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           コロナ地獄に咲く花

 欧州最大のCovid-19被害国であるイタリアは現在も苦境のまっただ中にいる。死者数、感染者数を始めとするさまざまな数字がイタリアの窮状を示しているが、中でもすさまじいのが医療現場の医師の殉職数。4月26日現在、150人にものぼる。
 感染爆発によって医療機器が不足し、医師の防護服どころかマスクや手袋さえも不足する事態が続いた。現在は落ち着きつつあるが、それでも一日平均1~2人の医師が新型コロナ感染症で亡くなっている。
 イタリアの感染爆心地である北部ロンバルディア州は、医療崩壊に陥ったほぼ一ヶ月前、300人の退職医師のボランティアを緊急募集した。するとすぐに募集人員の25倍以上にあたる約8000人の引退医師が名乗りを挙げた。年老いた彼らは平穏な年金生活を捨てて、高齢者を襲うことが多いCovid-19の医療の現場に、むろん危険を百も承知で敢然と立ち戻っていった。
 イタリア最大の産業はボランティア、という箴言がある。イタリア国民はボランティア活動に熱心だ。猫も杓子もという感じで、せっせと社会奉仕活動にいそしむ。彼ら善男善女の無償行為を賃金に換算すれば、莫大な額になる。まさにイタリア最大の産業である。
 ボランティア精神はCovid-19恐慌の中でも自在に発揮されている。救急車の運転手ほかの救命隊員や、市民保護局付けのおびただしい数の救難・救護ボランティア、困窮家庭への物資配達や救援、介護ボランティアなども大活躍している。8000人もの老医師が、ウイルスとの戦いの前線に行く、と果敢に決意する心のあり方も根っこは同じだ。
 それらのエピソードが示しているイタリア人の博愛と寛容と勇気と忍耐の精神の強さに、僕はあらためて深い感動を覚えずにはいられない。



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