これまでに、一般口座で株式譲渡益がある場合の確定申告書の作成法(書き方)について説明してまいりました。
今回は応用編、マニア編として、外国株式を保有し、配当を得た方の「外国税額控除」について説明していきたいと思います。これをご覧いただければ、確定申告における外国税額控除の書き方がおわかりいただけることと思います。
まずはモデルケースの題材となってくださる方にご登場いただきましょう。
今回ご登場いただくのは「配当次郎」さん。
え、どっかで見たことある源泉徴収票ですって?
は、はい。ごめんなさいごめんなさい。前回ご登場いただいた「妻帯太郎」さんと氏名、住所、勤務先違いなだけで金額一緒です。(まぁ要するに手抜きです)
今回ご登場の配当次郎さん、昨年の株式関連の取引状況は以下の通りです。

↑4月1日入金された「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」

↑10月1日入金された「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」
まずはこれまでの確定申告書作製サイトの入力方法に従い、配当太郎さんの給与所得等について入力してください。
今回は省略いたします。詳しくは弊ブログ「確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その3続編) 株式譲渡益の確定申告をやってみよう!(平成28年分更新版)」をご覧ください。
※↑平成28年版のブログ記事のままであることお断り申し上げます
外国税額控除の項目を記入する前に、まずやらねばならない大事な入力項目があります。
それは、既に源泉徴収されているこの配当の内容をきっちりと確定申告書に載せることです。
(1)は株式譲渡益がなかったり、医療費控除などがなく、確定申告をしないでいい方には便利な方法です。
株式の配当を得ていても、この制度のおかげでわざわざ確定申告しなくてすむわけです。
しかし、今回、外国税額控除を実施しようとしている方については、この方法ではダメなのです。問題の原因は「課税関係が終了」という扱いに行き着くのですが、仮に確定申告書に(2)または(3)の方法で確定申告することを明示しないと、納税者は(1)の申告不要制度を利用したとみなされ、税務当局はその配当については「課税関係終了」すなわち、その配当はそもそもなかったのだ、と受け取ります。
これはあとで詳しくお話しますが、そもそも外国税額控除を受けるためには、外国と国内で二重課税されており、かつ、国外での所得(今回の事例の場合、外国株からの配当)があることが必要です。
この事例で仮に(1)の制度を利用したとみなされると、外国株からの配当がそもそもない=国外で得た所得がない、ということになり、後者の条件を満たさなくなってしまいます。
従って、外国税額控除の項目入力前に、所得の項目で、この外国株からの配当を配当所得として申告する(入力する)必要があります。
では具体的に入力方法を見ていきましょう。
配当を入力する場所は「収入金額・所得金額入力」画面の「配当所得」の部分です。既に配当さんの給与所得は入力済みです。「入力する」を押します。

すると、「金融・証券税制(入力項目の選択)」が現れます。
(※平成29年版サイト表示対応)

まず前提として、配当さんは「一般口座」を利用していることとします。
その上で、配当所得について確定申告することとし、総合課税か申告分離課税かを選択します。
※特定口座利用の場合は「2 株式等の売却・配当・利子等の入力」で入力します。
一般的に、所得税は累進課税制度をとっているので、高所得の方は分離課税を選択したほうがお得で、無収入の方などは総合課税を選択したほうがお得な場合が多いのですが、このあたり、住民税や社会保険関係の所得認定が様々な計算式で成り立っていることから、個々の事例でどちらを選ぶといいのかの損得は本当に事例次第です。
今回は配当さん自身の損得は別として、「申告分離課税」で申告書を作成してみたいと思います。

「申告分離課税」のボタンを押します。選択すると↑の絵のように緑色に変わり選択していることがわかります。
画面は申告分離課税での入力画面「金融・証券税制(源泉徴収口座以外の配当)」です。

ここで「個別に配当等を入力(訂正等)する。」を押します。すると、個別の配当を入力するフォームが出現します。

上部にわかりやすく 「申告分離課税」 であることが明記されています。

このExcel表はあとで出てくる外国税額控除の計算の際にも共用できるようになっておりますので、まずはこの表を別途作成しましょう。
作成には証券会社から送られてくる「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」(かそれに類似した名前の報告書)を転記すれば完成します。
配当に関する収入金額には、米国で10%源泉徴収された後、国内で課税前の配当総額を記入し、源泉徴収税額の欄には既に配当から源泉徴収されている国税と地方税の総額を記入します。(Excel表から簡単に転記できるはずです)
数字を入力すると下段に1項目目として反映されます。ここでは1年分まとめたものを1件(別紙あり
としていますが、銘柄ごとに項目を足していくことも可能です。

これで入力を終了し、次へ進みます。
すると「金融・証券税制(源泉徴収口座以外の配当)」に戻り、
「個別に配当等を入力(訂正等)する。」の訂正・削除 ボタンの右の欄、「入力有無」欄にチェックマークが入っており、配当金額を入力したことが確認できます。

利子や株式の譲渡益を申告する場合(源泉徴収されている場合は申告をしないことも選択可能ですが)はこれらのボタンを押してそれぞれの項目を入力します。
今回はこれらの項目は入力しません。

さらに先へ進むと、「総合課税の所得」の「配当所得」の欄に「分離課税の配当所得の入力有」と表示され、「配当は総合課税にしなかったよ!」ということがわかります。

さらに下の「分離課税の所得」の欄には先ほどの配当所得(申告分離課税)として109,800円が計上されていることがわかります。
※総合課税を選択した場合は上部の「配当所得」の欄に数字が入ってきます
これで外国税額控除の準備段階である配当の申告に関する入力が終わりました。続いて大本命の外国税額控除の入力に移りましょう!
さてここからが本題、外国税額控除の入力です。
控除の入力は2種類あります。まず1つ目が社会保険料控除や生命保険料控除等の「所得控除」で、収入から「控除」することで課税所得額を減らすことができます。この計算のあとで所得税を計算することになります。所得税率を掛ける前ですので、減額される所得税は 控除額×所得税率 ということになり、控除額の一部が減額されるだけになります。
もう一つが「税額控除」で、これは所得税を算出後、税額そのものを控除するもので、控除額がまるまる還付額となります。
外国税額控除は後者になり、計算された控除額(後述しますがこの計算式がややこしいのです)還付されます。
そもそも外国税額控除とは、外国からの所得について、現地の仕組みとして源泉徴収で課税され、さらに国内で課税された場合(個人投資家の場合、外国株の配当のみが該当でしょうか)、国内外で二重課税になってしまうことから、その救済策として「外国で徴収された税相当額について、特別に国内の税金から還付してあげるよ(ただしいろんな条件あり)」という趣旨の制度(ざっくりした言い方です)です。
実はこの(ただしいろんな条件あり)が曲者で、ちょっと工夫しないと外国に納税した金額満額は返ってきません。これも実例を出してあとで見てみたいと思います。
さて、確定申告書作成サイトの外国税額控除の入力は、所得控除入力後、その先の「税額控除・その他の項目の入力」内にあります。

税額控除の項目の一番下に「外国税額控除」の入力場所があります。「入力する」を押してください。
すると、「外国税額控除の入力」の入力項目が出てきます。

選択肢は2つあり、
・外国税額控除額の計算がお済みでない方
・外国税額控除額の計算がお済みの方
とあり、後者は税理士さんや公認会計士さん等に外国税額控除の複雑な計算をしてもらい、明細書を別途作成した方が対象です(下図参照)

今回は自分でフォームにデータを入力し、複雑な計算を自動でやってくれる前者を選択します。
入力フォームは↓のようになっています。

ここに外国でどのように税金を納めたのか、といった内容を記入します。
この明細書の作製フォームを見ると、配当を貰ったたびに1回毎に入力するように見えます。
これは先程の配当所得の記入と同じで、Excel表で別紙とし、最終結果1件だけを入力するようにします。
別紙明細書はさきほどのものが流用できます。
※明細書が2017年となっていますが2018年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。

提出の際にはこのExcelの一覧表と証券会社から送られてきた「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」全部を別添で提出します。

下記のように入力していきます。

※フォームへの入力年が平成29年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
また、最後に「2 調整国外所得の計算」の入力項目があります。
調整国外所得の金額を入力してください。とありますので、二カ国で税を引かれる前の大元の配当総額である122,000円を転記します。
※平成28年まではここが「国外所得」という用語でしたが、平成29年からは「調整」の文字が追加されています。その差を現在調べておりますが、少なくとも個人投資家が米国株の配当にかかる外国税額控除を申告する場合は大きな差はなく、ここには配当総額(米国での税引き前円価換算)を入力すれば良いようです。
今後、理解が進みましたら別記事を作成してご紹介するかもしれません。
一応、公式サイトのヘルプを見ると、こんな説明が出ます。

実際問題、読んでも良くわかりません(苦笑)。わからないので「解決しなかった」をクリックしてみました。その結果がこちら↓。

お、おう(引き攣った笑い)
そしてその下に、こちらも平成29年申告分から出てきた入力項目があります。
これは、外国税額控除が国税だけで還付しきれなかったとき、地方税(都道府県民税+市町村税)まで還付の領域が広がるのですが(後述)、この地方税が政令指定都市の場合と一般市町村の場合で分配率が異なるようになった(平成29年税制改正からだそうです)ことから入力が必要になったものです。
このあたりの話は非常にマニアックな話ですので割愛し、今後機会があれば記事にしたいと思います。
一般の投資家の方は「正しく選択すれば、サイトが難しい計算自動的にやってくれる」ことだけ覚えておけば十分です。
そして、その下では「3 外国税額控除の繰越控除余裕額又は繰越控除限度額の計算」とありますが、今回の配当さんは初めての外国税額控除の入力なので空欄で結構です。
ただし、2回目以降の場合、ここに数字を入れることが重要になってきます。「外国税額控除の繰越控除余裕額」「繰越控除限度額」とかいう用語がそもそもわかりにくいのですが、ここは翌年以降大事になってくる数字だということを覚えておいて損はありません。(最後のほうでこの繰越については触れます)
さて、ここで入力は終了です。
戻りますと、外国税額控除額が入力されています。配当さんの場合、3,028円と入力されています。

ここであれっ? と思った方は鋭いです。振り返ってみましょう。配当さんが米国で源泉徴収された10%の源泉徴収額は合計110ドル、ざっくり為替レート計算しても11,000円程度は取られているはず。
なのに外国税額控除額はたったの3,028円。外国で払った分特別に返してくれるんじゃなかったの? と思うのですが、ここで出てくるのが外国税額控除の計算式です。
非常に面倒くさい計算式になっているのですが、確定申告書作成サイトでは全部自動で計算してくれています。
ここで、先回りして最終成果物の「確定申告書(PDF版)」の外国税額控除の部分を先に見てみましょう。
の部分では、先ほど記入したとおり、1年間合計の外国での課税標準額と外国で源泉徴収された額がそのまま記載されています。ここは特段問題ありません。

※上記明細書については平成29年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
2 本年分の雑所得の総収入金額に算出すべき金額の計算
の欄は空欄です。これは昨年も外国税額控除をやっていて、いろんな繰越(後述します)がある場合に記載されています。今回の配当さんの場合は空欄でOK。

そして一番のキモがこの下です。
3 所得税の控除限度額の計算
4 復興特別所得税の控除限度額の計算

ここを見ていただきますと、まず①で配当さんがこれまで年末調整までに支払った所得税等と外国株の配当の源泉徴収額の合計が書かれています。
(株式の売却益等があった場合はその申告分離課税分も加わっているはずですが今回の配当さんの場合はそれがないので源泉徴収額そのものが記載されている)
次いで②は所得の総額。今回申告分離課税を選択した配当所得も加わっています。また、ここで注意が必要なのは、この所得額は社会保険料控除等を控除する前の金額であるということです。(確定申告書作成サイトでは自動的に正しい数字を計算して表示してくれていますので、税制を研究しているマニア以外の一般投資家の方は気にしなくてオッケー)
そして③が調整国外所得総額です。先ほど、外国税額控除の入力時に、外国から得た配当の大元の配当額を記入しましたが、その数字です。
そして最後の計算、④がキモです。
控除限度額④(日本国が温情で特別に還付してくれる額)は ① × ( ③ ÷ ② ) という式だと決められています。
この式をじっくり見てみると、④を増やすにはいくつかの方法があることがわかります。
(1) ①の額を増やすこと
(2) ③の額を増やすこと
(3) ②の額を減らすこと
です。このうち、手っ取り早く④を増やす方法は (2) の調整国外所得総額を増やすことです。
配当さんの場合、この国外所得額の数値が小さい(かつそもそも収めている所得税額①が少ない)ために、計算式上、控除額が3000円程度と小さく抑えられてしまっているのです。

そしてこのあと、マイナンバー等の入力をし、最後までやると、このように「外国税額控除関係」の書類も自動作成されます。

そして最終成果物としての確定申告書も下記のように作成されます。

するとどうでしょう。

※上記明細書については平成28年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
③の国外所得が122,000円(配当分)+120万円、で合計1,332,000円と入力されました。
すると、さきほど3,000円程度とシブチンだった④の金額(控除限度額)が32,141円と計算されます。

配当さんが米国株配当として米国で源泉徴収された金額は110ドル(円貨で12,200円)でしたので、控除限度額が源泉徴収額を超えています。
「控除限度額」があくまで「限度」なので、実際に還付される金額は実際に支払った外国税分まで、すなわち32,141円還付ではなく12,200円の還付(外国税額控除額)となるわけです。
これは米国で源泉徴収された満額が戻ってきたということを意味します。


このように、外国税額控除の金額は個人の所得や国外所得の金額で大きく変わってしまうことを覚えておいてください。特に、国内で所得税を納めていない年金生活者の方、専業主婦の方などは、計算式上①の納税額がゼロですので、外国税額控除額が計上できません。
また、今回、配当さんの場合は国外所得が配当分しかなく、少なかったたため、満額の還付が受けられなかったことになります。
まず1つ目は、配当さんは控除限度額の関係で所得税約3,000円の還付しか受けられませんでしたが、実は控除限度額は住民税にもあり、住民税がいくばくかの額が減額されます。(確定申告後の6月の住民税決定時に計算されます)

そしてもう1つが、今回所得税でも住民税でも還付してもらい損ねた、源泉徴収済満額12,200円と今回の外国税額控除額(約4000円)の差額は「お預け」になっていて、実は翌年以降、還付してもらえる可能性があるのです! 上図の右下部分の8,284円がその「お預け」の部分です。
この数字を翌年の確定申告の際に記入し、翌年以降に先ほどの④の控除限度額に大きな数字が来た場合、このお預け分が外国税額控除額として復活し、その年に還付されるのです!
ということで、配当さん、今年は満額の還付は受けられませんでしたが、お預けが8千数百円あります。
来年以降、国外所得を増やすことでこれを取り戻してみてはいかがでしょうか?
さて、では何が調整国外所得にあたるのかが問題になります。実は、平成28年までの外国税額控除の申告にあたって、国税庁の公式ページ(タックスアンサー)の外国税額控除に関する記述が極めて内容が乏しく、いまひとつ良くわからない、といった状況でした。
ところがところが、この項目が平成29年4月以降、内容が極めて充実し、何が調整国外所得にあたるのかが明示されるようになりました。
これによりますと、我々一般個人投資家が国外所得として計上できるのは、
具体的には、外国株式の配当、外国債券の利金(外貨建MMFの利金を含むと考えられます)といったところでしょうか。
この他に国外所得と認められる所得はこと細かにタックスアンサーに記載されていますので、必要があればこちらもご参照ください。(外国で働いた際の給与なんかも当然ここに含まれています)
ご参考:国税庁タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除
さらに追加でまた面倒なお話をいたしますが、先ほどの「一部分を外国の給与で貰っていた場合」の例のように、仮に国外所得が大きく、控除限度額>外国税額控除額であった場合(要するに枠が余った場合)はこの「枠」を繰り越すことができ、翌年外国所得額が少なかった場合でもこの枠を有効利用することができます。

ということで、非常にマニアックな外国税額控除の計算と申告書の作成、御参考になりましたでしょうか?
なお、くどいようですが上記の解釈は私個人が法令、通達等を常識的に解釈して私自身が申告に利用している方法を記述したものであり、税務当局がこの方法が正当である、と保証したわけではありません。
また、読者の皆様の個別の事例については私が何かしらのコメントをすることは法令上できませんので、無資格の一般人ではなく、税理士さんや公認会計士さんにお尋ねいただくようお願い申し上げます。個人的にはにわかで一般論の解釈している私のような素人ブロガーではなく、信頼できる税理士さんに委ねるのが適切だと思います。
謝辞:
本記事執筆にあたり、当初記述した内容に当方の認識違い等があり、適切な数字になっていなかった箇所がありました。御指摘いただいた方に感謝申し上げます。
また、貴重な経験の情報を御提供いただき、配当所得の申告が必須であることを教えていただいた方にも深く感謝申し上げます。
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弊ブログの確定申告関連記事
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確定申告の基礎知識はこちら
確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その1) 源泉徴収票をみてみよう
確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その2) 控除額の違いで税額はどう変わるのだろうか
株式の譲渡益に関する確定申告の方法はこちら
確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その3続編) 株式譲渡益の確定申告をやってみよう!(平成30年分更新版)
確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その4) 株式譲渡益の確定申告をやってみよう!2 (平成28年分更新版)
確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その5) 株式譲渡益の確定申告をやってみよう!3 (平成28年分更新版)
収入の少ない方は高配当株を持ってるとおトク? 【確定申告番外編】 配当を総合課税で申告してみよう!
国内高配当株は若い投資家の強い味方? 【確定申告番外編】 配当控除を最大限活用してみよう!
今回は応用編、マニア編として、外国株式を保有し、配当を得た方の「外国税額控除」について説明していきたいと思います。これをご覧いただければ、確定申告における外国税額控除の書き方がおわかりいただけることと思います。
(※当記事は平成30年確定申告向けにアップデートされた記事です)
【情報】平成30年確定申告に向けた税制改正と申告書作成サイトの画面遷移について
平成30年確定申告用のサイトは平成31年1月4日にオープンしました。さっそく、1月4日から画面遷移の確認作業を実施しておりますが、平成30年は個人所得税において大きな税制変更はなく、確定申告書作成サイトの画面遷移も肝心の情報入力部分では昨年度のサイトの画面を踏襲しており、大幅な変更はありません。
従いまして本ブログでは、一部昨年の画像を流用しておりますがおそらく皆様の理解には大きな妨げにならないものと考えています。
古いスクリーンショット画像を使用している部分には画像下に注を加えておりますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。
外国税額控除の入力の前にやるべき大事なこと
まずはモデルケースの題材となってくださる方にご登場いただきましょう。今回ご登場いただくのは「配当次郎」さん。
源泉徴収票は以下の通りです。
※源泉徴収票は平成30年用に更新されています。
え、どっかで見たことある源泉徴収票ですって?
は、はい。ごめんなさいごめんなさい。前回ご登場いただいた「妻帯太郎」さんと氏名、住所、勤務先違いなだけで金額一緒です。(まぁ要するに手抜きです)
今回ご登場の配当次郎さん、昨年の株式関連の取引状況は以下の通りです。
- F1のドライバーも着用しているヘルメットを製造販売しており、米国での販売シェア90%を占める超有名企業、「プロテクター・アンド・ガクブル」株を1000株保有(米国株)
- 昨年株式の売却は行っていない
- 「プロテクター・アンド・ガクブル」からは計2回、下記の配当を受領
配当:2018/4/1 1株あたり50セント
2018/10/1 1株当たり60セント
- 証券会社から、下記の「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」が送られてきている
という設定でお話させていただきたいと思います。
※配当明細書が2017年となっていますが2018年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。

↑4月1日入金された「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」

↑10月1日入金された「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」
まずはこれまでの確定申告書作製サイトの入力方法に従い、配当太郎さんの給与所得等について入力してください。
今回は省略いたします。詳しくは弊ブログ「確定申告をして税の仕組みを学ぼう! (その3続編) 株式譲渡益の確定申告をやってみよう!(平成28年分更新版)」をご覧ください。
※↑平成28年版のブログ記事のままであることお断り申し上げます
まずは配当所得の申告を
外国税額控除の項目を記入する前に、まずやらねばならない大事な入力項目があります。それは、既に源泉徴収されているこの配当の内容をきっちりと確定申告書に載せることです。
配当に関する3種類の納税方法
配当を受領した場合の税務処理は以下の三通りあります。- 証券会社経由で源泉徴収されているので、申告不要の制度を利用して課税関係を終了させる。
- 証券会社経由で源泉徴収されているが、敢えて「総合課税の確定申告」をする。
- 証券会社経由で源泉徴収されているが、敢えて「申告分離の確定申告」をする。
(1)は株式譲渡益がなかったり、医療費控除などがなく、確定申告をしないでいい方には便利な方法です。
株式の配当を得ていても、この制度のおかげでわざわざ確定申告しなくてすむわけです。
しかし、今回、外国税額控除を実施しようとしている方については、この方法ではダメなのです。問題の原因は「課税関係が終了」という扱いに行き着くのですが、仮に確定申告書に(2)または(3)の方法で確定申告することを明示しないと、納税者は(1)の申告不要制度を利用したとみなされ、税務当局はその配当については「課税関係終了」すなわち、その配当はそもそもなかったのだ、と受け取ります。
これはあとで詳しくお話しますが、そもそも外国税額控除を受けるためには、外国と国内で二重課税されており、かつ、国外での所得(今回の事例の場合、外国株からの配当)があることが必要です。
この事例で仮に(1)の制度を利用したとみなされると、外国株からの配当がそもそもない=国外で得た所得がない、ということになり、後者の条件を満たさなくなってしまいます。
従って、外国税額控除の項目入力前に、所得の項目で、この外国株からの配当を配当所得として申告する(入力する)必要があります。
では具体的に入力方法を見ていきましょう。
配当を入力する場所は「収入金額・所得金額入力」画面の「配当所得」の部分です。既に配当さんの給与所得は入力済みです。「入力する」を押します。

すると、「金融・証券税制(入力項目の選択)」が現れます。
(※平成29年版サイト表示対応)

まず前提として、配当さんは「一般口座」を利用していることとします。
その上で、配当所得について確定申告することとし、総合課税か申告分離課税かを選択します。
※特定口座利用の場合は「2 株式等の売却・配当・利子等の入力」で入力します。
一般的に、所得税は累進課税制度をとっているので、高所得の方は分離課税を選択したほうがお得で、無収入の方などは総合課税を選択したほうがお得な場合が多いのですが、このあたり、住民税や社会保険関係の所得認定が様々な計算式で成り立っていることから、個々の事例でどちらを選ぶといいのかの損得は本当に事例次第です。
今回は配当さん自身の損得は別として、「申告分離課税」で申告書を作成してみたいと思います。

「申告分離課税」のボタンを押します。選択すると↑の絵のように緑色に変わり選択していることがわかります。
下のほうにスクロールしていくと、「配当等の支払通知書」などの内容を入力する というボタンが見えてくると思います。
画面は申告分離課税での入力画面「金融・証券税制(源泉徴収口座以外の配当)」です。
再確認ですが、ここでは特定口座ではなく、一般口座を利用しているものとして記述しています。

ここで「個別に配当等を入力(訂正等)する。」を押します。すると、個別の配当を入力するフォームが出現します。

上部にわかりやすく 「申告分離課税」 であることが明記されています。
ここでは配当を1件目、2件目と書き加えて表を作っていくことができるのですが、おそらく皆さん、多くの会社から複数の配当を受領していると思われますので、ここは明細票を別紙(下に示すようなExcelの表)にすることにし、ここでは最終結果だけを1件だけ入力するようにします。もちろん、別紙でこのExcel表を添付します。
※明細書が2017年となっていますが2018年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。

このExcel表はあとで出てくる外国税額控除の計算の際にも共用できるようになっておりますので、まずはこの表を別途作成しましょう。
作成には証券会社から送られてくる「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」(かそれに類似した名前の報告書)を転記すれば完成します。
配当に関する収入金額には、米国で10%源泉徴収された後、国内で課税前の配当総額を記入し、源泉徴収税額の欄には既に配当から源泉徴収されている国税と地方税の総額を記入します。(Excel表から簡単に転記できるはずです)
数字を入力すると下段に1項目目として反映されます。ここでは1年分まとめたものを1件(別紙あり
としていますが、銘柄ごとに項目を足していくことも可能です。

これで入力を終了し、次へ進みます。
すると「金融・証券税制(源泉徴収口座以外の配当)」に戻り、
「個別に配当等を入力(訂正等)する。」の訂正・削除 ボタンの右の欄、「入力有無」欄にチェックマークが入っており、配当金額を入力したことが確認できます。

次へすすむと、配当の入力部分である「配当等の支払い通知書」などの内容を訂正・削除となっていており、その下の項目(利子や株式の譲渡益の入力箇所)では「~を入力する」(要するに未入力)という差があることがわかります。
利子や株式の譲渡益を申告する場合(源泉徴収されている場合は申告をしないことも選択可能ですが)はこれらのボタンを押してそれぞれの項目を入力します。
今回はこれらの項目は入力しません。

さらに先へ進むと、「総合課税の所得」の「配当所得」の欄に「分離課税の配当所得の入力有」と表示され、「配当は総合課税にしなかったよ!」ということがわかります。

さらに下の「分離課税の所得」の欄には先ほどの配当所得(申告分離課税)として109,800円が計上されていることがわかります。
※総合課税を選択した場合は上部の「配当所得」の欄に数字が入ってきます
これで外国税額控除の準備段階である配当の申告に関する入力が終わりました。続いて大本命の外国税額控除の入力に移りましょう!
閑話休題 ~知らなくてもいいムダ知識~
先程までに配当所得について申告分離課税を選択し、申告書を作成しました。
作成された最終成果物の申告書の一部を見てみましょう。
所得の内訳として、給与所得と配当所得の両方が記載されています。
申告したことで所得が増えたことになります。
さてここで、今までまったく話題にしなかった住民税について余談として考えてみたいと思います。
住民税についても申告不要を選択しなかったことから、地方公共団体に上記配当所得があったことが税務署経由で情報が渡ることになります。
そうすると、住民税が増えちゃう? あれ、もう源泉徴収で徴収済みだよね? と思うのは当然かと思います。この問題を解消するのが以下の項目です。
「配当割控除額」、これは地方公共団体に対し、この人は配当所得分として地方税をこんだけ源泉徴収されてますよ(納付済ですよ)、という情報を渡すための項目です。
この情報があるの配当について二重課税されることはありませんので御安心ください。
外国税額控除の情報入力
さてここからが本題、外国税額控除の入力です。控除の入力は2種類あります。まず1つ目が社会保険料控除や生命保険料控除等の「所得控除」で、収入から「控除」することで課税所得額を減らすことができます。この計算のあとで所得税を計算することになります。所得税率を掛ける前ですので、減額される所得税は 控除額×所得税率 ということになり、控除額の一部が減額されるだけになります。
もう一つが「税額控除」で、これは所得税を算出後、税額そのものを控除するもので、控除額がまるまる還付額となります。
外国税額控除は後者になり、計算された控除額(後述しますがこの計算式がややこしいのです)還付されます。
そもそも外国税額控除とは、外国からの所得について、現地の仕組みとして源泉徴収で課税され、さらに国内で課税された場合(個人投資家の場合、外国株の配当のみが該当でしょうか)、国内外で二重課税になってしまうことから、その救済策として「外国で徴収された税相当額について、特別に国内の税金から還付してあげるよ(ただしいろんな条件あり)」という趣旨の制度(ざっくりした言い方です)です。
実はこの(ただしいろんな条件あり)が曲者で、ちょっと工夫しないと外国に納税した金額満額は返ってきません。これも実例を出してあとで見てみたいと思います。
さて、確定申告書作成サイトの外国税額控除の入力は、所得控除入力後、その先の「税額控除・その他の項目の入力」内にあります。

税額控除の項目の一番下に「外国税額控除」の入力場所があります。「入力する」を押してください。
すると、「外国税額控除の入力」の入力項目が出てきます。

選択肢は2つあり、
・外国税額控除額の計算がお済みでない方
・外国税額控除額の計算がお済みの方
とあり、後者は税理士さんや公認会計士さん等に外国税額控除の複雑な計算をしてもらい、明細書を別途作成した方が対象です(下図参照)

今回は自分でフォームにデータを入力し、複雑な計算を自動でやってくれる前者を選択します。
入力フォームは↓のようになっています。

ここに外国でどのように税金を納めたのか、といった内容を記入します。
この明細書の作製フォームを見ると、配当を貰ったたびに1回毎に入力するように見えます。
これは先程の配当所得の記入と同じで、Excel表で別紙とし、最終結果1件だけを入力するようにします。
別紙明細書はさきほどのものが流用できます。
※明細書が2017年となっていますが2018年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。

提出の際にはこのExcelの一覧表と証券会社から送られてきた「外国株式等 配当のご案内(兼)支払通知書」全部を別添で提出します。

※明細書が2017年となっていますが2018年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
- 国名:米国
- 所得の種類:配当 ※米国ETFの分配金も配当で通じると思います
- 税種目: 空欄
- 納付確定日:私は、1年まとめてなので「年末の日付」を記入しています
- 納付日:私は、1年まとめてなので「年末の日付」を記入しています
- 源泉・申告:源泉 (で既に外国に徴収されているという意味)
- 所得の計算期間: 1年まとめてなので「年始~年末の日付」を記入しています
- 相手国での課税標準:米国での課税前の額面の配当額(ドル建てと円建て)
- 左に係る外国所得税額:米国で源泉徴収された税額(ドル建てと円建て)

※フォームへの入力年が平成29年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
また、最後に「2 調整国外所得の計算」の入力項目があります。
調整国外所得の金額を入力してください。とありますので、二カ国で税を引かれる前の大元の配当総額である122,000円を転記します。
※平成28年まではここが「国外所得」という用語でしたが、平成29年からは「調整」の文字が追加されています。その差を現在調べておりますが、少なくとも個人投資家が米国株の配当にかかる外国税額控除を申告する場合は大きな差はなく、ここには配当総額(米国での税引き前円価換算)を入力すれば良いようです。
今後、理解が進みましたら別記事を作成してご紹介するかもしれません。
一応、公式サイトのヘルプを見ると、こんな説明が出ます。

実際問題、読んでも良くわかりません(苦笑)。わからないので「解決しなかった」をクリックしてみました。その結果がこちら↓。

お、おう(引き攣った笑い)
そしてその下に、こちらも平成29年申告分から出てきた入力項目があります。
それが「あなたは政令指定都市に住んでいますか?」という入力項目です。
※上記画像は平成30年度用に更新されています(平成31年1月1日付の住所を聞かれている)このあたりの話は非常にマニアックな話ですので割愛し、今後機会があれば記事にしたいと思います。
一般の投資家の方は「正しく選択すれば、サイトが難しい計算自動的にやってくれる」ことだけ覚えておけば十分です。
そして、その下では「3 外国税額控除の繰越控除余裕額又は繰越控除限度額の計算」とありますが、今回の配当さんは初めての外国税額控除の入力なので空欄で結構です。
ただし、2回目以降の場合、ここに数字を入れることが重要になってきます。「外国税額控除の繰越控除余裕額」「繰越控除限度額」とかいう用語がそもそもわかりにくいのですが、ここは翌年以降大事になってくる数字だということを覚えておいて損はありません。(最後のほうでこの繰越については触れます)
※上記画像は平成30年度用に更新されています(平成27年~29年までの繰越を聞かれている)
さて、ここで入力は終了です。
戻りますと、外国税額控除額が入力されています。配当さんの場合、3,028円と入力されています。

ここであれっ? と思った方は鋭いです。振り返ってみましょう。配当さんが米国で源泉徴収された10%の源泉徴収額は合計110ドル、ざっくり為替レート計算しても11,000円程度は取られているはず。
なのに外国税額控除額はたったの3,028円。外国で払った分特別に返してくれるんじゃなかったの? と思うのですが、ここで出てくるのが外国税額控除の計算式です。
非常に面倒くさい計算式になっているのですが、確定申告書作成サイトでは全部自動で計算してくれています。
ここで、先回りして最終成果物の「確定申告書(PDF版)」の外国税額控除の部分を先に見てみましょう。
完成した確定申告書を先に見てみよう
1 外国所得税額の内訳の部分では、先ほど記入したとおり、1年間合計の外国での課税標準額と外国で源泉徴収された額がそのまま記載されています。ここは特段問題ありません。

※上記明細書については平成29年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
2 本年分の雑所得の総収入金額に算出すべき金額の計算
の欄は空欄です。これは昨年も外国税額控除をやっていて、いろんな繰越(後述します)がある場合に記載されています。今回の配当さんの場合は空欄でOK。

そして一番のキモがこの下です。
3 所得税の控除限度額の計算
4 復興特別所得税の控除限度額の計算

ここを見ていただきますと、まず①で配当さんがこれまで年末調整までに支払った所得税等と外国株の配当の源泉徴収額の合計が書かれています。
(株式の売却益等があった場合はその申告分離課税分も加わっているはずですが今回の配当さんの場合はそれがないので源泉徴収額そのものが記載されている)
次いで②は所得の総額。今回申告分離課税を選択した配当所得も加わっています。また、ここで注意が必要なのは、この所得額は社会保険料控除等を控除する前の金額であるということです。(確定申告書作成サイトでは自動的に正しい数字を計算して表示してくれていますので、税制を研究しているマニア以外の一般投資家の方は気にしなくてオッケー)
そして③が調整国外所得総額です。先ほど、外国税額控除の入力時に、外国から得た配当の大元の配当額を記入しましたが、その数字です。
そして最後の計算、④がキモです。
控除限度額④(日本国が温情で特別に還付してくれる額)は ① × ( ③ ÷ ② ) という式だと決められています。
この式をじっくり見てみると、④を増やすにはいくつかの方法があることがわかります。
(1) ①の額を増やすこと
(2) ③の額を増やすこと
(3) ②の額を減らすこと
です。このうち、手っ取り早く④を増やす方法は (2) の調整国外所得総額を増やすことです。
配当さんの場合、この国外所得額の数値が小さい(かつそもそも収めている所得税額①が少ない)ために、計算式上、控除額が3000円程度と小さく抑えられてしまっているのです。

そしてこのあと、マイナンバー等の入力をし、最後までやると、このように「外国税額控除関係」の書類も自動作成されます。

そして最終成果物としての確定申告書も下記のように作成されます。

※上記申告書については平成29年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
さて、これでひととおり確定申告書の作成はできましたが、残念ながら配当さんは少額の還付しか受けられませんでした。なぜでしょうか? すこし仮の事例で考えてみたいと思います。
二重課税された米国課税分が満額還付されなかった理由は?
ここで「たとえば」の話として、配当さんの勤務先は「みらい商事」なる純和風な社名にも関わらず、なぜかグローバル企業で、配当さん、実は給与300万円のうち、120万円を外国所得として受け取り、180万円を国内所得として受け取っていた、と仮定します。(実際は会社の仕組みとしてありえない話なのですが、国外所得が多かったらどうなるかの例としてそういう設定にさせていただきます)するとどうでしょう。

※上記明細書については平成28年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
③の国外所得が122,000円(配当分)+120万円、で合計1,332,000円と入力されました。
すると、さきほど3,000円程度とシブチンだった④の金額(控除限度額)が32,141円と計算されます。

配当さんが米国株配当として米国で源泉徴収された金額は110ドル(円貨で12,200円)でしたので、控除限度額が源泉徴収額を超えています。
「控除限度額」があくまで「限度」なので、実際に還付される金額は実際に支払った外国税分まで、すなわち32,141円還付ではなく12,200円の還付(外国税額控除額)となるわけです。
これは米国で源泉徴収された満額が戻ってきたということを意味します。


※上記申告書については平成28年となっていますが平成30年と読み替えてください。時間が有れば画像差し替えます。
また、今回、配当さんの場合は国外所得が配当分しかなく、少なかったたため、満額の還付が受けられなかったことになります。
外国税額控除の効用は所得税だけではない!
しかし、しかし、配当さんには嬉しいお知らせが2つあります。まず1つ目は、配当さんは控除限度額の関係で所得税約3,000円の還付しか受けられませんでしたが、実は控除限度額は住民税にもあり、住民税がいくばくかの額が減額されます。(確定申告後の6月の住民税決定時に計算されます)

そしてもう1つが、今回所得税でも住民税でも還付してもらい損ねた、源泉徴収済満額12,200円と今回の外国税額控除額(約4000円)の差額は「お預け」になっていて、実は翌年以降、還付してもらえる可能性があるのです! 上図の右下部分の8,284円がその「お預け」の部分です。
この数字を翌年の確定申告の際に記入し、翌年以降に先ほどの④の控除限度額に大きな数字が来た場合、このお預け分が外国税額控除額として復活し、その年に還付されるのです!
ということで、配当さん、今年は満額の還付は受けられませんでしたが、お預けが8千数百円あります。
来年以降、国外所得を増やすことでこれを取り戻してみてはいかがでしょうか?
ところで「調整国外所得」って具体的に何よ?
さて、では何が調整国外所得にあたるのかが問題になります。実は、平成28年までの外国税額控除の申告にあたって、国税庁の公式ページ(タックスアンサー)の外国税額控除に関する記述が極めて内容が乏しく、いまひとつ良くわからない、といった状況でした。ところがところが、この項目が平成29年4月以降、内容が極めて充実し、何が調整国外所得にあたるのかが明示されるようになりました。
これによりますと、我々一般個人投資家が国外所得として計上できるのは、
この青字で示したあたりになろうかと思います。(2) その他の国外源泉所得
次の国外源泉所得をいい、その国外源泉所得に係る所得のみについて所得税を課するものとした場合に課税標準となるべきその年分の総所得金額等の合計額に相当する金額とされます。なお、租税条約の適用を受ける居住者について、その租税条約において異なる定めがある場合における国外源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めることとされています。
① 国外にある資産の運用又は保有により生ずる所得
② 国外にある資産の譲渡により生ずる所得として一定もの
⑤ 所得税法第23条第1項(利子所得)に規定する利子等及びこれに相当するもののうち次のもの
イ 外国の国債若しくは地方債又は外国法人の発行する債券の利子
ロ 国外にある営業所、事務所その他これらに準ずるものに預け入れられた預金等の利子
ハ 国外にある営業所、事務所その他これらに準ずるものに信託された合同運用信託若しくはこれに相当する信託、公社債投資信託又は公募公社債等運用投資信託若しくはこれに相当する信託の収益の分配
⑥ 所得税法第24条第1項(配当所得)に規定する配当等及びこれに相当するもののうち次のもの
イ 外国法人から受ける所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配又は基金利息
ロ 国外にある営業所に信託された投資信託(公社債投資信託並びに公募公社債等運用投資信託及びこれに相当する信託を除きます。)又は特受益証券発行信託又はこれに相当する信託の収益の分配
具体的には、外国株式の配当、外国債券の利金(外貨建MMFの利金を含むと考えられます)といったところでしょうか。
この他に国外所得と認められる所得はこと細かにタックスアンサーに記載されていますので、必要があればこちらもご参照ください。(外国で働いた際の給与なんかも当然ここに含まれています)
ご参考:国税庁タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除
国外所得が多すぎたときはどうなるの?
さらに追加でまた面倒なお話をいたしますが、先ほどの「一部分を外国の給与で貰っていた場合」の例のように、仮に国外所得が大きく、控除限度額>外国税額控除額であった場合(要するに枠が余った場合)はこの「枠」を繰り越すことができ、翌年外国所得額が少なかった場合でもこの枠を有効利用することができます。
ということで、非常にマニアックな外国税額控除の計算と申告書の作成、御参考になりましたでしょうか?
なお、くどいようですが上記の解釈は私個人が法令、通達等を常識的に解釈して私自身が申告に利用している方法を記述したものであり、税務当局がこの方法が正当である、と保証したわけではありません。
また、読者の皆様の個別の事例については私が何かしらのコメントをすることは法令上できませんので、無資格の一般人ではなく、税理士さんや公認会計士さんにお尋ねいただくようお願い申し上げます。個人的にはにわかで一般論の解釈している私のような素人ブロガーではなく、信頼できる税理士さんに委ねるのが適切だと思います。
謝辞:
本記事執筆にあたり、当初記述した内容に当方の認識違い等があり、適切な数字になっていなかった箇所がありました。御指摘いただいた方に感謝申し上げます。
また、貴重な経験の情報を御提供いただき、配当所得の申告が必須であることを教えていただいた方にも深く感謝申し上げます。
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コメント
コメント一覧 (36)
「2 国外所得の計算」で、国外所得の総額は、税引き前の122,000円でよいのではないでしょうか。
私は、水筒理論よろしく、税務署から指摘されない限りは「納税者有利の原則」で計算を推し進めています。
配当だけの場合の外国所得額は122,000円でいいのだろうという御指摘は、twitter上で税務に詳しい方からも御指摘いただきました。
修正に若干の時間が必要になりますが、この点は修正させていただこうと思っております。
御指摘誠にありがとうございました。
申告の方法につきましては、ご自身の判断で実施し、税務当局とは個別にお話し合いいただきますようお願い申し上げます。(降りかかる火の粉を振り払いながら...)
さて、外国税額控除の申告について1点、住民税還付の関係で質問させていただきます。
所得税の外国税額控除を申告すると、自動的に住民税の還付額も計算される件ですが、
個人住民税は特定口座の源泉徴収のみで終わらせる申告不用制度を選択する場合、
A:住民税では申告不用制度を選択したので、配当は存在しない、なので外国税額控除の金額が連絡されても住民税からは控除されない。
B:申告不用制度選択と言いながら、外国税額控除を申告した。それは配当の申告が前提。なので、外国税額控除を申告し(住民税の還付額の通知がき)た時点で、住民税は、配当の申告を選択したものとして扱う。
常識的にAとは思いますが、Bとして扱われても間違っているとは言えないように思います。
こうした方面に明るいテリー様の見解を知りたく存じます。マニアックな件で恐縮ですが、ご意見伺えましたら幸いです。
普段ぱっとしない弊ブログ唯一の優良記事にご注目いただきまして誠にありがとうございます。
ご質問いただいた件、おそらく今年からの地方税の徴税方法の変更通達に伴う新たな問題の発生かと思います。
ご質問の意図は理解したのですが、外国税額控除の際に地方税ってどういう扱いだったっけ? という頭の整理をさせていただきたいので、私なりのコメントは少々時間をください。
※確か外国税額控除については、まず国税で税額控除し、それで控除しきれなかった場合に地方税についても手を伸ばして還付にもっていくという流れだったように記憶しているので(間違ってたらごめんなさい)、国税である所得税を十分に納めている場合は地方税まで直接的には波及しなかったんじゃないかと現時点で思いました。
正月の寝ぼけた頭脳を元にもどすいいチャンスを頂戴しましたので、しばしお時間くださいませ。
国税当局「国保の保険料にも影響しなくなりましたから、どんどん申告して下さい!外国に払った税金は還付金で取り戻して下さい!」
自治体担当者「ご申告のあった外国税額控除の件で、還付します。ところで、今回のご申告で配当所得が判明しましたので、住民税と国保税が高くなります・・・・・」
国税当局・自治体担当者「ご申告はお客様のご選択でなされてたことですので・・・・」
というような、一種の還付金詐欺(いや、正当な税額の計算の結果で、詐欺ではないですけど)が全国各地で繰り広げられやしないかと思いました。
テリー様の専門的な見地からのご意見を伺いたいと思った次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
>配当に関する収入金額には、米国で10%源泉徴収された後、国内で課税前の配当総額を記入し、
>源泉徴収税額の欄には既に配当から源泉徴収されている国税と地方税の総額を記入します。
>(Excel表から簡単に転記できるはずです)
以前私も勘違いしていたのですが、これは誤りです。
配当所得の申告において収入金額に入力する数値は、国内課税前(外国所得税の課税後)の金額ではなく現地課税前の金額(相手国の課税標準)です。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2015/pdf/20.pdf
この国税庁のpdfファイルの6ページをご覧ください。
外国税額控除で入力する相手国での課税標準と、利子所得(配当所得の場合も同じ)に、同じ数字(現地での外国所得税の課税前の金額)を入力するよう記載されている事がご確認できるかと思います。
国税庁の当該PDF拝見しました。確かに同じ数字が代入されていますね。
でもそうすると、配当所得として手元に入っていないお金も所得認定されてる感じがしてモヤモヤいたします。
国税庁の中の人も人間なので、実際どうするべきなのか、少し勉強させていただきたいと思います。
まずはご指摘に深く感謝申し上げます。
以前私が勘違いに気付いた時に税務署にも確認しましたが、外国株からの配当所得は、一切の税金を引かれる前の金額(現地源泉課税前の金額)を収入金額に記入で間違いないようです
米国株からの配当が円換算で10万円の場合(外国源泉課税1万円、国内課税前9万円)、配当所得の入力においては「収入金額」に10万円、「源泉徴収税額」に13783円(9万円の15.315%)、「配当割額控除額(住民税)」に4500円(9万円の5%)と記入するのが正しい申告との事です
国税庁やe-taxの説明にもそのあたりの丁寧な解説が無いので、ややこしいですよね
私の考えでは、理屈からして配当所得として10万円(外国税引き前)を配当所得欄に記載し、源泉所得税として13783円を記載するのは計算が合わなくなりますのでおかしいと思います。
紙ベースでの申告書の作成では数字はどのようにも記述できたと思うのですが、現在のシステムを用いた計算では、上記のようなデータ入力をすると「配当額と源泉税額が合いません」というエラーを返すようになっており、少なくともシステム上はそのような入力はできないようです。
※税務署員にも間違いはありますしシステム設計にも間違いがあり得ますのでどちらが正しいとは断定いたしません
あおき様、返信遅くなりすみません。
外国税額控除の記事をリライトして頭が少し整理されました。
まず、ご指摘いただいた「住民税に関係してくる場合」は、まさに本ブログのモデルケースの方のように「国外所得が多くはなく、所得税還付だけではすまない場合」ですね。国外所得がいっぱいある方は地方税に手を出す前に国税だけで還付がおわりますね。
さて、そのような場合において、今般地方税法令改正でできるようになった、「配当について、地方税は源泉徴収分で課税関係を終了する取り扱いができる」という場合についてですが、この手続きをするにあたっては、地方税専用の確定申告書(各市町村で様式異なるようですし、紙ベースのものが多いようです)を作成することになろうかと思います。
そうなってくると、正直、各市町村の市民税課がどれだけの知識があるかに依存してしまう気がするんですよね。今年が初の年なんで、多くの投資家の方が人柱になってくれるんではないかと期待しております。
ただ、解釈は税務署以上に異なってきて、カオス状態になる気がします。
個人的な感覚では、「配当について地方税課税関係完了」という扱いになっても税務署側から「地方税分の外国税額控除額はこんだけ!」という通知が来て、それを単純に控除してくれるんじゃないかと思っています。
あんまりまともな答えじゃなくてすみません。
>私の考えでは、理屈からして配当所得として10万円(外国税引き前)を配当所得欄に記載し、
>源泉所得税として13783円を記載するのは計算が合わなくなりますのでおかしいと思います。
私も以前は入力する源泉徴収額が収入金額の15.315%になっていないと辻褄が合わないと思っていたのですが、税務署の方によると外国株式の配当所得を申告する場合と源泉徴収で済ませる場合(申告不要制度)では課税ベースが異なるので、入力(記入)する収入金額が源泉徴収額を0.15315で割った数字と合っていなくても問題ないという事でした。外国株の配当金の国内源泉徴収時は、便宜上国内課税後(外国源泉課税後)の金額を課税ベースとして源泉徴収税額を計算しているが、外国株の配当所得を(外国税額控除等の目的で)確定申告する場合は外国源泉課税前の金額が課税ベースになるとの事です。
みずほ証券のページにもこの点について記載されています
https://www.mizuho-sc.com/beginner/zeikin.html
>外国株式の配当金について確定申告をする場合に確定申告書に記載する配当金の収入金額は、外国源泉徴収税額および国内源泉徴収税額を控除する前の金額となります。
国税庁がしっかりと外国株の配当の申告方法について明記してくれれば良いのですが、外国税額控除の手引きpdfファイルにひっそりと(相手国の課税標準と収入金額に同じ数字=外国課税前の金額を入れる事について)記載されているだけなので、勘違いされている方が多いのだと思います。
>上記のようなデータ入力をすると「配当額と源泉税額が合いません」というエラーを返すようになっており、少なくともシステム上はそのような入力はできないようです。
去年までは、15.315%を超える源泉徴収額を入力しない限りはエラーとならなかったのですが(収入金額の15.315%以下であれば入力可能でした)、仰る通り現在は入力できなくなっていますね。
これでは国税庁の外国税額控除の手引き通りの正しい申告をしようとして、入力できなくて困る人が出てくるのではないかと思います。
みずほ証券のサイトの記述も確認いたしました。
非常にテクニカルな部分でシステム化するときに対応できていない感じですね。
今後改善して貰えたらありがたいですね。
地方税について国税と別方式を選択しているのに、国税の方式が地方税に影響することが、少し気持ち悪い気がしておりました。おっしゃるように、淡々と地方税分の外国税額控除額を単純に控除する自治体がほとんどになるのでしょう。地方自治体は国に従属するという構造が背景に見え隠れします。せっかく別方式の選択が可能になったので、地方の徴税権の国からの独立を応援したい気持ちであります。
記事の加筆修正もありがとうございます。お陰様で、私たちの税に対する理解が深まりました。国税当局の推薦サイトかと見間違うほどです。様々な記事が世に氾濫し、ほとんどは書き散らかされ放置され消えていく中で、テリー様は記事を丹念にリライトされ、しっかりとした上質さを保っておられます。今後とも勉強させて下さい。よろしくお願いいたします。
3つの考え方があると思うのですが、如何したら良いのでしょうか?
あちこち見るのですが、説明がありません!!
私は第3案が正解のように思えるのですが。
国外からも給与を貰っておられるのですな! すごいことだ。
実のところ、私も外国から給与を貰ったことがないもので、ご質問に対する回答を持ち合わせておりません。お役に立てず大変申し訳ございません。
かなりレアなケースかと思われますので、税理士さんや税務署でお訊ねになるのが良いのではないかと感じました。(税務署も預かり案件になってすぐに回答がこない気がしますが)
ブログを拝見させていただきました。
30年度外国税額控除に挑戦しようと思いました。
エクセルの明細書はダウンロード可能でしょうか。
リンク等があればご案内ください。
何卒宜しくお願い致します。
弊ブログご覧頂きましてありがとうございます。
私が使用しているExcelファイルを抜粋したものでよろしければ差し上げます。
(あくまで私が使っているというだけで、税務当局がこの様式を使用推奨しているわけではありませんし、証券会社によっては記載項目や表記が違うかもしれませんのでその点はご理解くださいませ。)
https://drive.google.com/file/d/1us36fTADa9oY8get5ucxmq7IP15bjWNN/view?usp=sharing
ご丁寧に対応くださりありがとうございました。
昨年株式投資を始めたばかりですので少額の還付となるともいますが挑戦してみます。
詳細な記事も含め、大変にありがとうございました。重ねて御礼申し上げます。
拝見させていただきました。
調整国外所得には、外国株式の譲渡益は含まれないであってますでしょうか?
(正式には税務署に聞きますので、一般論でお答えいただければありがたいです。)
”所得”という言葉のニュアンスから、最初含まれると思ったのですが、そもそも国外で”源泉”徴収されていないので、「(2) その他の国外源泉所得」にも明示されない訳ですし、含まれないんだろうなと思いました。
素人の質問、すみませんです。
僻地の季節営業の弊ブログまでお越しいただき誠にありがとうございます。
さて、お尋ねの件ですが、私の中の個人的な結論から申しますと、
「(外国株の)株式譲渡所得に関しては国外としない」という理解をしております。
個人投資家の外国税額控除に関しては、平成20年代前半頃からブログ記事で周知
されはじめた感じがしますが、その際には国税庁の情報開示が不十分で、具体的な
申告のルールが公表されていませんでした。
そこで、各個人投資家さんが各税務署で相談の上申告をしてその結果をブログ記事に
しており、当時、外国株の譲渡益を国外所得とできる、という解釈で税務署で受理
されたとされる記事もありました。
しかし、その後、国税側から(調整)国外所得が何を指すのかの具体的な項目が
公表され(ブログ本文に記載しています)、これを見る限り、外国株式の譲渡所得は
この中に含まれていないように読めましたので、私としては上記のように「含めない」
という理解をして申告しております。
あくまで個人的な理解であり、「脱税とされたくないので無理な拡大解釈をしない」
というスタンスで臨んでおります。(特にブログで公表していますし)
ご参考になれば幸いです。
※なお、今後導入される投資信託の自動外国税額控除の仕組みではこの「個人差のある国外所得条項」が無関係になる気がするので、その動向も気になっています。
親切なご回答、恐縮です。
実は、「外国株の譲渡益を国外所得とできる」という法律専門家の方のホームページがありまして、先日検索したら、一向に出てこなくなってました。そこで、国税庁のHPをみたら、テリー様ご指摘の開示情報がありました。それから、いろいろ検索してこのページに辿り着きました。
さらに調べてみると、正解だと思われる情報がありました!!
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/tax/ges/jp-ges-kokusaizeimu-2017-vol37-no2.pdf
全文読んでみて自己解決しました。
件のホームページはこれを受けて、削除されたのかもしれません。
いづれにせよ、ありがとうございました。
たける様。
貴重な情報ありがとうございます。
国税側が隠してい解釈の情報を開示したのではなく、制度改正に伴ってきちんとした定義を書かざるを得なくなったようですね。
何にしても外国税額控除自体がプロ税務家向きの仕組みで「素人はすっこんでろ!」という制度ではあるので、致し方ないかもしれません。
向こうも積極的に広報して還付されたくないでしょうし(苦笑)
今回いただいた情報をブログ記事に反映させれていただいてよろしいでしょうか?
>>何にしても外国税額控除自体がプロ税務家向きの仕組みで「素人はすっこんでろ!」という制度ではあるので、致し方ないかもしれません。
向こうも積極的に広報して還付されたくないでしょうし(苦笑)
はい。私は異なる課税方式の場合の住民税の申告がまったくめんどくさい手続きであることに辟易しております。まるで申告してくれるなみたいにも思えてきます。金融庁の税制改正要望も今年はなかった気がします。理解できればまぁなんでもないのですが、当初、特に配当等所得のうち利子所得は申告分離課税にするところ等でいろいろ手間取りました。
それと下のURLに書かれている株式譲渡での必要経費です。借入金の利子以外はNGだとずっと考えていました。株式の図書類は、経費にならないまでも、ADR手数料とかカブコムの始めた品受・品渡手数料など直接取引に関連するものまでが必要経費にならないのがどうも腑に落ちないでいましたが、記事をみて自分の中では解決しました。扱いは個別の事情によりますので確かに記事にしにくいですね。
http://shikaku-hack.hatenablog.com/entry/201703expenses_of_stocks_transfer
>>今回いただいた情報をブログ記事に反映させれていただいてよろしいでしょうか?
私は、検索だけしたので、一向に構いません! いい記事にしてください。
過去に外国税額控除について私が悩んだ件についても入れていただければ幸いです。
①申告分離課税で申告した場合の、損益通算、繰越控除の考え方。
https://www.century-partners.jp/category/2084991.html
②申告なし(源泉徴収)では、外国税額控除を受けられない。よって、総合課税もしくは、申告分離課税で申告しない受けられないという点。
そのあとの5番の表には繰越額は出てくるのですが、2番の表はいったい何なのか疑問に感じています。
控除の計算はしっかりできているので問題ないのですが、どんなケースだと2番の表に数字が入るのでしょうか?もしご存知でしたら、教えてください。
ケースが似ていたので大変わかりやすかったです。
謝意を表せずにはいられません。
有難うございました。
コメントありがとうございます。ちょっと時間が取れずゆっくり考えて試行錯誤する時間がなかったためお返事遅れましたことお詫び申し上げます。
さて、外国税額控除の申告書 2の欄ですが、雑所得に数字入れてみたり、控除限度超過額が出るようとデータを入れてみたのですが、2欄に数字が入ることはありませんでした。
そこで、基本に立ち返り、申告書の説明書きを読んで推測をしましたのでご報告します。
まず、2欄の最下段、D(本年中に納付する外国所得課税額を超える減税外国所得税額)をご覧ください。このD欄に数字が入るには、上のほうの「Aの金額がBの金額より少ない場合」に限られます。
で、この「Aの金額がBの金額より少ない場合」とは、おそらく企業会計等で、「いったん外国所得税を概算で多めに課税されたんだけど、外国課税当局が細かく計算したら還付された(=本年中に減額された)」場合と推察されます。
「本年中に減額された外国所得税額」の記入欄、紙にはあるのですが、Webの申告書作成サイトには入力項目がありません。
上述のように、ここに数字が入るのは企業等の特殊な場合に限られ、Webサイト上では実装されなかったものと考えます。2欄は「プロ税理士か公認会計士さんが手書きで入力する項目」と思われます。
で、なんで2欄の計算をしているのか、という推測ですが、この「本年中に減額された外国所得税額」は還付で、国内税務上は雑所得にあたると思われ、還付された金額はちゃんと雑所得にして申告してね!(=雑所得の金額の計算上、総収入金額に参入します という注釈)ということかと思います。
タイトルも
2.本年の雑所得の総収入金額に算入すべき金額の計算
とあり、「外国から税還付された金額は、今年の雑所得として算入すべし!」と読めます。
こんな解釈でいかがでしょうか。
幣ブログをご活用いただきありがとうございます。
少しでも個人投資家の皆様のお役に立てれば、記事を書いた甲斐がございます。
また来年、必要なことがあればまた是非お越しくださいませ。
①米株の配当金生活のリタイヤを目指している為に外国税額控除を詳しく勉強していたのですが、記事に「年金者や専業主婦はそもそも国内所得がないので外国税額控除されない」とかいてあったのですが、申告分離課税でも外国税額控除できるので、その申告分離課税の所得にこの外国の配当所得もはいっていると思うので、その配当所得から国内で20%徴収された分から外国税額控除できるとおもうのですが、まちがっていますでしょうか?年金者も主婦も、外国税額控除をうけたいからには、その配当所得はありますよね?その配当所得の分の国内税金分はゼロになってしまうのでしょうか?
②私の理解力がなくて申し訳ないのですが、この配当所得以外に米国株の譲渡益もあったばあい、証券会社の特定口座にしているのですが、その米国株の複数の売買の利益額もすべて一緒に申告しなくてはならないのでしょうか? 配当額だけかけばいいと思っていたのですが、この記事を読んで、違うような?と思い…。すっきりと理解できなくて本当に申し訳ありません。
それと、米国の配当金額や米国株の利益が大きくなればなるほど帰ってくる額もおおきくなるという理解でよろしかったでしょうかm(__)m 色々聞いてしまい、本当に申し訳ありませんが、どうぞ宜しくお願いいたします。ほかのネットのサイトをめぐってもどうしてもよくわからなくて
mitsu様。ご質問ありがとうございます。
新たな気づきをありがとうございます。
さて、いくつか質問をいただいておりますが、質問ごとに分けて私見と試行の結果をお伝えいたします。
まず、①につきましては、自身が配当金だけで生きていくという心づもりがまったくないことから、まったく気にしていなかったのですが、結論から申し上げますと、「外国株の配当のみの場合でも外国税額控除が受けられる」です。
ただし、所得額(配当を含む)が基礎控除(今なら年額48万円)を超えていて所得税を支払っている場合に限られます。
「年金者や専業主婦はそもそも国内所得がないので外国税額控除されない」という記述は、そのような富豪資産家を想定していない記述です。年金者や専業主婦でそこまでの配当をもらっている方ってのはそんなにはいないという認識です。
(いないとは言っておりません)
申告方式は、分離課税でも申告課税でもどちらでも適用可能なようです。(確定申告書作成サイトで試行しました)
ということで、1番目のご質問は「国税を支払っていれば外国税額控除は適用可能(ただし還付額は状況次第)」か正しい理解になるかと思います。
2番目のご質問ですが、実は私自身が特定口座「源泉徴収なし」しか持っていないため、あやふやな回答になってしまうのですが、特定口座「源泉徴収なし」の場合、譲渡所得・配当所得の課税がまだ終わっていませんので、特定口座として確定申告書に記述する必要があります(年間でトータル損失が出ている場合は書かなくてもきっと怒られることはありません納税者が損するだけなので)。
一方で、特定口座「源泉徴収あり」の場合、私の理解では特定口座内(譲渡損益と配当所得通算)で課税関係終了となっていると思うので、このままだと配当所得が(確定申告書上)なかったものとして扱われる気がします(私見)。申告書上ないものは外国税額控除の対象にしようがないので、ここは安全策として、特定口座の取引内容は、譲渡損益も配当額も源泉徴収額もすべて確定申告書に転記するべき(それが安全)と考えます。
特定口座内での納税はすべて終わっていますので、確定申告書に記載することによってこの部分の税額が増減することはありません。
ご質問の意図と違っていたらすみません。
早速とてもご丁寧なお返事を下さり、本当にありがとうございます。
①について、仕事をやめてその仕事の収入と同じ位(サラリーマンの手取り位?)の配当金を想定しているので、基礎控除をひいても残ると思うので、配当金収入だけになった場合、その配当収入分から控除できるとわかり、安心致しました。配当金のみの収入なら外国税控除の勉強をする必要がないのかも、と不安でしたので…m(__)m
②について、「源泉徴収あり」の特定口座なのですが、あまり税務署に株の売買を何度も蒸し返して見せたくないし外国税額控除は全額帰ってくるわけではないのなら、20%ですむ国内の株の配当の方がいいなかな、ともおもったのですが、成長率が米株のが良いので…。
配当金額が大きくなればなるほど、外国税額控除でかえってくる金額の率もあがるのでしょうか?
そこがよく理解できなくて、、(計算式がすっきり理解できすにごめんなさいm(__)m)
なんども本当にごめんなさい。
よくYouTubeとかみると「米株の配当は外国税額控除すればいい」っていってるけれど、調べれば調べるほどに、全然かえってこないじゃん、と思って…。配当があがるほどに、満額ではなくても、ある程度がんんぶ率があがるという認識でよろしいでしょうか?m(__)m 本当に本当に申し訳ございませんが、宜しくお願いいたします。おれいもできずに本当に申し訳ありません。でも株の売買は蒸し返してみせたくないなあ、、、、
外国税額控除でどんだけの戻り率(額ではなくて率で考えたほうがいいと思います)になるかは、確定申告書作成サイトで予想される数字をいろいろ入れてみて、試算してみるのがいちばんいいと思っています。
ざっくりした計算ですが、所得税の課税額が少額ですと戻り率が悪いのは間違いありません。
計算式でいえば、外国税額控除限度額は
【所得税額】 × (国外所得額 ÷ 総所得額 )
となり、国内で支払っている所得税額が少なければ仮に外国で徴税されていても還付されません。
たとえば、収入が外国株の配当50万円のみだった場合、基礎控除で48万円控除されて課税所得が2万円のみ。所得税額は3063円にとどまります。
外国税で5万円先払いしていますが、還付額は3063円にとどまります。
一方で、収入が外国株の配当1000万円のみであれば、計算上、外国税額の100万円は満額戻ってきそうな試算が出ました。
いずれにせよ、ご自身の属性にあわせてデータを入れてみることをお勧めします。
特定口座の取引内容についてですが、私の理解では
・どんなに隠しても税務署は資料を取り寄せて確認する権限がある
・税務署員が取引内容や手法について納税者に文句をつける権限は一切ない
・特定口座明細書で計算されている数字はおそらく税務署員は疑うことはない
(一定ルールに基づいた取引履歴を証券会社が担保しているので疑う余地は極めて乏しい)
ことから、どんな取引内容であっても正々堂々と提出することがよいと考えます。
私が担当者なら、変に隠したり不自然な項目があれば逆に目をつけるだろうと思います。
また、外国税額控除を適用する場合、「特定口座年間取引報告書」の添付が必要です。
https://faq.sbisec.co.jp/answer/5eec74ca144d40001145dfff?search=true
ありのままを申告書に転記することが大事だと、私は考えます。
本当にお手数ですのに、とてもご丁寧に答えてくださり、ありがとうございます!!
額が大きいとほぼ満額になるのですね!!本当に参考になります!ありがとうございます!m(__)m。また自分でも想定額を決めてシュミレーションしてみますね。
配当をもらうと想定して考えてみると、たぶん原始は売買したりしてあまり動かさないと思います。分離課税の申告、本当にそうですねm(__)m!特定口座内で売買時に自動で納税完了しているので普通に添付するだけですものね。
私のつたない質問に、本当にご丁寧に答えてくださり、本当にうれしく感謝しております!本当にありがとうございました!