昨今、金融庁が「平成29年度税制改正要望について」という公式リリースを出し、来年度以降の税制改正要望(あくまで省庁側の要望であって、今後各所で議論が行われますので本決まりではない)を出しました。今回、この資料をもとに、「金融庁がかんがえた さいきょうの とうしかんきょう」について述べてみたいと思います。まずは公式資料。

平成28年8月31日付 金融庁公式報道発表資料

金融庁の平成29年度税制改正要望について (PDFダウンロードのためのリンクページ)
http://www.fsa.go.jp/news/28/sonota/20160831-3/01.pdf (PDFの直接ダウンロード)


まず最初に私の結論。


今回の金融庁の税制改正要望は、実に攻めている、イケてる! 金融庁、GJ!


    ∩
    ( ⌒)     ∩_ _
   /,. ノ      i .,,E)
  ./ /"      / /"
  ./ / _、_   / ノ'
 / / ,_ノ` )/ /  FSA,
(       /  good job!
 ヽ     |
  \    \




  _n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )   金融庁
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!!
     /    /



まず、要望項目から見ていきたいと思います。PDFの表紙の次の1ページ。
サマリーが書かれております。
役人世界に限らず、どの世界でも、筆頭に来る項目が「イチオシ」の施策です。

その筆頭に来たのが

1.活力ある資本市場と家計の安定的な資産形成の実現

です。まさに、個人投資家向け施策がトップ項目なわけです。

細目を見ますと、

◆少額からの積立・分散投資の促進のためのNISAの改善
◆金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)
◆上場株式等の相続税評価の見直し等


とあります。金融庁、やはりNISAイチオシです!
3ページを見ますと、NISAの要望項目が出てきます。
そしてその中での筆頭の施策として、

○「積立NISA」の創設(現行NISAと選択制)
・年間投資上限額:60万円、非課税期間:20年間

とあります。現行NISAと2制度をつくっていくという二方向作戦のようです。

さらに、さんざん「使えない」「わかりにくい」とご批判も多い現行NISAの制度改善も要望しています。

(現行NISAについて)←筆者加筆
○非課税期間(現行:5年間)終了時の対応
○投資可能期間(現行:平成35年まで)の恒久化

とあります。
やはり現行NISAが5年縛りのために、本来金融庁が考えていたであろう「広く一般国民が少額の(長期)投資を行って、その果実には特典を与えよう」という意図から大きく外れ、「5年間限定の株式ギャンブル枠」に使われてしまっている現状を何とか変えたいという意思が感じられます。

特に、新設の積立NISA。はっきり言って、これいいです! 今回はこの積立NISAについて、私見を述べてみたいと思います。

これが広く多くの人に使われるようになったら、わが国の金融資産の配分が貯蓄から株式等投資へ大きくシフトする起爆剤になりそうです。

NISAの「枠」の仕組み、はっきりいてわかりにくいのですが、他の方から聞いた「枠」のわかりやすい説明として、枠は「賞味期限付の(金融商品)保管庫」と考えるといいと聞きました。

現行NISAは、毎年正月に、120万円の新たな「保管庫」がお上から下賜されると考えます。(はぁ財務省様ありがたやぁ~)

2016-09-15 (現行の概要)
(上記金融庁作成資料を引用)

5年間通算で、箱は計5個もらえます。そして6年目。最初の箱の賞味期限が切れて使えなくなってしまいます
さてどうしましょうか? そこで出てくるのが6年目の新しい箱です。
この6年目の箱をどう使うか? 

(1) 賞味期限が切れた1箱目の中身を移し変える
(2) 1箱目は別のところへ持っていって6箱目は空のままとし、昨年までと同様に新たに何か買って入れる

という選択になります。

(1)を俗に「ロールオーバー」と呼んでいます。古くなった箱から新しい箱に移し変えるわけですね
(2)は1箱目の中身を課税口座(一般口座/特定口座)に移すという作業です

いずれにしても、大事なのは現行NISAは「下賜され、賞味期限内の箱は最大5個までだよ」ということです。これを考えると、箱に目いっぱい入れられるのは120万円×5箱で600万円だよ。ということになります。(ただし、実際はNISA制度はじまった頃の枠が100万円だったので実際はそれより少なくなります)

この仕組みを理解した上で、積立NISAを見てみますと、積立NISAは、

・年間投資上限額:60万円、非課税期間:20年間

とあります。上限額ショボいじゃん! と思うのですが、実はそうじゃない。
先ほどの箱を思い出していただくと、非課税期間20年なので、実は箱は最大20個下賜されるのです!

2016-09-15 (積立NISAのイメージ)
(上記金融庁作成資料を引用)

すると、60万円×20箱=1200万円分の賞味期限内の箱をもてることになります。

これはなかなかすごい額です。

積立NISAを使う場合は、今までのような金融商品何でもおっけー、ではなく、積立による資産形成に適した金融商品に限る(規制する)という雰囲気を見聞きしておりますが、NISAの設立趣旨を考えると、先物を使ったり、レバレッジをかけたりした金融商品は適切ではなさそうに思いますので、この規制は(どのような縛りになるのかの制度設計は別として)決して筋は悪くないように感じました。ここの制度設計は今後、金融庁担当者の腕の見せ所だと感じております。

現行NISAと積立NISA。個人的には複雑すぎる前者をもうやめちまえ! と思わないではないのですが、そもそもこの制度が証券税制の本則化(時限優遇措置の廃止)の代償だった歴史的背景を見ると、証券会社や富裕層への配慮という「大人の事情」も見え隠れし、担当者の苦労も垣間見える気がしないではありません。

今回は金融庁イチオシ筆頭施策の積立NISAについてご紹介しました。
最後に、金融庁が提示した資料を見て終わりにしたいと思います。

2016-09-15 (20年の損益分布)
(上記金融庁作成資料を引用)

適切に分散した金融商品を5年間積み立てた場合と20年間積み立てた場合のリターンの分布を示したものです。長期になれば、どんな相場つきが悪いときにはじめても、マイナスになることはなかった、というデータです。逆を言うと、どんなにいいコンディションではじめても、結局は相場の波に揉まれて決して大きなリターンは得られないのだ、ということも示しています。
これを見て、読者各位がどのようにこのグラフを解釈するのか、(いろんな解釈ができると思います)非常に興味深いところです。


次回は現行NISAの運用改善について触れてみたいと思います。

しかし書いてて思った。

今回、真面目かっ!

※ふぅ~ これで次回開催ののFOYの投票権が獲得できた(はず)。