個人凍死家テリーの投資生活チラシの裏

ここはおいらのチラシの裏。 投資生活のメモや投資家さんとの交流を記録して行きます。読者の生活に何も役立たないが、一瞬だけ笑顔になれる落書きを目指します。 チラシの裏に内容や数を期待しちゃいけないぜ! e-mail: frozen.investor.telly@gmail.com

新年度のクッソ忙しいこの時期に、バランスファンド王子こと虫とり小僧さん(ブログ:いつか子供に伝えたいお金の話)の粋な計らいにより、金融庁で開催された積立NISAに関する勉強会に参加されると聞きつけ、長官室にワイン妖怪が出没したときに備えて警備するために金融庁まで行って来ました。

勉強会における説明内容やマニアどもによるマニアックな質問の数々は下記のように他の著名ブロガーさんが記述されておられますので、私はその他どうでもいいことを書いていこうと思います。

 「積立NISA」説明会(金融庁会議室)に行ってきました(ブログ:いつか子供に伝えたいお金の話)
 金融庁による「積立NISA」説明会に行ってきたよ(ブログ:インデックス投資トラベラー)
 金融庁による「積立NISA」説明会に参加しました(ブログ:人生もお金も海外分散する話)
 金融庁で積立NISAの説明会に参加(ブログ:シデとセルリアンの節約blog)
 積立NISA説明会@金融庁(ブログ:NightWalker's Investment Blog)
よくわかる積立NISA 積立NISA説明会at金融庁 参加レポート(1) 制度説明編(ブログ:"いい投資"探検日誌 from 新所沢)
金融庁の個人向け説明会に参加 積立NISAは株式投資普及の第一歩! (ブログ:アメリカ株でアーリーリタイアを目指す)
3分で分かる積立NISAのすべて (ブログ:たぱぞうの米国株投資)
積立NISA創設に込められた国家の意志―金融庁の積立NISA説明会に参加しての所感 (ブログ:The Arts and Investment Studies)

まず私の感じた結論から。

金融庁は豪腕を奮って超本気で株式を通じた国民の資産形成を後押ししようとしている

ということです。

事前の報道情報等から、今回の積立NISAに適用可能な投資商品は極めて限定されており、これまでNISAを使っていた投資家の皆さんからは、「金融庁は投資家の投資先にまでケチつけるのか!」とか「金融庁による統制経済か!」などという声もあり、私も「そもそも投資というものは一個人の責任でやるものであり、自己責任なのだから、監督省庁が過度な規制をかけるのはけしからん!」、担当者を吊るし上げてやるっ! と息巻いて金融庁に向かいました。

そして見事に金融庁に潜入を完了。
SNAKE

勉強会がはじまり、金融庁からの説明を聞くと、あぁ、自分の考えは自分だけが得をすればいいと考えている狭い考え方なんだなぁ。という気がして参りました。

今金融庁が考えているであろうことは、国民全体の資産形成、ひいては「国際分散投資による国富の増強」なんだなぁ、というのが感じ取れる議論(舌鋒鋭い某参加者の方がジャーナリスティックに「それ」を聞き出そうとしていたが、さすがは霞ヶ関、そこは言質を取らせません(苦笑))でした。

日本国内の現状を考えてみると、製造業の衰退もあり、かつての高度経済成長期のような経済発展や雇用が望めるわけではなさそうです。地銀を監督している金融庁から見て、地銀は本業である融資によって地域経済を支え、発展させろと発破をかけても、実際地方で伸び代のある企業なんぞそうそうないわけです。そこは金融庁もうすうす分かっている。

それならば、国内で産業興して稼ぐだけじゃなくて、お金に働いてもらえばいいじゃない! だって個人の金融資産は結構あるんだから! ということなんだと思うわけです。

今眠っているお金は、ほぼほぼ「投資に無縁な方、投資が怖い方、投資に一歩踏み出せない方」の手中にあります。既存の投資家の手元のお金は多くはありません。(金額ではなくて人数の問題です)

大多数の国民が投資に対する恐怖心と証券・銀行業界に対する不信がある中で、積立NISAに関してははじめての投資家が踏んで死んでしまう地雷があってはならない。「豪腕金融庁」というレッテルを張られてもやらねばならない、そういう強い意志が、金融庁から感じられるわけです。

私は感じました。
「積立NISAは投資に興味がない、投資に踏み込めない大多数の一般国民向けの投資チュートリアル制度なんだ」と。一方で、「これは間接金融の終わりのはじまりなのかもしれない」とも思いました。
NISA1


既にゲームをプレイしているヘビーユーザーはいまさらチュートリアルやっても面白みがない、それはわかります。ただ、ゲームをDLしてプレイしてもらうためには、超難解なゲームをいきなりプレイするのではなく、ある程度の制限があってもいいから基礎を理解するモードがあったほうがいい。積立NISAはそんな制度なんだと思うわけです。もちろんヘビーユーザーがチュートリアルで遊んだって構わない。

また、既存投資家の方にしてみれば、確かに投資先が絞られ、面白くないことは間違いないと思うのですが、そこは先行者、勝利者の余裕。投資に興味のないひよっ子に対して暖かい目で見守ってやろうじゃないですか。
損してトク取れではありませんが、減税措置の対象が絞られてもそれ以上に投資人口が増えて市場が活性化して株価上昇につながればwin-winです!(実際はそんなうまくいかないと思いますが)


さて、ここで話題を変えて、そもそも積立NISAの親というかルーツってなんだったんだっけ?
っていうことを思い出していきたいと思います。

積立NISAの親は現行NISAです。現行NISAって、どっから出てきたのか、って辿ると、「証券軽減税制の廃止」
なわけですね。当時、きっとこんな攻防があったものと思われます。
財務省:譲渡益課税を10%から20%に上げますよ!(後述しますが実際は「戻しますよ」が正解)
証券業界&業界御用マスコミ:「株離れが~」「株価暴落!」「日本経済崩壊してもしらねーぞ!」
国民の代表:「経済は政権維持の生命線や、よっしゃ任しとき!」
金融庁:「国民の健全な資産形成のための少額非課税制度....」
国民の代表:「よっしゃ、それや!」
証券業界:「そんなチンケな制度じゃ~」
国民の代表:「よっしゃ、増額じゃ!」
財務省:「既存の仕組みの延長線上ですからね」
てな感じだったと思うんですよね。

ただ、この財務省の言う「既存の仕組み」ってのが曲者で、要するにこれは「租税特別措置」という制度なわけです。本来、法で定められた課税額や率に対し、「(何かしらの理由をつけて)特別に減税してやろう」というのが租税特別措置。特別なんで、基本的に時限つき(延長あり)の制度です。

証券税制の推移と租税特別措置の延長の歴史は他サイトですがよくまとまっていましたのでこちらをご参照ください。(PDF注意)
株式会社資本市場研究所きずな 「証券税制の変遷」
すなわち、

 ・前述の証券軽減税制(譲渡益10%課税)もこの租税特別措置の枠内での制度
 ・現行NISAもこの租税特別措置の枠内での制度
 ・積立NISAも当然、この租税特別措置の枠内での制度


ということになります。
ただ、積立NISAについては制度が20年、非課税期間が20年の合計40年間の非課税措置が確定しており、租税特別措置としては異例の長期間の設定になっていることは特筆に値し、一部報道によれば証券税制を決める謎の会合に「お前らじゃ埒があかん、森を呼べ!」と言われて呼び出され、この異例の長期間の特別な制度を認めさせたとされる方のパワーに感服です。

界隈ではNISA制度の恒久化、非課税期間の恒久化という要望があるのは重々承知していますが、そうなると、DC制度のように制度のために法律1本必要(DCの場合確定拠出年金法(平成十三年六月二十九日法律第八十八号)で規定)だなというのが感想で、法律1本立てるってのは、相当のパワーが必要だなぁ、というのが正直なところです。
金融庁にあっては、法律の制定に向けて着々と準備を進めていただければと思います。

一方で、投資家側としても、ただただ制度の不備に文句をつけるだけでなく、本制度が国民の資産形成に資するために重要な制度だと認識した上で、多くの人にその存在を知らせていき、多くの利用実績を積んで
いくためのささやかな努力を続けていく必要
も強く感じました。

余談(1): 質疑中、担当者の口から「泳げます」というマニア用語が出てきたのにめっちゃツボりました。※わかる人だけ分かればいい。泳力検定とか関係ないです。

余談(2):勉強会終了後懇親会が開催され、KC庁に事前にもたらされた情報によれば、ワイン妖怪が出没し長官室への侵入を試みる可能性があるとのことでしたが、金融庁内の厳しいセキュリティシステムに守られ、ワイン妖怪の出没はなかったとのことです。しかし、実際は警備システムによる功績ではなく、私テリーが会場内の警備にあたったおかげだと自負しております。
※要するにワインを飲みそびれた。泡が1本だけあったはずなんだが「熱い投資家さんと熱い議論」をしてるうちになくなっていました。熱い投資家さんに金融庁長官賞が与えられるべきです。



さて今回は、前回の「配当を総合課税で申告してみよう!」に引き続き、配当のお得な受け取り方の一例を「配当控除」という制度に着目して解説してみたいと思います。

2017-03-02 (36)

今回ご出演いただくのは、いわゆる優待族と呼ばれる、株式の優待に魅力を感じて国内株を保有なさっておられる「優待 トリ夫」さんです。トリ夫さんは大橋さんと同様の理由で三人組ではありません。

優待トリ夫さんは会社にお勤めで、別添のような源泉徴収票を貰って来ております。
まぁ、毎回おなじみの年収300万円、配偶者専業主婦、社会保険料50万円といういわゆるモデルケースの源泉徴収票です。
H28_優待トリオ

ここではまず最初に、優待さんの所得税率を確認しておきたいと思います。
優待さんの源泉徴収票を見ますと、給与の支払い金額が300万円、給与所得控除後が192万円です。
ここから基礎控除(38万円)、配偶者控除(38万円)と社会保険料控除(50万円)の合計が「所得控除の合計額」で126万円となります(源泉徴収票右側に記載あり)。
優待さんの課税所得額は 192万円 - 126万円  =  66万円 となります。

ここで所得税の税率と税額を計算する速算表を見てみましょう。

速算表

優待さんの場合、課税される所得額は66万円ですので、税率は5%の枠内にあることがわかります。
所得税の税額もここ速算表で見ると簡単に計算でき、66万円×5%=33,000円であることがわかります。

ただし、現在、復興特別所得税としてこれに2.1%の上乗せがあることから、両者を合わせた税額は 33,000× 1.021=33,693円 となります。
所得税の徴税時には100円未満の端数は切り捨てするそうで、優待さんの場合の課税額は33,600円となり、まさに源泉徴収表に示された源泉徴収額と一致します。

今後、皆さんが今回説明する配当控除を利用したほうがいいか否か、はこの所得税率に依存しますので、皆様ご自身が配当控除を利用するか否か(配当控除の利用というよりは前回説明した総合課税制度を利用するか否かなんですが)を決める際にはこのご自身の課税税率を覚えておいてください。

今回の事例では所得税の税率が5%の給与所得者の方、ということになります。

さて、前段階の説明と確認をしたところで、今度は配当のお話。
優待さんは毎年、利尻産のバフンウニを送ってくれる優待狙いで北海道屈指の水産物加工会社「雲丹黒」の株式を保有しているのですが、その会社からは年2回配当も出たようです。配当の明細を見てみましょう。

配当3
バフンウニ1kgを送ってもらうために必要な株数を考慮し、保有株数は10000株(大株持ちですな!)、雲丹黒の年間配当は1株当たり合計10円です。
優待さんの元には年間10万円の配当が来るはずですが、前回の記事で説明し、既に皆様ご承知のとおり、配当は源泉徴収されており、優待さんの手元にはそれが差し引かれた額が振り込まれます。
源泉徴収額は国税(所得税+復興特別税)が15,314円、地方税が5,000円です。

では、今回は前回の「配当花子さん」の例に準じて、配当を総合課税として確定申告書を作成してみましょう! 
前回と同じく、最初の生年月日等を入力するところに関しては 幣ブログのこちら を参照していただき、「収入金額・所得額入力」の画面から説明をはじめます。

まずは給与所得の入力です。源泉徴収票の数字を参考に、入力を済ませてください。
給与所得の入力画面は幣ブログの過去記事  をご覧いただければと思います。

優待さんの場合、給与所得控除後の金額として、192万円の所得が入力された状態が以下の絵になります。

2017-03-02 (25)


続いて配当所得の入力です。
2017-03-02 (25)2

配当所得を入力するを押すと、下記の画面となります。
今回も一般口座を使用しているという設定で、下記のように入力します。

2017-03-02 (1)

ここで「特定口座以外での配当」を入力する を押すと下記の画面になります。
2017-03-02 (2)
ここは「総合課税を選択する」を選びます。ここは今回説明する配当控除を受けるためには特に大事です!
その上で「個別に配当等を入力する」の 「入力する」ボタンを押します。

2017-03-02 (29)

すると、いろんな項目を聞かれますので、例に倣って記入してください。
今回重要なポイントになるのは、

ロ 支払通知書の内容のうち、次の事項について選択してください。

の項目です。このうち、「外貨建資産割合」という項目が超重要入力項目(←ここ試験に出ます!)で、東証上場の国内企業である(株)雲丹黒への投資は外貨建てではなく、この選択は「1 記載なし 又は 50%以下」となります。

入力の結果、下記のように確認が出来ます。
2017-03-02 (30)

次へ進むと、配当の明細を入力済だよ。ということが確認できます。


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さて、次へと進めていくと、総合課税の所得の項目、給与所得192万円に加え、配当所得10万円が記載されました。
2017-03-02 (33)

続いて所得控除の入力ですが、ここは給与所得の入力時に、源泉徴収票の数字を転記しており、社会保険料控除50万円は自動的に入力されているものと思います。最後に基礎控除38万円も自動的に書き込まれています。

2017-03-02 (34)

続いて税控除の項目です。
ここで新たな発見があります。最初の行の「配当控除」1万円です。ここが今回の記事のキモになります!
詳しい解説はあとに譲り、ここでは「なんだか知らないが配当控除っていうのがついた」だけ覚えておいていただければ結構です。

2017-03-02 (35)

さて、ここで数字の入力は終了。先へ進みますと税額の自動計算が行われます。計算結果を見てみましょう!
2017-03-02 (36)

還付額は20,326円です。と出ました。還付です。しかし、ちょっと株式の配当明細書を確認してみましょう。
配当3
配当の源泉徴収で引かれていた国税は7,657円×2回で15,314円でした。
還付額は20,326円。あっ、源泉徴収された所得税より還付額増えてる!

なんでや! ってなります。そのマジックのタネは先程説明を省いた「配当控除」にあります。
最終成果物の確定申告書1ページ目を見てみましょう。
Yutai

所得は緑線で示した配当所得(総合課税)と給与所得です。
これに基づいて計算された「課税すべき所得」は76万円になります。(右欄最上部)。
確定申告をする前の「課税すべき所得」は66万円(ただし配当については源泉徴収済)でした。(本記事の最初のほうを振り返ってみてください)。10万円の追加は配当を総合課税にした分と一致します。

さて、その上で税額の計算です。優待さんの税率は5%でした。10万円所得が増えても5%でOKです。
計算すると76万円×5%=38,000円となります。(確定申告前では66万円×5%で33,000円でした)
これが右欄2行目の数字になります。
そして3行目。これが今回大活躍の「配当控除」です。

配当控除の制度の趣旨を簡単に説明します。
(知らなくても困らない追加情報)

日本国内の企業ががんばって活動し、利益を上げます。そしてそこから日本国政府に法人税を支払っています。一方、株主はその法人税が引かれた利益のうち一部を企業から還元されます。それが配当です。しかし、先程からお話しているように、実は配当には個人所得税が課税される仕組みになっています。
そうすると、一度法人税課税された利益(の一部)が所得税で二重課税されるじゃないか、それはおかしいだろう! ということで、その問題を修正するために設計された「政府がずるいのを補正する制度」です。
「日本国政府」とわざわざ書いている理由は、仮に法人税が外国で支払われた場合、実態として二重課税になっていない(日本国政府が二重取りはしていない)。からで、そういう理由から、外国株式等ではこの配当控除を受けられません

そこを区別すための入力項目が配当課税の入力フォームにあった「外貨建資産割合」という項目になります。今回優待さんはここを「無記載または50%以下」と入力し、国内企業で配当二重課税されてますよ、という宣言をしていることになります。
配当控除の額は、本ブログの読者層であろう上場株式を保有する個人投資家の場合、配当額の10%、と覚えておいていただければ十分です。

さて、税額の計算結果を見てみましょう。
この配当控除1万円の効果により、所得税額が38,000円から28,000円に減額されたわけです。

配当控除を受けるためには大事なことがあります。それは「配当を総合課税として確定申告する」ということです。今回は配当控除を得るために、優待さん、総合課税を選択して申告書を作成しました。

では、総合課税にしなかった場合と確定申告をしなかった(申告不要制度を選択して放置した)場合と比較してみたいと思います。
まず前提として、最初に源泉徴収票、配当明細書を掲げたとおり、給与所得の源泉徴収として国税33,600円と配当所得の源泉徴収として15,314円が徴収されていることを確認したいと思います。その上で比較します。
比較2

左が総合課税を選択した場合、右は配当を申告せず源泉徴収で済ませた場合(を想定して無理やり申告書を作成した場合)です。申告分離を選択して申告書を作成しても、最終的な税額は右側と同じになります(還付も追納もない)。
総合課税&配当控除の効果として、国税で20,326円の還付を受けることが出来るわけです。

さて、ここで2万円の還付を受けることができると聞いた優待さん、この2万円で飲みに行ってぱーっ!と使うことにしたそうです。しかーーーし! 優待さんには大きな落とし穴があります。

それは住民税です。

実は源泉徴収と総合課税で所得税・住民税の税率が異なるのです。

所得税(復興特別税を除く)
   源泉徴収の場合: 15%
   総合課税の場合: 所得次第(累進課税) ← 優待さんの所得では5%

住民税
   源泉徴収の場合: 5%
   総合課税の場合: 10%(所得額に関わらず)

合計して

  源泉徴収の場合: 20%
  総合課税の場合: 優待さんの場合5%+10%=15%
 

優待さんの場合、住民税について、源泉徴収税率5%で納税済です。配当10万円の5%で5,000円です。
これは確定申告書の「住民税・事業税の関する事項」の「配当割額控除額」欄を通じて地方自治体に源泉での納税済額が通知されます。

Jyumin
一方で、地方自治体は総合課税で10万円増額された所得をもとに住民税を計算します。
ただし、住民税にも「配当控除」があり、配当の2.8%が課税額から控除されます。
(ご参考: 岡山市「税額控除および配当割額・株式等譲渡所得割額控除」 中段あたりに記載あり)

すなわち、計算上、総合課税で確定申告することにより、住民税額は10万円の10%で1万円と計算された上で、地方税の配当控除2.8%、すなわち2,800円が差し引かれた7,200円が配当部分から支払わなければならない住民税額となり、そこから源泉徴収済の金額5,000円が差し引かれて6月以降に税額が決定されます。
従って、優待さん、所得税の還付に浮かれて2万円を浪費してはいけません! 2,200円はとっておかねばなりません!

さて今回は、国内株式の配当について、総合課税で確定申告をすることにより、申告分離課税や申告不要制度を利用したときとは違うスペシャルな制度「配当控除」によって税還付を受けられる(ただし住民税のことも忘れるな!)ことを説明いたしました。

さきほどの所得税の累進課税税率をご覧いただければわかるかと思いますが、本制度を利用して最も多く還元を得られるのは「所得税率5%の所得層の方」になります。(10%の方も配当控除によって還付になりますが効果は弱めです)

「所得税率5%の所得層の方」となると、真っ先に思いつくのは若手の勤労者の方です。
インデックス投信等で分散投資するのも確かに大事ではあるのですが、国内部分に関しては、優待等の恩恵を受けつつ、国内の高配当株を分散して所有していく戦略もアリなのかもしれないと思います。


また、大事な点ですが、配当控除は「課税所得がない方」には適用されない(支払うべき所得税があればその一部分をおまけするのであって税金ゼロのひとにお金をあげる制度ではない)ので、前回の専業主婦の方のような例では効果がないことも大事な事項です。

これまでに主に給与所得者の方向けに確定申告書の書き方等をお話して来ましたが、今回はちょっと趣向を変えて専業主婦の方の例を使って、配当の総合課税による確定申告の事例を見てみたいと思います。

これまでお話したとおり、配当課税の方法については、
・申告不要制度による源泉徴収
・申告分離を選択することによる確定申告(外国税額控除を利用したい場合は申告不要制度を利用してはダメ!)
・総合課税を選択することによる確定申告

があります。
これまで、給与所得者の方の場合では、「申告分離を選択することによる確定申告」を主に御説明してまいりましたが、今回は「総合課税を選択する」ことによって、結果的に配当非課税になる例を、収入がまったくない専業主婦の方を例にして申告書を作成しながら解説していきたいと思います。

今回のモルモットは先日外国税額控除の説明で御出演願った、配当次郎さんの奥様、配当花子さんです。
配当花子さんは専業主婦で、基本的に収入はありません。
普段何してるんだ、とかいう野暮な質問の回答のために、様々な架空の設定を書き始めると別の面で炎上しかねないのでそこは割愛し、本題の配当所得について見て行きたいと思います。

今回御出演いただいた配当花子さん。御主人の影響を受けてか、なぜか米国株を所有しています。(そういう設定だから)

花子さんが保有する株は、オリンピックで使用される聖火台関連のグッズや米国国内の寺院向けロウソクの生産で独占的なシェアをもつ有名企業、「セトーチ・エンド・ジャクソン」社。ファウンダーは三歳の娘を残して駆け落ちし、15平方ヤードの倉庫でこの会社を興し、現在の規模まで大きくしたという、まさにアメリカン・ドリームを体現した会社なのですが(そんな余計な設定要らんって?)
まぁ、その「セトーチ・エンド・ジャクソン」社からは下記のとおり、年1回だけ配当が出ました。

現地通貨建てで税引き前2000ドルですが、そこから米国で10%の源泉所得税が引かれ、そこからさらに国内で約20%の源泉所得税が引かれ、花子さんの元には約7割の14万円ちょっとに相当する米ドルが振り込まれました。
配当の明細書に記載のとおり、配当邦貨換算20万円から、米国で20,000円、日本国内で36,567円が源泉徴収されています。
外国配当(妻)修正済 - コピー

ここで花子さんは確定申告をしなかった場合、どうなるでしょうか?
確定申告をしなかった場合、花子さんは申告不要制度を利用したとみなされ、課税関係は終了していることになり、税務当局に一切の個人情報を渡すことなく配当から56,567円が引かれて終了です。何もしなくても(優良納税者として君臨することになりますが)一向に構いません。

しかし、ここで確定申告をし、三番目に示した「総合課税を選択」すると劇的な変化が現れます!
では実際に申告書を作成してみましょう。
最初の生年月日等を入力するところに関しては 幣ブログのこちら を参照していただき、「収入金額・所得額入力」の画面から説明をはじめます。
2017-03-02 (0)

花子さんの場合、御主人と違って給与所得はありませんので入力は不要です。
その代わり唯一の所得である「配当所得」の欄の入力を行います。

配当所得の入力欄ではいろいろ聞いてきますが、今回はこの絵に示したように入力します。
今回、花子さんは「一般口座」を使用しているという設定にいたします。

ここで「特定口座以外での配当」を入力する を押します。
2017-03-02 (1)


すると、課税の方法の選択肢が出てきます。ここは「総合課税を選択する」を選びます。ここ大事です!
2017-03-02 (2)

その上で「個別に配当等を入力する」の 「入力する」ボタンを押します。

すると、上部には「総合課税です」と表示されますので確認してください。
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続いて配当の内容を転記していきます。
ここで若干ややこしい項目があるので補足説明です。
2017-03-02 (5)



イ 支払通知書の種類を選択してください

と出ますので「1 上場株式配当等の支払通知書」を選びます。証券会社から送られてきた配当の明細書のことですね。

続いて

ロ 支払通知書の内容のうち、次の事項について選択してください。 と出ます。

ここでは配当(または分配金)が外国企業からの配当なのか、それとも国内企業からの配当なのかを聞いています。これは、次回以降に説明する予定の「配当控除」というものを算出するのに必要な入力項目で、ここで「国内企業からの配当」だと、後に配当控除という「税金のおまけ」がついて来ます。配当控除については今回は詳しく触れません。

今回、花子さんは外国企業からの配当ですので、ここは外貨建資産割合「75%以上」を選択します。
また、非株式の割合を聞いてきますが、これは投資信託等の場合に効いてくる項目で、今回は株式そのものですので「無記載または50%以下」(非株式=0%ですから)になります。

そしてその下には会社名収入金額(ここには米国で10%源泉徴収された後の額が入ります)、源泉徴収額を入力します。(これは配当の明細を見れば簡単に入力できるはずです)

そしてその入力が終わると「入力有無」欄にチェックがはいって入力済であることがわかります。
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さらに進むと、ひとつ前の画面に戻り、配当のところは「入力済み」(配当は総合課税を選択)ということがわかるようになります。
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次に進むと、収入の画面に戻り、総合課税の欄に先ほどの配当収入18万円が入っていることがわかります。

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また一方で、下段の「分離課税の所得」の「上場株式等に係る配当所得等」の欄には「総合課税の配当所得の入力有」と表示され、数字は入っていない状態になっています。要するに「ちゃんと総合課税にしたので、分離課税じゃないよ」ということを示しているわけです。
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次へ進むと「所得控除入力」画面です。
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花子さんの場合、社会保険料も特段支払っていませんし、入力できる項目はありません。
基礎控除である38万円(納税者全員が控除できる金額)だけが自動的に入力されています。
今回の花子さんの場合、実はこの基礎控除がたいへん重要な項目となっていますが、そこはまた後で説明いたします。

続いて税額控除欄ですが、今回、花子さんは今回、空欄で提出することにします。
2017-03-02 (11)

追加情報:
 花子さん、マニア向けにはここで外国税額控除の入力をしたいところなのですが、混乱する可能性が高いので、今回は申告しないことにします。なお、仮に申告しても本年は外国税額控除によって還付される税金はありません(お預けになります)
 マニアはマニアの記事を何回も読み直していただければ、上記の内容はマニアゆえに御理解いただけるものと思います。

そして次へ進みますと、なんと、計算結果確認で「還付される金額は 27,567円です。」と言われます。
これはすごい! 27,000円超ですよ、奥さん! 旦那に内緒でバッグ買えちゃいますよ、奥さん!

2017-03-02 (12)


さて、ではなぜこんなに多くの額が還付されるのでしょうか?
その理由のキモは先に述べた「基礎控除」にあります。

基礎控除はすべての納税者に与えられた「下駄」です。この金額までの所得は所得税を課税しないよ、という額なのです。
今回の花子さんの場合、配当所得は18万円でした。これは基礎控除の範囲内です。
すなわち、花子さんは(所得税については)38万円までの配当等(ブログやってたりしたら、それらの収入も全部含んでですが)は非課税でいいのです。※住民税については基礎控除額が33万円でその他細かい課税の仕組みがあります(今回は割愛します)

おっと、ここで花子さんにはさらに嬉しいお知らせがあります。
花子さん、配当の源泉徴収課税にあたり、国税である所得税だけでなく、地方税である住民税も支払っていました。実はこれも還付されます。奥さん!バッグ買った帰りに「いきなりステーキ」で1kgは食べられますよ!

確定申告書の第2表下部を見てみましょう。ここには住民税に関する項目があり、「配当割額控除額」という項目があります。この情報が国から各地方公共団体に行き、花子さんは既に納めている本来払う必要のない住民税が還付されるのです。
住民税


ただし、市役所の税務職員がボンクラでなければ、の話ですが。

ボケナス


本来、花子さんの配当の金額は基礎控除内ですので、配当に係る国内の課税は本来されないことになります。本来はされないはずなのに、証券会社が制度上、勝手に徴収してしまっていたわけです。今回還付される国税27,567円+地方税9,000円というのは、この源泉徴収された所得税+住民税の金額で、預けていた税金が返ってくる(還付)なわけです。
外国配当(妻)修正済

ただし! ここで大事なのは、この配当所得を確定申告をし「総合課税にする」(この事例では申告分離でも確定申告をすれば全額還付になるのですがそうなる理由の詳細は解説が大変なので今回は割愛)ということです。

配当の課税方法としては最初に述べたように、
・申告不要制度を利用
・確定申告して申告分離を選択
・確定申告して総合課税を選択

とありましたが、上記2種は計算を「分離」して課税してしまうため、花子さんのように所得のない方、あるいは所得があり課税されているが、所得が少ないので税率が低い方(税率5%で収まっている方)は総合課税にしたほうが、所得税+住民税の計算の上ではお得になります。

分離課税の場合: 所得税+復興特別税=15.315% + 住民税5% = 合計20.315%
総合課税(基礎控除範囲内の場合): 所得税+復興特別税:0 + 住民税 0 = 
総合課税(所得税率5%の場合) : 所得税+復興特別税:5.105% + 住民税10% = 合計15.105%
このように、比較的収入の少ない方については、総合課税を選択することにより、配当について非課税で全額を受け取る(もしくは課税が少なくなる)ことができるのです!
ということは、いろいろな事情で低収入の方については、これを利用することで高収入の方と比べて有利に配当を受け取ることができるわけです!

(謝辞)申告分離を選択してもこの事例では全額税還付になるよと教えていただいた方に感謝します。


ここで配当さんのご家庭のような大黒柱と専業主婦(夫)のご家庭の場合の投資戦略として、

大黒柱: 分配金の出ない投資信託で長期投資や成長は予想されるが無配が続きそうなグロース株
      (無分配の投資信託の配当相当額は基準価額に上乗せされており、いずれ売却時に課税されることになります)
(所得のない)配偶者: 高配当株(ブルーチップ)を保有して配当を満額受け取る

というのは悪くない戦略だと私は考えます。

※大事な注意点

今回のお話は、国税(所得税)と地方税(住民税)に関してのみお話いたしました。
総合課税で配当所得を申告することで確かに税金面では還付が受けられるのですが、その他の社会保険制度(健保等)、会社の扶養補助制度(扶養手当、住宅手当等)については、課税額ではなく、配偶者の収入(所得ではないことに注意!)で判断することもあります
これらの制度は組合次第、会社次第の独自ルールで運営されていますので、配偶者の方が確定申告をすることでこの独自ルールに引っかかり、手当等の減額の形で「結果的に損をする」可能性もあります。
このあたりは、扶養者(この事例の場合は御主人の配当次郎さん)がお勤めの会社や市区役所・町役場等、社会保険を所掌する部署で個別にお聞きになることを強く推奨いたします。

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