「マルイチ食堂」の塩ラーメン
 熊本の地鶏「天草大王」。絶滅種が2000年に復元され、4年後に地鶏の認定を受ける。一般向けの小売店にはほとんど出回らないものの、たちまち特産品として認知された。
 普及の背景には、ネーミングが大きく貢献していると思う。とてもキャッチーで、記憶に残る。実物を見たことがなくても、立派なニワトリの姿が浮かぶではありませんか。

 熊本市の中心街、下通アーケード脇の酒場通にある「マルイチ食堂」。ここはラーメン専門店で、天草大王を使った塩ラーメンが楽しめる。
 店のご主人は、熊本市田迎の「いっぷくラーメン」も経営している。昼は「いっぷく」に出て、夜は「マルイチ」に立つという。ハードに思えるが、ご主人の働きぶりは実に楽しそうだ。

 メニューは塩ラーメンとギョウザだけ。店構えも飾り気がない。カウンター7席、テーブル4席。

 出てきた塩ラーメンは、これまたシンプル。
 天草大王のガラから取ったスープは、透明感のある黄金色。あっさりとしている。それでも滋味たっぷりで、身体の奥深くにジンワリと染み入る感じ。
 自家製の麺は、やや太め。縮れているので、スープが良く絡む。プリプリとして、どこか官能的な食感。

 ご主人は4年前、初めて天草大王を使ったラーメンを作り、地元のラーメン愛好者を集めて試食会を開いた。その後、試行錯誤を経て、塩ラーメンの専門店をオープン。周りからは「もっとメニューを増やすべきだ」との苦言や忠告が相次いだそうな。
 ご主人は「ようやく経営が安定してきました」と笑う。ラーメンをこよなく愛するご主人の、趣味的な面が具現化した店が、この「マルイチ」なのだろう。カッコ良いなぁ。

 チャーシューは豚肉(当然)だし、煮玉子は普通の鶏卵なので、お客から「どこに天草大王が入ってるの?」と訊かれるという。気持ちは分かるけれど、訊く前に、まずはスープを飲んでみよう。