新年度のクッソ忙しいこの時期に、バランスファンド王子こと虫とり小僧さん(ブログ:いつか子供に伝えたいお金の話)の粋な計らいにより、金融庁で開催された積立NISAに関する勉強会に参加されると聞きつけ、長官室にワイン妖怪が出没したときに備えて警備するために金融庁まで行って来ました。

勉強会における説明内容やマニアどもによるマニアックな質問の数々は下記のように他の著名ブロガーさんが記述されておられますので、私はその他どうでもいいことを書いていこうと思います。

 「積立NISA」説明会(金融庁会議室)に行ってきました(ブログ:いつか子供に伝えたいお金の話)
 金融庁による「積立NISA」説明会に行ってきたよ(ブログ:インデックス投資トラベラー)
 金融庁による「積立NISA」説明会に参加しました(ブログ:人生もお金も海外分散する話)
 金融庁で積立NISAの説明会に参加(ブログ:シデとセルリアンの節約blog)
 積立NISA説明会@金融庁(ブログ:NightWalker's Investment Blog)
よくわかる積立NISA 積立NISA説明会at金融庁 参加レポート(1) 制度説明編(ブログ:"いい投資"探検日誌 from 新所沢)
金融庁の個人向け説明会に参加 積立NISAは株式投資普及の第一歩! (ブログ:アメリカ株でアーリーリタイアを目指す)
3分で分かる積立NISAのすべて (ブログ:たぱぞうの米国株投資)
積立NISA創設に込められた国家の意志―金融庁の積立NISA説明会に参加しての所感 (ブログ:The Arts and Investment Studies)

まず私の感じた結論から。

金融庁は豪腕を奮って超本気で株式を通じた国民の資産形成を後押ししようとしている

ということです。

事前の報道情報等から、今回の積立NISAに適用可能な投資商品は極めて限定されており、これまでNISAを使っていた投資家の皆さんからは、「金融庁は投資家の投資先にまでケチつけるのか!」とか「金融庁による統制経済か!」などという声もあり、私も「そもそも投資というものは一個人の責任でやるものであり、自己責任なのだから、監督省庁が過度な規制をかけるのはけしからん!」、担当者を吊るし上げてやるっ! と息巻いて金融庁に向かいました。

そして見事に金融庁に潜入を完了。
SNAKE

勉強会がはじまり、金融庁からの説明を聞くと、あぁ、自分の考えは自分だけが得をすればいいと考えている狭い考え方なんだなぁ。という気がして参りました。

今金融庁が考えているであろうことは、国民全体の資産形成、ひいては「国際分散投資による国富の増強」なんだなぁ、というのが感じ取れる議論(舌鋒鋭い某参加者の方がジャーナリスティックに「それ」を聞き出そうとしていたが、さすがは霞ヶ関、そこは言質を取らせません(苦笑))でした。

日本国内の現状を考えてみると、製造業の衰退もあり、かつての高度経済成長期のような経済発展や雇用が望めるわけではなさそうです。地銀を監督している金融庁から見て、地銀は本業である融資によって地域経済を支え、発展させろと発破をかけても、実際地方で伸び代のある企業なんぞそうそうないわけです。そこは金融庁もうすうす分かっている。

それならば、国内で産業興して稼ぐだけじゃなくて、お金に働いてもらえばいいじゃない! だって個人の金融資産は結構あるんだから! ということなんだと思うわけです。

今眠っているお金は、ほぼほぼ「投資に無縁な方、投資が怖い方、投資に一歩踏み出せない方」の手中にあります。既存の投資家の手元のお金は多くはありません。(金額ではなくて人数の問題です)

大多数の国民が投資に対する恐怖心と証券・銀行業界に対する不信がある中で、積立NISAに関してははじめての投資家が踏んで死んでしまう地雷があってはならない。「豪腕金融庁」というレッテルを張られてもやらねばならない、そういう強い意志が、金融庁から感じられるわけです。

私は感じました。
「積立NISAは投資に興味がない、投資に踏み込めない大多数の一般国民向けの投資チュートリアル制度なんだ」と。一方で、「これは間接金融の終わりのはじまりなのかもしれない」とも思いました。
NISA1


既にゲームをプレイしているヘビーユーザーはいまさらチュートリアルやっても面白みがない、それはわかります。ただ、ゲームをDLしてプレイしてもらうためには、超難解なゲームをいきなりプレイするのではなく、ある程度の制限があってもいいから基礎を理解するモードがあったほうがいい。積立NISAはそんな制度なんだと思うわけです。もちろんヘビーユーザーがチュートリアルで遊んだって構わない。

また、既存投資家の方にしてみれば、確かに投資先が絞られ、面白くないことは間違いないと思うのですが、そこは先行者、勝利者の余裕。投資に興味のないひよっ子に対して暖かい目で見守ってやろうじゃないですか。
損してトク取れではありませんが、減税措置の対象が絞られてもそれ以上に投資人口が増えて市場が活性化して株価上昇につながればwin-winです!(実際はそんなうまくいかないと思いますが)


さて、ここで話題を変えて、そもそも積立NISAの親というかルーツってなんだったんだっけ?
っていうことを思い出していきたいと思います。

積立NISAの親は現行NISAです。現行NISAって、どっから出てきたのか、って辿ると、「証券軽減税制の廃止」
なわけですね。当時、きっとこんな攻防があったものと思われます。
財務省:譲渡益課税を10%から20%に上げますよ!(後述しますが実際は「戻しますよ」が正解)
証券業界&業界御用マスコミ:「株離れが~」「株価暴落!」「日本経済崩壊してもしらねーぞ!」
国民の代表:「経済は政権維持の生命線や、よっしゃ任しとき!」
金融庁:「国民の健全な資産形成のための少額非課税制度....」
国民の代表:「よっしゃ、それや!」
証券業界:「そんなチンケな制度じゃ~」
国民の代表:「よっしゃ、増額じゃ!」
財務省:「既存の仕組みの延長線上ですからね」
てな感じだったと思うんですよね。

ただ、この財務省の言う「既存の仕組み」ってのが曲者で、要するにこれは「租税特別措置」という制度なわけです。本来、法で定められた課税額や率に対し、「(何かしらの理由をつけて)特別に減税してやろう」というのが租税特別措置。特別なんで、基本的に時限つき(延長あり)の制度です。

証券税制の推移と租税特別措置の延長の歴史は他サイトですがよくまとまっていましたのでこちらをご参照ください。(PDF注意)
株式会社資本市場研究所きずな 「証券税制の変遷」
すなわち、

 ・前述の証券軽減税制(譲渡益10%課税)もこの租税特別措置の枠内での制度
 ・現行NISAもこの租税特別措置の枠内での制度
 ・積立NISAも当然、この租税特別措置の枠内での制度


ということになります。
ただ、積立NISAについては制度が20年、非課税期間が20年の合計40年間の非課税措置が確定しており、租税特別措置としては異例の長期間の設定になっていることは特筆に値し、一部報道によれば証券税制を決める謎の会合に「お前らじゃ埒があかん、森を呼べ!」と言われて呼び出され、この異例の長期間の特別な制度を認めさせたとされる方のパワーに感服です。

界隈ではNISA制度の恒久化、非課税期間の恒久化という要望があるのは重々承知していますが、そうなると、DC制度のように制度のために法律1本必要(DCの場合確定拠出年金法(平成十三年六月二十九日法律第八十八号)で規定)だなというのが感想で、法律1本立てるってのは、相当のパワーが必要だなぁ、というのが正直なところです。
金融庁にあっては、法律の制定に向けて着々と準備を進めていただければと思います。

一方で、投資家側としても、ただただ制度の不備に文句をつけるだけでなく、本制度が国民の資産形成に資するために重要な制度だと認識した上で、多くの人にその存在を知らせていき、多くの利用実績を積んで
いくためのささやかな努力を続けていく必要
も強く感じました。

余談(1): 質疑中、担当者の口から「泳げます」というマニア用語が出てきたのにめっちゃツボりました。※わかる人だけ分かればいい。泳力検定とか関係ないです。

余談(2):勉強会終了後懇親会が開催され、KC庁に事前にもたらされた情報によれば、ワイン妖怪が出没し長官室への侵入を試みる可能性があるとのことでしたが、金融庁内の厳しいセキュリティシステムに守られ、ワイン妖怪の出没はなかったとのことです。しかし、実際は警備システムによる功績ではなく、私テリーが会場内の警備にあたったおかげだと自負しております。
※要するにワインを飲みそびれた。泡が1本だけあったはずなんだが「熱い投資家さんと熱い議論」をしてるうちになくなっていました。熱い投資家さんに金融庁長官賞が与えられるべきです。