天竺堂が書き残したコメント
 パネルにはさまれた細長い通路は、幾度も折れ曲がり、まるで迷路。だが、展示されている作品を見れば、順路はおのずと明らかになる。
 ひとつひとつの作品は、超一流の画力で描かれたマンガ。それらが1ページずつ並んでいる。…この「マンガ展」全体が、一冊のコミックなのだ。

 熊本市現代美術館。『バガボンド』の作者・井上雄彦が、剣豪ゆかりの地であり、自身が大学時代を過ごした熊本で、マンガの作品展を開催した。
 吉川英治の『宮本武蔵』が原作だが、もはや『バガボンド』は別物へ育ちつつある。宝蔵院胤舜がライバルとして確立していたり、佐々木小次郎が聴覚障害者だったり…作者による興味深いアレンジが加えられている。
 私個人は、細部を掘り下げるあまり冗長化している『バガボンド』より、身体障害者を取り巻く世界を丹念に描いた『リアル』が好み。…とは言え、日本が誇るマンガ群の頂点付近に、大作『バガボンド』が位置することは間違いないた゜ろう。

 展示の大半は、マンガの生原稿。その間に、高さ2メートルを越える壁画や、和紙に描いた水墨画なども。さらに、照明に変化をつけたり、展示空間を広くしたり狭くしたり、小道具を配したり、作品の“外”までマンガをハミ出させたり…観覧者=読者への心理的効果を狙った趣向が凝らされている。

 死期を迎えた武蔵が、霊厳洞で生涯を振り返る…という内容。写真集にまとめられているので、会場に足を運ばなくても読むことはできる。しかし、見せ方にまでこだわっている作者の真意は、会場でなければ伝わらないだろう。
 空間や状況そのものを美術作品とする「インスタレーション」に近いかも。

 この手法で、『北斗の拳』や『ジョジョの奇妙な冒険』を展示したら…なんて想像してみた。核戦争後の廃墟みたいなセットにマンガが展示されているとか、意味もなく「ゴゴゴ…」という効果音が会場に響くとか。

 会場を出ると、観覧者が感想を書き込めるコーナーが。ビッシリと書かれている中、私も一筆寄せたけれど、他の人の書き込みに重なってしまいました。ゴメン。