2017年12月

スティーブン・バノンの日本訪問の何が問題なのか



banonn


スティーブン・バノン氏について書いた2本の記事を読んだ東京の友人の渋谷君が、「なぜそれほどバノンにこだわるのか」と言ってきた。

僕はすぐにメールで彼に回答した。

スティーブン・バノンを称揚する、彼と同種の日本人は異様です。

彼らは差別、ヘイト、排外主義、不寛容などで共通しているが、バノンは白人至上主義者で日本人は黄色人種。バノンやトランプの蔑視の対象です。

なのにそれらの日本人が彼らを崇めるのはなぜか。それは彼らが自らを白人と無意識に思い込んでいるバナナ人間だからです。バナナは表は黄色いが中身は白い。

だが果物のバナナは、バノンを嘆賞する日本人のように自らの表皮の色を忘れて白などと思い込むことはない。

果物のバナナはバナナのままで在ることにより、実はそれらの日本人よりもはるかに上等な存在なのです。


ところがその後、複数の人からも「なぜバノンにこだわるのか」という趣旨の便りをいただいた。

考えた末、僕は渋谷君への手紙の内容をもっと詳しく書き換えて、僕の真意をブログにまとめて公表しておくことにした。

僕が2回に渡ってスティーブン・バノン氏に言及したのは、彼をアイドル化する日本のネトウヨヘイト系排外主義者らのあり様に危機感を覚えるからである。

ネトウヨヘイト系の排外主義者は、ここイタリアを含む欧州各地にも世界にもいる。彼らの正体は「極右」という言葉でも表せるExtremist(極端・過激論者)である。

彼らは自らの極論に凝り固まって他者の意見に耳を傾けず、ひたすら憎しみを増幅させて心身共に凶暴になる。その主たる結果がWEB上のヘイト書き込みなどだ。

そうしたことは日本と世界のネトウヨヘイト系排外主義者や差別主義者に共通する特徴だが、実は日本人だけが有している異様な性状がある。

それらの日本人が、自らをアジア人あるいは黄色人種とは考えず、白人と同じかそれに近い人種である、とほとんど無意識のうちに見なしている点である。

日本人が日本以外のアジアの国々を「アジア」と呼んで、自らをその外の存在のように捉える滑稽はよく見られる光景である。そこには日本人の優越意識が隠されている。

中国や韓国また北朝鮮を蔑視することが多いネトウヨヘイト系排外主義者や差別主義者の心中には、優越意識に憎悪が加わることが特徴だ。

彼らは、自らを「白人」とまでは見なしてはいなくとも、アジア人とは違ういわば「準白人」とでも呼べる地位に自分自身を置いている。

そのために、アジア人や黄色人種を「白人至上主義」思想によって蔑視している者とも安易に手を握る。あまつさえそれらの者を称揚さえする。彼らがバノン氏やトランプ氏を賛美するとはそういうことである。

世界の、特に欧州の極右勢力が、日本人のようにバノン氏を招聘してトランプ主義を熱賛させたり、彼自身を賞嘆することは考えにくい。

欧州人は欧州人としてのアイデンティティー(主体性 )を何よりも優先させるから、バノン氏の「米国流極右思想」とは距離を置くだろう。

同じ極右でも、主体性なくトランプ氏やバノン氏に尻尾を振る日本の極右とはそこが違う。またたとえ彼らと手を取り合って喜ぶ欧州ネトウヨヘイト系排外主義者や差別主義者がいたとしても、彼らはトランプ氏やバノン氏と同じ正真正銘の白人である。

従って、たとえ彼ら自身もまた白人至上主義を密かに胸中に抱いていたとしても、論に齟齬は来たさない。再びそこが、バナナのネトウヨヘイト系排外主義者や差別主義者の日本人とは違う点である。

僕が欧州の地にいて、日本のトランプ主義者を観察するときに感じる違和感や嫌悪感は、彼らがネトウヨヘイト系排外主義者や差別主義者であるという事実に加えて、「自らをアジア人ではないかの如くに振る舞う」ところにある。

そうした傾向は、日本が明治の開国以来、欧米に追いつくために必死に彼らの猿真似を重ねて国を近代化し、それを成し遂げていく過程で培われた。目新しいものではない。

だがトランプ大統領の誕生によって、世界が分断されつつある今こそ、その恥辱の性根や思い上がりを捨てて反省し、自らのルーツに立ち返るべきである。

極右勢力を含む日本人は、そのときこそ、友人とは名ばかりの「ご主人様の」米国と対等な付き合いができるようになり、世界中の誰からも真に一目置かれる存在になるだろう。






年を取るごとに時間経過が早く感じられるのはデジャヴ(既視)感のせいである



2012年12月600



さて、また大晦日である。時間経過のあまりの速さに心中おだやかではないものが出没するのは年齢のせい、ときめつけるのはたやすい。それに続く言葉は「残された時間の短さや大切さを思って~」という類の陳腐なフレーズである。

若くはない自らの年齢を時々思ってみるのは事実だが、そして残された時間をそのときに「敢えて」想像したりしないでもないが、実感は正直ない。再び「敢えて」先は長くないのだから毎日しっかり生きよう、と自身を鼓舞してみたりもするが、そんな誓いはまたたく間に忘れてしまうのだから無意味である。

年を取るごとに時間経過が早く感じられるのは、「人の時間の心理的長さは年齢に反比例する」というジャネーの法則によって説明されるが、それは要するに、人は年齢を重ねるに連れて見るもの聞くものが増え、さらにデジャヴ(既視)感も積層して興味が薄くなる、ということなのだろうと思う。

どこかで既に実体験していたり経験したと感じることなので、人はそこで立ち止まって事案をしみじみと見、聞き、感じ、吟味して、勉強することが少ない。立ち止まらない分、人は先を急ぐことになり時間が飛ぶように過ぎて行くのである。

そこには大人の驕りがある。年齢を重ねて知っていることも事実多いのだろうが、無駄に時間を費やし馬齢を重ねただけで、実は何も知らない知ったかぶりの大人は自分自身も含めて多い。それでも知ったつもりで、人は先へ先へと足早に進むのである。死に向かって。

すると理論的には、知ったかぶりをしないであらゆるものに興味を持ち続ければ、人の時間はもっとゆっくりと過ぎて行くと考えられる。だが僕の感じでは、少し違う。

知らないことがあまりにも多すぎて、その過大な未知のもろもろを学び、知り、体験するには、一日一日が短かすぎる。短かすぎる時間の経過(毎日)の積み重ねが、すなわち「時間の無さ感」を呼び起こすように思う。

つまり、時間が疾風よりも光陰よりもさらに速く過ぎていくのは、「一生は短い」という当たり前の現実があるからである。その短い一生を愚痴や、怨みや、憎しみで満たして過ごすのはもったいない。人生にはそんな無駄なことに費やす時間などないのだ。

と、何度も何度も繰り返し自らを戒めるものの、人間ができていない悲しさで日々愚痴を言い、怨み、憎む気持ちが起こる。その度にまた自戒する。

結局、人の人生の理想とは、多くの事柄がそうであるように、愚痴らず、怨まず、憎まない境地を目指して、『試行錯誤を重ねていく過程そのものにある』と思うのである。

閑話休題
間もなく紅白歌合戦が始まる。イタリア時間では午前11時15分。それを見ると熱燗で一杯やりたくなって、一杯がどんどん重なって結局一日が終わってしまう。

そこで夜の再放送を見ることにして、ことしも多かった「書きそびれた事ども」を整理することにした。年内に物事を片付けて新年をあらためたくなるのは、日本人の癖である。

何年外国に住まおうと変わらない・・



イタリア総選挙へ向けてのドタバタが始まった



マタレッラ国旗


イタリアのマタレッラ大統領は12月28日、議会を解散した。これを受けて総選挙が来年3月4日に行われることになった。

選挙戦の主な争点は、地中海を渡ってイタリアに流入し続ける難民・移民への対応と国内経済の立て直しである。

12月28日現在の世論調査の支持率は、ポピュリズム政党の「五つ星運動」が28-29%でトップ。中道左派の与党民主党が23%、中道右派のフォルツァ・イタリア16%、極右の「北部同盟」と「イタリアの同胞」がそれぞれ13%と5%である。

「五つ星運動」が単独政党としてはトップの支持率だが、単独過半数には届かない見込み。また同党は他党との連立を組まないことを明言しているため、政権入りは難しい。

第2党の民主党は内部分裂が極まって支持率が急降下。党首のレンツィ元首相を首相候補に立てない方針での人気回復を目指している。

ほぼ4年近く前、39歳の若さで首相の地位に就いたレンツィ氏は、政権も担当中も「壊し屋」の異名通りに政敵や党友を排除する強引な手法で反感を買った。

2016年12月、彼の最大の政治目標だった上院改革・憲法改正を問う国民投票で敗北。首相を辞任した。

その後復活を目指して民主党党首選を制するなど求心力の強さを見せつけた。同時に彼の独善的な政治手法への反感が募って民主党は分裂。

レンツィ氏は党を割って出た者を「少数派の独裁者」と断罪するのみならず、居残った者への批判も続けて党はさらに分裂。民主党と党首自身の沈下はとどまることを知らない。

新興政党の「五つ星運動」への人々の疑心暗鬼と、内部分裂の激しい民主党への国民の倦厭感をうまく捉えて支持を伸ばしているのが、ベルルスコーニ元首相が主導するフォルツァ・イタリア、北部同盟、イタリアの同胞の3党による中道右派連合である。

同連合は2017年11月5日、イタリア・シチリア州知事選を制して勢いづき、来年の総選挙で最大会派になると見られている。ただし、脱税で有罪判決を受けた81歳のベルルスコーニ氏は首相には就任できない。

2017年は欧州で総選挙が多く実施され、各国で極右政党やポピュリズム政党が台頭した。オランダ、オーストリアまたフランスでもルペン氏率いる国民戦線が躍進。

9月のドイツの選挙では反移民・反イスラムの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が大きく支持を伸ばして世界を驚かせた。それらの動きがBrexit(英国のEU離脱)や米トランプ主義と連動しているのは周知の事実である。

イタリアにも政治変動の大波は押し寄せていて、トランプ大統領の誕生時に「彼に続け」と党首が叫んだポピュリストの「五つ星運動」が強い勢力を堅持。

極右の北部同盟とイタリアの同胞は、前述のように中道右派のベルルスコーニ氏と提携して政権入りをしそうな勢いである。




ギリシャ、エーゲ海の島々の食日記~エピローグ 



タコ干しヨリ800



ギリシャ・エーゲ海の島々の中でも最大、且つ最南端のクレタ島は、肉料理が豊富である。

また小さなレロス島では、豊富な魚介料理のうちでも日本の刺身に影響された「刺身マリネ」の一生懸命さが印象的だった。

島が大きいほど肉料理が充溢しているように見えるのは、陸地が広い分だけ野生の動物も多いのが理由だろう。

また家畜の場合でも、土地が潤沢なほど牧草や飼料が充溢するから飼育が盛んに行われる、という当たり前の状況もあるに違いない。

数年前に滞在した同じギリシャのロードス島は、肉料理も魚介料理も同じくらいにレシピが盛りだくさんで、味も良かった。

ロードス島はギリシャ国内4番目の広さの島。大きくもなく小さくもない規模、あるいは大きいとも小さいとも言える島。そのせいで料理も肉と魚が満載、ということなのだろう。

10年程度をかけて中東や北アフリカを含む地中海域を旅する、という僕の計画はイスラム過激派のおかげで頓挫した。

僕は命知らずの勇気ある男ではないので、テロや誘拐や暴力の絶えない地域を旅するのは御免である。

世界には一生かけても訪ねきれない素敵な場所がゴマンとある。なのにわざわざ危険な地域を選んで旅することはない。

アラブまた北アフリカの国々は、「将来機会がある場合のみ訪ね歩く」ときっぱり割り切って、僕の地中海紀行は来年以降もギリシャを中心に回る腹づもりである。

その際の食の探訪のひとつには、アラブ圏で大いに楽しもうと考えていた、ヤギ&子ヤギまた羊肉料理をしっかりとメジャーに据えて、食べ歩く決心をした。

もっとも9月のクレタ島でも10月のドデカネス諸島でも、はたまた3月に旅したスペインのカナリア諸島でも、ヤギ&羊料理は目に付く限り食べ、目に付かない場合も「敢えて」探して食べたのだけれど・・



バノンという怪物を監視しまた無視するのが上策



ハート真っ直ぐ


11月のトランプ大統領の訪日に合わせるように日本を訪れたスティーブン・バノン元大統領首席戦略官が12月半ば、再び日本を訪問して前回にも勝るとも劣らない勢いでトランプさんの太鼓もちを務め、NHKを含む世界の大手メディアをフェイクと罵倒するお得意の「フェイク放言」を繰り返した。

前回のバノンさんの訪日も安倍首相に好意的な勢力の影がちらつく「事件」だったが、今回も同じ雰囲気がぷんぷん漂っている。米保守系政治イベント、CPAC(シーパック)の日本版「J-CPAC」で講演をするためだったという。またアメリカの猿真似かよ、とため息が出るばかりだ。

アメリカは日本にとって最重要な友人だ。同盟関係を維持するのみならず、さらなる友誼を模索し続けたほうが国益に適うことは論を待たない。だが同時に、日本はアメリカとの「対等の付き合い」も本気で追求しなければならない時期にきている。

現在の日米関係は、安倍政権の阿諛一辺倒のやり方に代表されるように、あくまでもアメリカが主人で日本は奴隷にも等しい無残な間柄に過ぎない。それを解消しなければ、日米の真の友誼もあり得ないことを、特に保守派を装う極右排外主義者の人々は知るべきだ。

たとえばバノンさんを日本に招待するような人々は、同氏が白人至上主義者であることをしっかりと認識しなければならない。白人至上主義を密かにあるいは大っぴらに標榜する彼の中には、黄色人種である日本人への蔑視も黒くわだかまっている。彼と同種の人間であるトランプ大統領のように

それは違う、と考える日本人は、かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)が敷かれていた南アフリカで、白人種に「準白人」と呼ばれて狂喜し、あたかも有色人種ではないかの如く振舞った同胞を思い出せばいい。彼らは日本の恥ずべき過去の一つだ。日本人は白人ではない。白人ではない日本人が「白人至上主義者」の正体を見て見ぬ振りで彼らに阿(おもね)る姿は見苦しい。

日本はアメリカと連携すると同時に、中国や北朝鮮などの反動政権にも十分に留意しなければならないのは自明の理である。だが平行して、中朝との友好協力関係を築き上げる方策もまた探求しなければならない。それは自らが白人種ではなく、黄色人種であることをしっかりと認識しそれを誇る、「当り前と言うのさえばかばかしいほど当たり前の」態度がまずあってこそ成就できる目標だ。

日本はアメリカの建前、すなわち中国・北朝鮮への敵対的アプローチのみを見て、それに合わせるように2国への圧力や対抗戦略ばかりを追い求めてはならない。日本独自の友誼追求の外交努力をするべきだ。いかに敵対していようとも彼らはわれわれ同じ「非白人種」であることも断じて忘れてはならない。

強硬な米トランプ主義の本音は、長期的には中国と北朝鮮2国との友好協力の模索だ。安倍政権は必死に中朝、特に北朝鮮への強硬姿勢のみにこだわっているが、そろそろその瑕疵に気づくべきだ。戦争や紛争による巨大な被害を本気で避けようと思うならば、「友好親善」の方が武力よりもはるかに効果的な抑止力になり得る、という真実に今いちど目を向けるべきなのである。

バノンさんは日本滞在中にNHKがインタビューした際、北朝鮮問題は行き詰っているのではないか、という記者の指摘に猛反発。「ほら、それこそが“反対派”の言い分。NHKはまさに“反対派”だ。NHKは日本のニューヨーク・タイムズでありCNNだ」などとまくしたてた。

批判的な相手を即座に(自分とボスのトランプ大統領が大嫌いな)CNNと同じ反対派であると断定し否定して、批判をまったく受け付けようとしない態度は、多文化主義や移民に反対し白人至上主義や排外主義を標榜する、バノン氏らオルタナ右翼に特徴的な態度である。

記者が「私たちはNHKです。CNNではありません。世間には北朝鮮問題は行き詰っている、と考える人も、あなたのように進行中とみなす人も、また成功していると見る人さえいます。私たちはあなたやトランプ大統領を批判もしませんし、賞賛もしません。不偏不党を追求し、ありのままの事実を客観的に伝える努力をしています」とはったりでもいいから言い返さなかったのは残念だ。

バノン氏のインタビューを聞いたり見たりするのは、僕にとってはそれが初めてのことではない。彼はことし8月に大統領首席戦略官を解任されたが、そのおよそ一ヵ月後、米CBS放送の「60ミニツ」に出演して司会者のチャーリー・ローズに痛烈に批判されたりもしている。

ローズさんはバノンさんにこう言った。「あなたは(トランプ大統領も) 白人至上主義者やネオ・ナチ、またそれに近い思想や政治信条を持つ人々を、端から徹底的に否定するべきだった。なぜならアメリカ人が第2次世界大戦で戦ったのがまさにそうした人々だったからだ。あなたは(トランプ大統領も)そうしないで、むしろ彼らに親和的であるようにさえ見える」と。

そこで事の重大に気づいたバノンさんはあわてて、「トランプ大統領(と私)はネオ・ナチや南部民族主義者、あるいはKKK(クー・クラクス・クラン=白人至上主義テロ集団)などを認めていません。彼らは最悪の存在だ。アメリカには政治的にも社会的にも彼らの居場所はない」と取り敢えず否定した。

バノン氏は常に早口の攻撃的声音でまくしたてる。声を荒げることで反対者や気に食わない政敵を抑え込めるとでも思っているのだろう。NHKやCBSのインタビューに答えるバノン氏も同様だった。自らをストリート・ファイターと規定し、絶えずけんか腰で相手に対するのが彼の持ち味だ。それは見ていて決して愉快なものではない。

NHKは彼の日本訪問を無視することもできたはずだが、あえてインタビューをすることで彼を得意にし、世間の注目も集めて氏の存在感を高めてしまうという負の効果も呼び込んでしまった。だが同時にインタビューをすることによって、バノン氏がいかなる人物であるかも知らしめたのだから、一利一害である。

NHKは、しかし、ビデオ・インタビューをWEBニュースで活字にする際には大きな間違いを犯した。バノン氏の受け答えを「です・ます調」の敬体で表記したことである。敬体は「だ・である調」の常体と比べて、発言(言葉)の印象を和らげる効果がある。殴るような調子で話されたバノン氏の英語は、日本語の敬体に置き換えられて、丁寧且つ教養にあふれた人物のそれでもあるかのように洗練されてしまっていた。

それがバノン氏を擁護するために意図的になされたものとは思わないが、日本語ならば明らかに常体のしかも押しの強いアグレッシブな内容の彼の発言が、なぜ柔和で静かな物言いに聞こえる敬体に変えられたかは不可解である。そのことも含め、バノン氏のイメージ向上にも資したインタビューそのものが、トランプ主義を称揚する安倍首相の思いや、その周りの強権勢力へのNHKの「忖度」ではなかったことを祈るばかりである。


2017クリスマス雑感



クリスマス飾りup


2017年のクリスマスは忘れがたいものになった。生まれて初めて入院を伴う手術を受け、クリスマスを体調不良のうちに過ごした。

手術は外傷を伴わないものだが、器官の内部を切除するので出血し痛みをもたらす。やはり体への負担は避けられないのである。

麻酔から覚めて痛みを感じ出血を見定め、しばらくしてベッドから立ち上がった時、やはり生まれて初めて「老い」を意識した。

それは異様な感覚ではあったが、不快ではなく、「あ、なるほど・・」と納得して、今後多くなっていくのであろうそうした「感じ」とうまく付き合ってやるぞ、と思った。

進行してさらに症状が重なれば楽観してはいられないだろうが、今はむしろ老いの兆候を楽しみ期待する気持ちさえある。それはきっとまだ「老い」ではない、ということなのかもしれないが。

「いつまでも死なない老人」、と「老人の」義母が喝破した、嫌われ者の老人が巷にあふれている。実は僕の身内に3人、友人知己の身内にも多い。

「いつまでも死なない老人」とは、身も蓋(ふた)もない言い方をしてもしなくても、要するに《もう生きていてほしくない》と周囲が思っている老人のことである。

年齢的には、義母の言葉が生まれた状況や、有名方言大王『タローア・ソー』氏の“名言”の内容などから推して、「90歳を超えたあたり」というふうに考えれば分かりやすいかもしれない。

90歳を超えてもカクシャクとして、前向きで愚痴を言わず、生きることを楽しんでいる老人なら、200歳まで生きていても誰も「いつまでも死なない老人」などと陰口をたたくことはないだろう。

あるいはカクシャクとしてはいなくとも、足るを知り、高齢まで生きて在ることのありがたみを知って、その良さを周囲に分け与えてくれる老人なら誰もが、「いつまでも死なないでほしい」と願うだろう。

足るを知らないネガティブな存在の老人を、ありのままに受け止めて
「自らのためになす」方法を、僕はやはりことしのクリスマスのあたりで発見した。つまり、彼らを「反面教師」としてしっかり利用しようということだ。

付け加えておけば、「いつまでも死なない老人」の名言を吐いた義母は、その直後から急速に壊れて、今は彼女自身が「いつまでも死なない老人」の一人になってしまった。これは予想外の展開だった。

中国、北朝鮮、およびロシアなどへの僕の敵対意識に近い違和感は急速に薄れて、親近感とは言わないまでも、それらの国々の在り方を一方的に否定することが少なくなった。

トランプ米大統領の存在が原因である。つまり僕が尊敬し愛し肯定し続けてきたアメリカを破壊し、矮小化したトランプという男への嫌悪感の分だけ、僕の中では前述の3国への抵抗感が減少した。

同時に、安倍首相や周囲のネトウヨ・ヘイト・排外主義者らが、トランプ大統領やその(影の)側近のスティーブン・バノン氏などの「白人至上主義者」を称揚し、追随する異様な事態に寒気を覚えるのも今日この頃である。

それらのネトウヨ・ヘイト・排外主義者らは、自らも白人になったつもりなのか「白人至上主義」に凝り固まったアメリカの同種の人々と手を取り合って、日本人と同じ黄色人種の中国人や韓国・北朝鮮人を見下し嘲笑する。その有様は異様を通り越して滑稽だ。

それらの人々は、彼らが「トモダチ」と錯覚している白人種のネトウヨ・ヘイト・排外主義者らが、自分自身やまた同種の日本人を陰で「黄色いサル」などと呼んで蔑んでいる現実に、そろそろ気づくべきだ。彼らは白人種以外を真には認めないから「白人至上主義者」なのである。


カタルーニャ州議会選挙、独立派が勝利も即座の大変化は期待できない



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スペインからの分離独立を巡って激しく揺れるカタルーニャ州で議会選挙が実施され、分離独立派が135席のうち70議席を獲得して多数を占めた。ラホイ首相率いる国民党は大敗。改選前の11議席から8議席も失って3議席となった。

しかし、国民党と同じくカタルーニャ州の独立に反対する市民党は、ブリュッセルに避難しているプチデモン前州首相率いる「カタルーニャのための連合(JxCat)」さえも抑えて、単独政党としては最多の37議席を確保した。

選挙への住民の関心は高く、投票率は83%を超えた。過半数の議席を得た独立派の勝利は動かないものの、反独立派との勢力は拮抗した。それは今後の独立運動の行方が不透明であることを思わせ、スペイン中央政府とカタルーニャ州の対立が深まる可能性も示唆している。

今回の州選挙は、10月1日に行われたカタルーニャ州の独立の是非を問う住民投票が原因で実施された。住民投票では有権者の43%が投票。賛成票が90%以上を占めた。

これを受けて10月27日、カタルーニャ州議会が独立の動議を賛成多数で可決。共和国としてスペインからの独立を宣言した。

スペイン政府は一連の動きが憲法違反だとしてただちにカタルーニャの自治権を剥奪。プチデモン州首相をはじめとする州幹部を解任し州議会も解散させた。そして12月21日の州議会選挙となったのである。

独立宣言から3日後にスペインを脱出して、EU本部のあるブリュッセルに留まっているプチデモン前州首相は、選挙結果を受けて「スペイン政府は敗れた。ラホイ首相は方針を転換しなければならない。否ならわれわれが国を変える。修正、修復、また回復の時がきた」と宣言した。

これに対してラホイ首相は「プチデモン氏ではなく選挙の勝者と話し合う」と応酬し、国と州の対話の困難が再び浮き彫りになった。

勝利した独立派は、国外にいるプチデモン氏や、スペイン当局に拘束されている独立派ナンバー2の ジュンケラス前州副知事に代わる誰かを、州首相に立てて政権を樹立しなければならない。が、先行きは不透明である。

プチデモン前州首相の国外脱出後、一時期下火になった独立運動は、選挙の勝利で息を吹き返して活発化することが予想され、今後の成り行きはラホイ首相の中央政府次第、ともいえる状況が出現した。そこにEUがからむかどうかが焦点になるだろう。

EUは2009年の欧州ソブリン危機、2015年がピークの難民問題、2016年のBrexit(英国のEU]離脱)決定など、参加国間の結束が乱れ屋台骨が揺らぐ難局に直面している。そのためにEUは、カタルーニャ州の独立問題をスペインの内政問題と端から決め付けて関わることを避けてきた

自らが分断・崩壊の危険にさらされているEUは、構成国のうちの大国の一つであるスペインが、カタルーニャ州の独立で弱体化し、それはEUそのもののさらなる衰勢にも加担しかねないと恐れた。EU内のほとんどの国が、程度の差こそあれ「それぞれのカタルーニャ州」を抱えている現実も不安なのである。

これまで民主主義の原則と非暴力を守ってきたのは、カタルーニャ州とプチデモン前州首相をはじめとする独立派の人々である。EUはこれを庇護しなければならない。だがEUは同時に、スペインの安定と秩序と統一を守ろうとする同国中央政府の立場もまた支持しなければならない。EUは後者を選んだ。

しかし、州議会選挙で独立派に敗れたラホイ政権が、選挙結果を無視してカタルーニャ州の自治権を剥奪し続け、再び強権的な姿勢で同州に対するならば、EUはこれに介入するべきだ。EUは曲りなりにも民主主義と自由と平和主義を原理原則に掲げているのだから。

だがEUの対応がただちに変わるとは思えない。EUの本音は結局、強者の立場からの欧州の統治だ。だがそれは間違っている。カタルーニャ州問題が提示しているのは、少数派の立場を尊重し擁護することでそれらの勢力をEU信奉者として留め置き、それによって連合の結束を固めて行く手法こそが最善の道、ということである。

EUがその方向に舵を切る可能性は今のところは低い。スペインの行く末も不透明である。だが、一点だけ確実なことがある。それはカタルーニャ問題への対応を誤ったラホイ首相の求心力が、急速に弱まった現実だ。彼の退陣の可能性を含むスペイン国内の政局の変化が、あるいは事態打開の大きなきっかけとなっていくのかもしれない。



スティーブン・バノンの訪日の異様とアラバマ州知事選の予定調和~州知事選の負けがトランプとバノンの終わりの始まり?



TRUMP-BANNON 600pic



北朝鮮とのつばぜり合い、エルサレム宣言、セクハラ疑惑、など、など、尽きることなく難問が湧き起こる中、トランプ米大統領に大きなダメージとなる新たな
「事件」が発生した。

12月12日に投開票されたアラバマ州の上院補欠選挙で、トランプ大統領が強く押した共和党の候補が、民主党候補に敗れたのだ。

ただの敗北ではない。アラバマ州は過去25年間に渡って共和党が制してきたいわば「牙城」。それだけに共和党の負け戦のショックは大きい。

敗戦は共和党が上院で辛くも保っている過半数を危うくして、トランプ大統領の政権運営がますます難しくなることを意味する。

それはつまり、来年の中間選挙で民主党が共和党を倒して、上院の多数派になる可能性がぐんと高まった、ということでもある。

誰も予想しなかった共和党の敗北は、元大統領首席戦略官で白人至上主義者のスティーブン・バノン氏とトランプ大統領が組んで、選挙戦を激しく戦った挙句にやってきた。

2人は負けの責任を問われているが、中でもバノン氏への風当たりが強い。バノン氏は昨年の大統領選でトランプ陣営を主導して選挙を勝利に導き、大統領首席戦略官に抜擢された。

しかし、トランプ大統領の娘婿のクシュナー上級顧問などの政権幹部と対立。ことし8月に解任された。だが政権から去った後も、トランプ大統領の「影の参謀」と目されてきた。

共和党主流派はバノン氏を激しく非難。ピート・キング下院議員は、トランプ大統領の選挙戦のスローガンをなぞって「アメリカを再び強くするためにバノンを排除するべき」と主張。

キング議員はさらに、白人至上主義を信奉し移民や多文化主義を排撃する
「バノンのオルタナ右翼的な思想や言動は、保守派の価値観を表すものではない」とも言明。

挙句にはテレビ番組に出演して、「スティーブン・バノンは政界に迷い込んだ、だらしない酔っ払いのような風貌の男だ」と、いささか感情的に過ぎると見える罵声まで浴びせた。

また保守系雑誌の一つは、共和党候補のムーア氏がセクハラ疑惑で激しい責めを受けたことを念頭に置いて、彼を強く支持したバノン氏を「他者を操る小物で、悪名高い候補者ばかりを好んで支持する」と酷評した。

僕はそれらの動きをここイタリアで追いかけながら、スティーブン・バノン氏その人が11月半ばに日本を訪問した折の状況をしきりに思い出していた。

バノン氏の訪日の目的は、中国の人権問題などについて研究する「諸民族青年リーダー研修会」で講演するためとされた。

バノン氏は実際にそこに顔を出した。が、トランプ大統領とほぼ同じ時期に同氏が日本を訪れたことが僕の目には異様に映っていた。

僕は当時、安倍首相が得意のトランプ大統領への阿諛外交の一環として彼を招聘し、「トランプ主義」の称揚をさせたのではないか、とさえ疑った。

事実バノン氏は、「現在も大統領と親しい」と強調しつつトランプ大統領の政策を賞賛する発言を繰り返し、核ミサイル開発を加速させる北朝鮮への武力行使の可能性について次のように述べた。

「アメリカの国家安全保障会議や国防省、また国務省や情報機関の全ては、多くの分析を行い、あらゆる選択肢を検討している」

「それらの機関はアメリカのみならず世界で最も“賢い”人々の集まりであり、彼らは毎日その問題について検討している」

などとして、例によってアメリカの優位性を強調した。

そういう発言はアメリカ人がよくしたがるものだ。彼らは世界の金融政策に多大な影響を与えるFRB(連邦準備制度理事会)にもアメリカの「最高の頭脳」が関わっていて、「最高の政策」を発案すると言う。

だがそれらのアメリカの最も“賢い”頭脳が考え出した政策は、ベトナムではアメリカに苦杯をもたらし、イラク戦争でも破局し、中東政策ではほぼ常に間違いを犯しつづけた。

またFRB(連邦準備制度理事会)が、世界経済の動向を「理路整然と読み違える」のも毎度のことである。北朝鮮問題に関しても彼らの力量は同じ、という可能性も大いにあるのではないか。

さらにバノン氏は、北朝鮮を「中国の属国」と断定し、北朝鮮を抑えるためにアメリカは中国に圧力をかけ続けて、石油の全面輸出禁止措置に踏み切らせるべき、とも主張。

中国が従わないならアメリカは、世界の金融市場から中国を閉め出したり、資本市場から中国の銀行を切り離したり、あるいは中国企業に重い制裁を科したりすることもできる、とした。

バノン氏の主張は一面の真実を突いている。だが「中国の属国」である・一寸の虫の北朝鮮にも五分の魂があり、世界経済から中国を閉め出せばアメリカ経済も大打撃を蒙る、という一面の真実を忘れている。

あるいはバノン氏は、自らの主張に不都合な真実を意図的に無視している。それはトランプ大統領を筆頭にバノン氏らも強く支持する、排外・ヘイト主体の「トランプ主義」信奉者らに典型的な態度だ。

「トランプ主義」は世界に蔓延しつつある。同時にそれに対抗する流れも欧州を中心に勢力を増している。最終的には後者が勝つだろう。勝たなければ世界は、不寛容と憎悪が充満する苦しい場所になるだろう。

アメリカはトランプ大統領を誕生させたことで、今はもうかつてのアメリカではなくなった。アメリカは死んだ。同時にアメリカは再生しつつある、とも思う。

再生したアメリカは、かつてのアメリカ国民が彼らの『理想とする国造りに向けて困難を克服しながら進み続けるアメリカ』ではもはやあり得ない。

それは「トランプ主義に汚染された分だけ卑小になった」自由と平等と寛容の国・アメリカである。それでもトランプ主義にまみれた今のアメリカよりははるかに増しだ。

アラバマ州知事選挙でのバノン氏とトランプ大統領の敗北が、もしもトランプ主義の終わりの始まりであるなら、それはトランプ後のアメリカの「再生の始まり」でもあると思いたい。

エルサレムを私物化するトランプ大統領の狂乱



ユダヤ帽子キッパーのトランプ&奥にネタニエウ600

世界最悪の「KY男」トランプ米大統領が、2017年12月6日、エルサレムをイスラエルの首都と認める、と宣言して世界が震撼している。

それはトランプ大統領によるアラブ・イスラムの国々への新たなる挑発であり侮辱である。各地で抗議デモが行われ、けが人や死者が出る事態となっている。

憤怒に駆られたイスラム過激派が、さらなるテロを重ねる可能性も高い。狂気の沙汰と呼ぶ関連・当事者も少なくない危険な動きだ。

エルサレムは世界の3大唯一神教であるキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地。その所属を巡って宗派間のいがみ合いが絶えない。米国は歴史的にその対立を回避する方向で政策努力を重ねてきた。

エルサレムは実質イスラエルによって統治されている。国会や最高裁判所をはじめ、同国の大半の政府機関が置かれて、首都のテルアビブよりも「より首都として機能」している。

歴史的に同市は西と東に分かれ、前者がユダヤ人のイスラエル、後者がアラブ人のヨルダンに統治されていた。しかし1967年の第三次中東戦争(6日戦争)でイスラエルが東も占領した。

以後、イスラエルは国際世論に押されてテルアビブを首都としているが、エルサレムが彼らの真の首都だと主張。一方アラブ・パレスチナも将来建国する彼らの国の首都、と位置づけて対立。

対立はユダヤのイスラエルと、パレスチナを支持するアラブの大半の国々のいがみあいとなってくすぶり続けている。欧米、特にアメリカは対立の仲介役として立ち回ってきた。

アメリカはエルサレムを首都と主張するイスラエルの言い分を認めるものの、大使館をそこに設置するなどの実効行為は避けて、玉虫色の現状維持政策を続けてきたのである。

トランプ大統領は、アラブにも気を使ったその歴史的なアメリカのポリーシを覆して、一方的にイスラエルの肩を持つ今回の「エルサレムはイスラエルの首都」宣言をした。

驚きの声明にアラブ世界は言うまでもなく、欧州列強をはじめとする世界の国々が反発、非難している。トランプ大統領を支持しているのは、今のところチェコとフィリピン。

さらにトランプ大統領の政策なら何でも支持する安倍阿諛政権の日本のみである。日本政府は、トランプ大統領の宣言に異を唱えないことで、彼の主張を支持しているのだ。

トランプ大統領が約20年に及ぶアメリカの「エルサレムへの大使館移動延期措置」と、約70年に及ぶ同国の中東政策を突然反故にしたのはなぜか。

大統領選での公約を果たして、選挙で莫大な献金をしたイスラエルと米国のユダヤ人富裕層やキリスト教福音主義者を喜ばせ、さらに右派の支持層をしっかりと繋ぎ留めるため、という説が有力である。

支持率が低空飛行を続け、政権の揺らぎが静まるどころか、しばしば激震へと悪化するトランプ政権は、コアな右派支持層、中でも極右の排外民族主義者らの強い支持が命綱だ。彼らの支援獲得のためなら何でもやる、というのが青息吐息の同大統領の覚悟なのだろう。

またトランプ大統領は、歴代の米大統領と自分は「違う」と知らしめたい欲求が強い、とも言われている。事実彼は、「エルサレム宣言」の際に次のように力説した。

「大使館移設を20年以上見送ってもイスラエルとパレスチナの恒久的な和平合意には至らなかった。今後もさらに同じやり方を繰り返して、違う結果あるいはより良い結果が出ると考えるのはバカだ」と。

それは一見すると正論である。だが自らの都合に合わせて構築された正論は往々にして破綻する。トランプ大統領の断定の背景には前述の「彼の都合」がある。そればかりではない。

トランプ大統領の上級顧問で娘婿のクシュナー氏の存在も気にかかる。クシュナー氏は敬虔なユダヤ教徒。大統領の娘で妻のイヴァンカさんも彼に合わせてユダヤ教に改宗した。

そうした家庭環境を持つトランプ大統領が、元々あったユダヤ人民への親近感をさらに強めて、「家族思い」の余り圧倒的にイスラエル寄りの政治決断をした、と考えるのはうがち過ぎだろうか。

たとえ「家族絡みの思考」がなかったとしても、トランプ大統領の正論は心もとない。それというのも「エルサレム首都移転」問題に対するこれまでの米国のスタンスは、ベストではないが「考えられる限りのベター」だった、と思えるからだ。

イスラエルとアラブ・パレスチナが、エルサレムの所属と在り方を巡って対立し、双方が一歩も譲らない現状では、第三者のアメリカは中立の立場にいたほうが良い。

トランプ大統領のみならず、アメリカの心は明らかにイスラエル寄りである。だがそれを抑えて、まがりなりにもアラブ・パレスチナにも気を遣ってきたのが米歴代政権の政策だ。

本音と建前を使い分けるのは偽善である。だが世界政治の、特に紛争地では、本音と建前を使い分ける偽善が必要なケースが多々ある。その一つがアメリカのエルサレム紛争対策だった。

それは失敗などではではなく、現在考えられる限りのベターな政策だった。そしてベストが存在しない限り、「ベターがベスト」なのである。

アメリカは台湾問題でも同様の政策を実践した。1979年、アメリカは中華人民共和国を事実上承認し、「北京を首都と認定」して、正式な外交相手を台湾から中国に移した。

玉虫色の解決策によって、中国と台湾の間には緊張は存在するものの平和が保たれている。エルサレムを巡る米国の政策も同じだったのだ。

イスラエルとアラブ・パレスチナの間には強い緊張関係があり戦闘でさえも勃発する。だが全面戦争には至らず、和平交渉も遅々とした動きながら絶えず試みられてきた。

トランプ大統領は、まがりなりにも「実際に機能していた」方策をふいに遺棄して、暴走を始めたのである。暴走と暴挙が就任からほぼ1年に渡るトランプ大統領の実績だ。

トランプ大統領は、エルサレムを巡る複雑な経緯や長い歴史を顧みない身勝手な宣布をしておきながら、いかにも彼らしく“アメリカはそれでも中東和平の仲介役を務める”とも発言した。

無神経なのか大胆なのか、間もなく状況は明らかになるだろう。その前に彼が辞職するか、または弾劾によって放逐される可能性も依然として高い、と思う。それは決して自分のポジショントークではない、と考えるのは僕のポジショントークだろうか?

「チビのロケットマン」金正恩は今のところ「コマッタ老いぼれマン」Dトランプに勝っている



kim -2

世界最大の「困った男」トランプ米大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と認める、と宣言して世界が震撼している。それはトランプ大統領によるアラブ・イスラムの国々への新たなる挑発であり侮辱である。憤怒に駆られたイスラム過激派が、さらなるテロを重ねる可能性も高い。狂気の沙汰と呼ぶ関連・当事者も少なくない危険な動きだ。

そのことについてはまた言及することにして、ここではもう一つの「トランプ問題」、とも言える北朝鮮の核ミサイル開発について書いておくことにした。

せめぎあい

2017年11月29日、北朝鮮がまたミサイルを発射。「大型の核弾頭を搭載して
1万3000キロを飛びアメリカ全土に到達できるICBMか」というニュースが世界を駆け巡った。ここイタリアのメディアも繰り返し大きく伝えて、事態の深刻を強調している。

アメリカのトランプ大統領は、中国の習近平主席が核兵器開発を止めさせようとして北朝鮮に派遣していた特使は、「チビのロケットマン(金正恩朝鮮労働党委員長)に対しては何の効果もなかった」と、例によって金正恩委員長を見下しきった言葉を発することで、彼自身も馬鹿にしている相手と同レベルの男であることを暴露しつつ、北朝鮮へのさらなる圧力強化を明言した。

こうした状況から見えてくるのは、金正恩委員長がやりたいことをこれまで通りにやりまくり、習近平中国国家主席が、北朝鮮にそっぽを向かれると同時にアメリカには怒られて二重に狼狽し、トランプ大統領が例によって、支持者の集会などで狂犬よろしく吼えている、という構図である。

似た者同士

金正恩朝鮮労働党委員長は2011年12月、27歳の若さで北朝鮮のほぼ全権力を握った。以後、人民への圧政と政権幹部の粛清を繰り返しながら、核ミサイル開発を推進。日米韓をはじめとする世界の多くの国々の糾弾、また懇願を尻目に核実験や弾道ミサイル発射実験を繰り返してきた。

2017年初頭に就任したトランプ米大統領は、経済制裁強化をはじめとする北朝鮮への強硬路線を加速。挑発をやめない金正恩委員長を嘲笑罵倒するツイートを発信して、彼もまた北朝鮮を扇動。金委員長は米大統領を「老いぼれ」などと口汚くののしり返しながら、ミサイル核兵器の開発に血眼になってきた。

トランプ大統領は、金委員長をあるときは威嚇し、痛罵し、またあるときは「友人になれるかもしれない」などと秋波も送る、一見支離滅裂な言動を続けると同時に空母打撃群を日本海に展開。次には空母3隻と海上自衛隊の演習を実施するなど北朝鮮を強く牽制し、返す刀で中国の習近平主席に圧力とも協調・友誼の発露とも取れる働きかけも怠らなかった。

最大の挑発

緊張が高まる中、トランプ大統領が11月にアジアを歴訪。先ずは日本で彼の腰巾着、安倍晋三首相と「トランプ主義」礼賛のセレモニーを反復した後、中国に渡った。そこで北朝鮮への石油輸出全面禁止を含む強硬措置を習近平主席に迫り、「中国を利用」して北朝鮮の暴走を食い止める最終アクションのシナリオが描かれるのではないか、との想望が生まれた。

期待を膨らませるように北朝鮮はミサイル発射などの挑発行為をしばらく「自粛」。中国はあたかもトランプ大統領の意を受けたかの如く11月17日、北朝鮮に特使を送って金委員長の説得にあたった。ついに北朝鮮が軟化して対話のテーブルに着く時が来た、とさえ見られた。ところが特使派遣から10日も経たない11月29日、北朝鮮は満を持したように強力な核弾頭搭載可能のミサイルを発射したのである。

トランプ大統領は北朝鮮と中国を同時に誹謗する前述の、「中国が送った特使とチビのロケットマン」がテーマのツイートを発信して、いつものようにその軽さと人徳のなさと、思い上がりと無教養によって世界を楽しませ、呆れさせ、且つため息をつかせたのだった。

中国の腹の中

習近平主席が北朝鮮に送った特使は、ピョンヤンで金正恩委員長側近の政権幹部とは会ったものの、金正恩委員長本人とは面談できなかったとされる。だがその出来事はおそらく、中国と北朝鮮が仕組んだフェイクニュースではないか、と僕は思う。実際には特使と金正恩委員長は会っていて、米国を欺くために面会不成立を演出しているのではないか、と疑うのだ。

習近平主席は、トランプ大統領に北朝鮮へ向けてのドラスティックな手法を約束しつつ、北朝鮮との不仲を装っているようにも見える。そうすることで、「俺は懸命に圧力をかけているが金が言うことをきかない」とアメリカに示唆しているのである。その裏取引があるから北朝鮮の独裁者は、「安心して」再びミサイル発射を断行したのではないか。

アメリカは軍事介入に踏ん切りがつけられず、中国は中国でアメリカと協調する振りで北朝鮮とも裏取引を継続しながら時間稼ぎをする。事態は硬直したまま北朝鮮だけが核ミサイル開発政策を堅持。やがてアメリカも北朝鮮を核保有国として「しぶしぶ」認める、というこの先の展開が見えてくるようだ。

それはつまり中国が、北朝鮮の核武装を既に容認していることを意味する。朝鮮半島の非核化は中国の国益、というのは中国にとっては今やおそらく過去のコンセプトなのだ。米政権内にさえ北朝鮮を核保有国と認めて金委員長と交渉を始めるべき、という意見が以前から根強くある。中国は先行してその施策を実行しているのではないかと思う。

勝利者はもう決まったも同然?

金正恩委員長は既にトランプ大統領に勝っている、という見方もできる。それというのもトランプ大統領がまともな指導者なら、彼は北朝鮮への武力行使はできない、と見られるからだ。戦争を起こせば、北朝鮮は言うまでもなく韓国にも多大な犠牲者が出ることが予想され、日本も攻撃される可能性がある。トランプ大統領が正気ならば、そんな大きなリスクを犯すことはできない、と考えるのが普通だ。

北朝鮮と並ぶ当事者の韓国は、高い確率で自国民が犠牲になる戦争に強く反対している。また中国とロシアも彼らの利害故にアメリカの軍事解決に異を唱えている。さらにアメリカ国民の多くにも厭戦気分が強い。トランプ大統領はその意味ではいわば四面楚歌の状態だ。

従って、繰り返しになるが、事態は手詰まりのまま時間が過ぎて結局、 北朝鮮は近い将来、核保有国としての現状を容認されて、独裁者・金正恩が命脈を保つのではないか。つまり金正恩委員長は彼の目的を達成し、勝利者となるのだ。それを阻止できるのはおそらく、トランプ大統領が「正気を失って」北朝鮮への攻撃を実行することだけだ。

アメリカが軍事作戦を決行すれば、ほぼ確実に若い独裁者を殺害できるに違いない。だが前述したように、朝鮮半島と、おそらく日本にも多大な犠牲者と被害をもたらすだろうから、トランプ大統領は決して真の「勝利者」にはなれない。同大統領は地域の怒りと恨みを買うのみならず、歴史に大悪名を残すことが確実だ。

そればかりではない。戦争は中国とロシアを巻きこんで拡大し、安保法に縛られた日本も参戦。そうなれば第三次世界大戦とも呼べる惨事に見舞われないとも限らない。そして責任のほぼ全ては、トランプ大統領に科される可能性が高い。進むも地獄、引くのも地獄、というのがトランプ大統領が今現在置かれている状況だ。

金正恩の野望

周知のように北朝鮮の首領の目的は、核抑止力を確保して彼の独裁政権を存続させること、の一言につきる。金委員長は20011年に始まった「アラブの春」で、中東やアフリカの独裁者が次々に殺害されたり政権を追われたりしたことをつぶさに見てきた。リビアのカダフィ大佐、エジプトのムバラク大統領などの無残な姿は、世界中に生中継されて衝撃を呼んだ。

それ以前には、イラクのサダム・フセインと息子らの凄惨な最後も彼は目の当たりにした。さらに歴史をさかのぼれば、ヒトラーまで言及しなくてもルーマニアのチャウシェスク、フィリピンのマルコスなど、無敵にも見えた独裁者らの悲惨な結末は彼の記憶にも新しいことだろう。

独裁者・金正恩にとっては、前人と同じ轍を踏まないための方策は核兵器を保有して、アメリカ以下の世界の国々に彼の政権の安泰を保障してもらうことしかない。彼はカダフィもサダム・フセインも誰もが、核抑止力を持たない為に米国を中心とする有志連合によって地獄に送られた、と固く信じているとされる。

金委員長は、座して待てば必ず政権崩壊が起こり終末がやってくる、と正確に見通している。それならば「アメリカに攻撃され殺害される」リスクを犯してでも核武装に走るしかない。いわばヤケクソの賭けに出たのが彼の挑発の意味である。だが彼の勝利が確定すればそれはつまり、「チビのロケットマン」が実は狂気の天才だった、と人々が信じるかもしれない稀有な事態となるだろう。


イラスト by Kenjiandrea nakasone






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