少し趣向を変えて隕石衝突説の話をしてみましょう。
6500万年前に恐竜を絶滅させたといわれる説ですが、現在は通説として考えられている隕石衝突説は人工衛星の調査利用によって1990年代になってアメリカとメキシコの間のユカタン半島に時代の一致するクレーターの痕跡が発見され、認められたとても新しい説です。
かつて隕石衝突説は学会から認められず妄想扱いされていましたが、人工衛星のおかげでクレーターの発見が容易になりました。
その結果、実は地球には多くの隕石が落下しており珍しい事例ではないことが分かってきました。
この事実は歴史の解明に新たな可能性を示しています。

隕石衝突にはふたつのパターンが存在します。
小惑星の衝突と彗星の衝突です。
恐竜を絶滅させた隕石は10キロはあるだろうという大きなものでした。
これは大絶滅といわれる隕石衝突で、地球に痕跡の残る限りでは2億年ごとに5回起きています。
そのたびに大絶滅と新たな生命の誕生が繰り返されています。
そういう意味では人類誕生になくてはならない出来事でした。
大絶滅が定期的に起きていることを考えると、これは彗星である可能性が高いと思われます。
それも巨大な宇宙空間でピンポイントで地球に衝突するとは恐るべき命中率です。
地球の運命と考えるしかないですが、恐らく惑星の引力などによって、同じパターンで彗星の軌道が決まり地球に引きつけられているということでしょう。
現状では2億年周期を信じればまだ1億3500万年は安心ということですね。

しかし実は安心もしてられない問題もあります。
地球に残るクレーターを調べると500年〜1000年の周期で小さな隕石衝突が起こっていることが分かっています。
これは氷河に残る降り注いだと思われる塵の酸と、年輪の成長を示す気候の年代測定でも一致した痕跡が見られます。
簡単にいうと隕石が地上に落下した場合塵を巻き上げ気候を寒冷化させ、海に落下すれば地殻を破りマントルが吹き出して海水を蒸発させ、サウナのように温暖化が起こるのです。
この事例は本来急な気候変更の起こる状況にない地球で、突然氷河期が始まったり終わったりといった状況の説明を可能にします。
恐竜を絶滅させるほどの大きな隕石ではなく、気候変化を起こす程度の隕石衝突が起こったと考えられます。
500年〜1000年という周期はとても身近なものです。
ヨーロッパに残る記録によれば12世紀に彗星が地球に衝突しています。
ある時期から飛んでいた彗星がある年2個になり、翌年は来なくなったという記録です。
これを検証すると方角や年代から獅子座流星群に行き当たるそうです。
獅子座流星群は彗星が地球の引力によって割れた彗星の痕跡で、本体は地球に落下したと考えられています。
毎年5月と11月に彗星の軌道上を通過するので流星群が見られるのです。
日本では11月によく見えるのですが、記録によると落下は5月ということらしいです。
彗星は猛スピードで進行方向へ進む力と、地球の引力によって引っ張られる力によって割れてしまいます。
そしてやがて地球の引力に負け落ちてくるのです。
近年ではツングースカ大爆発という、恐らく彗星の落下とおもわれる出来事が1908年に起きています。
人のいない場所で被害が少なかったので良かったですが、危機はとても身近なところにあります。

しかしこれは歴史的にとても可能性のある発見です。
旧約聖書のモーセの伝説にエジプトからイスラエル人と逃げる途中、海を割るという有名な出来事がありますが、この伝説の解明を可能にすることもできるのです。
旧約聖書には同時期ナイル川が7日間血のように赤く染まったともあります。
これが隕石衝突による鉄分の混入で赤く染まったとすれば、海が割れたのも隕石衝突の影響と考えることができるのです。
スマトラ沖地震でもあったように地殻の衝撃は海水を引かせ、その後洪水を引き起こします。
モーセたちが海水の引いた海を渡った後、後を追ったエジプト兵が洪水に飲み込まれるという出来事とも一致します。
これは面白い発見ですが、もっと重要なことがあります。
モーセはいつの時代の人間であるか不明なのです。
ところが隕石衝突という可能性を探れば、場所の一致するクレーターや年輪や氷河に残る痕跡から時代の特定ができ、そこから旧約聖書の書かれた年代、出来事の年代の特定も可能になるのです。

これを基本に考えていくと、日本の歴史の謎も解明に近づくことができるでしょう。
寒冷による飢饉などは隕石衝突の痕跡が発見できれば文献の正しさと年代の確定に繋がります。
王朝の交代には飢饉が関わっていることも多く、年代の特定の可能性はとても魅力的です。
もっともまだ研究は始まったばかりでしかも人工衛星という技術力はNASA、アメリカの専売特許のようなもので自由にというわけにはいきません。
残念ですが歴史の解明にはもうしばらく掛かりそうです。
うまく研究が進めば縄文時代、弥生時代の興りのきっかけが見つかり年代の特定もできるかもしれません。


余談ですが、獅子座流星群を残した12世紀の日本は平安時代末期で、長承(ちょうしょう)の飢饉(1134年)、久寿(きゅうじゅ)の飢饉(1155年)、養和(ようわ)の飢饉(1180〜81年)などとして記録されています。
これらがきっかけで源頼朝、義経により鎌倉幕府が開かれています。
もしかしたら日本にこのときのクレーターの痕跡があるかもしれません。
カルデラが実はクレーターということもあるようですからね。