新年早々、ちょっと刺激的なタイトルで恐縮だけど、大学職員を目指す上で、絶対に分かっていただいたうえで入職して欲しいので、あえて今回は、この話題に触れてみたいと思います。
まず、下の図[学校調査]の大学数(平成21年度大学基本調査より)の資料を見てください。
10年前の大学数とちょうど国立大学が法人化してからの過去6年の国立・公立・私立大学のそれぞれの数がわかる表となっています。
まず、真っ先に目につくのが、日本には773校もの大学があるのかということ。そして、この10年間で、なんと151校も増加たことです。
何故こんなに爆発的に増加してしまったのかというと、ちょうどバブル景気に沸いていた1991年、大学設置基準の規制緩和という大綱化策がとられたこと、さらには、2004年には構造改革特区による株式会社による大学設置も認可されたことにより、大学設置のハードルが低くなったことに要因があると思われます。
でも、現在の状況をみるにつけ、株式会社立大学は、軒並み経営状況が悪化し、学生募集もままならない状況、日本経済新聞によれば、平成21年度現在、私立大学の46%が入学定員割れという異常事態を招いています。
それでは、国立大学はどうでしょう。実に10年間で13校減少しているのがわかります。実は、単科大学と総合大学との統廃合などで数を減らしたのですが、毎年1%の効率化係数による、この6年間の運営費交付金の削減額が小さな大学の予算約13校分というのだから、ちゃんと計算が合ってしまいます。
国立大学は法人化することによって、しっかり経営努力という結果を出していることが、今回の事業仕分けでの減額査定にならなかったポイントでもあります。
次に上の図を見てください。大学・短期大学への進学率等の推移(国際教育交流政策懇談会資料http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/004/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2009/03/27/1249654_1.pdfより)ですが、平成36年度まで18歳人口の推測が出ていますが、今後、やはりこのように減少傾向になるとの予測は誰も疑いの余地はないでしょう。
しかしながら、進学率はどうでしょう。大学・短大合わせて平成20年で55.3%という数値が出て、さらに上向き傾向になっているじゃないですか。
でも、楽観視してはいけません。現在の日本の経済状況を見てもわかるとおり、授業料というネックがある限り、これ以上進学率が上がるどころか、今後は、経済的理由により進学をあきらめる人も多くなるかもしれません。この中に優秀な人材がいたとしたら、日本にとって国益を損ねるとまで思えます。
そこで、やはり国立大学の役割というのが、非常に重要になってくるのです。文系でも理系でも授業料がほぼ一定なのは、国からの運営費交付金があるからこそなのです。
事業仕分けで、もし減額査定されていれば、やむなく授業料大幅値上げをするところでした。
それでも、経済的に困窮している学生には、どの国立大学にも授業料免除制度があり、人数に限りはありますが、審査にパスすれば、免除を受けることもできます。
ただ、日本の平成21年の貧困率(15.7%)が発表された今、経済的に困窮してしている家庭は増え続け、現在の国立大学の授業料免除制度だけでは追いつかないのは明白です。
たとえば、大半の学生が利用する日本学生支援機構の奨学金は、貸与型であり、卒業・就職後は返済に迫られます。今の不景気下では、この返済が出来ない卒業生も増えてきており、
場合によっては、信用機構のブラックリスト名簿にも登録されてしまうことから社会問題にもなりかけています。
高校までの授業料実質無料化政策が採られる今、大学においても授業料免除制度の拡大や給付型奨学金の充実が、今後の国立大学には必要となるでしょう。
では、進学率をこのまま上昇させ続ければいいのかというとそうでもありません。増え続ける大学定員を埋めるには、入学選抜試験とは名ばかりの全員入学か、それでも足りない場合は、一時期問題になった、籍だけの留学生に頼ることとになります。そんなことでは、大学の教育・研究水準の低下という状況があちこちで起こっている以上、定員を優先するか質を優先するか、そのバランスによって、大学の将来も左右されるのでしまうのです。
最後に上の図でですが、これは、卒業者数、就職者数及び就職率等の推移(文部科学省資料)となっており、進学率がいったん上向いた後、平成21年3月卒業からまた下がり始めているのがわかります。そして、平成22年3月卒業生がまだ就職が未定の学生多数という報道をよく耳にしますが、恐らくさらにこのグラフが右下がりになると思われます。
というわけで、これからの大学は、いかに優秀な学生を入学させるか、そして、企業の目にかなう人材に育て上げ、就職率を上げるかという観点で、大学間競争が一層激しいものになると思われます。
だからといって、このまま増え続ける大学・定員を放置してはいずれ限界が見えることもわかっていますし、文部科学省も今まで手をこまねいていたわけでもありません。既に、2008年4月からは、大学設置基準等の一部を改正する省令が施行され、原点に戻って大学の設置には厳格化の方向に舵を切っています。
さらには、2009年3月からは、国公私立の高等教育機関相互の共同事業体形成支援という資源の有効活用を見据えた省令も施行され、いたずらに大学数を増やすのではなく、お互いが持っている資源を有効活用しながらお互い協力し合ってやっていこうというのがこれからの大学の姿なのです。国立大学職員となっても、今後は、公立・私立大学とのかかわりも増えてくると思われます。
タイトルは刺激的でしたが、決して戦慄の未来があるとは思えません。日本の国益を左右する高等教育研究機関は、国の最優先重要事項の1つです。是非とも国立大学の事務職員を目指す皆さんには、その重要任務を担っている一員としてのプライドを念頭に抱いて国立大学事務職員を目指して欲しいのです。