2009年11月

(4) 八千代市郷土歴史研究会

 大学の近く、勝田台で28日「ふるさとの歴史展」を見ました。多くの市民が八千代市の歴史を研究し、成果を発表しています。平戸村の人物・中台鴻亮を取り上げたコーナーに、甥の方がいらっしゃって、船の写真や地図の前で、幼少のころに帆掛け舟が平戸を通っていた思い出を語っていました。
 身近な土地について調べるうちに、一村だけでなく関東地方全体の社会のつながりが見え、その土地の人物を知るうちに歴史を生きた形で捉えることができる。
 それを発表することによって、鑑賞者の体験や意見を伺い、さらに歴史を深く認識する。文化の送り手が受け手となり、受け手が送り手となって行く。
 こうした文化マネジメントの好例を生んだのは、主催者である八千代市郷土歴史研究会の充実した研究と広報活動です。成果を広く市民に知らせることが研究にとって大切であることを知ったひとときでした。(奥山けい子)
 
 

(3) 増本伎共子氏の新作を聞く

CIMG1913 11月9日、青山恵子リサイタルで、増本伎共子作曲の「中也雑感」が初演されました。中原中也の詩「汚れっちまった悲しみに」「雲雀」「生ひ立ちの歌」「正午 丸ビル風景」。叙情的でありながら軽妙さも見せる曲で、聞き応えのある作品です。
 青山恵子氏は日本の歌曲の歌唱法の研究論文を書き、声楽では日本初の博士号を取得。リサイタル第2部で小島美子氏と対談し、クラシック歌手の陥りがちな「棒歌い」を話題にしていましたが、歌はそれとは無縁で日本語が生き生きと発声され、聞いている私も、歌の世界にまっすぐ入っていけました。
 何をどのように歌うかを探求し、日本の歌に正面から取り組んできた歌い手。津田ホールにつめかけた聴衆は大きな拍手を送っていました。(奥山けい子)

(2) 内藤明美リサイタル

CIMG1909 6日は東京オペラシティで、メゾソプラノの内藤明美リサイタル。メンデルスゾーン生誕200年にちなんで、ふたりのフェリックス。メンデルスゾーンとドレーゼケの歌曲を聞きました。
 わたしにとって初めて聞く曲ばかりです。
メンデルスゾーンはすがすがしく、ドレーゼケははるかに複雑で、ドイツロマン派の濃密な世界をたっぷり味わいました。ドイツ語の発音が明瞭で美しい。
 アンコール「島原の子守唄」は、聴衆がよく親しんでいる曲で、思いが自由に飛翔していきます。日本語の発音もやはり明瞭で美しく、せつなさが心にしみてきます。
 ヨーロッパと日本の芸術。構造の異なる音楽、言語の異なる歌詞が、ひとりの身体を通してともにまっすぐに伝わってくる、ゆったりとした一夜でした。(奥山けい子)

(1) 観世葉子さん講演

ブログネタ
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f7cd0b60.JPG11月9日、学科主催講演会が開催されました。
日本伝統文化学科が来年から2系統の科目(文化マネジメントとメディア文化)を新設するのに伴い、この2系統の理解を進めるための講演を実施し、第1回「日本の演劇を創る」を観世葉子さんにお願いしました。
観世さんは演劇人一家に生まれ育ち、俳優の仕事を選びとり学んできた経験、先輩たちが戦後、伝統芸能存廃の危機を感じて取り組んだ新しい演劇の歴史、また地域に芸能を根付かせる台東区の活動の様子などを述べました。そして伝統は形だけにとらわれるのでなく、なぜそうなっているかを考え、生き生きとした命を吹き込むこと、伝統芸能に取り組むには時間が必要なこと、芸能は見る人があってはじめて成り立つことなどを、熱く説きました。
観世銕之丞、観世寿夫、ジャン・ルイ・バロウなど、第2次大戦後の演劇の先端を担ってきた舞台、あるいは能「朝長」の写真の数々、また10月に上演された「昭和付喪神の出火事件簿」の映像など貴重な記録を交えた、内容の濃いお話で、学生はその美しい日本語の響きに感嘆していました。
最後に朗読を実演してくださり、学生は「一言一言の存在感が凄い」と深い感動の声を寄せています。
文化マネジメントは、文化の作り手と受け手をつなぐ仕事。今回の講演はこの仕事の重要性を私たち聴衆に十分認識させてくれました。(奥山けい子)
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