「梅園」の生菓子
 和菓子屋に行くと、必ずショーケースをのぞく。
 そこには、練り切りの生菓子が並んでいる。季節の風物をかたどった、色とりどりの菓子は、見ているだけで楽しくなる。「うまそう」よりも「きれいだなぁ」と視覚に働きかける、食いしん坊の私にとって数少ない食べ物だ。

 カミさんの実家に出向いた際、おみやげに生菓子を買った。
 あれこれ選んで小箱に詰めると、まるで宝石箱。食べるのがもったいなくなった。食べたけどね、結局。
 熊本市川尻の「梅園」とは10年以上、仲良くさせてもらっている。店主はさっぱりと明朗闊達で、義理堅いナイスガイだ。

 私とカミさんが結婚する時、引き菓子を頼んだら、「お祝い代わり」と披露宴の待合い室まで出張し、茶菓を実演で作ってくれた。練り切りを細工する様子を見物してもらう趣向は、来賓に大好評だった。

 ちなみに、引き菓子は小さな二段重の弁当風。一段目は赤飯を模した小豆時雨、二段目はおかずを模した生菓子で、こちらも好評を博した。

 今でも親戚から「あんたの結婚式の引き菓子、凝っていて良かったねぇ」とほめられるのだが、当事者だった私はバタバタしていて食べられなかった。
 悔しい。もう一度結婚…は無理か。“幻の菓子”になってしまったな。