『ラスト.ワルツ』
 私には“マンガ読みの師匠”みたいな人物がいる。ある師匠と縁が切れても、不思議と、新たな師匠に巡り会う。おかげで、常に良質のマンガが読める。
 現在の師匠は、ウチのカフェの常連客。私が知らない、そして、知っておくべき、珠玉のマンガを教えてくれる(ありがとうございます)。

 そんな中でも、「これはっ!」と驚嘆したのが本作。
 島田虎之介のデビュー作。2000年に雑誌連載が始まり、2002年に単行本としてまとまった。
 最初に目を引いたのは、絵だ。
 太くて軟らかな描線、白と黒のみの素朴な味わい、大胆で無駄のないデフォルメ…初期の手塚治虫や杉浦茂を思わせる、古き良き“児童漫画”みたい。なのに、どこかスタイリッシュだったり、トボけた飄味も感じられる。

 物語は、短編のオムニバス形式で始まる。ブラジルで作られた幻のオートバイ、チェルノブイリ原発事故で生き残った消防士、コロンブス以前にアメリカ大陸にたどり着いたというバイキングたち、作者宅を訪ねて来日したブラジル移民の親戚…法螺とも実話とも知れないが、妙に興味をそそる物語が並ぶ。
 それらが次第にまとまって、ひとつの神話的な光景へ収れんしていく。

 異なる場面をクロスカットで見せたり、時系列を無視して印象的なシーンを挿入したり、徐々に緊張感を高めていく手法は映画的。実に巧みで、読ませる。
 デビュー作でこの完成度かよ…と感心させられました。

 作者は以後、2年1冊のペースでマンガを発表。いずれも評価が高い。
 2年も待たされるのは、少々つらいぞ。…ねぇ師匠、“中継ぎ”になる面白いマンガ、教えて下さいよ〜。