanguagの話、岩崎民平の借金コンクリートの話、カバン語など英文学者ならでのシャレ話が書かれる。
挨拶の用意、間どりなども語られる。
藤山寛美は間についてとてもうるさく、定間と半間のうち、特に半間の使い方にうるさかった。
戦争終了のころ、アサリ軍水際撃滅作戦と称し潮干狩りをしたが、それを思いついた人は面白さを介する人であった外山氏は書く。
４ ミシス・チムニ―
夏目漱石のユーモアが語られ、西園寺公望の雨声会という雅会の誘いを俳句で断った話し、漱石の落語好き、漱石のユーモアは英文学から学んだもの、日本のユーモアは漱石によってしっかり地に根を下ろしたと続ける。
内田百�里領更垉�『阿房列車』は類のないユーモアのエッセイである。
…浮世離れしていて純粋に自由に動き回っていると、普通は見えない面白いことが目に付くと書く。百�里了鉄嘘惺擦量臠屐慳膠辧戞�高利貸の話『うまや橋』を例として、ユーモアはエッセイ、随筆でもっともよくあらわれると続ける。
佐々木邦のユーモアはアメリカ的であった。この佐々木邦は大正期にマーク・トウェインを読みこなし、明るくて、思わず笑いダウ酔うな笑い声を愛し、自分の生涯を半ば創作した『心の歴史』を残す。
近世ヨーロッパ最大の哲人モンテーニュの『エセー』は新しい角度から見ると物事はこんなに面白いということを書いたものだと外山氏は書く。
普通の視点を捨てて、没我の境から見ると物事が違って見えるし、妙に面白いのである。
「パーキンソンの法則」は書き方、文章が面白く、自分の説に自分の名前をつけるというのは人を食った話である。
問題の扱い方はエッセイ的に少し斜に構え、文章はユーモアによって貫かれており、肩の凝らない軽妙なエッセイになっている。
物事を考えるのに、正攻法とからめ手がある。
からめ手法は、面倒な理屈を飛び越えて一挙に中核に迫ることが出来る方法がある。
物理学者、寺田虎彦のエッセイはユーモアにあふれていたと外山氏は書く。。
５ 親があっても
『徒然草』の面白さは物事を普通の人とは少し違った角度から見ているところにある。
兼好は機知を喜び、諧謔を楽しむ心の持ち主であった。
ユーモアの哲人であったのではと外山氏は書く。
大岡政談『三方一両損』、落語の『火焔太鼓』、『古今集』素性法師の和歌、大田道灌の山吹の和歌、落首、俳諧、和歌の本歌取り、連句の指合去嫌の作法、川柳、ことわざなどが外山氏によって語られる。
2014年01月27日
奥山貞三の生きる知恵−新書を読もう 「俳句入門 : 初級から中級へ」
「俳句入門 : 初級から中級へ」(1998) 稲畑汀子 PHP新書
（推薦度）
稲畑氏の「俳句入門 : 初級から中級へ」を読む。
稲畑氏は、1931年、横浜に生れる。父高浜年尾、母喜美の次女。小林(おばやし)聖心女子学院高校卒。同英語専攻科中退。 小学生の頃から、祖父高浜虚子・父高浜年尾に俳句を学んだという。1935年、鎌倉から芦屋に転居。1956年24歳で稲畑順三と結婚、二男一女の母となる。1965年「ホトトギス」同人。1976年第一句集『汀子句集』刊行。1977年「ホトトギス」雑詠選者に。同年、父高浜年尾の死去により主宰を継承した。翌1980年、夫順三死去。1982年より朝日俳壇選者に、1994年―96年、NHK俳壇の講師・選者となる。 1987年、日本伝統俳句協会を設立し、会長に就任。2000年、虚子記念文学館を芦屋に開館、理事長に就任する。
著書として、句集に『汀子句集』『汀子第二句集』『汀子第三句集』『障子明り』『さゆらぎ』など。 その他の著書に『舞ひやまざるは』『俳句に親しむ』『俳句入門』『自然と語りあうやさしい俳句』『俳句十二ヶ月』など。
評価はいまだ定まっていない。 父年尾は、第一句集の序文で「星野立子の句を虚子は「景三情七」といったが、汀子の句は「景七情三」といえる」と書いている。祖父虚子の説に忠実で海外俳句にも、日本の「季題」を入れよという。
第一句集冒頭の「今日何もかもなにもかも春らしく」の代表されるように、写生派というよりも、あっけらかんとした花鳥諷詠といえようか。
（フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』）
表紙裏の解説では、
「俳句はどう作ればいいのか—季題、五・七・五の十七音定型の約束事から、俳句独得の省略の手法、切字の扱い、推敲の仕方まで、句作の上で欠かせない要点を、現代俳句の師・高浜虚子の孫で、現在「ホトトギス」を主宰する著者が、わかりやすく解説。
また、四季の移ろい行く自然を詠いあげる『花鳥諷詠』の理念、物事の本質を観て心の感動を叙する『客観写生』の考え方など、虚子の説いた伝統俳句の本質に迫る。初心者だけでなく、句歴のある人、俳句の世界に興味のある人にも読みごたえある一冊。」とある。
「はじめに」で、この章立ての説明をする。
○俳句の基本的な知識の理解…、〈１〉〈２〉
○季語の正しい理解・習得…〈３〉
○｢花鳥諷詠｣の理念、｢客観写生｣の考え方に解説…〈４〉〈５〉
○虚子、芭蕉の俳句の素晴しさを知る…〈６〉〈７〉
○稲畑氏のエッセイ…〈８〉
稲畑氏は、21Cのキーワードは「自然」と語り、人間は自然の1部であるという見方を持つことを訴え、俳句を通じて自然と親しむことを進めているように私は受け止める。
〈１〉入門・投稿俳句のための十二章
稲畑氏は、俳句は毎日血のにじむような思いをして格闘している当の相手であると書く。雑誌『ホトトギス』の主宰として毎月3万句の雑詠、朝日俳壇週7−8千句(約、月3万句)を見て、句会の参加、俳句教室など毎日目を通す句は膨大であるらしい。これらの実践から、｢俳句の表現｣について稲畑氏の考えをこの新書で述べるとある。
(1)季題は季節の言葉である。
…季重なりはおかしいので注意。
(2)切字の基本は、や・かな・けり
…切字の心を忘れない。
切字の意義は強調と省略。
○稲畑氏は、現代は切字を嫌う傾向の強い時代であるが誤りと書く。
切字は、
�―�助詞・副助詞→「かな｣｢もがな｣｢ぞ｣｢か｣｢よ｣「や」
�⊇�動詞→「けり」｢ん｣「つ」｢ぬ｣「ず」「じ」
�７鼠道譴僚�止形→「し」
�て飴譴量仁畄羨�｢せ｣「れ」｢へ｣「け」
�サ震筝譴い�に→｢に｣ ／計18である。
○稲畑氏は、初心者は｢や｣「かな」｢けり｣をつかいこなせば十分であると書く。
(3)定型とは、五･七･五の十七音
…「省略」するところに俳句という短い詩の本質がある。
虚子は平明にして余韻のあるものを良しとした。
(4)感情言語の嬉しい、悲しいなどは避ける
…感情を誘った事物をそのまま叙する。
(5)説明する句よりも感動のほうを大切に
…ものを見ないで観念的に作らない。
たった17音で宇宙の本質に触れる深い認識、深く広く湧き上がる詩情の世界を詠うには、認識や感動を触発した一瞬の対象の姿を詠みとどめるしかない。
◎紅梅の紅のかよへる幹ならむ 虚子
(6)推敲とは、表現を平明にすること
…言葉に執着しない、表現の技巧にとらわれない。
表現はできる限り素直に述べること。
省略の反面、短く研ぎ澄まされた言葉を残す。
俳句は言葉を選び、省略し、言いたいことが独りよがりではなく正しく伝わるかどうか客観的に検討し、季題が生きているかなど推敲して初めて一句として独立する。
(7)類句にいい句はない
…作る側もあまり神経質にならず、その時その時まじめに作っていても類句であれば捨てるようにする。
(8)客観写生とは対象を深く見ること
…マンネリにならないためには絶えず対象を深く盛るようにする。
◎流れ行く大根の葉の早さかな 虚子
(9)独りよがりに早く気づく
…一読者として句の意味がはっきりと通じるかどうか見直す。
(10)本物の感動を詠む
…たとえ表現が下手であっても作者の感動が本物であれば選者の心を打つ。
(11)選句は善意のたまもの
…平明の中のしみじみとした句を見落とさない。
(12)俳句とは有季定型を正しくすること
…さらに作者の感動が込められた詩があればよい。
＊虚子の『俳句読本』は稲畑氏のよってよく引用される。
〈２〉実践・俳句の作り方
○先ず素直に一句作ってみる
稲畑氏の父、高浜年尾は「俳句は直感の詩である」という。
稲畑氏は「作句のとき季題との出会いを大切にする」と書く。
長い間の訓練があると、意識的にする作業が無意識になされることがあり、推敲していない句がいい場合があると稲畑氏はいうがそれは稲畑氏のような俳句のプロの場合にしか当てはまらないのではないだろうか。
○作者の位置を明確にする
人事句であれ叙景句であれ、季題＋詩があればよい句になる。稲畑氏は客観写生ができているか否かの問題であると書く。
○自分の言葉に執着しない
○言葉をつめこまない
思い切って省略し省略された内容が17音の背景として読者に伝わるような表現を心がける。
○平常心を保つ
客観的になり、その人の心に映った自然を詠む。
平常心で詠まれた句には自ずからその人が一句の中に現れる。
○夢の中でも客観的になれ
…達人芸、名人芸の話であろうか。
○情景を再現する表現力
…〇水中花しぶきをあげずしずみにけり、の例。
○対象の本質に迫るのは心である
…よく見るとはこちらの心が動くまで見ることである。
○事実の句と句の表現力
…〇勝ち続く汗は洗わずユニフォーム、の例。
○正しい言葉を適切に使う
…稲畑氏でも「大辞典」を引き意味を確かめるのである。
○辞書を引くのは、平明な表現のため
…稲畑氏の父年尾は「広辞苑」をよく引いたらしい。
稲畑氏の雑詠選を担うようになり、｢広辞苑｣を引くようになったらしい。
プロがそうであるなら、素人はそれ以上言葉を大事にしなければならないというのが私の気持ちである。
○一句を舌頭に転がしてみる
…一句一句に即して表現を考える。
○俳句にも間と余韻は大切
…間を作ること、余韻として伝える。
○心の深い句に触れる
…例えば、17音の裏に省略されたものが深い余韻として伝わる。
○「ん」の力こそ句の力
…〇午後三時酔芙蓉なほゑひもせすん、の例。｢ん｣に意味がある。
○ものの新鮮な見方が必要である
…〇寺を出て真っ正面のかき氷、の例。
○俳句は驚きの表現
…〇冷凍の月下美人アッしぼみをり、の例。
○表現のぎりぎりが詩である
…〇峨々越えて冬日の原に逢着す、の峨々の使い方。
心を沈潜させる
…そうして出来た稲畑氏の句
◎雪晴も雪に暗むも遠野かな 汀子
◎曲家の火伏の神も爐火埃 汀子
○平明な句とは決して平凡ではない
…季題を生かし平明に叙すことが肝要と稲畑氏はかく。
○感動のないところに詩は生まれない
…「俳諧は三尺の童にさせよ…」(芭蕉)。
○俳諧味のある句は豊かである
…よく写生をし､その人の持味が自然に滲み出るのがよい｡
○良い句を心に止めておこう
…良い句の豊かな感性に触れることが大事である。
〈３〉歳時記と季の言葉
○歳時記の使い方
…俳人にとってもっとも重要なもの。
稲畑氏は虚子編『新歳時記』を愛用する。
常にそれを読み、記憶を正確にするとの事である。
先年『ホトトギス新歳時記』を世に問う。
季題の解説が、その歳時記の価値を決定する。
編者の季題に対する態度・理解がエッセンスとして凝縮される。
○地名歳時記(中央公論社)のために
…非日常的な世界への脱出の「旅」と関係する。
地名が俳句の意味と構成に深く組み込まれている俳句を選んで稲畑氏が編集した。
○｢季題｣と｢季語｣の違い
…�’倬澆竜�題は和歌の題を受け継ぎながら、それに加えて
�∪験茲北�着した卑近な題目が意図的に拾い上げられた。
→��sollenの季題
…こう詠まねば「ならぬ」季題
…｢雪｣｢月｣｢花｣｢郭公｣｢寝覚｣｢紅葉｣
��seinの季題
…事実どおりに詠む
…反和歌的に詠まなければならない（大西克礼）
→稲畑氏は�，�｢大季題｣、�△�｢小季題｣と名付ける。
現在の歳時記は��｢大季題｣、��｢小季題｣の周囲に、風土や季節現象としての題目が徐々に集積されてきた。
これらこそ真の意味でのseinの季題で｢季語｣であると稲畑氏は書く。
○季題の季節感に安住していないか
…季題の有しているあらゆる性質、あらゆる連想、それらのものを研究し、これをその情熱の中に溶け込ませ、その思想とその季題とが１つになって17字の正しい格調を備えて詩となる。それが俳句である（虚子俳話）。
稲畑氏の季題観では、季題は
�［鮖謀�に歌人や俳人によって磨きあげられてきた季節の言葉、
�⊆�然に対して鋭い感受性を持つ日本人一般の季節観によって裏打ちされた言葉、である。
○季題は正確に
…松蝉(春)、五月晴(梅雨の晴れ間)、五月雨(梅雨)、河鹿笛、卯の花腐(くだ)し、富士吉田火祭、冷やか、枯葉を焚くなどの例が稲畑氏によって解説される。
○「日」は俳句では「日」である
…｢陽｣は使わない。
雑句であるがこの｢陽｣を使って書いたものがある。
●東京で生まれた陽大阪に沈む 貞舟（奥山貞三の俳号）
○季題を深く掘り下げる
…新樹光、晩夏光などは小説や詩から借りたもので稲畑氏は批判的である。
この説は納得いかない。
○季題を見つける
…季節のはざ間では、自分が感じたものを素直に詠めばよい。
○旅の句の季題について
…旅人の感動はものによって語られなければならない。
○季題のあるなし
…虚子は季題のないものは俳句でないということを稲畑氏は引用する。
この文章で選句者が投稿者の俳句を直す箇所が面白いので抜き出す、
〇通夜の灯を遠くにしたる別れかな （オリジナル）
〇通夜の灯を朧にしたる別れかな 汀子
〇通夜の灯を遠くにしたる朧かな 飴山実
〇通夜の灯のがちゃがちゃの鳴く別れかな 金子兜太
○季題も変わりゆく
…菜の花の例を上げ、菜に咲く黄色い花を総称としてよいという稲畑氏の説に私も賛同する。
「菜種の花」はあの黄色い花の鮮烈なイメージを減殺する。
○結社の伝統が選者の誇りとあわせ説明される。
４ 自然を詠う—花鳥諷詠の心
以下、皆稲畑氏の思い、感想、説である。
○和歌からの出発
…和歌と花鳥諷詠する心は同じであるが、和歌から出て進歩したもの。
○詩の原点を思う
…中国西安、敦煌を訪れ、詩の原点は自然に感動することである。
○不易流行
…自然の懐は深く、自然の本質は変わらない。
○十七音の寡黙
…自然の姿、人間の営みを写生しそれをほろともらすのが俳句。
○花鳥諷詠と存問(＝挨拶)と…客観写生が一歩前進し存問となった(年尾)
○季節の詩
…季題の背後に広がるイメージの豊富さを理解する。
○心の贅沢
…心の余裕がなければ詩が生まれない。
○自然を詠む詩、異国へ俳句を伝える、花を植えるは稲畑氏のエッセイである。
○花の予感
…桜の開花予想で｢未だ蕾｣「綻ぶ」｢咲き進む｣「咲き揃う」｢咲き満ちる｣「散り始める」などの表現がよいというのに賛成である。
○心の助走(絵を見ること)、五感で触れる、月下美人、西方の月、自然からのメッセージ、生活の中の詩、「ホトトギス」創刊100年、これらもエッセイである。
５ 客観写生とは何か
○物に入りて、情感ずる（服部土芳『赤冊子』）
○客観写生を通じて主観(芭蕉の情)の浸透により俳句ができる。
○客観写生の到達点
…〇凍蝶の己が魂追うて飛ぶ 虚子
虚子を語る稲畑氏の解説は教祖様になっており、つまらない。
○物の本質を観る、見るは観るなり、自然と心の融合、写生の40年はお読みいただく。
６ 虚子の俳句
稲畑氏が掲げた虚子の句を抜き出す。
私には虚子は数多くいる俳人の一人であり、その詩を鑑賞すればよいと思う。
〇家持の妻恋舟か春の海
〇遠山に日の当たりたる枯野かな(明33)
〇桐一葉日当たりながら落ちにけり(明39)
〇金亀子擲つ闇の深さかな(明41)
〇露の幹静かに蝉の歩き居り(大5)
〇白牡丹といふといえども紅ほのか(大14)
〇流れ行く大根の葉の早さかな(昭3)
〇凍蝶の己が魂追うて飛ぶ(昭8)
稲畑氏は「ホトトギス」教祖様であるから虚子を礼賛するのはわかるが褒めすぎていないだろうか。
その他、書き出す。
〇神にませばまこと美はし那智の滝
〇鶯や御幸の輿もゆるめけん
〇蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな
〇紅梅の紅の通える幹ならん
〇祇王寺の留守の扉や押せば開く
７ 芭蕉の俳句
虚子は稲畑氏に「古典を勉強しなさい」といったがこれは正しい。
10歳にならないときから稲畑氏は芭蕉のことを学んだ。
〇閑さや岩にしみ入蝉の声『おくのほそ道』 （一期一会の雰囲気を伝える）
〇荒海や佐渡によこたふ天河『おくのほそ道』
〇一家に遊女もねたり萩と月『おくのほそ道』 cf)〇雷の好きな妓と端居かな 虚子
〇古池や蛙飛びこむ水の音『おくのほそ道』
〇初しぐれ猿も小蓑をほしげ也『猿蓑』 cf)◎見る我も見らるる猿も寒そうに 汀子
〇旅人と我が名よばれん初しぐれ『笈の子文』
〇何の木の花とはしらず匂哉『笈の子文』
〇旅に病で夢は枯野をかけ廻る
これらの芭蕉の句に対する稲畑氏の思いが綴られる。
８ 心の風景を詠う—私の俳句
稲畑氏の俳句を抜き出し観賞する。
彼女の俳句は凛とした気品と知性、そして女性の豊かな感受性を読み取ることができる。
◎猫柳にはほゝけんとするこころ
◎一山の花の散り込む谷と聞く
◎とらえたる柳絮を風にもどしけり
◎又松の花粉の頃に病める子よ
◎初蝶を追ふまなざしに加わりぬ
◎部屋暗し若葉の庭に居過ぎたる
◎さゆらぎてさゆらぎて花心かな
◎三椏の花三三が九三三が九 この近くに山茶花が咲いていたのでは…。
◎ふと心通ひたるとき椿艶
◎藤房の流れる長さの違ふ風
◎道迷ふことも旅路よ芥子の花
◎日の新樹雨の新樹と色重ね
◎山気いま朴の香加へそめにけり
◎沼やさし悲しみ咲ける杜若抱く
◎夏野行く濡るゝほかなき山雨来し
◎街路樹に泰山木を咲かす国
◎皆花野来しとまなざし語りをり
◎すがれゆく色を色とし藤袴
◎コスモスの色の分れ目と通れさう
◎手を出せば零余子こぼるる古道ゆく
◎焚くための枯菊を刈りためしこと
◎枯れ芝に日ざしは語る如くあり
◎落葉踏む音落葉降る音の中
◎黄葉描く子に象を描く子が竝び
◎茸縄の張られてあるも一部分
◎還暦や赤き冬薔薇贈られて
◎囀りをこぼし日射をこぼさざる
◎郭公を遠くに聞いて飛ぶも見る
◎春の雪太平洋の波となる
◎春の雪さいごの授業飾りけり
◎月の波消え月の波生まれつつ
◎峡狭し後の月とていづくより
◎夜風ふと匂ふ潮の香星月夜
◎町の灯へ戻りて泊つる小夜時雨
◎京時雨残して遠き雲となる
◎時雨虹消えて舟音残りけり
◎地吹雪と別に星空ありにけり
◎生きてゐる木々の根方に雪間あり
◎海見えて風花光るものとなる
◎寒月の照らすは地震に崩る街
◎見てをれば投扇興はやさしけり
◎お手つきに恋の加留多を繰り返す
◎春着着し母の外出に目ざとき子
◎二三日掃けば出てくる年の豆
◎春の水甦りたる蛇口かな
◎啓蟄の日とて地の面に親しむ目
（推薦度）
稲畑氏の「俳句入門 : 初級から中級へ」を読む。
稲畑氏は、1931年、横浜に生れる。父高浜年尾、母喜美の次女。小林(おばやし)聖心女子学院高校卒。同英語専攻科中退。 小学生の頃から、祖父高浜虚子・父高浜年尾に俳句を学んだという。1935年、鎌倉から芦屋に転居。1956年24歳で稲畑順三と結婚、二男一女の母となる。1965年「ホトトギス」同人。1976年第一句集『汀子句集』刊行。1977年「ホトトギス」雑詠選者に。同年、父高浜年尾の死去により主宰を継承した。翌1980年、夫順三死去。1982年より朝日俳壇選者に、1994年―96年、NHK俳壇の講師・選者となる。 1987年、日本伝統俳句協会を設立し、会長に就任。2000年、虚子記念文学館を芦屋に開館、理事長に就任する。
著書として、句集に『汀子句集』『汀子第二句集』『汀子第三句集』『障子明り』『さゆらぎ』など。 その他の著書に『舞ひやまざるは』『俳句に親しむ』『俳句入門』『自然と語りあうやさしい俳句』『俳句十二ヶ月』など。
評価はいまだ定まっていない。 父年尾は、第一句集の序文で「星野立子の句を虚子は「景三情七」といったが、汀子の句は「景七情三」といえる」と書いている。祖父虚子の説に忠実で海外俳句にも、日本の「季題」を入れよという。
第一句集冒頭の「今日何もかもなにもかも春らしく」の代表されるように、写生派というよりも、あっけらかんとした花鳥諷詠といえようか。
（フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』）
表紙裏の解説では、
「俳句はどう作ればいいのか—季題、五・七・五の十七音定型の約束事から、俳句独得の省略の手法、切字の扱い、推敲の仕方まで、句作の上で欠かせない要点を、現代俳句の師・高浜虚子の孫で、現在「ホトトギス」を主宰する著者が、わかりやすく解説。
また、四季の移ろい行く自然を詠いあげる『花鳥諷詠』の理念、物事の本質を観て心の感動を叙する『客観写生』の考え方など、虚子の説いた伝統俳句の本質に迫る。初心者だけでなく、句歴のある人、俳句の世界に興味のある人にも読みごたえある一冊。」とある。
「はじめに」で、この章立ての説明をする。
○俳句の基本的な知識の理解…、〈１〉〈２〉
○季語の正しい理解・習得…〈３〉
○｢花鳥諷詠｣の理念、｢客観写生｣の考え方に解説…〈４〉〈５〉
○虚子、芭蕉の俳句の素晴しさを知る…〈６〉〈７〉
○稲畑氏のエッセイ…〈８〉
稲畑氏は、21Cのキーワードは「自然」と語り、人間は自然の1部であるという見方を持つことを訴え、俳句を通じて自然と親しむことを進めているように私は受け止める。
〈１〉入門・投稿俳句のための十二章
稲畑氏は、俳句は毎日血のにじむような思いをして格闘している当の相手であると書く。雑誌『ホトトギス』の主宰として毎月3万句の雑詠、朝日俳壇週7−8千句(約、月3万句)を見て、句会の参加、俳句教室など毎日目を通す句は膨大であるらしい。これらの実践から、｢俳句の表現｣について稲畑氏の考えをこの新書で述べるとある。
(1)季題は季節の言葉である。
…季重なりはおかしいので注意。
(2)切字の基本は、や・かな・けり
…切字の心を忘れない。
切字の意義は強調と省略。
○稲畑氏は、現代は切字を嫌う傾向の強い時代であるが誤りと書く。
切字は、
�―�助詞・副助詞→「かな｣｢もがな｣｢ぞ｣｢か｣｢よ｣「や」
�⊇�動詞→「けり」｢ん｣「つ」｢ぬ｣「ず」「じ」
�７鼠道譴僚�止形→「し」
�て飴譴量仁畄羨�｢せ｣「れ」｢へ｣「け」
�サ震筝譴い�に→｢に｣ ／計18である。
○稲畑氏は、初心者は｢や｣「かな」｢けり｣をつかいこなせば十分であると書く。
(3)定型とは、五･七･五の十七音
…「省略」するところに俳句という短い詩の本質がある。
虚子は平明にして余韻のあるものを良しとした。
(4)感情言語の嬉しい、悲しいなどは避ける
…感情を誘った事物をそのまま叙する。
(5)説明する句よりも感動のほうを大切に
…ものを見ないで観念的に作らない。
たった17音で宇宙の本質に触れる深い認識、深く広く湧き上がる詩情の世界を詠うには、認識や感動を触発した一瞬の対象の姿を詠みとどめるしかない。
◎紅梅の紅のかよへる幹ならむ 虚子
(6)推敲とは、表現を平明にすること
…言葉に執着しない、表現の技巧にとらわれない。
表現はできる限り素直に述べること。
省略の反面、短く研ぎ澄まされた言葉を残す。
俳句は言葉を選び、省略し、言いたいことが独りよがりではなく正しく伝わるかどうか客観的に検討し、季題が生きているかなど推敲して初めて一句として独立する。
(7)類句にいい句はない
…作る側もあまり神経質にならず、その時その時まじめに作っていても類句であれば捨てるようにする。
(8)客観写生とは対象を深く見ること
…マンネリにならないためには絶えず対象を深く盛るようにする。
◎流れ行く大根の葉の早さかな 虚子
(9)独りよがりに早く気づく
…一読者として句の意味がはっきりと通じるかどうか見直す。
(10)本物の感動を詠む
…たとえ表現が下手であっても作者の感動が本物であれば選者の心を打つ。
(11)選句は善意のたまもの
…平明の中のしみじみとした句を見落とさない。
(12)俳句とは有季定型を正しくすること
…さらに作者の感動が込められた詩があればよい。
＊虚子の『俳句読本』は稲畑氏のよってよく引用される。
〈２〉実践・俳句の作り方
○先ず素直に一句作ってみる
稲畑氏の父、高浜年尾は「俳句は直感の詩である」という。
稲畑氏は「作句のとき季題との出会いを大切にする」と書く。
長い間の訓練があると、意識的にする作業が無意識になされることがあり、推敲していない句がいい場合があると稲畑氏はいうがそれは稲畑氏のような俳句のプロの場合にしか当てはまらないのではないだろうか。
○作者の位置を明確にする
人事句であれ叙景句であれ、季題＋詩があればよい句になる。稲畑氏は客観写生ができているか否かの問題であると書く。
○自分の言葉に執着しない
○言葉をつめこまない
思い切って省略し省略された内容が17音の背景として読者に伝わるような表現を心がける。
○平常心を保つ
客観的になり、その人の心に映った自然を詠む。
平常心で詠まれた句には自ずからその人が一句の中に現れる。
○夢の中でも客観的になれ
…達人芸、名人芸の話であろうか。
○情景を再現する表現力
…〇水中花しぶきをあげずしずみにけり、の例。
○対象の本質に迫るのは心である
…よく見るとはこちらの心が動くまで見ることである。
○事実の句と句の表現力
…〇勝ち続く汗は洗わずユニフォーム、の例。
○正しい言葉を適切に使う
…稲畑氏でも「大辞典」を引き意味を確かめるのである。
○辞書を引くのは、平明な表現のため
…稲畑氏の父年尾は「広辞苑」をよく引いたらしい。
稲畑氏の雑詠選を担うようになり、｢広辞苑｣を引くようになったらしい。
プロがそうであるなら、素人はそれ以上言葉を大事にしなければならないというのが私の気持ちである。
○一句を舌頭に転がしてみる
…一句一句に即して表現を考える。
○俳句にも間と余韻は大切
…間を作ること、余韻として伝える。
○心の深い句に触れる
…例えば、17音の裏に省略されたものが深い余韻として伝わる。
○「ん」の力こそ句の力
…〇午後三時酔芙蓉なほゑひもせすん、の例。｢ん｣に意味がある。
○ものの新鮮な見方が必要である
…〇寺を出て真っ正面のかき氷、の例。
○俳句は驚きの表現
…〇冷凍の月下美人アッしぼみをり、の例。
○表現のぎりぎりが詩である
…〇峨々越えて冬日の原に逢着す、の峨々の使い方。
心を沈潜させる
…そうして出来た稲畑氏の句
◎雪晴も雪に暗むも遠野かな 汀子
◎曲家の火伏の神も爐火埃 汀子
○平明な句とは決して平凡ではない
…季題を生かし平明に叙すことが肝要と稲畑氏はかく。
○感動のないところに詩は生まれない
…「俳諧は三尺の童にさせよ…」(芭蕉)。
○俳諧味のある句は豊かである
…よく写生をし､その人の持味が自然に滲み出るのがよい｡
○良い句を心に止めておこう
…良い句の豊かな感性に触れることが大事である。
〈３〉歳時記と季の言葉
○歳時記の使い方
…俳人にとってもっとも重要なもの。
稲畑氏は虚子編『新歳時記』を愛用する。
常にそれを読み、記憶を正確にするとの事である。
先年『ホトトギス新歳時記』を世に問う。
季題の解説が、その歳時記の価値を決定する。
編者の季題に対する態度・理解がエッセンスとして凝縮される。
○地名歳時記(中央公論社)のために
…非日常的な世界への脱出の「旅」と関係する。
地名が俳句の意味と構成に深く組み込まれている俳句を選んで稲畑氏が編集した。
○｢季題｣と｢季語｣の違い
…�’倬澆竜�題は和歌の題を受け継ぎながら、それに加えて
�∪験茲北�着した卑近な題目が意図的に拾い上げられた。
→��sollenの季題
…こう詠まねば「ならぬ」季題
…｢雪｣｢月｣｢花｣｢郭公｣｢寝覚｣｢紅葉｣
��seinの季題
…事実どおりに詠む
…反和歌的に詠まなければならない（大西克礼）
→稲畑氏は�，�｢大季題｣、�△�｢小季題｣と名付ける。
現在の歳時記は��｢大季題｣、��｢小季題｣の周囲に、風土や季節現象としての題目が徐々に集積されてきた。
これらこそ真の意味でのseinの季題で｢季語｣であると稲畑氏は書く。
○季題の季節感に安住していないか
…季題の有しているあらゆる性質、あらゆる連想、それらのものを研究し、これをその情熱の中に溶け込ませ、その思想とその季題とが１つになって17字の正しい格調を備えて詩となる。それが俳句である（虚子俳話）。
稲畑氏の季題観では、季題は
�［鮖謀�に歌人や俳人によって磨きあげられてきた季節の言葉、
�⊆�然に対して鋭い感受性を持つ日本人一般の季節観によって裏打ちされた言葉、である。
○季題は正確に
…松蝉(春)、五月晴(梅雨の晴れ間)、五月雨(梅雨)、河鹿笛、卯の花腐(くだ)し、富士吉田火祭、冷やか、枯葉を焚くなどの例が稲畑氏によって解説される。
○「日」は俳句では「日」である
…｢陽｣は使わない。
雑句であるがこの｢陽｣を使って書いたものがある。
●東京で生まれた陽大阪に沈む 貞舟（奥山貞三の俳号）
○季題を深く掘り下げる
…新樹光、晩夏光などは小説や詩から借りたもので稲畑氏は批判的である。
この説は納得いかない。
○季題を見つける
…季節のはざ間では、自分が感じたものを素直に詠めばよい。
○旅の句の季題について
…旅人の感動はものによって語られなければならない。
○季題のあるなし
…虚子は季題のないものは俳句でないということを稲畑氏は引用する。
この文章で選句者が投稿者の俳句を直す箇所が面白いので抜き出す、
〇通夜の灯を遠くにしたる別れかな （オリジナル）
〇通夜の灯を朧にしたる別れかな 汀子
〇通夜の灯を遠くにしたる朧かな 飴山実
〇通夜の灯のがちゃがちゃの鳴く別れかな 金子兜太
○季題も変わりゆく
…菜の花の例を上げ、菜に咲く黄色い花を総称としてよいという稲畑氏の説に私も賛同する。
「菜種の花」はあの黄色い花の鮮烈なイメージを減殺する。
○結社の伝統が選者の誇りとあわせ説明される。
４ 自然を詠う—花鳥諷詠の心
以下、皆稲畑氏の思い、感想、説である。
○和歌からの出発
…和歌と花鳥諷詠する心は同じであるが、和歌から出て進歩したもの。
○詩の原点を思う
…中国西安、敦煌を訪れ、詩の原点は自然に感動することである。
○不易流行
…自然の懐は深く、自然の本質は変わらない。
○十七音の寡黙
…自然の姿、人間の営みを写生しそれをほろともらすのが俳句。
○花鳥諷詠と存問(＝挨拶)と…客観写生が一歩前進し存問となった(年尾)
○季節の詩
…季題の背後に広がるイメージの豊富さを理解する。
○心の贅沢
…心の余裕がなければ詩が生まれない。
○自然を詠む詩、異国へ俳句を伝える、花を植えるは稲畑氏のエッセイである。
○花の予感
…桜の開花予想で｢未だ蕾｣「綻ぶ」｢咲き進む｣「咲き揃う」｢咲き満ちる｣「散り始める」などの表現がよいというのに賛成である。
○心の助走(絵を見ること)、五感で触れる、月下美人、西方の月、自然からのメッセージ、生活の中の詩、「ホトトギス」創刊100年、これらもエッセイである。
５ 客観写生とは何か
○物に入りて、情感ずる（服部土芳『赤冊子』）
○客観写生を通じて主観(芭蕉の情)の浸透により俳句ができる。
○客観写生の到達点
…〇凍蝶の己が魂追うて飛ぶ 虚子
虚子を語る稲畑氏の解説は教祖様になっており、つまらない。
○物の本質を観る、見るは観るなり、自然と心の融合、写生の40年はお読みいただく。
６ 虚子の俳句
稲畑氏が掲げた虚子の句を抜き出す。
私には虚子は数多くいる俳人の一人であり、その詩を鑑賞すればよいと思う。
〇家持の妻恋舟か春の海
〇遠山に日の当たりたる枯野かな(明33)
〇桐一葉日当たりながら落ちにけり(明39)
〇金亀子擲つ闇の深さかな(明41)
〇露の幹静かに蝉の歩き居り(大5)
〇白牡丹といふといえども紅ほのか(大14)
〇流れ行く大根の葉の早さかな(昭3)
〇凍蝶の己が魂追うて飛ぶ(昭8)
稲畑氏は「ホトトギス」教祖様であるから虚子を礼賛するのはわかるが褒めすぎていないだろうか。
その他、書き出す。
〇神にませばまこと美はし那智の滝
〇鶯や御幸の輿もゆるめけん
〇蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな
〇紅梅の紅の通える幹ならん
〇祇王寺の留守の扉や押せば開く
７ 芭蕉の俳句
虚子は稲畑氏に「古典を勉強しなさい」といったがこれは正しい。
10歳にならないときから稲畑氏は芭蕉のことを学んだ。
〇閑さや岩にしみ入蝉の声『おくのほそ道』 （一期一会の雰囲気を伝える）
〇荒海や佐渡によこたふ天河『おくのほそ道』
〇一家に遊女もねたり萩と月『おくのほそ道』 cf)〇雷の好きな妓と端居かな 虚子
〇古池や蛙飛びこむ水の音『おくのほそ道』
〇初しぐれ猿も小蓑をほしげ也『猿蓑』 cf)◎見る我も見らるる猿も寒そうに 汀子
〇旅人と我が名よばれん初しぐれ『笈の子文』
〇何の木の花とはしらず匂哉『笈の子文』
〇旅に病で夢は枯野をかけ廻る
これらの芭蕉の句に対する稲畑氏の思いが綴られる。
８ 心の風景を詠う—私の俳句
稲畑氏の俳句を抜き出し観賞する。
彼女の俳句は凛とした気品と知性、そして女性の豊かな感受性を読み取ることができる。
◎猫柳にはほゝけんとするこころ
◎一山の花の散り込む谷と聞く
◎とらえたる柳絮を風にもどしけり
◎又松の花粉の頃に病める子よ
◎初蝶を追ふまなざしに加わりぬ
◎部屋暗し若葉の庭に居過ぎたる
◎さゆらぎてさゆらぎて花心かな
◎三椏の花三三が九三三が九 この近くに山茶花が咲いていたのでは…。
◎ふと心通ひたるとき椿艶
◎藤房の流れる長さの違ふ風
◎道迷ふことも旅路よ芥子の花
◎日の新樹雨の新樹と色重ね
◎山気いま朴の香加へそめにけり
◎沼やさし悲しみ咲ける杜若抱く
◎夏野行く濡るゝほかなき山雨来し
◎街路樹に泰山木を咲かす国
◎皆花野来しとまなざし語りをり
◎すがれゆく色を色とし藤袴
◎コスモスの色の分れ目と通れさう
◎手を出せば零余子こぼるる古道ゆく
◎焚くための枯菊を刈りためしこと
◎枯れ芝に日ざしは語る如くあり
◎落葉踏む音落葉降る音の中
◎黄葉描く子に象を描く子が竝び
◎茸縄の張られてあるも一部分
◎還暦や赤き冬薔薇贈られて
◎囀りをこぼし日射をこぼさざる
◎郭公を遠くに聞いて飛ぶも見る
◎春の雪太平洋の波となる
◎春の雪さいごの授業飾りけり
◎月の波消え月の波生まれつつ
◎峡狭し後の月とていづくより
◎夜風ふと匂ふ潮の香星月夜
◎町の灯へ戻りて泊つる小夜時雨
◎京時雨残して遠き雲となる
◎時雨虹消えて舟音残りけり
◎地吹雪と別に星空ありにけり
◎生きてゐる木々の根方に雪間あり
◎海見えて風花光るものとなる
◎寒月の照らすは地震に崩る街
◎見てをれば投扇興はやさしけり
◎お手つきに恋の加留多を繰り返す
◎春着着し母の外出に目ざとき子
◎二三日掃けば出てくる年の豆
◎春の水甦りたる蛇口かな
◎啓蟄の日とて地の面に親しむ目
