これまでに、一般口座で株式譲渡益がある場合の確定申告書の作成法について説明してまいりました。
今回は応用編マニア編として、外国株式を保有し、配当を得た方の「外国税額控除」について説明していきたいと思います。これをご覧いただければ、確定申告における外国税額控除の書き方がおわかりいただけることと思います。
(※当記事は平成29年確定申告向けにアップデートされた記事です)

外国税額控除の入力の前にやるべき大事なこと

まずはモデルケースの題材となってくださる方にご登場いただきましょう。
今回ご登場いただくのは「配当次郎」さん。
源泉徴収票は以下の通りです。
源泉徴収票_H29_配当次郎3

え、どっかで見たことある源泉徴収票ですって?
は、はい。ごめんなさいごめんなさい。前回ご登場いただいた「妻帯太郎」さんと氏名、住所、勤務先違いなだけで金額一緒です。(まぁ要するに手抜きです)

今回ご登場の配当次郎さん、昨年の株式関連の取引状況は以下の通りです。

  • F1のドライバーも着用しているヘルメットを製造販売しており、米国での販売シェア90%を占める超有名企業、「プロテクター・アンド・ガクブル」株を1000株保有(米国株)
  • 昨年株式の売却は行っていない
  • 「プロテクター・アンド・ガクブル」からは計2回、下記の配当を受領
  配当:2017/4/1  1株あたり50セント
     2017/10/1 1株当たり60セント
  • 証券会社から、下記の「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」が送られてきている
という設定でお話させていただきたいと思います。

外国配当H29A
  ↑4月1日入金された「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」

外国配当H29B
  ↑10月1日入金された「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」


まずはこれまでの確定申告書作製サイトの入力方法に従い、配当太郎さんの給与所得等について入力してください。
今回は省略いたします。詳しくは弊ブログ「確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その3続編) 株式譲渡益の確定申告をやってみよう!(平成28年分更新版)」をご覧ください。
※↑平成28年版のブログ記事のままであることお断り申し上げます

まずは配当所得の申告を

外国税額控除の項目を記入する前に、まずやらねばならない大事な入力項目があります
それは、既に源泉徴収されているこの配当の内容をきっちりと確定申告書に載せることです。

配当に関する3種類の納税方法

配当を受領した場合の税務処理は以下の三通りあります。
  1. 証券会社経由で源泉徴収されているので、申告不要の制度を利用して課税関係を終了させる。
  2. 証券会社経由で源泉徴収されているが、敢えて「総合課税の確定申告」をする。
  3. 証券会社経由で源泉徴収されているが、敢えて「申告分離の確定申告」をする。

(1)は株式譲渡益がなかったり、医療費控除などがなく、確定申告をしないでいい方には便利な方法です。
株式の配当を得ていても、この制度のおかげでわざわざ確定申告しなくてすむわけです。

しかし、今回、外国税額控除を実施しようとしている方については、この方法ではダメなのです。問題の原因は「課税関係が終了」という扱いに行き着くのですが、仮に確定申告書に(2)または(3)の方法で確定申告することを明示しないと、納税者は(1)の申告不要制度を利用したとみなされ、税務当局はその配当については「課税関係終了」すなわち、その配当はそもそもなかったのだ、と受け取ります。

これはあとで詳しくお話しますが、そもそも外国税額控除を受けるためには、外国と国内で二重課税されており、かつ、国外での所得(今回の事例の場合、外国株からの配当)があることが必要です。

この事例で仮に(1)の制度を利用したとみなされると、外国株からの配当がそもそもない=国外で得た所得がない、ということになり、後者の条件を満たさなくなってしまいます。

従って、外国税額控除の項目入力前に、所得の項目で、この外国株からの配当を配当所得として申告する(入力する)必要があります。

では具体的に入力方法を見ていきましょう。

配当を入力する場所は「収入金額・所得金額入力」画面の「配当所得」の部分です。既に配当さんの給与所得は入力済みです。「入力する」を押します。
2018-01-15 (0)


すると、「金融・証券税制(入力項目の選択)」が現れます。
(※平成29年版サイト表示対応)
2018-01-15 (1)

まず前提として、配当さんは「一般口座」を利用していることとします。
その上で、配当所得について確定申告することとし、総合課税か申告分離課税かを選択します。
※特定口座利用の場合は「2 株式等の売却・配当・利子等の入力」で入力します。

一般的に、所得税は累進課税制度をとっているので、高所得の方は源泉分離課税を選択したほうがお得で、無収入の方などは総合課税を選択したほうがお得な場合が多いのですが、このあたり、住民税や社会保険関係の所得認定が様々な計算式で成り立っていることから、個々の事例でどちらを選ぶといいのかの損得は本当に事例次第です。
今回は配当さん自身の損得は別として、「申告分離課税」で申告書を作成してみたいと思います。
2018-01-15 (3)
「申告分離課税」のボタンを押します。選択すると↑の絵のように緑色に変わり選択していることがわかります。

申告分離課税での入力画面「金融・証券税制(源泉徴収口座以外の配当)」です。
再確認ですが、ここでは特定口座ではなく、一般口座を利用しているものとして記述しています。
2018-01-15 (5)

ここで「個別に配当等を入力(訂正等)する。」を押します。すると、個別の配当を入力するフォームが出現します。
2018-01-15 (6)
上部にわかりやすく 「申告分離課税」 であることが明記されています。

ここでは配当を1件目、2件目と書き加えて表を作っていくことができるのですが、おそらく皆さん、多くの会社から複数の配当を受領していると思われますので、ここは明細票を別紙(下に示すようなExcelの表)にすることにし、ここでは最終結果だけを1件だけ入力するようにします。もちろん、別紙でこのExcel表を添付します。

H29_配当次郎_Excel表

このExcel表はあとで出てくる外国税額控除の計算の際にも共用できるようになっておりますので、まずはこの表を別途作成しましょう。
作成には証券会社から送られてくる「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」(かそれに類似した名前の報告書)を転記すれば完成します。

配当に関する収入金額には、米国で10%源泉徴収された後、国内で課税前の配当総額を記入し、源泉徴収税額の欄には既に配当から源泉徴収されている国税と地方税の総額を記入します。(Excel表から簡単に転記できるはずです)

数字を入力すると下段に1項目目として反映されます。ここでは1年分まとめたものを1件(別紙あり
としていますが、銘柄ごとに項目を足していくことも可能です。
2018-01-15 (8)


これで入力を終了し、次へ進みます。

すると「金融・証券税制(源泉徴収口座以外の配当)」に戻り、
「個別に配当等を入力(訂正等)する。」の訂正・削除 ボタンの右の欄、「入力有無」欄にチェックマークが入っており、配当金額を入力したことが確認できます。
2018-01-15 (9)


次へすすむと、配当の入力部分である「配当等の支払い通知書」などの内容を訂正・削除となっていており、その下の項目(利子や株式の譲渡益の入力箇所)では「~を入力する」(要するに未入力)という差があることがわかります。
利子や株式の譲渡益を申告する場合(源泉徴収されている場合は申告をしないことも選択可能ですが)はこれらのボタンを押してそれぞれの項目を入力します。
今回はこれらの項目は入力しません。

2018-01-15 (10)

さらに先へ進むと、「総合課税の所得」の「配当所得」の欄に「分離課税の配当所得の入力有」と表示され、「配当は総合課税にしなかったよ!」ということがわかります。
2018-01-15 (13)
さらに下の「分離課税の所得」の欄には先ほどの配当所得(申告分離課税)として109,800円が計上されていることがわかります。
※総合課税を選択した場合は上部の「配当所得」の欄に数字が入ってきます

これで外国税額控除の準備段階である配当の申告に関する入力が終わりました。続いて大本命の外国税額控除の入力に移りましょう!

閑話休題 ~知らなくてもいいムダ知識~

先程までに配当所得について申告分離課税を選択し、申告書を作成しました。
作成された最終成果物の申告書の一部を見てみましょう。

2017-02-16 (16)

所得の内訳として、給与所得と配当所得の両方が記載されています。
申告したことで所得が増えたことになります。
さてここで、今までまったく話題にしなかった住民税について余談として考えてみたいと思います。
住民税についても申告不要を選択しなかったことから、地方公共団体に上記配当所得があったことが税務署経由で情報が渡ることになります。
そうすると、住民税が増えちゃう? あれ、もう源泉徴収で徴収済みだよね? と思うのは当然かと思います。この問題を解消するのが以下の項目です。

2017-02-16 (17)

「配当割控除額」、これは地方公共団体に対し、この人は配当所得分として地方税をこんだけ源泉徴収されてますよ(納付済ですよ)、という情報を渡すための項目です。

この情報があるの配当について二重課税されることはありませんので御安心ください。

外国税額控除の情報入力

さてここからが本題、外国税額控除の入力です。
控除の入力は2種類あります。まず1つ目が社会保険料控除や生命保険料控除等の「所得控除」で、収入から「控除」することで課税所得額を減らすことができます。この計算のあとで所得税を計算することになります。所得税率を掛ける前ですので、減額される所得税は 控除額×所得税率 ということになり、控除額の一部が減額されるだけになります。
もう一つが「税額控除」で、これは所得税を算出後、税額そのものを控除するもので、控除額がまるまる還付額となります。

外国税額控除は後者になり、計算された控除額(後述しますがこの計算式がややこしいのです)還付されます。

そもそも外国税額控除とは、外国からの所得について、現地の仕組みとして源泉徴収で課税され、さらに国内で課税された場合(個人投資家の場合、外国株の配当のみが該当でしょうか)、国内外で二重課税になってしまうことから、その救済策として「外国で徴収された税相当額について、特別に国内の税金から還付してあげるよ(ただしいろんな条件あり)という趣旨の制度(ざっくりした言い方です)です。
実はこの(ただしいろんな条件あり)が曲者で、ちょっと工夫しないと外国に納税した金額満額は返ってきません。これも実例を出してあとで見てみたいと思います。

さて、確定申告書作成サイトの外国税額控除の入力は、所得控除入力後、その先の「税額控除・その他の項目の入力」内にあります。
2018-01-15 (15)


税額控除の項目の一番下に「外国税額控除」の入力場所があります。「入力する」を押してください。
すると、「外国税額控除の入力」の入力項目が出てきます。
2018-01-15 (16)
選択肢は2つあり、
 ・外国税額控除額の計算がお済みでない方
 ・外国税額控除額の計算がお済みの方
とあり、後者は税理士さんや公認会計士さん等に外国税額控除の複雑な計算をしてもらい、明細書を別途作成した方が対象です(下図参照)
2018-01-15 (17)

今回は自分でフォームにデータを入力し、複雑な計算を自動でやってくれる前者を選択します。
入力フォームは↓のようになっています。
2018-01-15 (18)


ここに外国でどのように税金を納めたのか、といった内容を記入します。
この明細書の作製フォームを見ると、配当を貰ったたびに1回毎に入力するように見えます。
これは先程の配当所得の記入と同じで、Excel表で別紙とし、最終結果1件だけを入力するようにします。
別紙明細書はさきほどのものが流用できます。

H29_配当次郎_Excel表

提出の際にはこのExcelの一覧表と証券会社から送られてきた「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書全部を別添で提出します。
外国配当H29B

下記のように入力していきます。
  • 国名:米国
  • 所得の種類:配当 ※米国ETFの分配金も配当で通じると思います
  • 税種目: 空欄
  • 納付確定日:私は、1年まとめてなので「年末の日付」を記入しています
  • 納付日:私は、1年まとめてなので「年末の日付」を記入しています 
  • 源泉・申告:源泉 (で既に外国に徴収されているという意味)
  • 所得の計算期間: 1年まとめてなので「年始~年末の日付」を記入しています
  • 相手国での課税標準:米国での課税前の額面の配当額(ドル建てと円建て)
  • 左に係る外国所得税額:米国で源泉徴収された税額(ドル建てと円建て)
 ※前述のExcelの一覧表で数字は計算できているはずです

2018-01-15 (20)


また、最後に「2 調整国外所得の計算」の入力項目があります。

調整国外所得の金額を入力してください。とありますので、二カ国で税を引かれる前の大元の配当総額である122,000円を転記します。
※平成28年まではここが「国外所得」という用語でしたが、平成29年からは「調整」の文字が追加されています。その差を現在調べておりますが、少なくとも個人投資家が米国株の配当にかかる外国税額控除を申告する場合は大きな差はなく、ここには配当総額(米国での税引き前円価換算)を入力すれば良いようです。
今後、理解が進みましたら別記事を作成してご紹介するかもしれません。

一応、公式サイトのヘルプを見ると、こんな説明が出ます。
2018-01-15 (21)
実際問題、読んでも良くわかりません(苦笑)。わからないので「解決しなかった」をクリックしてみました。その結果がこちら↓。
2018-01-15 (22)

お、おう(引き攣った笑い)

そしてその下に、こちらも平成29年申告分から出てきた入力項目があります。
それが「あなたは政令指定都市に住んでいますか?」という入力項目です。
2018-01-15 (20B)

これは、外国税額控除が国税だけで還付しきれなかったとき、地方税(都道府県民税+市町村税)まで還付の領域が広がるのですが(後述)、この地方税が政令指定都市の場合と一般市町村の場合で分配率が異なるようになった(平成29年税制改正からだそうです)ことから入力が必要になったものです。
このあたりの話は非常にマニアックな話ですので割愛し、今後機会があれば記事にしたいと思います。

一般の投資家の方は「正しく選択すれば、サイトが難しい計算自動的にやってくれる」ことだけ覚えておけば十分です。

そして、その下では「3 外国税額控除の繰越控除余裕額又は繰越控除限度額の計算」とありますが、今回の配当さんは初めての外国税額控除の入力なので空欄で結構です。
ただし、2回目以降の場合、ここに数字を入れることが重要になってきます。「外国税額控除の繰越控除余裕額」「繰越控除限度額」とかいう用語がそもそもわかりにくいのですが、ここは翌年以降大事になってくる数字だということを覚えておいて損はありません。(最後のほうでこの繰越については触れます)
2018-01-15 (23)

さて、ここで入力は終了です。
戻りますと、外国税額控除額が入力されています。配当さんの場合、3,028円と入力されています。
2018-01-15 (24)

ここであれっ? と思った方は鋭いです。振り返ってみましょう。配当さんが米国で源泉徴収された10%の源泉徴収額は合計110ドル、ざっくり為替レート計算しても11,000円程度は取られているはず
なのに外国税額控除額はたったの3,028円。外国で払った分特別に返してくれるんじゃなかったの? と思うのですが、ここで出てくるのが外国税額控除の計算式です。
非常に面倒くさい計算式になっているのですが、確定申告書作成サイトでは全部自動で計算してくれています。
ここで、先回りして最終成果物の「確定申告書(PDF版)」の外国税額控除の部分を先に見てみましょう。

完成した確定申告書を先に見てみよう

1 外国所得税額の内訳

の部分では、先ほど記入したとおり、1年間合計の外国での課税標準額と外国で源泉徴収された額がそのまま記載されています。ここは特段問題ありません。
2018-01-15 (32)



2 本年分の雑所得の総収入金額に算出すべき金額の計算

の欄は空欄です。これは昨年も外国税額控除をやっていて、いろんな繰越(後述します)がある場合に記載されています。今回の配当さんの場合は空欄でOK。

2018-01-15

そして一番のキモがこの下です。

3 所得税の控除限度額の計算
4 復興特別所得税の控除限度額の計算

2018-01-15 (33)


ここを見ていただきますと、まず①で配当さんがこれまで年末調整までに支払った所得税等と外国株の配当の源泉徴収額の合計が書かれています。
(株式の売却益等があった場合はその申告分離課税分も加わっているはずですが今回の配当さんの場合はそれがないので源泉徴収額そのものが記載されている)
次いで②は所得の総額。今回申告分離課税を選択した配当所得も加わっています。また、ここで注意が必要なのは、この所得額は社会保険料控除等を控除する前の金額であるということです。(確定申告書作成サイトでは自動的に正しい数字を計算して表示してくれていますので、税制を研究しているマニア以外の一般投資家の方は気にしなくてオッケー)

そして③が調整国外所得総額です。先ほど、外国税額控除の入力時に、外国から得た配当の大元の配当額を記入しましたが、その数字です。

そして最後の計算、④がキモです。

控除限度額④(日本国が温情で特別に還付してくれる額)は ① × ( ③ ÷ ② ) という式だと決められています。

この式をじっくり見てみると、④を増やすにはいくつかの方法があることがわかります。

 (1) ①の額を増やすこと
 (2) ③の額を増やすこと
 (3) ②の額を減らすこと

です。このうち、手っ取り早く④を増やす方法は (2) の調整国外所得総額を増やすことです。
配当さんの場合、この国外所得額の数値が小さい(かつそもそも収めている所得税額①が少ない)ために、計算式上、控除額が3000円程度と小さく抑えられてしまっているのです。
2018-01-15 (25)


そしてこのあと、マイナンバー等の入力をし、最後までやると、このように「外国税額控除関係」の書類も自動作成されます。
2017-02-11 (12)

そして最終成果物としての確定申告書も下記のように作成されます。
2018-01-15 (29)
さて、これでひととおり確定申告書の作成はできましたが、残念ながら配当さんは少額の還付しか受けられませんでした。なぜでしょうか? すこし仮の事例で考えてみたいと思います。

二重課税された米国課税分が満額還付されなかった理由は?

ここで「たとえば」の話として、配当さんの勤務先は「みらい商事」なる純和風な社名にも関わらず、なぜかグローバル企業で、配当さん、実は給与300万円のうち、120万円を外国所得として受け取り、180万円を国内所得として受け取っていた、と仮定します。(実際は会社の仕組みとしてありえない話なのですが、国外所得が多かったらどうなるかの例としてそういう設定にさせていただきます)
するとどうでしょう。
2017-02-16 (22B)


③の国外所得が122,000円(配当分)+120万円、で合計1,332,000円と入力されました。
すると、さきほど3,000円程度とシブチンだった④の金額(控除限度額)が32,141円と計算されます。
2017-02-16 (25)


配当さんが米国株配当として米国で源泉徴収された金額は110ドル(円貨で12,200円)でしたので、控除限度額が源泉徴収額を超えています。
「控除限度額」があくまで「限度」なので、実際に還付される金額は実際に支払った外国税分まで、すなわち32,141円還付ではなく12,200円の還付(外国税額控除額)となるわけです。

これは米国で源泉徴収された満額が戻ってきたということを意味します。
2017-02-11 (21)

2017-02-11 (24)

このように、外国税額控除の金額は個人の所得や国外所得の金額で大きく変わってしまうことを覚えておいてください。特に、国内で所得税を納めていない年金生活者の方、専業主婦の方などは、計算式上①の納税額がゼロですので、外国税額控除額が計上できません。

また、今回、配当さんの場合は国外所得が配当分しかなく、少なかったたため、満額の還付が受けられなかったことになります。

外国税額控除の効用は所得税だけではない!

しかし、しかし、配当さんには嬉しいお知らせが2つあります。
まず1つ目は、配当さんは控除限度額の関係で所得税約3,000円の還付しか受けられませんでしたが、実は控除限度額は住民税にもあり、住民税がいくばくかの額が減額されます。(確定申告後の6月の住民税決定時に計算されます)
2017-02-16 (21)地方税

そしてもう1つが、今回所得税でも住民税でも還付してもらい損ねた、源泉徴収済満額12,200円と今回の外国税額控除額(約4000円)の差額は「お預け」になっていて、実は翌年以降、還付してもらえる可能性があるのです! 上図の右下部分の8,284円がその「お預け」の部分です。

この数字を翌年の確定申告の際に記入し、翌年以降に先ほどの④の控除限度額に大きな数字が来た場合、このお預け分が外国税額控除額として復活し、その年に還付されるのです!
ということで、配当さん、今年は満額の還付は受けられませんでしたが、お預けが8千数百円あります。
来年以降、国外所得を増やすことでこれを取り戻してみてはいかがでしょうか?

ところで「調整国外所得」って具体的に何よ?

さて、では何が調整国外所得にあたるのかが問題になります。実は、平成28年までの外国税額控除の申告にあたって、国税庁の公式ページ(タックスアンサー)の外国税額控除に関する記述が極めて内容が乏しく、いまひとつ良くわからない、といった状況でした。
ところがところが、この項目が昨年4月以降、内容が極めて充実し、何が調整国外所得にあたるのかが明示されるようになりました。

これによりますと、我々一般個人投資家が国外所得として計上できるのは、
(2) その他の国外源泉所得
 次の国外源泉所得をいい、その国外源泉所得に係る所得のみについて所得税を課するものとした場合に課税標準となるべきその年分の総所得金額等の合計額に相当する金額とされます。なお、租税条約の適用を受ける居住者について、その租税条約において異なる定めがある場合における国外源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めることとされています。
①  国外にある資産の運用又は保有により生ずる所得
②  国外にある資産の譲渡により生ずる所得として一定もの
⑤  所得税法第23条第1項(利子所得)に規定する利子等及びこれに相当するもののうち次のもの
 イ 外国の国債若しくは地方債又は外国法人の発行する債券の利子
 ロ 国外にある営業所、事務所その他これらに準ずるものに預け入れられた預金等の利子
 ハ 国外にある営業所、事務所その他これらに準ずるものに信託された合同運用信託若しくはこれに相当する信託、公社債投資信託又は公募公社債等運用投資信託若しくはこれに相当する信託の収益の分配
⑥ 所得税法第24条第1項(配当所得)に規定する配当等及びこれに相当するもののうち次のもの
 イ 外国法人から受ける所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息
 ロ 国外にある営業所に信託された投資信託(公社債投資信託並びに公募公社債等運用投資信託及びこれに相当する信託を除きます。)又は特受益証券発行信託又はこれに相当する信託の収益の分配

この青字で示したあたりになろうかと思います。
具体的には、外国株式の配当、外国債券の利金(外貨建MMFの利金を含むと考えられます)といったところでしょうか。

この他に国外所得と認められる所得はこと細かにタックスアンサーに記載されていますので、必要があればこちらもご参照ください。(外国で働いた際の給与なんかも当然ここに含まれています)

ご参考:国税庁タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除


国外所得が多すぎたときはどうなるの?

さらに追加でまた面倒なお話をいたしますが、先ほどの「一部分を外国の給与で貰っていた場合」の例のように、仮に国外所得が大きく、控除限度額>外国税額控除額であった場合(要するに枠が余った場合)はこの「枠」を繰り越すことができ、翌年外国所得額が少なかった場合でもこの枠を有効利用することができます。
2017-02-16 (26)


ということで、非常にマニアックな外国税額控除の計算と申告書の作成、御参考になりましたでしょうか?

なお、くどいようですが上記の解釈は私個人が法令、通達等を常識的に解釈して私自身が申告に利用している方法を記述したものであり、税務当局がこの方法が正当である、と保証したわけではありません

また、読者の皆様の個別の事例については私が何かしらのコメントをすることは法令上できませんので、無資格の一般人ではなく、税理士さんや公認会計士さんにお尋ねいただくようお願い申し上げます。個人的にはにわかで一般論の解釈している私のような素人ブロガーではなく、信頼できる税理士さんに委ねるのが適切だと思います。

謝辞:
本記事執筆にあたり、当初記述した内容に当方の認識違い等があり、適切な数字になっていなかった箇所がありました。御指摘いただいた方に感謝申し上げます。
また、貴重な経験の情報を御提供いただき、配当所得の申告が必須であることを教えていただいた方にも深く感謝申し上げます。


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